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2016年5月29日 (日)

転職時の状況

メルマガ5月号を発行しました。

* * *

【第3号(5/28発行)】

みなさん、こんにちは。

このメルマガを始める前は、

「読者の方からの質問は株式投資に関するものが多いのでは」

と勝手に予想していたのですが、違っていました。

いざ蓋を開けてみると、意外にもキャリアに関する質問が多かったのです。

(もっともまだ始めて1~2ヶ月、この先は分かりませんが)。

そういえば私自身も、外資系投資銀行に転職するに際しては(そして転職した後も)、

職場を変えるべきかどうか、悩み続けていました。

日本の銀行で働いていた私には、そもそも外資の投資銀行がどんな職場なのかも分かりませんでした。

私の周囲ではいろいろとアドバイスをくれる人たちはいました。

しかしアドバイスの多くは、私の職場(日本の銀行)の同僚や学生時代の友人によるもの。

彼らも外資の投資銀行の実情を知っていたわけではありません。

「外資では実績を上げなければすぐクビになるぞ」とか・・。

「外資で働いていて病気になったら一貫の終わりだぞ」とか・・・。

すでに自分自身が持っている疑問を改めて聞かせてもらっても、疑問がかえって深まるだけ。

悩みは解決しません。

つまり、自分と同レベルの情報を基にしたアドバイスでは、

心配してくれる気持ちはありがたいものの、自分の悩みはなかなか解決されなかったのです。

必要なのは情報でした。

そこで私が取った行動は、自分が必要とする情報を持っている人を「探し出して」、

積極的に「自分から情報を取りに行く」といったものでした。

具体的には、実際に外資の投資銀行で働いている人を探し出し、

「つて」を辿ってアポイントを取り、積極的に会いに行く。

そして自分が思っている疑問をぶつけてみたのです。

貴重な情報というのは自ら外に探しに行って、取って来なければゲットすることができません。

思い起せば、私が最初に転職したのは今から18年前。

当時は終身雇用体制が今よりももっと強固に、まるで岩盤のごとく、社会に根付いていた時代です。

「会社を辞めたいのです」と直属の上司に言うと、上司は、

「そんな話は受けられん」と一言。

一蹴されてしまいました。

翌朝、再び同じ話を上司に言いに行くと、

「預からせて欲しい」。

こう言われて1週間、なしのつぶて・・。

そんな時代でした。

そしてもう一つ。

転職に関し積極的に情報を取りに行って、それなりの情報が得られるようになった後でも、

そう簡単に決断できませんでした。

なによりも22年間も勤めた職場でした。

その職場を(当時、転職適齢期と言われた「30代」をとうに過ぎて)、

45歳で辞めるには、相当の決心が必要だったのです。

当時、最後の最後まで思い悩んでいたのを、今になって思い出します。

またいざ投資銀行に移ってしまうと、

今度はそのことがヘッドハンターたちに知れ渡り、

彼らからたくさんアプローチがあるようになりました。

「今の職場よりもこちらの職場の方があなたの能力をもっと活かせる」

こういったようなアプローチだったのですが・・。

いったいぜんたい、ヘッドハンターとはどこまで腹をわって付き合えばよいのか。

そもそもヘッドハンターと会っていることが会社の上司に知られたら、どうなるのだろう・・。

そういったことが当時の私にはまったく分からなかったのです・・。

さて、昔話はこの辺にして質問の方に移ります。

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目次

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… 1. Q&Aコーナー   

(1)【キャリア】

「このまま今の職場を続けていいのか疑問に思っています。          

しかし転職したり起業する勇気もありません。          

どうしたらいいでしょうか」   

(2)【キャリア】

「外資系投資銀行の給料をネットなどで調べてみました。          

ひじょうに高い数字が出てきてびっくりしています。          

ほんとうにそんなに高いのでしょうか。          

なにか秘密があるのでしょうか」   

(3)【投資】

「大型株と言われる日本を代表する会社3社の株式を持っています。          

いずれも含み損を抱えています。          

付き合いのある証券会社からはこれを売却して、          

米国REITの投信を買うように勧められています。          

どうしたらいいでしょうか」

… 2. 世界各地からの便り   

【香港】

半年で香港の不動産が25%下落       

小康状態を装う中国の裏で進行するリスク

… 3. 今月のトピックス

「バスキアの絵画を約5730万ドル(約62億円)で落札」

… 4. お知らせ

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ご関心のある方は『こちら』をクリックし、『登録する』のボタンを押してから、その先にお進みください。

