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2015年7月26日 (日)

戦争の記憶

大学時代にコミュニケーションのゼミ(教養課程のゼミです)で、藤井先生(早大教授)が、

「一番強力なコミュニケーションの手段は、テレビでも、新聞でも、本でもない。口から口へと語り継がれるのが、一番の力を発揮する」

と述べていました。

どういうわけか、このことは今でも私の記憶に残っています。

ところで、私たちの世代は両親から太平洋戦争の話を直接聞いて育ちました。

私がまだ小学生とか中学生のときでしたが、父が語ってくれた戦争の話は鮮烈な記憶となって、私の脳裏に焼き付いています。

残念ながら、いまの若い世代は戦争の話を直接聞くことが出来ない―しかしあの時どんなことが起きたかについては、次の世代へと(直接話したり聞くことは無理であっても)継承されていかなくてはならないと思います。

実は先週出版社の方から『「戦記」で読み解くあの戦争の真実 日本人が忘れてはいけない太平洋戦争の記録』という長いタイトルの本が送られてきました。

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この本は40の戦記を紹介したものです。

1つの戦記の紹介は8~9頁と短いもので、これを読んだだけでは物足りないと思う方も多いでしょう(私もそう思いました)。

けれどもこの本を出発点として、自分が気になった本を読んでみてはいかがでしょうか。

たとえば半藤一利著『ノモンハンの夏』については、本書(209~211頁)では以下のように紹介されています(一部のみを記しています)。

『1972年に「坂の上の雲」の連載を完結させた司馬遼太郎は、同作を引き継ぐ作品として、ノモンハン事件を描いた小説を構想していた。 

小説家・司馬の出発点は、22歳で終戦を迎えた彼が、「なぜこんな馬鹿な戦争をする国に産まれたのだろう?いつから日本人はこんな馬鹿になったのだろう?」との疑問を抱いたことだといわれる。 

「坂の上の雲」で日露戦争を描いた司馬には、これだけでは日本の近代を描き切ったことにはならないとの思いがあった。 

しかし、ノモンハン事件というフレームを通せば、大国ロシアを破ったことで軍部と国民が共に思い上がり、急速に夜郎自大化していった日露戦争後の日本が描けると考えていたのである。 

司馬はこの事件を書くために、例のごとく膨大な資料を読み漁り、10年近くを費やして何人もの関係者への取材も進めていたという。 

だがすでに知られているように、小説として実現することはなかった。 

文藝春秋社における司馬担当の編集者だった著者が司馬に執筆の展望を尋ねると、司馬は「僕の体力的にも気力的にも。もう無理なんだ」「これ以上何も言うな。それ以上書けという事は、僕に死ねと言うことだよ」(NHK「戦後史証言アーカイブス」より)と語ったという。 

本書は司馬の取材にもたびたび同行していた著者が、司馬の遺志を受け継ぎ、ノモンハン事件の総体を描き出そうとしたノンフィクションである』

『「戦記」で読み解く・・』には「日本のいちばん長い夏」も紹介されています。この本の編者「半藤一利」は「日本のいちばん長い日―運命の八月十五日」も著しています。

昭和47年に岡本喜八監督によって映画化された「日本の一番長い日」。今年8月8日には、原田眞人監督によってリメイク版が上映されます(『こちら』が上映予告編です)。

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2015年7月25日 (土)

BIG tomorrow

本日発売の『BIG tomorrow 』(月刊ビッグトゥモロウ)9月号。

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20頁にインタビュー記事が掲載されていますので、宜しかったらご覧になってみてください。

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ところでこの雑誌にはいろいろな方のインタビューが掲載されているのですが、59~63頁にかけての「さいとう・たかを」さんのインタビュー記事がとくに面白かったです。

『ゴルゴ13』で有名となった「さいとう・たかを」さん。

「60年やってもまだうまく描けない。なぜだ?どうして?ちくしょうの連続です」と言います。

「さいとう・たかを」さんの人生の出発点は理髪学校を卒業して、18歳のときにお姉さんと始めた理髪店だったとか・・。

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2015年7月21日 (火)

村上ファンド再来?

