未来に対する働きかけ
以下は、2週間後くらいに発売になる予定の 『文系が20年後も生き残るためにいますべきこと』 からの1節です(本書136-7頁、145-6頁)。
■リスクを取らなければ、もっと大きなリスクがやってくる
「明日は必ず来る。
そして、明日は今日とは違う。
そのとき、今日最強の企業といえども、未来に対する働きかけを行っていなければ、苦境に陥る。
個性を失い、リーダーシップを失う。
(中略) 起こっていることを理解できなければ、未来に対する働きかけはできない。
その結果、新しいことを起こすというリスクを避けたために、起こったことに驚かされるというはるかに大きなリスクを負うことになる」
これは、経済界に最も影響を与えたといわれる経営学者、ピーター・ドラッカーの言葉だ。
彼が言うように、確実に訪れる未来にたいして何の準備もしていなければ、企業であれ一人の人間であれ、苦境に陥ってしまうのは間違いない。
たしかに新しいことを始めるのには、リスクが伴う。
失敗する可能性もある。
たとえば、あなたがいま、古い体質の企業で働いていたとする。
上司のご機嫌を伺いながらムダな業務に時間をとられ、きちんとスキルを磨く環境もない。
転職をしようと考えるが、転職にもリスクが伴う。
もしかして転職した企業がすぐに潰れるかもしれない、転職したらいままでと比べて給料が下がってしまうかもしれない、転職先で人間関係をうまく築けないかもしれない、そもそも転職先が見つかるかどうかもわからない…… 考え出せばキリがない。
転職しない理由をあげるのは簡単だ。
いまいる企業も簡単には潰れなさそうだし、このままここにいた方がきっと安定しているだろう……、そうやってリスクを回避しているうちに時が過ぎ、あなたは45歳になった。
「やっぱりこの会社に残ってよかった、なんとか定年まで勤められるかな」
なんて考えていたある日、突然会社が倒産してしまう。
あるいは外国企業に買収されてしまう。
もしくは深刻な業況不振に陥り大規模なリストラが行われる。
しかし、あなたは会社の外で通用するようなスキルなど持っていない。
そのときはじめて、自分の犯した間違いの大きさに驚いてももう遅い。
ドラッカーのいう通り、新しいことを起こすリスクを回避したがために、もっと大きなリスクに見舞われてしまったのだ。
……ピーター・ドラッカーはこうも述べている。
「明日を築く土台となるビジョンは、不確実たらざるを得ない。
それが実現したとき、どのような姿になるかは、誰にもわからない。
成功するかもしれないが、失敗するかもしれない。
もし、不確実でもなく、リスクを伴うものでないならば、そもそも未来のビジョンとして現実的ではない。
なぜならば、未来それ自体が不確実であって、リスクを伴うものだからである」
ドラッカーによれば、そもそも未来とは不確実なものだ。
正解はない。
たとえばあなたが転職や起業を考えていたとして、ひとつも失敗の要素がないとしたら、それはドラッカーが言うように未来への選択肢として間違ったものである可能性が高い。
よく考えてみると、私たちの周りに確実である事実などほとんどないのかもしれない。
今日あるものが突然明日消えていることなど珍しいことではない。
確実なことがあるとしたら、いま生きていて、いつか死ぬということくらいだ。
そして死を迎えるその日まで、未来は続いていく。
朝起きたら、終身雇用が終わりを迎えているなんてこととは、比べ物にならないほどの天変地異が起こるかもしれない。
そのとき、あなたはどうするだろうか。
どう生きたいだろうか。
正解のない不確実な未来を生きるためには、まず必要なものはなんだろうか。
ビジネスの世界で生き抜くためのスキルや知識はもちろん大切なものだ。
だが、それも時代によって変化していくものだ。絶対的なものではない。
では何もかもが不確実な世の中において、必要なものは何か?
それはあなたの「こうしたい」「こう生きていきたい」という強い意志だ。
現実がどう変化しようと、あなたの「こうしたい」という強い意志があれば、それに合わせて情報を収集したりスキルを向上させたりすればいい。
逆にいえば、いくら高度なスキルを持っていたとしても「こうしたい」という意志がなければ、他人に振り回され利用されるばかりの人生になってしまう。
あなたはいまなぜ働いているのだろうか。
なぜ学校に行っているのだろうか。
そしてこれからどんな人生を歩んでいきたいと考えているのだろうか。
未来が不確実で不安であるからこそ、強い意志を持つことが人生の羅針盤になる。
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コメント
岩崎さん
早速予約しました!
楽しみにしています!
今回は前々作の残酷な~の続編に近いような感じでしょうか?
投稿: ガンマ | 2017年3月 6日 (月) 11時21分
ガンマ様
有難うございます。
前々作は幅広い質問に答えようとしたため、246頁を10章に分けて書きました。
今回はもっと絞り込んで、前々作よりも掘り下げて書いたつもりです。私自身の体験ももっと書きました。気にいって頂ければ嬉しいです。
投稿: 岩崎 | 2017年3月 6日 (月) 13時18分