数字の裏側にあるもの
「失業率の数字にどのくらいの意味があるのか」と噛みついたのは、ドナルド・トランプでした。
『もし本当に失業率が5%台であるのなら、建設現場では人が雇えなくて、ヒイヒイ言っているはずだ。
私はホテルやビルの建設をしてきたからわかる。
今の状況は5%台なんてことはなくて、もっとずっと悪いはずだ』
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下の表とグラフは米国労働省のサイトから取ったものです。
(過去10年間の失業率推移)
トランプは、当初『感覚的にこの数字は変だ、実態を現していない』と批判しただけでした。
しかし最近は、
『失業率が24%であるという数字や、42%という数字も見たことがある』
と、突っ込んだ発言(例えば『こちら』)をするようになっています。
これを受け、フォーブスには『いや、本当は60%だ』という寄稿記事(『こちら』)も載るなど、アメリカでは失業率の数字をめぐる議論が活発になっています。
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ポイントは失業率の定義です。
下記は日本の総務省統計局のサイトから取ったもの(クリックすると大きくなります)。
総務省によれば、『この定義は,他の主要先進国と同様、客観的に就業・失業の実態を把握するため、ILO(国際労働機関)の定めた国際基準に準拠したもの』。
ここで、完全失業者とは次の3条件を満たすものです。
(1)「仕事についていない」
(2)「仕事があればすぐつくことができる」
(3)「仕事を探す活動をしていた」
トランプやフォーブスへの寄稿者が噛みついているのは、おそらくは『今の状況下、この定義にどれだけの意味があるのか』ということではないかと思います。
月末1週間に少しでも仕事をしたら、定義上、『就業者』になってしまいますが、そのステータスでは満足できていない人も多い・・。
あるいはもう何か月も職を探していて、それでも職に就けないからと、先月から職探しを止めているという人もいるかもしれません。
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高城剛さんの『世界はすでに破綻しているのか?』を読んでいたら、こんな一節がありました。
『スペインでは「失業した日までの6年間に、失業保険の保険料納付実績が360日以上あること」が、失業保険受給の要件となっており、360日働けば、120日間は失業保険をもらえる。
つまり、1日も休まず1年働けば4ヵ月間は遊んで暮らせるのだ。
道理で失業率が高いわけである』(20頁)
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単純に『失業率』といっても、その背後にあるのは人々の生活。
数字の裏にある実態を読み取ろうとしなければ、数字は意味をなしません。
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