「村上ファンド再来」と題した日経新聞の記事(7月14日、18面)。

投資会社C&Iホールディングスは、黒田電気に対して臨時株主総会の招集を請求(6月26日、『こちら』)。

黒田電気によるプレスリリースや日経報道、ブルームバーグ報道(『こちら』)などによりますと、株式会社C&Iホールディングスの代表取締役の野村絢氏(村上絢氏)は、村上世彰氏の長女だとか・・。

さて、C&Iホールディングスによる請求を受け、黒田電気は「8月28日に臨時株主総会を開催する」と通知しました(『こちら』)。

しかしC&Iホールディングスは、

「7月10日付の黒田電気からのプレスリリースによると、臨時株主総会開催は8月28日となっています。会社法では、株主の招集請求に対して会社が自ら招集を行う場合は招集請求日から8週間以内の日を総会開催日とすべきものとされていますが、会社がリリースした開催日は招集請求から9週間後になり、会社法の期間制限に反するため、 弊社らは本日付で大阪地方裁判所に対して株主による総会招集許可の申立てを行いました」

と対応(7月13日、『こちら』)。

C&Iホールディングスと黒田電気。

この両者の争いに関して、2007年まで黒田電気に勤めた黒田善孝氏(黒田電気創業者、黒田善一郎の長男で、黒田電気の取締役、社長、副会長を歴任)は、C&Iホールディングスに賛同する意見書を提出(『こちら』)しています。

さて・・・。

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2015年7月20日 (月)

アンドレ・マルローの日本

「百の生涯を生きた男」と、死後、フランスのジャーナリストたちに評されたアンドレ・マルロー(1901年~76年)。

その彼と日本との関係にスポットライトを当てた『アンドレ・マルローの日本』(2001年)を読みました。

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面白かったので、この本の中で何度も引用されているマルローの『反回想録』も読みたくなり、アマゾンで注文。

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『反回想録(Antimémoires)』は1967年の作品です。

邦訳は日本の章を加えて1976年に出版されています。

ネットが普及する前だと、こういった本が読みたくなった場合、神田の古本屋街を探すか、国会図書館に通うくらいしか方法がありませんでした。

それが今ではクリック一つで自宅に届けてくれるようになったのですから、便利な時代になりました。

* * * * *

1960年、フランスの作家であり政治家でもあったアンドレ・マルローは、ド・ゴール政権下の文化担当大臣として来日。

昭和天皇に謁見し、陛下の「なぜ、古き日本に興味をお持ちか?」との質問にこう答えたとのことです。

「騎士道を興した民族である我々にとって、武士道が無意味であるはずがありましょうか?」

* * * * *

以下は『アンドレ・マルローの日本』69頁からの引用です。

「マルローは三度、いやおそらくは四度、昭和天皇に会っている。 

最初は1958年12月に、ド・ゴール首相の特使として。 

二度目は60年2月に、文化担当国務大臣として。 

三度目は74年で、72年4月16日に亡くなった作家で友人の川端康成の遺志を叶えて当時の明仁皇太子、美智子妃に〈ご進講〉したさいだ(マルローは皇太子の名誉講師に任ぜられている)。 

もう一度は71年で、ポンピドー大統領の賓客だった昭和天皇がマルローとの再会を希望し、フォンテーヌブロー城のサロンで極秘の会見が行われたということだ。 

最後の話は確認が難しいが、マルローが歴史上の偉大な人物―君主、皇帝(ナポレオン、昭和天皇)、国家元首(シャルル・ド・ゴール、ジャワーハルラール・ネルー、J・F・ケネディ)、英雄、義人、レジスタンス活動家(ジャン・ムーラン[フランスの対独レジスタンスの闘士]、ガンジー)―に寄せていた関心の大きさを物語るものだ。」

* * * * *

日本からインドへと話はそれますが、ネルーとマルローについては、こんな一節もあります(同上書17頁)。

「あるときマルローがネルーに尋ねた。 

一千余年前、それまで支配的だった仏教にヒンドゥー教がとってかわったのはなぜか。 

宗教戦争が勃発することなく、インドじゅうに広まったのはなぜか。 

それを聞いてネルーは思った。『そういう事柄に関心をもつ人間はヨーロッパやアメリカにはあまりいない。目の前の問題で頭がいっぱいだからだ。・・』」

『反回想録』にはネルーとマルローとのこんな会話も記載されています(226頁)。

「『独立以来、もっとも困難にお感じになったのはどういうことですか?』 

この新たな問いに(以下一部略)ネルーが、一気にこう言ってのけたのだった。 

『正義の手段をもって正義の国家をつくること、これだったと思います・・』」

* * * * *

下の写真は1963年にモナリザの前で撮影されたもので、左から、ケネディ大統領、マルロー夫人(Marie-Madeleine Lioux), アンドレ・マルロー、ジャクリーン・ケネディ、ジョンソン副大統領(The photo is from Wikipedia)。

