このところの株価急落で、保有株式が含み損を抱えるようになったという個人投資家が出てきています。
今の段階で売ってしまうか(A案)、あるいは持ち続けて相場が反転するのを気長に待つか(B案)・・。
誰もが悩むところです。
ただ潮の流れは変わってきているかもしれず、この際、先入観を捨てて、虚心坦懐に今後の方針を自分なりに考えてみることをお勧めします。
(注)このブログ記事はA案、B案のいずれかを勧めるものではありません。いくつかの材料を提示しますので、『それをもとに考えてみてください』という趣旨です。避けるべきは、考えないで先入観に支配されてしまうこと。考えたうえでの決断であれば、たとえ失敗しても納得感はあると思います。
まずはGPIF、日銀、外国人投資家といったマーケット参加者たちにどういった変化があったのかを見ていきましょう。
【1】GPIF
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による国内株での運用比率推移は下図の通り。
6月末時点ですでに23.39%に達しています(『こちら』)。
25%を目標として、これまで買い進んできたのですが、いよいよもって上限に近づいてきました。

GPIFはその巨大な購入パワーから、マーケットのクジラと称されてきました。
しかしさすがのクジラもそろそろ満腹になってきたということでしょう。
【2】日銀
一方の日銀。
GPIFほどの巨大クジラではありませんが、やはりクジラ(GPIFの3割ほどの大きさ)です。
日銀は年初から今月4日までに2兆3003億円のETFを購入しました(『こちら』)。
日経平均が390円超下落した4日(金曜日)も、有難いことに、317億円買ってくれました。
しかし4日のようなマーケットのときには、残念ながら「焼け石に水」といった状況でした(もちろん日銀が買ってくれなければ、もっと下がったことになります)。
日銀による年間のETF購入額は3兆円ですので、9月4日を終えた時点で、すでに年間購入額の77%を使い切ってしまったことになります。
残りの購入余力は6997億円しかありません。
年間の購入予定額である3兆円を均等に購入していくとの前提で試算すれば、本来であれば、現時点で(6997億円ではなくて)、約9600億円の購入余力があるはずです。
しかしすでにかなり多めに購入してしまったため、これから先は、本来の7割程度の購入パワーしか期待できません。
【3】外国人投資家
年初から8月第1週までに現物株と先物合計で約3.4兆円を買い越していました。
これが相場を押し上げたのは下図の日経平均のチャートを見ても、読み取れるかと思います。
しかし8月第2~4週で計3兆6850億円の売り越し。
特に第4週は1兆8830億円と、2008年8月からのデータで最大の売り越しとなっています(『こちら』)。

【4】郵政上場と国内機関投資家動向
国内の機関投資家はどうでしょう。
11月4日に日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険が上場される予定です。
この際、約1兆3000億~1兆7000億円の株式放出が見込まれていますので、機関投資家としてはこのための購入資金をそれまでに捻出(→保有株式の一部売却)することが必要になってきます。
【5】中国経済の減速
中国の経済データについては以前から信憑性に欠けると言われ続けていました。
なにせGDPの数値を約半月を過ぎた時点で発表するという離れ業をやっている国ですから(日本は1ヶ月半後に速報値が出る。アメリカは1ヶ月後)。
中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁が20ヶ国(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、バブルが「はじけた」との表現を繰り返したとしてニュースになっています(『こちら』)。
経済が減速していく中で上海総合は1年間で2.5倍になりました(今年の6月12日)。
まさにバブルの典型例で、遅かれ早かれ「はじける」運命にあったのだと思います。
問題は、上図のチャート(過去2年間の上海総合推移)を見て分かるように、まだ「はじけきっていない」と思われること。
さらに中国経済の実態が7%成長どころか3~4%(あるいはそれ以下)とみなされるようになっていることです。
フォルクスワーゲンなど中国に強かったメーカーは失速(1~6月でVWの中国での販売台数は6.7%減;『こちら』)。
日本勢も影響を受けています(『こちら』)。
【6】消費税増税を控える日本経済
こういった問題を抱える中で、日本経済は1年半後の消費税増税(8%→10%)という壁を乗り越えていかなくてはなりません(今回は前回のように見送りということはありません)。
【7】欧州の追加緩和期待と日銀の追加緩和の可能性
ドラギの発言が注目されましたが、ECBが量的緩和拡充に動く可能性が高くなってきています(『こちら』)。
一方、日銀ですが、国債保有残高は300兆円を突破。
市場に流通する国債のうち日銀が保有する比率は3割。
為替は、実質実効為替レートで見ると、40年以上も前の1ドル=308円だった時代と同じような「超円安」になっているといった状況。

日銀がこれ以上できることは限られているように思います。
【8】個別企業の対応力について
以上、日本の株式市場にふいていたフォローの風は、ここへきてアゲンストなものへと変わってきています。
こうした状況下で益々重要になってくるのが企業の対応力。
例えば、これだけガソリン価格が安くなってくると、米国の消費者は燃費の良いクルマよりもやや大型のSUVやピックアップなどを好むようになります。
こういった変化に素早く対応する力が求められます。
【9】PER
最後に現時点での日経平均とダウ平均のPERを見てみましょう。
どちらも今後の予想収益(E)と現在の株価(P)とを比べたものです(P/E)。
日経平均:14.2 (『こちら』)
ダウ平均:14.9 (『こちら』)
PERは過去のデータに基づく平均値がおおよそ14とされています。
日経平均もダウ平均も、現在の株価で計算されるPERは、概ね平均値のレベルにあると見ることが出来ます。