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2017年12月31日 (日)

今年1年間で

昨年末との比較です。

* * *

日経平均 19114(昨年末)→ 22764(今年末) +19%

ソフトバンク 7765 → 8920 +15%

ZOZOTOWN(スタートトゥデイ) 2019 → 3425 +70%

ソニー 3275 → 5083 +55%

任天堂 24540 → 41190 +68%

* * *

ダウ平均 19762 → 24719 +25%

アップル 113.99 → 169.23 +48%

アマゾン 749.87 → 1169.47 +56%

フェイスブック 115.05 → 176.46 +53%

グーグル 792.45 → 1053.4 +33%

NVIDIA 106.33 → 193.5 +82% 

* * *

為替

円ドル(TTM) 116.49円 → 113円 +3%円高 

* * *

ビットコイン(ドル建て)

959.04 → 12974.46 13.5倍 

* * *

2017年は、ソニー、任天堂といった、個人投資家に好まれ売買出来高も大きい株が、値を上げました。

多くの個人投資家にとっては総じて良い年だったのではないでしょうか。

日本株以上に値を上げたのが米国株。

とくにアマゾン、NVIDIA、フェイスブックといったテクノロジー株が好調でした。

2018年はどんな年になるのでしょうか。

すでに2か月前に報じられていますが、欧州中央銀行(ECB)は現在月額600億ユーロとしている債券買い入れの規模を1月から月額300億ユーロに半減、約3年前に導入した緩和政策を解除する方向に向けて動き出します。

もっとも買い入れは2018年9月末まで継続するとしていて、必要に応じ、債券購入の増額や再延長の可能性も検討するとのこと(『こちら』)。

トランプ大統領は相変わらず強気で、6時間ほど前に下記のようにツイートしています(『こちら』)。

Jobs are kicking in and companies are coming back to the U.S. Unnecessary regulations and high taxes are being dramatically Cut, and it will only get better. MUCH MORE TO COME!

(雇用はぐんと良くなってきているし、海外に出ていっていた企業も米国に戻ってきている。不必要な規制は撤廃され高い税金は劇的に削減されている。これから先ももっと良くなるだけだ。まだまだ続くので、みなさんご期待ください)。

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2017年12月29日 (金)

読んで気分が楽になった本

吉野源三郎さんの『君たちはどう生きるか』

最近『コミック版』が出て、かなり売れているといったニュースを耳にしていました。

実際に書店で平積みになっているのを見て、「そう言えば小学生の頃か、中学生だったか、この本を読んだな」と思いながら、ページをめくってみると、コペル君だとかおじさんだとか、懐かしい言葉が目に入り、昔の記憶が蘇ってきました。

昔読んで強く印象に残ったけれども、そのくせ内容についてはかなり忘れてしまっている―そういった本は結構あるものです。

『君たちはどう生きるか』も私にとってそんな1冊で、おじさんがコペル君に生きていく上でのヒントになるようなことをいろいろと教える本、といった程度の記憶しか残っていませんでした。

だからコミック本は新鮮な気持ちでもう一度読むことが出来ました。

正しく生きること、勇気を持って正しいと思う道をいくことは結構難しい。しかしそういった道を歩もうと努める人の人生は素晴らしい―この本はこういった点を教えてくれているように思います。

言ってみれば、どんなに貧しい境遇に生まれようとも、誰もが幸せになれる。

社会的地位だとか、貧富だとか、そんなことは人間の価値にはまったく関係ない。

そんな当たり前のことに読者は気づかされるのです。

しかし・・

私を含めて、かつてこの本を読んだ多くの少年少女たちは、高校や大学を出て社会人として巣立っていきました。

社会人になって競争社会に放り出されると、その「当たり前」のことを、ともすると忘れてしまう・・。

会社の中では誰もが上の地位を目指していますから、社会的地位とか経済的な豊かさといった別の価値が重要なのではないか、そんな錯覚をしてしまうのです。

毎日の仕事に追われてしまい、夜空を見上げて星が輝くのに気がつくこともなくなり、道端の小さな植物の葉に赤いテントウムシが息づいているのも見逃してしまいます。

そしてかつてはとても重要に思えたことを忘れかけてしまっていることに気がつかされます。

人間にとってほんとうに重要なのは何か。

自分は正しい道を勇気をもって歩んでいるか。

相手を思いやれる心をもっているか。

少年の頃、コペル君を通じて、私は、「どんなに貧しい境遇に生まれようとも、誰もが幸せになれる」、「社会的地位だとか、貧富だとか、そんなことは人間の価値にはまったく関係ない」ことを学びました。そしてそのことでずいぶんと心が楽になったことを思い出しました。

心がけ次第で誰もが(わたしも!)価値ある人生を送れると気がついたからです。

いま半世紀を経て再びコペル君に接し、そのことを思い出しました。

そしてコミック版だけでなく文庫版ももう一度読んでみようとネットで注文しました。

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2017年12月26日 (火)

ハッとさせられた言葉

Aさんがオランダ・アムステルダムのアンネフランクの家を訪問した時の写真をSNSにアップしていました。

    Amsterdammuseumannefrank5

     (写真はamsterdam.infoのサイト(『こちら』)より)

そのとき写真と一緒に載せられていたアンネの言葉を読んで思わずハッとしました。

  *  *  *

It’s really a wonder that I haven’t dropped all my ideals, because they seem so absurd and impossible to carry out. Yet I keep them, because in spite of everything I still believe that people are really good at heart.

