原油価格の下落と米国経済
BPのサイト(『こちら』)によると、米国の原油生産量は10.0百万バーレル/day(2013年)。
これはサウジ(11.5百万バーレル/day)、ロシア(10.8百万バーレル/day)に次いで世界第3位。
シェールの影響が大きく、米国の2013年の原油生産量は対前年比で13.5%増(ちなみにサウジは▲1.1%、ロシアは1.3%増;データは全て上記BP資料の8頁)。
下記は世界の各地域ごとの原油生産量推移。
さて米国は世界第3位の原油産出国であると同時に、断トツの原油消費国でもあります(以下は2013年の原油消費量、出所は上記サイトの9頁)。
1位 米国 18.9百万バーレル/day
2位 中国 10.8百万バーレル/day
3位 日本 4.6百万バーレル/day
米国の消費量は対前年比2.0%でしたが、実はここ数年来減少傾向が続いていました。ちなみに過去10年間のピーク年は2005年の20.8百万バーレル/day。
ようやくリーマン・ショックの影響から解放され、原油消費が上向いてきたのが「2013年だった」ということでしょうか。
下記は世界の各地域ごとの原油消費量推移。
中国の消費量が10年前(5.8百万バーレル/day)に比して10年間で2倍近くに増えているため、Asai Pacific地域の増加が際立っています。
さて米国はこのように原油の一大産出国であると同時に巨大消費国です。
ちなみに輸出入で見ると、米国は9.8百万バーレル/dayを輸入し、3.3百万バーレル/dayを輸出(上記サイトの18頁)。
こうした状況下で原油価格の下落が米国にどういった影響を及ぼすかですが、一言で言うと「複雑」です。
一般論からすれば米国では原油の生産量よりも消費量の方がはるかに大きいので、国全体で見ればプラスに作用する方が強いと言えます。
しかし今回のように半年間で価格が約半値になるといった「急落」となると弊害の方もぐんと大きくなります。
さらに注目すべきは米国でシェールガスを含むエネルギー関連企業がジャンク債で調達する資金が3000億ドル(36兆円)にものぼるといった報道(『こちら』)。
つまり金融がからんでくることでシェール企業の業況悪化が、サブプライムのときのように各方面に飛び火してしまうリスクが増えてきます。
そもそも今回の原油価格急落。
仕掛け人がサウジであることはほぼ間違いないのでしょうが、ではなぜ?
これに対しては、サウジが米国のシェールガスをつぶすために仕掛けたとする考え方がある一方で、
ロシア筋からは「サウジは米政府と裏で手を握っている」といった話も聞こえてきたりします。
つまり真相は藪の中。
年末年始、私はジェフリー・ロビンソン『ヤマニ―石油外交秘録』をもう一度読みかえしてみましたが、次の一節が目を引きました。
「(サウジの人々が)変革を好まないのは、砂漠での生活と関係があるかもしれない。遊牧民としての民族のルーツと関係があるのかもしれない。・・・こちらがなにもしなければ、問題はおのずから消え去る、と信じ込んであっけらかんとしている」(70頁)
原油価格が下落しようと「減産はしない」と宣言したヌアイミ石油相。
当然アブドラ国王の内諾を得たうえで動いているのでしょうが、たとえ砂漠を襲う砂嵐が来たとしても、じっとしていて「行き去るのを待つ」というようなスタンスなのでしょうか。
一方、今年91歳になるアブドラ国王は「肺炎のため入院した」といったニュースも新年早々伝わってきたりして・・・(『こちら』)。
1日にも書きましたが、やはり2015年は波乱を予感させます。
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