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2016年5月27日 (金)

オバマ大統領のスピーチ

17分間に及ぶ大統領のスピーチはホワイトハウスのTwitter(『こちら』)から動画で見ることが出来ます。

(注:私のブログの右のサイドバーのTweetsの窓の矢印を押してもご覧になれます)

Obama_3

@POTUS というのは President of the United States の略で、合衆国大統領のことです。

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2016年5月24日 (火)

成長軌道に乗せるには

アベノミクスとは為替を円安にして株価を高め、その間に構造改革を進めて経済成長を図る政策である。

最初の1~2年(13年、14年)は上手く行ったが、15年夏以降に失速してしまった。

構造改革が思うように進まなかったからである。

何度か書いてきたが、民間部門の消費支出(個人消費)が一向に改善しない。

アベノミクスが始まる前の民間最終消費支出(2012年暦年)が308兆円。

昨年1年間の民間最終消費支出(2015年暦年)が306兆円。

むしろ悪くなっている。

なぜか。

若い、働く世代の年収が低いままだから、消費したくても消費できない。

もっと言うと結婚したくても結婚できないから人口も増えない。

20代後半の男性の非正規率は22%。

そもそも非正規社員の年収平均は230万円でしかない。

これではユニクロでさえ贅沢品になってしまう(だからGUが流行っている)。

30歳~34歳男性が結婚している率は、正社員の場合は57%。

非正規は(同じ年齢区分で)たったの25%。

なぜ企業は正社員を積極的に雇わないのか。

企業経営者に聞くと「不況時に非正規の方が人員整理しやすいから」という。

日本の場合、解雇に関する明確なルールがない。

いきおい追い出し部屋に入れるとか陰惨な形で、社員が(自発的に?)辞めると言い出すまで、「いじめる」、「追い込む」といった陰湿・残酷なことが行われてしまう。

解雇に関する明確なルールがないから、解雇して訴えられるのが怖い、だからこうした非合理的な対応がとられてしまうのだ。

そして解雇に関する明確なルールがないから、企業は本当はもっと正社員を雇いたいのにもかかわらず雇えない。

非正規に頼ってしまう。

その結果、正社員が中途で入社してくるという「中途入社市場」が一向に拡大せず、労働力が流動化しない。

筆者の高校時代のアメリカの友人の多くは比較的簡単な理由で会社を辞める人が多かった。

「変な上司がやってきた。こいつとは合わない」と思うと、さっさっと辞めて別の会社で正社員として雇われる。

中途入社の市場がしっかり機能しているからだ。

昨日のブログで、現在のアベノミクスの労働市場改革について書いたが、実はこれは抵抗する勢力があまりない分野での政策である。

本当に必要な改革については、最初から諦めてしまっているようにも思える。

労働市場改革でいま一番望まれるのは(あくまでも筆者の私見であるが)、

①解雇に関する明確なルールを設けて、企業が正社員を雇いやすくする

②中途入社市場を拡充し、正社員が中途で退職し別な会社で正社員として雇ってもらえるようにする(これは米国では普通に行われていることだ)~なお上記の①が実現することで②が進む

③正社員であれば組合の保護を受けられ、非正規であれば保護がないといった差別的対応をなくす

④同じ仕事であれば、正規と非正規で待遇の差別をつけない

⑤ホワイトカラー・エグゼンプションを導入する(サービス残業を押し付けられている現制度よりも余程合理的だ)

以上はいずれも実現するのに高いハードルが予想される分野だ。

しかし、この辺にメスを入れないと、日本は成長軌道に乗れないように思う。

金融政策と財政政策だけでは限界があるのだ。

* * *

こんなことを昨日の「日経ヴェリタストーク」で話しました。

『こちら』 でご覧になれます。

* * *

ところで昨日発表されたサラリーマン川柳。

大賞は「退職金 もらった瞬間 妻ドローン」でしたが、過去の入選作にはこんなものもありました。

「クレームも 社員じゃわからん パート出せ」

「何になる? 子供の答えは 正社員」

「お見合いの 決め手になった 正社員」

世の中にこれほどまでに正規と非正規の差別が浸透している、そして実力のある非正規やパートが差別的待遇にあえでいるのを、川柳が見透かしているように思いました。

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2016年5月23日 (月)