ケネディ大統領夫人はマルローのことを「私が話した中でもっとも魅惑的な人(“the most fascinating man I've ever talked to”)」と語ったと言われています。

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* * * * *

『反回想録』の日本の章(608~639頁)にはマルローと「坊さん」の対話が出てきます。

「マルローが〈坊さん〉と呼んだこの男は、ほかでもないマルローの友人、マツイ・タキョウの父親である。 

マツイ・タキョウは太平洋戦争中、ゼロ戦でアメリカの艦船に体当たりした。 

マルローとは戦前にパリで知り合った。 

息子の死の責任は主戦論にありとする〈坊さん〉は、『軍人が日本を殺した』と言う。」 (『アンドレ・マルローの日本』60頁)

* * * * *

『反回想録』に出てくるマルローと「坊さん」の会話の中で、とくに下記(632頁)の部分には興味深いものがあります(注:邦訳は『アンドレ・マルローの日本』の方が分かりやすいことから同書78頁より引用しました)。

坊さん「言わせていただければ、ヨーロッパの方々と私どもは、ずいぶんと懸け離れていますな・・・」 

マルロー「つねにそうとはかぎりませんよ。アメリカ人と比べ、あなたがたの仏教は、消えかけてはいてもすべてに浸透していて、私たちのキリスト教に通じるものがある。(中略)」 

坊さん「あなたもほかの人たちと同じヨーロッパ人なのでしょうか」 

マルロー「いや。次の点で違います。ヨーロッパ人、西洋人にとって、日本は飾り物にすぎない。お菊さんから蝶々夫人まで行くのがやっとで、みごとな初期宮廷画家の作品でさえ、相変わらず飾り物にすぎない。(中略)・・・私は日本を信じています。日本の飾り物は副次的なものだと考えていますから」 

坊さん「それでは、ね・・・なにが主だとお考えですか」 

マルロー「伊勢神宮、熊野路、那智の滝・・・・」

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2015年7月17日 (金)

FinTech

金融がどんどん変わってきています。

FinTechという形で生まれてきた新たなサービス(詳しくは『こちら』)。

先週も関西電力とマネーフォワードとの提携が発表されました(『こちら』)。

昨日の日経にもありましたが、例えば米国ではAffirm(『こちら』)を使ってショッピングを楽しみ、返済は「のちほどで」という人が増えてきているのだとか・・(金利は年10~30%、返済は、3、6、12ヶ月で選べる)。

クレジットカードのリボ払いと同じじゃないか、という人もいるかもしれませんが、上記の日経の記事や(英語になりますが)当社のサイトなどをみると、その違いが分かります。

昨年まで日銀で決済機構局長を務めていた青木周平さん(日立製作所理事・執行役員)によると、英国、シンガポール、オーストラリアなどの銀行が、24時間、365日、5秒でMoney Transfer を無料(個人向け)で実施するシステムを作っているとのこと(昨日の半蔵門懇話会での話)。

これなどは台頭しつつあるFinTechを意識し、これに対抗しようとする銀行側の試みなのでしょう。

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    (American Banker デジタル版 『こちら』

そもそもFinTechとはいつ頃生まれたものなのでしょうか。

PayPalがスタートしたのが、1998年(当時はFinTechなどとは呼ばれていませんでしたが・・)。

いまから17年前です。

そう言えば、上記のAffirmを創業したのも、「PayPalマフィア」と言われる「PayPal共同創業者」の一人、Max Levchin。

私自身の経験を話すと、以前にニューポートビーチで高校の同窓会があった時。

その際、幹事の人にPayPalを使って会費を払いましたが、こんな時には確かに便利なツールです。

ところで、米国時間の今日(17日)、PayPalによる eBay からの分離独立が予定されています(『こちら』)。

時価総額5.3兆円にもなるのだとか・・・(『こちら』)。

メガバンクの「みずほ」が6.7兆円ですから、これに近い(みずほの約8割)値段となります。

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2015年7月16日 (木)

