追加緩和(その2)
本日は日経CNBCテレビ、日経ヴェリタストークに出演しました。
(1)追加緩和のタイミング
黒田総裁は28日(火曜日)に「前向きの循環メカニズムはしっかりと維持されて・・」と発言(『こちら』)。
その3日後の追加緩和発表だったことから、市場関係者には驚きの声が広がりました。
君子豹変、ということかもしれません。
(2)追加緩和の規模
長期国債の保有残高を年間で80兆円増やすというもので、規模についても予想以上に大きなものでした。
(3)展望レポート
以上から、市場関係者の間から「バズーカ砲」との声も聞かれましたが、「バズーカ砲」を打たざるをえないほど、戦況(日銀によるデフレとの戦い)が悪化しつつあった、というのも事実。
31日に発表された日銀展望レポートでは2014年度実質GDPの伸び率を+0.5%に下方修正(『こちら』)
(4)本日のマーケット
以上、「バズーカ砲」は評価しつつも、「展望レポート」に謳われているように経済の実態はさほどは良くありません。
この両面をにらみつつ、本日のマーケットは大きく動きました。
出来高は5兆4000億円と大商い。
日経225の1日の動きは上図のとおり。
一日の最初の10分間と後場の最初と最後に出来高が集中。
(5)追加緩和の評価
①追加緩和は、日銀が目標としている「デフレマインドの払拭」という点では効果あり。
これをやらなければ、円高、物価安という「かつて辿った道」に戻ってしまう可能性もあったかもしれません。
②マーケットの立場からすると、材料出尽くし感が見え始めてしまったといった側面も・・。
80兆の国債残高増は、(日銀が持っている国債が今後1年で30兆償還を迎えることを考えれば)日銀による110兆円の国債購入を意味します。
政府による1年間の国債市中発行予定額(平成26年度)が168兆円である(『こちら』)ことを勘案すれば、かなりの分の国債が日銀によって吸収されることになるわけで、「これ以上はもう無理」という水準に近づきつつあります。
いままではヘッジファンドなどは、「日銀による追加緩和」や「GPIFによる資産構成変化の実施」が怖くて、「日本株を売り込めなかった」といった側面がありました。
しかし、材料が全部出尽くしてしまう(日銀による更なる第3弾の追加緩和はかなり難しくなったし、GPIFの更なる資産構成変更も当面ない)と、日本株を売り込むことに対するヘッジファンド筋の恐怖感は剥落してしまうかもしれません。
(6)追加緩和の副作用
かなりのインパクトのある「バズーカ砲」だったので、薬で言えば劇薬。
長く飲み続けるものではなく、効いている間に構造改革、社会保障費削減などに取り組み、早く健康体に戻ることが重要。
(7)円安のマイナス面
原油価格が25%も下落(6月25日WTI102ドル→現在78ドル)。
たとえ円が10%下落しても、輸入原材料費のコスト増は、原油の下落で相殺される面も・・。
第一次小泉内閣時に1ドル=134円80銭(TTM;2002年1月25日)をつけたことを勘案すれば、最近のマスコミ論調は円安のマイナス面を強調し過ぎている面もあるかもしれません。
(8)その他
番組では米国の景気動向、利上げのタイミング、日本株と為替の見通しについても話しました。
再放送は11月6日(木) 21:15~です。
(9)パソコン・スマホで見れます
日経CNBCはケーブルだけでなく、パソコン・スマホでも見れます。
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10月31日の黒田総裁の記者会見(約1時間)なども今からでも見ることができて、意外と便利です。
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