自分でも不思議なのは私がいまだに理想のすべてを捨ててはいないということです。だって、どれもあまりに現実離れして到底実現しそうもないから。にもかかわらず私はそれを持ち続けています。なぜなら今でも信じているからです。いろんなことがあっても人間の本性はやっぱり善なのだと。

  *  *  *

たった64 ㎡のスペースにアンネやその両親、姉を含む計8人のユダヤ人が、ドイツ人の目を逃れて隠れ住んでいました(広さは屋根裏を除く各部屋の合計、詳しくは『こちら』)。

その期間は2年と1ヶ月にもわたります。

8人は最後にはナチス親衛隊(SS)に隠れ家を見つけられ、全員が強制収容所へ送られてしまいます。

アンネが上の文章を書いたのは最後の日記が書かれる1週間前のこと。

どんなに苛酷な、そして理不尽な運命に見舞われても、けっして希望を捨てなかった15歳の少女のひたむきな言葉に思わずハッとさせられました。

 

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2017年12月23日 (土)

読者が選ぶビジネス書コンテスト

『読者が選ぶビジネス書コンテスト』というのがあるんだそうです。

このコンテストのビジネススキル部門に拙著『文系が20年後も生き残るためにいますべきこと』がノミネートされました。

22冊ノミネートされた本のなかの1冊です。

ノミネートされた本の中から「どれがグランプリ候補に相応しいか」を選ぶのは一般読者の方々。

『こちら』からサイトに入り、読者投票の欄をクリックして投票することで選びます。

1人で3票まで投票することができ、たとえばビジネススキル部門の22冊のなかから3冊選んで1票づつ投票することも、いちばん気に入った本に3票を集中させて投票することも可能。

ビジネススキル部門、マネジメント部門など全部で6部門ありますが、関心のない部門では投票せずに無選択とすることもできます。

なお投票に際しては氏名とメアドを事前に記入することを求められます。

よろしかったらぜひ1票ご投票ください!

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2017年12月19日 (火)

70回目の史上最高値更新

今年は幾度となくダウが史上最高値を更新し続けてきているが、

昨日のニューヨークで今年1年の間に記録した「史上最高値更新」の日数が70日となった。

これは年間の取引日のうち、ほぼ3日に1回の割合でダウが最高値を更新し続けたことを意味する(『こちら』)。

70日というのは史上最多で1995年の記録とタイになる(『こちら』及び『こちら』)。

トランプ大統領がさっそく下記のようにツイート(『こちら』)。

70 Record Closes for the Dow so far this year! We have NEVER had 70 Dow Records in a one year period. Wow!

Never had というのは1995年とタイなので正確ではないが、トランプにとってはどうでもいいことなのかもしれない。

以前に彼は

Look at your 401-k’s since Election. Highest Stock Market EVER! Jobs are roaring back!

ともツイートしていた(『こちら』)。

アメリカ人の多くは確定拠出個人年金(401-k)で将来の自分の年金のための資金を積んでいる。

株式で運用しているケースが多く、株価の上昇は自分の年金資金が増えることを意味する。

年金が増えることと職があること。

この2つは米国人にとって重要なポイントで、トランプはその2つの面での自分の実績をアピールすることに余念がない。

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2017年12月17日 (日)

ウィンクルボス兄弟

ビットコイン。

私の周りでは今年の5月頃、17万円程度で買った人が多かったように思います。

私自身もこのとき一瞬「買おうかな」と思いましたが、結局買いそびれたまま。

Bitcoin_4

    (グラフはbitFlyerのサイト(『こちら』)より)