アベノミクスにおける労働市場改革

アベノミクスにおける労働市場改革については官邸のホームページで1枚の紙に簡潔にまとめられています(『こちら』)。

キーワードは3つ

A. 多様で柔軟な働き方

B. 女性の活躍推進

C. 外国人材の受入れ促進

この1枚紙ではA~Cについて、各々の項目に関し法案提出がなされていることなども明記されています。

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しかしそのどれを取っても(着実に前進はしているのでしょうが)海外との差は依然として開いたままです。

一例として「A. 多様で柔軟な働き方」について、いったい何が不足しているのかを簡単に見てみましょう。

少し長くなりますが、以下、拙著「不透明な10年後を見据えて、それでも投資する人が手に入れるもの」から引用します。

* * *

『日本企業においては、今でも新卒一括採用という世界的にも類を見ない人事制度が取られている。

これが何を意味するのか。

日本の会社制度はそもそも出発点から「同調」が重視されているのだ。

もう少し詳しく説明しよう。

日本の会社においては、舛岡富士雄(NAND型フラッシュメモリを発明)や中村修二(青色LED)のような画期的なイノベーションを起すような才能を持った「出木杉くん」(ドラえもんに出てくる)は、天才肌で扱いにくいので敬遠されかねない。

求められるのは、組織の中で協調して働いていける「そこそこ優秀な人たち」だ。

しかしこれは経済学者の岩井克人がいう資本主義の第2段階「産業資本主義」で頭角を現す人たちである。

彼らは実を言うと、イノベーションの時代には不向きなのである。

日本の大企業経営者は、表向きには独自性とか社員の個性といった言葉を強調する。

しかし実際の人事考課には「協調性」といった項目がちゃんとあって、これが結構重視される。

工場で日曜日にソフトボール大会があるときに社員寮の部屋にこもって自分が興味をもっている分野の研究をするような人物は好まれない。

重用されるのは、1年上の先輩を単に自分より先に入社したというだけで絶対的に敬い、休みだろうとなんだろうと、会社行事には積極的に参加し、団体行動と規律を重視する「体育会系」だ。

何よりも経営者自身がサラリーマン経営者であって、協調性があり、そつがなく、気配りができることで選ばれ登用されてきた人たちだ。

当然のことながら、自分とはまったく異質の人間を理解できない。

ほぼ同じ年齢の新卒者が、同じタイミングで入社し、同じような給料をもらって、会社組織のなかでの階段を一段、一段、毎年時間をかけて徐々に上がっていく。

海外の企業でも新卒者を採用するけれども、ここまで画一的ではない。

海外企業では新卒で採用される人の年齢もバックグラウンドも区々で、給与も同一ではないことが多い。

そもそも随時に採用される中途入社の社員の比率が日本企業に比べて圧倒的に高い。

日本型システムの問題点は、若い人の立場に立ってみると、もっと鮮明に浮かび上がってくる。

新卒で入社した先が「ブラック企業」だったり、経営破綻してしまったりすると、再び正規社員として別の会社に入社するのが極端に難しくなる。

最初から失敗が許されないシステムになっているのだ。

それだけではない。

中途で別の会社へ正規社員で転職することが難しいので、若い人たちは組織内でどうしても保守的になる。

最初の職場で疑問に感じることがあっても声すら上げない。

リスクを取った結果、「はみ出し者」扱いにされると村八分。

こうなっては惨めなので、最初から組織に盲従するようになる。

こういったシステムが取られているところでは、イノベーションは起きにくい』 (引用終わり)

* * *

実は、日本の新卒定期採用制度というのは、第一次世界大戦直後にまで遡ることが出来ます(濱口桂一郎『若者と労働』62頁)。

第二次大戦下では国家総動員法が制定され、1941年には国民労務手帳法、労務調整令が出され採用規制が強化されていきます。

これが戦後の学校と企業とが直結した「学校経由の就職」へと結びついていくのです(濱口、前掲書66頁)。

賃金が生活給の色合いが濃く年功賃金制になっているのも、第二次大戦下における戦時賃金統制にまで遡れます(濱口、前掲書87-88頁)。

こうした旧来型の慣行が現在まで引き継がれているのは世界的にも珍しく、結果として一部の正社員は守られますが、能力的に高い社員は正当に遇されず、非正規社員は差別に苦しむといった状況が生じています。

アベノミクスが謳う『A. 多様で柔軟な働き方』のところでは、本来は

①正社員の解雇ルールの明確化

②ホワイトカラー・エグゼンプションの導入

といった労働市場の流動化、労働生産性向上のための施策が必要なのだと思います。

そうすれば

(1)企業が正規社員を雇うことに躊躇しなくなる(結果として正規社員の割合が増える)

