為替相場を読み解く
今晩は日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』に出演しました。
トピックスは「ドル高を覆う霧」。
ドナルド・トランプが米国の大統領選挙に当選した後、円安が進んで、12月15日には1ドル118円台前半まで円が売られました。
しかし、その後は一転して円高が進み、2月6日には111円台後半まで円が上昇していきます。
こうした中、米国のFRBは、先週、 政策金利を3ヶ月ぶりに 0.25%引き上げることを決めました。
また、米FOMCのメンバーは、今回を含めて年内に3回の利上げを予想していることも明らかになりました。
日銀が緩和的な金融政策を続けていることから、 日米の金利差は広がっていく方向にありますが、 こうした状況にもかかわらず、今年に入ってからは円安が進んでいません。
いったい何が起きているのでしょうか。
* * * *
まず昨年11月~12月にかけての為替相場ですが、円安に振れた背景には、米国の長期金利の急騰があります。
(上記チャートはInvesting.com より)
11月9日、1.858%でスタートした米国10年債(Treasury Notes)利回りは、12月15日には2.606%にまで急上昇。
日米の金利差が意識され、為替も一気に円安に振れました。
しかし米国の長期金利急騰の動きが止まり、トランプ大統領の「我々の通貨は強すぎる」といった発言が報じられるに及んで、為替は一転して円高気味に推移。
先週のFOMC後には「米国の利上げは、今年は4回ではなく3回が濃厚」と報じられました。
このニュースは、日米の金利差は(利上げが年4回ではなく3回だとすると)「当初想定していたほどには拡大しない」と解釈されました。
その結果、先週初めには114円台後半だった為替は一気に112円台へと突入してしまいました。
(過去1年間の為替レート推移、Yahoo! Finance より)
さてこれから先、為替はどういった動きを示すのでしょうか。
現在のマーケットで意識されているのはやはり「日米の金利差」です。
これをベースとする限り、これから先、金利差は拡大していく傾向にあり、この面だけから考えると、もう少し円安ドル高に振れていきそうです。
しかし為替相場を決定するのは日米の金利差だけではありません。
過去の相場では、日米の金利差の動きとは為替がまったく逆の動きを示したこともあり、(いまは日米の金利差が重要視されているにせよ)これから先のことを考えると、もう少し多面的に見ておいた方が安全かもしれません。
以前のブログにも書いたのですが、2014年12月~15年前半の円安ドル高を受け、15年4月の米国主要企業(P&G、デュポンなど)による決算説明会のプレゼンは「このようなドル高の為替では良い決算を出せない」といった悲鳴に近いような内容が相次ぎました。
つまり120円を超えるようなドル高が続くと米国の産業界は悲鳴を上げる・・。
米国の中西部や南部の労働者の支持を得て当選したトランプはこうした産業界の声を無視できないと思います。
一方で、トランプ政権の中枢にいるウォール街出身者は、ドル高を好む傾向にあります(ドル高であれば海外資金を米国に呼び込みやすい。国や企業の資金調達も有利に行え、ウォール街も潤う)。
こうしたことから、私は基本的には現在の110円~115円のレンジ相場が米国の産業界、金融界、政策当事者の各々にとって、それなりに居心地のよい相場であり、日本としてもこのレベルであればまずまずといったところではないかと思えてしまうのですが、如何でしょうか。
ちなみに先般新しく発売されたトヨタのプリウス・プラグイン・ハイブリット(グレードS)の国内の税抜価格は302万円(『こちら』)。
米国では27,100ドル(『こちら』)。
両者は微妙に違うのかもしれませんが、この2つを均等させる為替レートは111円44銭です。
もっともこれから先、いろいろなことが起こってきます。
たとえば:
①フランスの大統領選挙の結果がどうなるか
②37%と歴史的に低い支持率(『こちら』)にトランプ政権が耐え続けることが出来るのか
③トランプ政権は先週末フロリダで北朝鮮を集中討議したとのことだが、今後どうなるのか
そういった意味では不透明感が漂い続けることになりそうです。
なお詳しくは番組をご覧になって頂ければ幸いです(明日、夜9時30分より再放送)。
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