ここまで治せる! 脳の血管の病気

昨晩の勉啓塾では講師に脳外科医の寺田友昭教授(昭和大学藤が丘病院脳神経外科医長)をお招きしました。

寺田さんは日本脳神経血管内治療学会の元会長で現在は理事。

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脳神経外科は脳血管内治療が開発されたことにより、進化の速度が加速化。

血管内治療を支える3つの要素として:

①高性能のX線撮影装置(フラットパネル、バイプレーン透視)

②治療器具の進化[(1)脳血管まで導入可能なカテーテル、(2)血栓除去デバイス、(3)塞栓物質(離脱式コイル、ステントなど)]

③医師の技術(脳神経血管内専門医、指導医)

寺田さんはこれまでに約2600件の治療を経験。

時に20時間にも及ぶという脳外科の手術。

「一番大切なのは何ですか(脳外科医の資質として重要なのは、手先の器用さですか、長時間手術でも集中力を切らさない忍耐力ですか、それとも判断力ですか?)」

との質問に対して、寺田さんは迷うことなく、「判断力」と即答。

「自分が何が出来て、何が出来ないかを判断する力が一番大切です。自分の力を正しく判断できずに、何とかなるだろうとやってしまうのが、一番怖い」

なおご関心のある方は、日本脳神経血管内治療学会のウェブサイトをご覧になってみてください。

また昭和大学藤が丘病院脳神経外科のサイトも参考になるはず。

下記は脳神経外科速報に掲載された寺田さんのインタビュー記事です。

「2012.pdf」をダウンロード

公益社団法人日本脳卒中協会による「脳卒中予防十か条」

①手始めに高血圧から治しましょう 

②糖尿病、放っておいたら悔い残る 

③不整脈、見つかり次第すぐ受診 

④予防にはタバコを止める意志を持て 

⑤アルコール、控えめは薬、過ぎれば毒 

⑥高すぎるコレステロールも見逃すな 

⑦お食事の塩分・脂肪、控えめに 

⑧体力に合った運動続けよう 

⑨万病の引き金になる太りすぎ 

⑩脳卒中、起きたらすぐに病院へ

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2015年7月13日 (月)

GPIFによる買い余力

先週金曜日に発表された年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の数字。

今年3月末の資産別構成割合は下図のような状況でした。

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国内株の割合は22%。

この比率がこれまでどう変化してきたか、3ヶ月毎に数字を拾ってみると:

2014年3月末 14.05%

2014年6月末 16.79%

2014年9月末 17.79%

2014年12月末 19.80%

2015年3月末 22.00%

(注:国内株での運用比率目標を12%から25%に引き上げたのは2014年10月末)

これをグラフ化してみます。

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昨年10月末以降の「買いのピッチ」が先月末まで続いたとすると、先月末で24.2%にまで買い進んでいることになります(株価変動の影響やリバランスなどを考慮しないとの前提)。

それとはまったく別のアプローチで、3月末のポートフォリオをそのまま維持して先月末での時価で試算すると23.7%になるとの説も(日経新聞)。

いずれにせよ、5頭のクジラ(下記注)のうち、最大のGPIFについていえば、そろそろ満腹感が出てきている状況(これまで25%を目指して買い進んできたが、現状すでに 25%に近くなってきていて、買い余力がだんだんとなくなってきている)。

昔、クイズダービーというテレビ番組で大橋巨泉さんが「困った時のはらたいら」とか「困った時のはら頼み」と故はらたいらさんのことを言っていました。

これにならって、「困った時のクジラ頼み」と昨今の日本株市場のことを言う人もいましたが、これから先は「困った時(下がった時)のGPIFクジラさん」とは、だんだん言えなくなる・・・?