(2)正社員の方も会社が合わないと感じれば、いったん辞めて別の会社に正社員で移りやすくなる

といった状況になることが期待されます。

厚労省が2015年11月に公表した「平成26年就業形態の多様化に関する総合実態調査」によると、

全労働者に占める非正規労働者の割合は実に約40%に達します(『こちら』)。

この40%の人たちが、結婚して家庭を持つことを決断しにくいというのであれば、

人口問題は解決せず、

政府や中央銀行が財政政策や金融政策を総動員しても、

彼ら非正規社員の消費水準はなかなか上がっていきません。

労働市場に対してもっと切り込んだ改革がなされていくことを期待します。

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2016年5月22日 (日)

訪日外客数は円高でも伸び続けている

月ごとの訪日外客数を『こちら』から拾ってみます。

これと毎月の平均為替レート(TTM)を一つのグラフにまとめると:

Visitor_2

昨年11月:為替は123円、訪日外客数165万人

    ↓

今年4月:為替は110円、訪日外客数208万人

* * * * *

為替が円高に振れても訪日外客数は伸び続けています。

この傾向が続くことを期待したいところです。

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政策相場の裏で進む環境変化

G7財務相・中央銀行総裁会議を昨日終え、今週はいよいよサミット(26~27日)。

さらにその先には米FOMC(6月14~15日)、日銀(6月15~16日)、英国でのEU離脱を問う国民投票(6月23日)、参議院選挙(7月)が控えています。

市場が注目するのは

①消費税増税先送りか否か

②10兆円規模の財政出動があるか否か

③日銀の追加緩和があるか否か

といった点で、マ-ケットは政策相場の色彩を強めてきています。

こうした中で、実は舞台裏でじわじわと進む環境変化にも注目する必要があります。

一つは油価。

1月、2月と30ドルを切り、20ドル台に突入することもあったWTIですが、カナダの森林火災やリビア、ナイジェリアの政情不安の影響もあり、ついに50ドルに迫る勢いになってきました。

Wti

           (出所:ブルームバーグ『こちら』

2月に東証でWTIのETF(証券コード1671)を1,691円で買った人は、3ヶ月で47%上昇して今や2,478円。

もう一つ注目すべきは中国の動向。

「小康状態」と形容されています(本日付の日経ヴェリタス48頁)が、香港の不動産は昨年9月から25%も下落したとの話も伝わってきます。

こうした環境変化や予兆をどう読み解くのか・・・。

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2016年5月15日 (日)

運用難の時代

マイナス金利政策はひとことで言うと、

「金融機関が日銀に預ける当座預金の一部にマイナス0.1%の金利を課す」仕組みである。

日銀は、「金融機関が融資や証券投資を活発化させること」を期待している。

これを行わずに日銀の当座預金に安直に余裕資金を回すだけのところに対しては

「罰金(0.1%の金利)を課しますよ」というわけだ。

そんなことを言われたって、金融機関からすれば、簡単に融資は増やせない。

企業の資金需要は弱く、証券投資と言っても外債には為替リスクがつきまとう。

どうするか。

取りあえず持っている国債は売らずに抱えておく。売れば現金になって手元に売却代金が来てしまう。これを日銀に預けると0.1%の金利を逆に取られてしまうから、売れないのだ。

ということで、国債のマーケットでは売りが急減、価格が上昇(利回りが低下)した。

現在市場に流通する国債の8割近くの利回りがマイナスだという(本日付の日経ヴェリタス紙48頁)。

一方の日銀。

売りが急減している国債市場の中で、年80兆円ずつ国債残高を増やしていかなければならない。

政府による国債の新規発行は年30兆円強。

この分は、証券会社や銀行が引き受けた後、すぐに日銀に転売してくれる(彼らとしては確実な利ざやが稼げる)。

問題は、それ以外の分(年80兆円-年30兆円強)だ。

これを市場から買い集めなくてはならない。

かくして、日銀は国債を一所懸命買おうとするが、売り手の方は控えめといった状況が続き、国債価格が上昇(利回りが低下)、市場に流通する国債の8割近くが利回りがマイナスという事態に陥ってしまった。

