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2015年10月31日 (土)

I hear you've been quoted

初めて会う人に、気の利いた一言を言うことが出来れば、会話はスムーズに運ぶし、好印象を残すこともできます。

JPモルガン時代の話。

『ニューヨークからトレーディング部門のヘッドが(東京に)来ているので会って欲しい』と上司に言われ、トレーディングフロアに行きました。

ハローと握手をすると、開口一番、彼の口から出た言葉が、

『I hear you've been quoted』

一瞬、何のことかと思いましたが、その日の朝の新聞に私のことが少しだけ出ていたので、そのことかと気付きました。

このように、米国の会社で上層部まで上がっていく人は、多くの場合、

(1)情報が早い(注:彼は日本語を話すわけでもなく、新聞記事の情報はどこかで仕入れたに違いない)

(2)人と会う時にはあまり考えずに漫然と会うのではなくて、ちょっとした準備をしている

といった傾向にあるように思います。

ニューヨークのトレーディング部門のヘッドにしてみれば、東京の投資銀行部門にいる日本人など、さほど重要ではないはず。

にもかかわらず、きちんとした準備で臨み、一方、私の方はと言うと、

彼のことについて「ニューヨークの偉い人」くらいの事前準備しかしていなかったものですから、まさに一本取られた格好でした。

ところで、 You've been quoted とは文字通り、「引用されていたね」といった意味の英語。

日本人なら「新聞に出ていたね」といった会話になるのでしょうが、「出ていた」では曖昧。

やはり英語(とくにビジネスの場合)はこの辺、きちんとしていて、「引用されていたね」といった表現になるようです。

* * *

なおこの話には後日談があります。

このとき新聞に記事を書いたのは日経の坂本記者。

現在は日経ヴェリタスの編集長になっていて、日経CNBCテレビの「日経ヴェリタストーク」でたびたびご一緒しています。

今年の5月、番組収録前の打合わせで16年ぶりにお会いした時、坂本編集長は16年前のこの記事を持参していました。

「人と会う時にちょっとした準備をする」

モルガンのトレーディング部門ヘッドだけでなく、坂本編集長にも、私は一本取られた格好のままになっています。

下の写真がこのときの記事(1999年4月15日付、第一面)。

1999415_2

記事はクリックすると大きくなりますが、最後の方が切れています。

全文は『こちら』でご覧になれます。

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2015年10月27日 (火)

これからの自動車産業

昨日ご案内した日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』ですが、ケーブルだけでなく、PCやスマホからもオンデマンドで(随時)ご覧いただけます。

『こちら』をクリックしてみてください。

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2015年10月26日 (月)

VW問題とこれからの環境規制への対応

クルマのハンドルが固定されていることや、クルマが一定の速度で走行しているなどの「ある種、特殊な状況」―

こうした特殊な状況をクルマに組み込まれた半導体が察知すると、クルマは『これは排気ガス試験である』と自動で検知します。

そうした場合に、排気ガス後処理装置がフル稼働して、有害物質の排出量を大幅に低減します・・・

VWに搭載されていた不正ソフトウェアはこのような仕組みのものであったと言われています。

* * *

ところで、排気ガス規制は大きく分けて、CO2(二酸化炭素)、PM(粒子状物質)、NOx (窒素酸化物)の3分野について行われます。

このうちCO2については、欧州では新車のCO2(二酸化炭素)排出量を2021年までに平均で1キロメートル当たり95グラム以下に減らすことが決まっています(『こちら』)。

これは日本や米国などよりも厳しい規制。

またPM(粒子状物質)とNOx (窒素酸化物)については、2014年からEuro6の規制下にありますが、

これについても(これまでほぼ5年毎に規制を厳しくしてきたこともあり)、2020年ころには更に厳しいものにする(Euro7)ことが議論されていました(詳しくは『こちら』)。

Euronorms_petrol

Euronorms_diesel

ということで、2020年~2021年を見据えれば、欧州では、プラグイン(プラグイン・ハイブリットもしくはプラグインの電気自動車)の比重を高めざるをえないと考えられていました。

こうした矢先に起きた今回のVW事件。

これを契機にディーゼルからプラグイン系への移行が加速することが予想されます。

* * *

1985年、カール・ベンツはガソリンエンジンで走る三輪自動車「パテント・モートルヴァーゲン」を作り上げ、試運転に成功、1886年には特許が認められました(『こちら』)。

人類が自動車を手にしてから、ほぼ130年。

そして、これから数十年の間に、自動車の歴史は大きく変わるようになることが予想されます。

本日の日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』では、「VW問題とこれからの環境規制への対応」についてお話ししました。

再放送は10月28日(水) 21:15~です。

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2015年10月22日 (木)

「地方創生」時代の株式投資とは?