【注】5頭のクジラ:「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」「共済年金」「かんぽ生命保険」「ゆうちょ銀行」、「日銀」

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進展せず

ギリシャ問題、結局、進展せず。

為替は円高。

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原油(WTI)は下落。

CME日経平均先物は再度20,000円割れ。

いちばん大変なのは、銀行の閉鎖が続き、満足に預金もおろせず、薬を買うことさえ難しくなってきているというギリシャの国民なのですが・・・。

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2015年7月12日 (日)

「南東ヨーロッパに北朝鮮のような国が出現するのを見たくない」

「南東ヨーロッパに北朝鮮のような国が出現するのを見たくない」(“No one wants to see a North Korea in southeastern Europe”)とは、ある欧州委員会高官の発言。

本日(12日)予定されていた28カ国から成る欧州連合(EU)首脳会議。

ギリシャのEU(ユーロ)離脱(Grexit)にはこの会議の開催が必要でしたが、欧州理事会議長のドナルド・トゥスクはこの会議開催を中止。

一方、ユーロ圏首脳会議は予定通り開催。

午後4時から始まる同会議は「ギリシャに関する議論が結論に達するまで続ける」とのことでしたが・・・。

詳しくは『こちら』

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Money at Stake

金曜日(米国時間)、CME日経平均先物は2万円台を回復してクローズ(20,085円)。

土曜日、ギリシャ議会はチプラス政権の改革案を承認(『こちら』)。

日曜日(12日)のEU首脳会議でどう決まるか分かりませんが、欧米の市場を見る限り、これから先、EU側も歩み寄り、ギリシャのユーロ離脱はいったんは回避されることが予想されます(あくまでも予想ですが・・)。

更にいま(日本時間12日午前8時半、入ってきた情報(『こちら』)だと、ギリシャにもっと歩み寄らせろとの声がEU側に強いとか・・。

仮にギリシャが535億ユーロのBailout Money (EU側からの支援額)を引き出すことに成功すると、これで(2010年の1080億ユーロ、2012年の1720億ユーロに続き)、3度目のBailout(下図参照)。

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   (上図はWSJより。クリックすると大きくなります)

その結果、どうなるかというと、Money at Stake (今後交渉の対象となりうるEU・IMF側からの貸付金)の額は、535億ユーロ分、増えることになります(108-35+172-11+53.5=287.5(単位:十億ユーロ))。

【1】ギリシャとしては、まずは535億ユーロというニューマネーを得たうえで、これから先(たとえば今年の年末近く)、債務の元本削減(hair-cut)や金利引き下げ・返済期限延長交渉に臨むという計算なのでしょうか(つまり EU側にとっての Money at Stake を増やしてしまう)?

【2】それとも12日のEU首脳会議による決定事項は、こうした債務の減免にまで踏み込んだものになるのかどうか。

おおかたの予想は、【1】に対してはイエス。【2】は、ノー。

仮におおかたの予想通りとなった場合、ギリシャ問題はいったんは収束(そうなれば週明けの株式市場にとって上昇要因)。だとしても、それは問題の根本的解決にはほど遠く、再びどこかの時点で、より大きな問題となって噴火してしまうことが予想されます。

今回の騒動、仮に3度目のBailoutが実行されたとすると、これから先の債務減免交渉を前提に、とりあえずEU側にとっての Money at Stake を増やすことに成功したチプラスの勝利ということになりそうですが、さて・・・。

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2015年7月11日 (土)

535億ユーロのBailout

ポイントは535億ユーロのBailout(EU側からの支援)に絞られてきました。

1時間ほど前に配信されたWSJ(『こちら』)。

ギリシャがEU側に提出した13頁に及ぶプロポーザルが掲載されています(下記)。

「GreekProposals070915.pdf」をダウンロード

内容は、1週間ほど前にチプラス政権が国民に対して拒否するように recommend したはずの緊縮案とほとんど同じ。

要は、ギリシャとしてはそこまで大胆に譲歩するので、「 535億ユーロのBailoutを要請する」というもの。

フランスなどは評価していますが、はたしてドイツはこれを受け入れるのかどうか(『こちら』)。

「何とかなる」との楽観論が広がって、欧州の株式市場、そして今のところ米国の市場も上昇しています。

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2015年7月10日 (金)

The 21 (8月号)

本日発売の『THE 21』(PHP研究所)8月号。

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16~19頁にインタビュー記事が掲載されていますので、宜しかったらご覧になってみてください。

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2015年7月 9日 (木)