いちばん困っているのは銀行や保険会社などの金融機関だろう。

企業や個人から資金が集まってきてしまうからだ。

これら金融機関の運用担当者にしてみれば、昨年までであれば、とりあえず国債で運用しておくことができた。

しかし今では残存期間13年超のものを除けば国債の利回りはマイナス。

プラスで預かったものをマイナスで運用することなどできない。

「どうしていいか分からない」といった状態が続く。

真偽のほどは分からないが、運用難にあえぐ一部の地方銀行や信金がやむなくメガバンクに預金をするようになったといったニュースも伝わってきた(『こちら』)。

預けられたメガバンクにとっても迷惑な話だろう。

黒田東彦日銀総裁は「マイナス金利はまだまだいくらでも深堀りできる」と語ったという(『こちら』)が、これ以上深堀するといったいどうなるだろう。

『当行に1000万円以上の預金をお預けになる場合には年0.1%の手数料を頂戴させて頂きます』-そんな張り紙がメガバンクの窓口に掲げられるようになるかもしれない。

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2016年5月10日 (火)

路地裏の経済学者

「路地裏の経済学」の著者、竹内宏さんが亡くなられた(4月30日)。

1979年の本なので、私が読んだのは興銀に入って間もなくの頃だったと思う。

統計数字だけでなく、実際に商店街に行き、店主の話を聞くとか、「自分の目や耳で確かめろ」といったことが書いてあったように記憶している(かなり前の話なので間違っているかもしれません)。

私も心がけていることが一つだけある。

タクシーに乗るたびに「景気はどうですか」と聞くことだ。

ここ数年は、「アベノミクスで少しは良くなったのか」と聞いている。

答えは「さっぱりだね」とか、意外にも「むしろ悪いよ」といったものが多い。

統計数字の方を見てみよう。

内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部が今年3月に発表した数字である(『こちら』

実質GDPの対前年(暦年ベース)成長率は:

2010年    +4.7%

2011年  ▲0.5%

2012年    +1.7%

2013年    +1.4%

2014年    ▲0.0%

2015年      +0.5%

(以上、上記資料の25頁)

ここで念のために付け加えておくとアベノミクスの第一の矢(大胆な金融政策)、いわゆる「黒田バズーカ第一号」が放たれたのが、2013年4月4日である。

実質GDPの対前年成長率は、「アベノミクス開始後」よりも「アベノミクス開始前」の方が良かったのだ(もちろん「アベノミクス開始後」の数字は消費税増税というハードルを越えた上での数字なので表面的な数字以上に高く評価できるという見方もある)。

GDPだけでなく民間の消費支出も見てみよう。

アベノミクスが始まる前の民間最終消費支出(2012年暦年)308,072.2(十億円)

昨年1年間の民間最終消費支出(2015年暦年)306,483.3(十億円)

(以上、上記資料の24頁)

民間の消費支出も、「アベノミクス開始後」よりも「アベノミクス開始前」の方が良かった。

* * *

たしかにアベノミクスによって円安となり株価は上がった。雇用も改善した。

しかし統計数字を見れば分かるように、GDP成長率は、アベノミクスが始まる前の方がむしろ高かった。

民間部門の消費支出の水準も、2012年暦年の水準の方が、昨年1年間の数字より高かった。

最近は日経新聞でも「デフレ銘柄に資金流入」といった記事が目につくようになった(たとえば『こちら』)。

タクシー運転手の声が聞こえてきそうだ。

「難しいことは分からんけれど、長いこと運転手やっている我々がいちばん分かるからね」

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2016年5月 8日 (日)

少し前の常識がだんだんと通用しなくなってきている

本日発売の日経ヴェリタスに掲載された「Money Never Sleeps」の第12回。

ほぼ月1回のペースで連載しているものです。

                        Nv

こんな感じで始まります。

「米国に出張した時、知人の米国人宅に招かれ た。 

夕食をご馳走になりホテルに戻る途中、私が運転する車をパトカーが執拗に尾行し始めた。 

翌朝、そのことを知人に話すと、この辺では珍しい車だったからでしょうと言われた。 

私が空港で借りた車はフルサイズと呼ばれる2500cc くらいのごく普通の米国車だったのだ が、それがいけなかったらしい。 

富裕層が多く住むこの地区ではベンツやBMWなどのドイツ車や日本のレクサスに乗る人が多い。 

もちろん米国車に乗る人も多いのだが、その場合はたいてい SUV (スポーツ型多目的車)か、もしくは電気自動車のテスラが選ばれる。 

フルサイズの米国製セダンは、高級車のキャデラックやリンカーンを除けばほとんど見かけない。 

もっとも私を尾行したパトカーの車種 も、実は同じく普通の米国製フルサイズ ・セダンだった。 

しかしこの町では、私の車とパトカーくらいしかこのタイプの車は走っていなかったのだ(少なくとも 深夜には)。  

警官にしてみれば「不審なよそ者」がやってきたということで、尾行することに したのだろう。 

次回空港でレンタカーを借りるときには慎重に車種を選ぼうと思った」

少し前の常識がだんだんと通用しなくなってきている米国。

その裏にあるものはいったい何なのでしょうか。

続きはヴェリタス紙面でお楽しみください。

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2016年5月 6日 (金)

