大企業からベンチャーへの転職
誰もがその名を知るような大企業で順調なビジネスマン人生を歩んでいる人。
そんな人が、産声を上げたばかりのベンチャー企業からヘッドハントされたら・・?
本日の日経ヴェリタス『Money Never Sleep』のタイトルは、『キンドルの成功支えた日本人』。
2014年からほぼ月1回のペースでこのコラムへの寄稿を続けてきましたが、早いもので今回で18回目になりました。
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「ビジネスクラスのチケットを用意するので本社があるボストンまで来てほしい」
米化学大手デュポンで当時、日本法人幹部だった桑田良輔さんは、200年近い歴史をもつ デュポンで、米国人以外で初のグローバル事業の部長職に任ぜられた人。
大企業デュポンの幹部として将来を嘱望されていた桑田さん(当時43歳)が設立間もないベンチャーに転職したのはなぜだったのでしょうか。
詳しくは本日発売の日経ヴェリタス紙面をお読み頂きたいのですが、彼は米国のベンチャー企業「E Ink社」の5番目の経営幹部として同社に入社することを決断。
2001年のことでした。
CEO、CFO、CTOなど他の4人は全員米国人で、桑田さんだけが日本人だったとのことです(彼は同社の販売担当副社長に就任)。
この会社はもともと米マサチューセッツエ科大学のメディア・ラボが開発したE Inkの技術をジョセフ・ジェイコブソン博士ら中心となって、これを企業化しようとのことで作られた会社。
E Inkを利用したディスプレイは液晶よりも消費電力が少なく、視野角も広い・・。
戸外の太陽光の下でも読め、紙に印刷された書籍を読む感覚に近い・・。
しかしながら、当時この製品を日本やアジアの大手電子機器メーカーなどに持ち込んだところ、答えはどこも同じだったと言います。
「E Inkはカラー表示が出来ない(当時)。動画にも不向き。カラーの動画に適するよう な製品を開発してくれれば採用を考えてもいい」
誰もが首を横に振る中で、唯一この技術に関心を示したのが、アマゾンの創業者ジェフ・ベゾスでした。
桑田さんたちを前にしてアマゾンのジェフ・ベゾスが語った言葉とは・・?
詳しくは日経ヴェリタス紙面をご覧になって頂きたいのですが、今ではキンドルに採用され、馴染み深い存在となったE Inkディスプレイの誕生の裏にはこんな秘話があったとは・・!
私も桑田さんにお会いして直接話を聞くまでは詳しいことは知りませんでした。
ところでE Inkは現在ではキンドルのみならず、日常のあらゆる場面で使われています。
たとえばスーパーの棚にヨーグルトが並んでいるとします。
その棚の下のところに1パック150円といった液晶のような表示があると思いますが、あれは多くの場合、E Inkです。
(Photo by Danny Choo)
液晶よりも消費電力が少なく、視野角も広いといった特性を活かしているのです。
2008年、E Ink社は台湾のファミリー企業に買収され、彼らのもとでさらに一層の業容を拡大していきます。
せっかく桑田さんという逸材がE Ink社の経営幹部にいながら、日本企業がこの米国生まれの最先端技術の商業化にからむことは結局ありませんでした。
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