誰にも悪気はなかった話
上杉周作さんの今年2月22日付のブログ、『シリコンバレーのエンジニアが語る、誰にも悪気はなかった話』。
いきなり目次から始まります。
第一章: ヒーロー童貞
第二章: 1億ドルのご褒美
第三章: 10億ドルのご褒美
第四章: 民主党と共和党
第五章: 住民の集会と金持ちの集会
第六章: エイボン校
第七章: セントラル校
第八章: 学区長
第九章: 最終兵器
第十章: チャータースクールの光
第十一章: チャータースクールの闇
第十二章: 四面楚歌
第十三章: 反省会
第十四章: 地に足がついている取り組み
おわりに: 議論の質を上げよう
* * *
著者自身が
『有料にすることも考えたのですが、そうするとお金のない若い人ほど読まなくなってしまうので無料にしました』
と書いている(『こちら』)ように、これは有料であってもおかしくないし、1冊の本として出版されても買う人は結構いるように思います。
(Photo from Mr. Shu Uesugi's Blog)
読むのに1~2時間はかかりますが、
(1)アメリカの社会が抱える問題、
(2)アメリカでの教育改革への取り組み、
(3)寄附(効果的な寄附の方法)、
(4)日本の社会が抱える問題
などについて、関心ある方は、是非読んでみると良いと思います(『こちら』で全文をお読み頂けます)。
* * *
ブログの冒頭、East Palo Alto のことが出てきます。
スタンフォード大学のあるPalo Altoに隣接するこの町は、シリコンバレーに住んだことがある人なら恐らくは誰でも知っているであろう、「やや問題を抱えた」地区。
平均住宅価格(ZILLOW HOME VALUE INDEX)を見てみると Palo Alto は、2.5百万ドル(2億8000万円;『こちら』)。
対する East Palo Alto は、いまは0.76百万ドル(8300万円;『こちら』)ですが、5年ほど前は0.27百万ドル(3000万円;『こちら』)。
数年前までは East Palo Alto は治安もあまり良くない地区だったのです。
(上杉さんのブログにも出てきますが、2005年、フェイスブックの創業者マーク・ザッカーバーグはEast Palo Alto のガソリンスタンドで酔っ払いに銃を突きつけられたのだとか・・)。
* * *
さて、このブログでは、マーク・ザッカーバーグが、East Palo Alto に1.2億ドル(132億円)の寄附をする話から始まります。
そして実はその数年前にザッカーバーグは東海岸ニュージャージー州Newark市に1億ドル(110億円)を寄附していたと、話が続いていきます。
そして、読むのに1時間以上はかかるであろう「このブログ」の主題(第2章~第13章)は、ザッカーバーグによる寄附をきっかけとして推進されることとなったNewark市での教育改革の話です。
ブログの表題である『誰にも悪気はなかった話』とは、
(1)ザッカーバーグは110億円を投じ、Newark市に教育改革をもたらそう努力した、
(2)これに応えて、市長や州知事たちも、恵まれない子どもたちがきちんとした教育を受けられるようにと熱意を持って教育改革に取り組んだ
(3)にもかかわらず、結果として上手く行かずに(どちらかと言うと)失敗してしまった
という話です。
詳しく読んでいくと、どこに失敗の要因があったのか、なんとなく分かる気がするのですが、これ以上ここで述べるのは控えますので、是非ブログを読んでみてください(『こちら』)。
* * *
ところで話は変わりますが、2005年のことです。
スタンフォード大学のビジネス・スクール卒業後25周年の同窓会が開かれました。
卒業後5年ごとに大きな同窓会を開いてきているのですが、25周年はとくに大きなイベント。
28~30歳位で卒業した人が53~55歳になり、なかには引退する人も出てくるからです。
このときの同窓会のテーマは Giving Back。
そろそろ自分たちも社会に対して何か恩返しをしようと、出席者全員で話しました。
そして出来たのが、Project Redwood(『こちら』)。
同窓会で全員が一堂に会して話し合い、そのままその会がプロジェクト(日本流に言えばNPO法人)の発起人集会(設立総会)となりました。
そしてその会でクラスメートのなかから理事を決めて、プロジェクト(事業)がスタートしました。
それから5年後の2010年。
卒業30周年の同窓会の際に理事たちによる事業報告会が実施されました。
感心したのは、Project Redwoodが設立されるや否や、実際にお金を使い始める前に、理事たち(全員がクラスメートです)が手分けして、類似のNPO法人、財団(たしかカーネギー財団も含まれていたと記憶しています)などを訪問。
NPO法人運営に際しての留意点などのヒヤリングをかけたとのことです。
ビジネス・スクールの卒業生たちが辿ってきたそれまでのキャリアは、 For Profit の組織運営(経営)。
それとは全く違った For Non-profit の組織となると、どうやって運営したらいいか分からないことだらけになります。
だとしたら、すでにこの分野で実績のある組織を運営している人たちを訪ねて徹底的にヒヤリングをかけようとの発想でした。
その甲斐もあって、Project Redwoodは10年以上を経過しても順調に運営され続け、結果も出しているように思います(『こちら』)。
上杉さんのブログを読みながら、そんなことに思いを馳せました。
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