むかし話

ある村にギリシャさんとドイツさんが住んでいました。

不幸にもギリシャさんは癌になってしまいました。

以下2人の会話。

* * * * *

【ドイツさん】 あなたが癌になったのは生活習慣病が原因。

毎日ウーゾ(注:ギリシャ産のお酒)ばかり飲んで運動もしなかった。

それに比べ、私なんか、毎朝起きて運動していたから、こんなに元気。

この村の住民は全員健康が原則。

だからしっかりこの薬(抗癌剤)を飲みなさい。

【ギリシャさん】この薬(注:「緊縮財政」との名がついている)、5年間も飲み続けたけれど、いっこうに体は良くならない。

むしろ薬の副作用の方が強すぎて、どんどん体力が落ちていくの。

いまではこうして点滴や輸血に頼って生きている状況。

これ以上、飲み続けても…。

【ドイツさん】何を言っているの。

この薬は私のおカネで買ってあげたもの。

点滴や輸血のおカネも私が出しているの。

あなたが反抗するので、とりあえず点滴と輸血は止めます!

【ギリシャさん】点滴と輸血を再開してくれなければ、死んじゃいます。

とりあえず点滴と輸血をお願いします。

そのうえで、どの程度の薬の量だったら、さほど苦しまずに飲めるか、具体案を提出するようにします。

【注】(以下の独り言はドイツさんには聞こえませんでした)

「いっそのこと、この村を抜け出して、どこか別の治療法を探そうか。

はるか東方のジバングという国では緊縮財政とは真逆の放射線療法が効いて、身体が良くなったという話も聞いたな…」

【ドイツさんの独り言】この村は全員健康が原則だけど、病人がいると国から補助金が出る。

補助金(安いユーロの為替)が出るから、ギリシャさんには村にいて欲しいけれど、ギリシャさんはこれだけ身体が悪くなっているのにまだウーゾを飲んでいる。

いっそのこと村から追い出してしまおうか…。

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2015年7月 8日 (水)

落ちてくるナイフを素手でつかむな?

『落ちてくるナイフを素手でつかむな』と書いたのは、ピーター・リンチ(『ピーター・リンチの株で勝つ』)。

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今日の日経平均は638円安(▲3.14%)でした。

これは2013年6月13日(843円94銭)以来、2年1カ月ぶりの大きな下げだったとのこと。

なお2013年6月13日のときは、13,289.32→12,445.38で843円安(▲6.35%)。

率にすれば前回の下げの方がはるかに大きいものでした。

はたしてこの局面は「落ちてくるナイフ」のような局面なのか、あるいは「押し目買い」のチャンスなのか、見方が分かれるところです。

中国株(上海総合)については下落を止めようと政府が必死になっていますが、相場の力の方が強い状況。

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    (上海総合;過去2年)

これまで書いてきたように、1年で2.5倍にもなったものですから、下げて損をした個人投資家がいたとしても、まだ相当儲かっている個人も多い状況です。

ギリシャは今週末が山場。

長い期間にわたって銀行を閉じていることは出来ず、いよいよとなれば、ギリシャは1ユーロ=1 New Drachma として紙幣を発行せざるをなくなります。

当初これは仮に 1ユーロ=1 New Drachma だとしても、すぐに交換レートは動いてしまい、マーケットの力によって、1ユーロが、たとえば、1.6 New Drachma などで取引されるようになるでしょう。

ギリシャが始めれば、いずれはスペインなどに連鎖する可能性が高く(とくにスペインは年末総選挙)、ドイツとしては、こうした先まで読んだうえで、ギリシャに歩み寄るかどうかを決めることになると思います。

ここへきて、原油も激しく下落しています(下図)。

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    (WTI;過去3ヶ月)

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2015年7月 7日 (火)

海外発の不透明要因が多い中で、どんな運用をすれば良いか?

昨日の日経ヴェリタストークの映像が日経のサイト(『こちら』)にアップされています。

番組の最後の方、曽根キャスターからの最後の質問は、

『ギリシャ、中国、そして米国の利上げなど、海外発の不透明要因が多い中で、個人投資家はどんな点に気を付けて運用をすれば良いか? 』

これに対して下記のように話しました(1分少々しか時間がなくて限られた話しかできなかったのですが)。

『不透明な要因で株価が動くのはむしろ正常。

個人投資家として、気をつけるべきは、不透明な要因が実はあるにもかかわらず、市場がそれに気が付かず、株価が好調である場合。

こうした場合、ある日突然、市場がこれに気づき、一気にドスンと相場が落ちる。

個人投資家としては、水面下でこうしたリスクが増大していないか、常に気を配るべき。

たとえばGPIFの昨年度の運用実績。

これはおそらくは今週10日(金曜日)に発表になるだろう。(昨年はたしか7月4日(金)に発表されたので、今年は3日(金)に発表になるかもしれないと思っていたが発表がなかった)。

