I hear you've been quoted
初めて会う人に、気の利いた一言を言うことが出来れば、会話はスムーズに運ぶし、好印象を残すこともできます。
JPモルガン時代の話。
『ニューヨークからトレーディング部門のヘッドが(東京に)来ているので会って欲しい』と上司に言われ、トレーディングフロアに行きました。
ハローと握手をすると、開口一番、彼の口から出た言葉が、
『I hear you've been quoted』
一瞬、何のことかと思いましたが、その日の朝の新聞に私のことが少しだけ出ていたので、そのことかと気付きました。
このように、米国の会社で上層部まで上がっていく人は、多くの場合、
(1)情報が早い(注:彼は日本語を話すわけでもなく、新聞記事の情報はどこかで仕入れたに違いない)
(2)人と会う時にはあまり考えずに漫然と会うのではなくて、ちょっとした準備をしている
といった傾向にあるように思います。
ニューヨークのトレーディング部門のヘッドにしてみれば、東京の投資銀行部門にいる日本人など、さほど重要ではないはず。
にもかかわらず、きちんとした準備で臨み、一方、私の方はと言うと、
彼のことについて「ニューヨークの偉い人」くらいの事前準備しかしていなかったものですから、まさに一本取られた格好でした。
ところで、 You've been quoted とは文字通り、「引用されていたね」といった意味の英語。
日本人なら「新聞に出ていたね」といった会話になるのでしょうが、「出ていた」では曖昧。
やはり英語(とくにビジネスの場合)はこの辺、きちんとしていて、「引用されていたね」といった表現になるようです。
* * *
なおこの話には後日談があります。
このとき新聞に記事を書いたのは日経の坂本記者。
現在は日経ヴェリタスの編集長になっていて、日経CNBCテレビの「日経ヴェリタストーク」でたびたびご一緒しています。
今年の5月、番組収録前の打合わせで16年ぶりにお会いした時、坂本編集長は16年前のこの記事を持参していました。
「人と会う時にちょっとした準備をする」
モルガンのトレーディング部門ヘッドだけでなく、坂本編集長にも、私は一本取られた格好のままになっています。
下の写真がこのときの記事(1999年4月15日付、第一面)。
記事はクリックすると大きくなりますが、最後の方が切れています。
全文は『こちら』でご覧になれます。