『“近未来”を見据えた投資術』 というテーマで、

東洋経済新報社 『会社四季報ONLINE』 に記事を連載しています。

第9回の今日は「地方創生時代の株式投資」について。    

戦後70年、日本は地方から東京へと人材を吸い上げ、一極集中することで、経済活動を効率化し、経済成長をはたしてきました。

  Rural3_2

この間、コマツ(石川県小松市→東京都港区)、大塚ホールディングス(徳島県鳴門市→東京都港区)のように、多くの大企業が本社を地方から東京へと移転させてきました。

しかしながらその代償として、地方の人口流出・減少は著しくなり、経済も疲弊してしまいました。

総務省の調べによると、東京都は現在でも年間7万人もの転入超過(転入者-転出者)ですが、その分、地方は転出超過となっています。

また内閣府の調査では、東京都の「1人当たり雇用者報酬」(都道府県別の雇用者報酬 総額を都道府県別の総人口で除した数字)が264万円なのに対して、東京都以外では186万円と格差が著しい状況。

  Rural1    

平成26年12月27日に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生総合戦略」によれば、

「このまま地方が弱体化するならば、地方からの人材流 入が続いてきた大都市もいずれ衰退し、競争力が弱まることは必至」

な状況にあります。

個別企業が最適な行動(東京への移転)を取ってきた結果、全体としては最適解ではなくなってきているのが現在の日本の状況かもしれません。

それでは東京に本社を置くことはこれから先も企業にとっての最適解なのでしょうか。

   Rural2

本日の『会社四季報ONLINE―“近未来”を見据えた投資術』(『こちら』)では、この辺について探ってみました。

イタリアモデルやアメリカの事例についても触れています。

よろしかったらご覧になってみてください(『こちら』)。

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* * * *

ところで、地方創生というと、最近の外国人観光客増加がフォローの風となっています。

『会社四季報ONLINE―“近未来”を見据えた投資術』(『こちら』)でも触れましたが、

2012年に日本を訪れた外国人は840万人でした。

それが、13年には1040万人、14年には1340万人と、訪日外国人数は、うなぎ登りの状況にあります。

15年も9月までの推計値で1440万人。

このままの状況で推移すれば15年は1900万人に達するだろうと言われています。

これは2年前の8割増になります。

Vr_3

こうした訪日外国人の増加は、地方経済を活性化させています。

地方のビジネスホテルに外国人観光客を乗せた大型観光バスが横付けされるようになってきましたし、「爆買い」で潤う商店も増えてきました。

「爆買い船」と称する大型クルーズ客船が日本海の港や高知などにも出没するようになっています。  

中国経済の減速が報道されていますが、訪日外国人の増加傾向がネガティブな影響を受けることは今のところないようです。

背景にあるのは中国・ASEANで の中間所得層の激増であり、この傾向は今後も続くだろうと思われるからです。

もっとも訪日外国人が増加したといっても、日本は世界で22位、アジアでも7位です。

フランスを訪れる 外国人は8370万人、中国を訪れる外国人は5560万人にも上っています。

これから先、仮に日本を訪れる外国人の人数が現在の2倍になったとしても、香港やマレーシアよりもまだ下。

逆に言うと、まだまだ伸びる余地があるということなのかもしれません。

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2015年10月14日 (水)

地方創生への道

昨日は静岡経済同友会(東部協議会)で講演してきました。

新幹線で三島に行き、タクシーで会場の沼津キャッスルホテルへ。

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    (新幹線三島駅のホームから富士山を望む)

行きがてらタクシーの運転手さんと話しました。

「景気はどうですか」

「同じ静岡でも西の方はまだマシなようですが、東の方はさっぱりだね。タクシーをやっていて毎年悪くなっていく」

「民主党政権の時と比べてどうですか」

「あの時の方がまだよかったよ。

毎年毎年、少しずつ悪くなっていく。

駅前で30分とか1時間とか待って、やっとお客さんを乗せても、だいたいが1,200円程度ですよ。

東京とは違って、このあたりじゃ、流しで客がつかまるのは、せいぜい一日1人」

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      (三島の街角で撮った写真)

