退職金の運用
「退職金は何パーセントで運用したらいいか。3パーセント程度を目指すべきでしょうか」
こういった質問を雑誌社の記者の方などからよく受けます。
来月以降、実際に記事になって出てくると思うので、記事については出た段階で、このブログでまたお知らせします。
なお以下に書くことは、雑誌の記事とは重複しません。
さて、記者の方が言われたように、「3パーセントで運用する」といった言葉は実際のところ、新聞や雑誌でよく目にします。
銀行や証券会社のセミナーで、フィナンシャル・プラナーと称する方たちが「3パーセント程度での運用を目指す」と説明するのを聞いたことがある人も多いでしょう。
言うのは簡単ですが、「3パーセントで運用する」とは、いったいどういうことでしょうか。
60歳の人が退職金を2,000万円受け取って、年率 3パーセントで運用すると、20年後の80歳の時には、
2,000万円×(1.03)^20=2,000万円×1.806
となっています。(注:「^20」は20乗のことです)。
つまり2,000万円が3,612万円になっているということです。
しかし低金利、低インフレ(というかデフレ気味)のこの時代に、「3パーセントで運用する」というのは簡単ではありません。
たとえば日本株での運用を考えてみましょう。
仮に20年前に2,000万円を投じていれば、何パーセントで運用できていたでしょうか。
20年前の日経平均は18,656円ですから
18,656円(20年前の8月25日)→19,452円(先週末)をエクセルを使って解くと、
年率 0.21パーセントでしか運用できていないことがわかります。
これでは現在の住信SBIネット銀行の定期預金金利とほとんど同じで、静岡銀行の定期預金金利以下の水準です。
日銀の黒田総裁がバズーカ砲を何度か放っても、結局はこういった運用実績しか得られなかったわけです。
私は、若い人が無理のない範囲で投資をするのはいいと思います。
毎月の給与や年に1~2回の賞与も見込めるからで、投資に失敗しても何とか挽回できます。
人によっては例えばゴルフや外食の回数を減らすことによって、埋め合わせをすることも可能かもしれません。
しかし退職者は収入が年金に限られてしまいます。
投資に失敗して退職金を半分にしてしまったら、退職後のライフプランが一気に狂ってしまいます。
来月から節約のため食費を半分にするとか、電気代節約の為にエアコンを控えるといったことを始めれば、健康に響いてしまいます。
「半分とは大げさな」と思われるかもしれません。
しかしあの投資の神様であるウォーレン・バフェットでさえ「自分はこれまでに(相場の下落などによって)資産を半分にしたことが4度もある」と語っていました。
銀行の窓口などで「3パーセントでの運用を目指しましょう」と勧められ、説得(?)されることも少なくありません。
そう言われたら、今度はこう切り返してみたら如何でしょう。
「そんなことが可能であれば銀行は日銀の当座預金にゼロ金利やマイナス金利でお金を預けておかないで、これを引き出して、銀行自身が3パーセントでの運用を目指したらどうですか」
銀行としては、国債を買って直後に日銀に転売したり、海外債券を買ったり、リート(REIT)を買ったりしていますが、それでも、取れるリスクには上限があるので、結局はゼロ金利に近い金利で日銀に362兆円もの資金を預金しています(『こちら』)。
3パーセントで運用するのが難しいからこそ、黒田さんがバズーカで資金を市場にばらまこうとしても、銀行は日銀への預金という形で資金を日銀に戻してしまう。
だからお金が市場に回っていかないのです。
3パーセントでの運用が難しいのは銀行自身がいちばん良く知っています(ちなみに例えば、みずほフィナンシャルグループの16年度当期利益は6000億円。総資産200兆円の0.3%でしかありません)。