6月23日の国民投票

5月4日付けの日経に特集記事が載っていましたが、6月23日に英国で国民投票が行われます。

これは「英国がEU(欧州連合)から離脱すべきか、留まるべきか」を問うもの。

Eu

     (EU加盟国; From the Wikimedia Commons)

最近の英国でのアンケートでは離脱すべきと考える国民と、残留すべきとする国民の割合がだんだんと拮抗するようになってきました(現状はまだ少し残留派が多い)。

そもそも1958年に仏、独、伊などによってEU(の前身)がスタートした時、英国はメンバー国ではありませんでした。

英国の加盟はずっと遅くて1973年です。

英国ではもともとEUに加盟することで政治的自由が失われ、経済的にも(EUへの分担金の支払いなど、英国にとって)「持ち出し」が多いと考える人が多かったのです。

(英国のEUへのNet Contributionは年 £8.8bn にも上るとの見方も・・ 『こちら』)。

なぜ来月にEU離脱か残留かの国民投票が行なわれることになったのかというと、キャメロン首相が2015年の総選挙の際に再選されれば「これを行う」と公約したから。

こうした機会が与えられるべきとする英国独立党などの声をもはや無視できなくなっていたのです。

「英国がEUを離脱したら、老後をスペインで過ごす英国人の医療費、入院費はどうなるのか」

こんな質問が英国のメディアで取り上げられるようになってきました(『こちら』)。

投票の結果、離脱となれば、英ポンドは下落、株式市場にもネガティブな影響が波及すると見られています。

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2016年5月 4日 (水)

銀行の設立

30年以上も前の話です。

「カナダ興銀の設立準備メンバーが、人手が足りないと支援を求めてきた。行って、手伝ってきてくれないか」

こう上司に言われて、バンクーバー経由、トロントに向かいました。

1981年10月19日。

カナダ興銀の社長に内定していた稲川さんは私の元上司だったこともあり、もしかすると私を名指してきたのかもしれません。

当時私は28歳。

トロントのロイヤル・ヨーク・ホテルに居を構え、カナダ興銀が入ることになる Commerce Court West のビルまで通勤しました。

    Tronto

     (市庁舎前広場でスケートをする人々。出張当時に撮影)

日に日に寒くなる季節で、11月30日まで約40日間の長期出張でした。

オフィスのレイアウトなども任され、現地のデザイン会社と詳細を詰めていきます。

いまでもよく覚えているのですが、アピジャンという名のデザイナーが担当してくれました。

たぶんイタリア人なのでしょう。英語になまりがあるのですが、なかなかのデザイン感覚の持ち主。

欧米の先進的なオフィスのデザイン案をもってきてくれました。

「こんなオフィスで働いてみたい」と個人的には大いに気に入ったのですが、当時の日本の銀行のオフィスはきわめて旧式のデザイン。

稲川さんはパリの勤務も長く、本来であればアピジャンのデザインが相当気に入っていたはず。

しかしそこは現地子会社社長を任されることになる立場。東京からいろいろ言われるであろうことを恐れ、「う~ん」と、苦渋の表情・・。

さてそんなことを思い出したのは、テレビで先日カナダの報道をしていたからです。

2015_2

ピエール・トルドー元首相(1919年- 2000年)の長男、ジャスティン・トルドー(45歳;上の写真)が2015年首相に就任。

新内閣組閣に際し閣僚を男女同数(15名対15名)にしました。

「なぜ男女同数、つまり15対15なのですか」

と問われ、彼はたった一言。

「Because it's 2015(なぜって2015年だからです)」

これには2つの意味があります。

もう21世紀に入りこれだけの年数も経っているんだから、男女同数はもはや常識でしょ、といった意味と、15年だから15人ずつ同数にしたんですよ、といった意味。

そのときの映像が 『こちら』 です。

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