無能であることは罪に問われない
今晩は日経CNBCテレビの「日経ヴェリタストーク」に出演しました。
トピックスは 『日本株 再浮上への道』。
今週で終わる2015年度の日経平均株価は、 アベノミクスが始まって以来、 初めて(前年度末比)下落で終わりそうです。
日本株は、再び上昇軌道に戻れるのでしょうか?
紙面では3つの条件が紹介されていますが、私としては敢えて4つ目のポイントとして、「日本の市場がもっとオープンになること」を上げて、説明しました。
オープンとはどういうことでしょうか。
海外の投資家による日本株の持ち株比率は全体で見れば平均して3割を超すようになりました。
しかしこれは多数の投資家が全体として3割を持つということで、日本企業としては特定の(1つの)投資家が50%以上を持つことを嫌います。
これは企業が買収されてしまうことを意味するからです。
つまり日本の経営者は、おカネは出してくれるけど、口は出さないという、「お人よしの」株主を求めているのです。
しかしシャープの例を見れば分かるように、もっと早い(=たとえば前回経営危機に陥った2012年3月の)段階でホンハイの助けを借りていれば(ホンハイに買収されていれば)、もっと良い条件(高い株価)で買収されることが出来たわけですし、もっと多くの従業員の職を確保できたであろうと思われます。
もう一つ、別の切り口からこの問題を見てみましょう。
日本企業は積極的に海外で企業を買収しています。
日経ヴェリタス紙によると2015年の日本企業による海外企業の買収・合併(M&A)は、前年の2倍近くに拡大し、初めて11兆円を突破したとのことです。
自分たちは積極的に海外で買収しておきながら、海外勢が日本企業を買収しにくると、買収防衛策を講じてこれに激しく抵抗するというのは、海外勢の目からするとフェアではありません(実際、日本企業が買収される事例は、日本企業が買収する事例に比べて極めて少ない~トムソン・ロイター『こちら』18頁)。
市場がオープンになるということは、効率化することにもつながります。
実際のところ、米国などでは市場でのバリュエーションが低くなると、企業が「お買い得」になるので、M&Aが起きて、この結果同業他社のバリュエーション(ひいては市場全体のバリュエーション)が是正されるといったことが起きています。
市場というのは本来こうしたプライス・メカニズムが働くものであるはずなのですが、これが働かないということでは、日本の市場はいつまでたっても効率化しません。
市場がオープンであると、日本企業をターゲットとしたM&Aがもっと積極的に行われるようになります。
このことで、これまでの経営者が排除されてしまうことが起きるかもしれません。
しかし代わりに有能な経営者(や潤沢な資本をもった投資家)がやってくると、たとえば破綻しかけていた会社はその恐れから解放され、逆に目一杯成長して、従業員の職も確保できるようになります。
本来のコーポレートガバナンスとは経営者として相応しくない人が経営者としての地位にしがみついているのであれば、これを排除することにあります。
しかし日本ではなかなかこれが機能せず、会社が破綻ギリギリのところまで追い込まれてしまうことが少なくありません。
ある企業再生案件(誰もが知っている有名企業です)で、企業価値を著しく毀損してしまった経営者が交代せざるをなくなりました。
再生案件専門の弁護士が一言、「無能であることは罪ではありませんから、そのことをもってして訴えられたりすることはありませんので心配いりません」。
経営者に面と向かって「無能であることは罪ではありませんから」と言うとは、私は側で聞いていてびっくりしたので、鮮明に覚えている一幕ですが、しかし株主の立場からすると、やはり、そういった経営者には早くどいて欲しいのです。
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