約15分間、運転手さんと話し、タクシーは会場へ到着。

講演では48枚のスライドを使って話しました。

地方創生には「イタリアモデルを取り入れろ」という識者がたくさんいます。

しかしイタリアモデルをそのまま日本に取り入れるというのは、(日本にも福井県鯖江のメガネ、今治のタオルなどの成功例はありますが)、「言うは易く、行うは難し」です。

そもそもイタリアはたくさんの小さな町が自前の産業をもって、昔から経済的に自立しようとしてきました。

そして海外に直接、自らの製品の販路を求めてきました。

100年以上の歴史があるのです。

国家としてのイタリアの統一は1861年です。

この地域は中世を通じて統一されることはなく、北イタリアには多くの都市国家が存在していたのです。

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一方、日本の地方都市の多くは内需型の産業。

中央から予算(交付税)の配分を受けてきました。

地方で建設業を営む会社に「世界に直接打って出ろ」と言っても、無理があります。

問題は単純ではないのですが、三島の街を歩いていると、中国人観光客を乗せた大型観光バスがホテルの前に横付けされていたりして・・・。

5年前には予想できなかったような情景が見られるようになってきている現実もあります。

こういった変化の波を活かし、どう「創生」にまで高めていくのか・・・。

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2015年10月11日 (日)

グローバル企業への道は中南米にあり

ほぼ月1回のペースで『日経ヴェリタス』に連載しているコラム「Money Never Sleeps」。

第7回(今週号の『日経ヴェリタス』)は、中南米について書きました。

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            (ブエノスアイレス)

世界の国を「1人当たりGDP」の高い順に並べてみます(カッコ内はランキング順位)。

中南米は、ブラジル(61)、アルゼンチン(59)、チリ(52)といった具合。

一方、アジアは、というと、

中国(80)、インドネシア(118)、マレーシア(65)・・・。

つまり中南米の多くの国々は、中国、インドネシアなどよりも1人当たりGDPが高い・・・。

別言すれば、中南米の多くは中所得国なのです。

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            (ブエノスアイレス)

以下、コラム「Money Never Sleeps」よりの抜粋。

『私自身、3泊7日や4泊8日でブラジルやアルゼンチンへの出張を何度か繰り返したことがある。 

そのうちのひとつ、90年代後半だったが、ブラジル政府が携帯電話用に電波の周波帯を有償で民間へ開放することを決めた。 

この為のアドバイザーを公募すると、欧米の主要投資銀行が「我こそがブラジル政府のアドバイザーたるに相応しい」とばかり、こぞって手をあげた。 

日本からは日本興業銀行(現みずほ銀行)のみがコンペに参加。 

当時、担当班長だった私も首都ブラジリアまで出向いたのだが、結果は惜敗。 

ロスチャイルドが勝利した。 

このときロスチャイルドに勤める友人(米国人)にこう言われた。 

「コンペといってもブラジル政府との関係が重視される。そもそもブラジルがポルトガルから独立した時、ファイナンスをつけたのはロスチャイルドです」  

なるほど日本との「距離」は、たんに物理的なものだけではないようだ』

                     1011ss

コラムでは、米州開発銀行(ID B)のアジア担当顧問谷口和繁さんの話を紹介しながら、日本と中南米との「距離」の縮め方について触れています。

宜しかったらヴェリタス紙面でご覧になってみてください。

* * * * * * * * * * *

次回、第8回の「Money Never Sleeps」は11月22日発売の『日経ヴェリタス』に掲載の予定です。

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2015年10月 5日 (月)

数字の裏側にあるもの

「失業率の数字にどのくらいの意味があるのか」と噛みついたのは、ドナルド・トランプでした。

『もし本当に失業率が5%台であるのなら、建設現場では人が雇えなくて、ヒイヒイ言っているはずだ。

私はホテルやビルの建設をしてきたからわかる。

今の状況は5%台なんてことはなくて、もっとずっと悪いはずだ』

* * *

下の表とグラフは米国労働省のサイトから取ったものです。

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    (過去10年間の失業率推移)

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トランプは、当初『感覚的にこの数字は変だ、実態を現していない』と批判しただけでした。