GPIFは、昨年10月末の運用方針変更で、国内株での運用比率目標を12%から25%(プラス・マイナス9%)へとターゲットを変えた。

これに基づき、GPIFは国内株を昨年来、一所懸命、買い増ししてきたのであるが、はたしてどの程度買い進んだのか。

昨年12月末には19.8%まで買い進んだ。

この数字の今年3月末のものが今週金曜日にも発表されれば、今後の買い余力がわかる。

そこから読み取れるものは何か』

現在のところ、マーケットはギリシャ、中国、米国利上げで騒いでいますが、可能であれば、市場よりも1歩先を行くスタンスを持ちたいものです。

番組全体で13分30秒の動画です。

よろしければ 『こちら』 でご覧になってみてください。

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2015年7月 6日 (月)

ギリシャ情勢ほか

日経ヴェリタストークに出演しました。

(1)ギリシャ情勢:バルファキス辞任

ギリシャのバルファキス財務相が本日辞任。

バルファキスは経済学博士(エセックス大学)。

ケンブリッジでフェローの経験もあります。

彼は、ときに相手方に教えるような態度で交渉に臨み、トロイカ(EU、IMF、ECB)のメンバーには、必ずしも快く思われていませんでした。

チプラス首相としては財務相辞任というカードを切ってまでして、トロイカに歩み寄り、なんとか交渉をまとめたいとの立場なのだと見られています。

(2)トロイカの核となっているのは実はドイツ

ユーロ圏19カ国のGDPの29%をドイツが稼ぎ出し、まさに独り勝ち。

弱い南欧諸国がいるからこそ、ドイツは現在の比較的安いユーロの為替レートを最大限に利用できるとの見方もあります。

万が一ユーロが瓦解し、元のマルクに戻ってしまえば、ドイツはマルク高に悩まされるようになります。

つまり、ドイツとしては現在のユーロの枠組みを極力維持したいはずであり、そのためギリシャとの交渉の着地点は見つかり得るのではないか、と私は見ています。

(3)当面のポイント

今後のポイントはギリシャの銀行を早く開くこと。

そのための前提となるのは、ELA(Emergency Liquidity Assistance)によってトロイカがギリシャの銀行システムに十分な資金を供給することです。

2年前、隣国キプロスの場合、銀行の閉鎖は約2週間続きました(その後も資本規制は続き、最終決着までに約4か月かかった)。

ギリシャの場合、すでに銀行を閉じて、1週間。

今週中にも開かないことには、経済をほんとうに殺してしまうことにもなりかねません。

(4)他の南欧諸国

本日のスペインの5年ものCDSは109bp、イタリア134bp。

つまり連鎖の動きにはなっていないようです。

しかし失業率は:

EU19ヶ国 11.6% 

スペイン  24.5% 

ギリシャ  26.5%

イタリア 12.7%

とくに25歳未満の失業率は

EU19ヶ国 23.7% 

スペイン  53.2% 

ギリシャ 52.4%

イタリア 42.7%

(失業率のデータは『こちら』『こちら』

一部ではスペイン経済は優等生と言われることもありますが、実態は優等生とはほど遠い状況。

(5)最近の上海総合の下落

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   (上海総合;過去1年間の動き)

上海総合指数は1年前は2050でした。

それが6月12日に 5178を付けたのです。

つまり1年で2.5倍。

中国の経済が1年でそんなに良くなったのかというと、そんなことはありません。

実態とかけ離れてしまったので、ある程度戻すのは当然といえます。

最近の急激な下落はその現れと見ることも出来ます。

今日は3775で終えました(6月12日のピークに比し、27%安)。

それでもこれは1年前に比し84%高。

今後、半年前の水準(3200)位までは下がることもあり得ると見ています。

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バルファキス財務相:「ノーとの投票結果の場合(でも)、銀行は火曜日にはオープンする」

あと30分ほどでギリシャでの国民投票は終わりますが、2日のインタビューでのバルファキス財務相コメント:

「ノーとの投票結果(であっても)、トロイカと24時間以内に交渉を終え、銀行は火曜日にオープンする。

キプロスのケースとは違い、これは銀行の資本不足の問題ではない。これは政治の危機(political crises)なのだ。 

イエスとの投票結果となれば、月曜日の夜の時点で、私は財務相ではない(辞任する)。国会議員ではあり続けるし、誰であろうと新しく財務大臣になった人をサポートはする」

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インタビューの模様は『こちら』で見ることが出来ます。

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2015年7月 5日 (日)

ギリシャは公務員天国で年金天国なのか

(1)ギリシャの公務員は多いのか

OECDのレポート(『こちら』)によると、公的セクターに従事する労働者(Employees in general government and public corporations)の全労働人口に占める比率(2011年)は、ギリシャの場合、7.9%。

これはOECD平均(15.5%)や、ドイツの数字(10.6%)よりも低い。

Oecd

(赤がOECD平均。画像はクリックすると大きくなります)

もちろん上記数字だけでは現況を把握しきれない面もあり、これらに関してはニューヨークタイムス(『こちら』)、日経ビジネス(『こちら』)などの記事、あるいは『こちら』のブログなどが参考になります。

(2)ギリシャは年金天国なのか

INE-GSEEによれば、ギリシャ人の平均年金受給額は月833ユーロ(11万3000円)(『こちら』)。

なお日本の場合(『こちら』)は厚生労働省のモデルケース(「厚生年金保険と国民年金の夫婦」の例)で、夫婦2人で計22万6000円。一人当たり11万3000円でギリシャと同じ。

さらにギリシャ政府によると、年金受給者の45%が貧困ラインである月665ユーロ(9万円)以下である(『こちら』)とか・・。

年金の問題をさらに難しくしているのが高齢化(『こちら』)。

ギリシャの20.5%が65歳以上(EU28ヶ国の平均は18.5%)[もっとも日本の場合は29.3%が65歳以上(『こちら』)]。

ギリシャ人は早くから年金をもらい過ぎるとの指摘もありますが、平均すれば男63歳、女59歳でリタイアして年金生活者になるとの政府データ(『こちら』)。

これはドイツと大差ないとの指摘も(『こちら』)。

さらにもともと55歳以上の失業率が20%を超えるので、年金受給に走らざるをえないとの事情もあるようです(『こちら』)。

(3)アリとキリギリスなのか

いずれにせよ、ギリシャは「年金・公務員天国である」とか、「ドイツ人はアリのように働き、ギリシャ人はキリギリスのように働かずにいるから現在のようになった」というのは、必ずしも正しくないように思います。

単一通貨ユーロのシステムで圧倒的に強いのがドイツ。

ユーロ圏19ヶ国のGDP合計の29%をドイツ1ヶ国で稼ぎ出し、そのパワーはGDPでみるとギリシャやポルトガルの16倍以上(『こちら』)。

これら弱小国がいるから、その分、ユーロは(ドイツの国力に比し)安めに評価され、ドイツの輸出産業を支えてきました。

ユーロが瓦解し、マルクに戻れば、ドイツはこうしたメリットを失い、マルク高に苦しむようになるでしょう。

であれば、もう少し大人の対応が必要であるように思いますが・・。

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2015年7月 2日 (木)

バルセロナ

先月のことですが、バルセロナに出張していました。

2009年に完成したというAeropuerto de Barcelona-El Prat(バルセロナのプラット国際空港)。

Img_1737_3

クリックして画像を拡大すると見えてくる(下はその拡大図)のですが、表記のPortes はカタルーニャ語。

Puertas はスペイン語。

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つまり、カタルーニャ語、英語、スペイン語の順で表示されています。

バルセロナと言えばカタルーニャ州の州都です。

そしてこのカタルーニャ州は、スペインから独立しようとして、昨年住民投票を実施(『こちら』)。

結果は圧倒的多数の81%が独立に賛成。

しかし今年2月、スペイン憲法裁判所は、主権に関する住民投票を実施する権利は中央政府にのみあることを理由に、全員一致でこの住民投票は違憲と判断(『こちら』)。

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実は、スペインはカタルーニャのみならずバスクの独立問題(『こちら』)も抱えています。

経済も厳しい状況で、25歳未満の人の失業率はなんと53.2%になっています(2006年は17.9%でした; 『こちら』)。

(話はそれますが、マスコミをにぎわしているギリシャもスペインと同じように失業率が高く、25歳未満の人の失業率は52.4%)。

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