しかし最近は、

『失業率が24%であるという数字や、42%という数字も見たことがある』

と、突っ込んだ発言(例えば『こちら』)をするようになっています。

これを受け、フォーブスには『いや、本当は60%だ』という寄稿記事(『こちら』)も載るなど、アメリカでは失業率の数字をめぐる議論が活発になっています。

* * *

ポイントは失業率の定義です。

下記は日本の総務省統計局のサイトから取ったもの(クリックすると大きくなります)。

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総務省によれば、『この定義は,他の主要先進国と同様、客観的に就業・失業の実態を把握するため、ILO(国際労働機関)の定めた国際基準に準拠したもの』。

ここで、完全失業者とは次の3条件を満たすものです。

(1)「仕事についていない」

(2)「仕事があればすぐつくことができる」

(3)「仕事を探す活動をしていた」

トランプやフォーブスへの寄稿者が噛みついているのは、おそらくは『今の状況下、この定義にどれだけの意味があるのか』ということではないかと思います。

月末1週間に少しでも仕事をしたら、定義上、『就業者』になってしまいますが、そのステータスでは満足できていない人も多い・・。

あるいはもう何か月も職を探していて、それでも職に就けないからと、先月から職探しを止めているという人もいるかもしれません。

* * *

高城剛さんの『世界はすでに破綻しているのか?』を読んでいたら、こんな一節がありました。

『スペインでは「失業した日までの6年間に、失業保険の保険料納付実績が360日以上あること」が、失業保険受給の要件となっており、360日働けば、120日間は失業保険をもらえる。

つまり、1日も休まず1年働けば4ヵ月間は遊んで暮らせるのだ。

道理で失業率が高いわけである』(20頁)

* * *

単純に『失業率』といっても、その背後にあるのは人々の生活。

数字の裏にある実態を読み取ろうとしなければ、数字は意味をなしません。

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2015年10月 4日 (日)

戦略検討フォーラム

戦略検討フォーラムというサイトがあります(『こちら』)。

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“ 世界を変える戦略を見出し、伝える ”

というのが、このサイトのミッション(『こちら』)。

サイトのアドバイザーには、学界、官界、政界、経済界、法曹界、マスコミなどから35名の方が就かれています(『こちら』)。

ところで、このサイトに限らず、各界の専門家が意見を投稿するサイトというのは、現状、数多く見受けられます。

私がよく目にするのは「foreignpolicy.com」という海外のサイト(『こちら』)。

しかし日本のサイトでは、多くの場合、匿名、仮名、ハンドルネームでの投稿を受け付けています。

戦略検討フォーラムは、きちんと名前を明らかにして投稿するというスタンス。

現状37名の方が論文や記事を寄稿したり、インタビューに応じたりすることで、フォーラムに参加しています。

37名の執筆者の一覧表(ア、イ、ウ、エ、オ順)については『こちら』をご覧ください。

私が2月に受けたインタビューもフォーラムに掲載されました(『こちら』です)。

* * * *

戦略検討フォーラムには、堅苦しい論文に限らず、いろいろな方のインタビューや、コラム記事なども掲載されていますので、覘いてみることをお勧めします。

自民党の議員の方と民主党の元議員の方がそれぞれ意見を述べられたりしていて、違いが興味深いです。

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2015年10月 1日 (木)

今日から10月

今日から10月。

取引先の役員会が終わり、霞ヶ関を歩いていたら、スポーツ庁の看板が・・。

そう言えば、今日はスポーツ庁が発足した日でした。

   Photo

さらに少し足を伸ばします。

東京の街は相変わらずというか、むしろいつもより中国人観光客が多い・・。

なるほど!

今日10月1日は中国の国慶節の連休が始まった日。

ウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)が、

『中国経済減速の結果、中国から欧米への観光客が減り、

その分、近場のアジア(日本など)への観光客が増えている』

と報道していました(『こちら』)。

下記のグラフはウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)に掲載されていたもの。

こういった分析は、WSJならではのもの。

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余談ですが、月約25ドル(3200円)のWSJの購読料は結構安いと思います。

ところで今晩は風が強くて、夜景が綺麗でした。

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下の写真はミッドタウン・ガーデンでヨガをしている人たち。

私は5月に走り過ぎて踵を痛めてしまい、残念ながらまだ運動できませんが、いよいよ本格的な運動の秋の到来ですね。

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