その後ビットコインは100万円を超えたあたりから「暴落するかも」と言われ続け、実際12月8日には210万円だったものが、2日後の10日には154万円へと急落。

しかしまた持ち直して最近時では217万円前後の値を付けています。

半年ほど前に17万円前後で買った人たちはどうしたでしょうか。

いま現在まだ持っているという人もいますが、「2倍になったところで売った」とか、「100万円を超えたので売却した」という人たちも多いようです。

誰もが投機と思っているので最後のババは引きたくない。この種の取引の難しさがこうした行動になって現れているのだと思います。

さてそんなビットコインの世界でとうとう資産1,100億円を超えたというのがウィンクルボス兄弟。

フォーチュン誌の『こちら』の記事に詳しいのですが、この記事が書かれたのが12月4日。

そこからビットコインはさらに値を上げていますので、兄弟の資産はいまや2,000億円を超えているのかもしれません。

「ウィンクルボス兄弟と言ったって誰のことか分からない」

こう言う人も少なくないかもしれません。

ウィンクルボス兄弟は、フェイスブックの誕生を扱った映画『ソーシャル・ネットワーク』(『こちら』を参照)に出てくるハーバード大学のエリート学生。

ボート部に所属し、実際兄弟は2008年の北京五輪で6位に入賞しています。

そんな彼らがフェイスブック相手の訴訟で得た70億円のうち12億円をビットコインに投入。

このときのビットコインの価格が13,000円。

それがその後の急騰で今では1,100億円を超えるようになったということのようです。

『そうは言ってもザッカ―バーグの資産8兆円に遠く及ばない』

先ほどのフォーチュン誌の記事はこう結んでいます。

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2017年12月10日 (日)

40代でやっておくべき11のこと

昨日発売になったPHPのビジネス誌、『The 21』(2018年1月号)。

特集記事は「40代でやっておくべき11のこと」。

     21

私自身の40代をふり返ってみると、40歳の誕生日を興銀の営業第3部課長として迎えました。

そしてその8ヶ月後、村山富市さんが内閣総理大臣になり水俣病問題が政治決着に向けて大きく動き出します。

当時私は水俣病を引き起こしたチッソを担当していました。

水俣病問題の解決のためには患者の方々への補償金の支払いをどうするかがポイントとなります。

すでに当時チッソの債務超過額は1400億円を超しており、実質的に破綻していました。

チッソに対して金融支援を行い、患者に補償金が行くようにしなければなりません。

この支援策策定のために、霞が関(環境庁、大蔵省)や熊本県が中心となって動き、チッソのメイン銀行であった興銀も国や県との協議、他の民間金融機関の意向集約などに忙殺されました。

そして約1年後、「水俣病対策について」の閣議了解、閣議決定となって、この問題が解決に向けて一歩前進します。

この結果を見た後、ほどなくして私は興銀を辞めて、JPモルガンに移り、さらにモルガンからメリルリンチ、リーマン・ブラザーズへと転職し、49歳で独立。いまの会社「インフィニティ」を設立しました。

これが私の40代。

いま思い返すと、職場だけでも5つにもなり、かなりあわただしく動きました。

さて40代をどう過ごすかについて、この雑誌の中で識者の方たちがいろんなアドバイスをしています。

・「40代になったら定年後を視野にモードチェンジをしよう」(楠木新氏)

・「40代になったら社外の人脈を意識して増やす」(柴田励司氏)

しかしどうでしょうか。40代から定年後を視野に入れるというのは私にはチョット違和感があります。

自分自身のことをふり返ってみても、現実に水俣病で苦しんでいる患者の方たちがいる。しかも社会党出身の人が総理になりこの問題の解決の為になんとかしたいと頑張っている。一方で、民間金融機関として出来ることと出来ないことがある(補償金をチッソに貸したって返済原資はありません)。40代の前半はそんなことで悩み続け、また外資に移ってからは企業価値向上のためにどうすべきかを取引先企業に訴え続けました。

常に目の前にあることを解決しようと悩んでいただけで、定年後を視野に入れるとか、あるいは自分の為に人脈を増やすなどという時間もありませんでした。

つまり私の場合はどちらかというと、こうしたアドバイスとはまったく無縁の40代を過ごしていました。

失敗もたくさんしました。

詳しくは 『リーマン恐慌』 という本に書きました(同書29頁)が、メリルリンチへの転職が失敗の最たる例。

しかしそもそも転職自体がリスクを伴うもの。

リスクを取る以上、失敗はつきものです。

ということで、私の40代は失敗もたくさんあり、識者の方々のアドバイスとも無縁のものでした。

* * * * *

ところでこの特集の第3部には私のインタビュー記事も掲載されています。

『40代の未来予想図―これから10年で起きること』

とのタイトル。

   212  

これからの10年。日本の未来は明るくなる・・と言いたいところですが、

興銀の審査部で長いこと未来予測をしていた(プロジェクトファイナンスの審査はときに20年後くらいまでキャッシュフローを引きます)立場からすると、必ずしもそうではありません。

未来を予測する第一歩は過去を知ることです。

未来が変化するためには、なにか明確な要因がなくてはなりません。それがない場合には、未来は過去の延長戦上にあると考えざるをえません。

過去10年で日本はさほど成長せず、産業構造の新陳代謝もあまり進みませんでした。 

たとえばこの10年間で、日経平均株価は48%の上昇に留まったのに対し、米国のダウ平均株価は76%も上昇しました。

GDPも、日本は過去10年間でわずかプラス8%の成長でしたが、米国はプラス34%。

こういった数字を見れば、日本が米国に比べていかに低成長だったかわかります。

さらに大きな問題は、日本は産業構造にも変化が見られないこと。

たとえば、2007年と2017年の「企業の時価総額ランキング」を比較すると、

トップ10の顔ぶれはほぼ変わっていません。

トヨタ自動車、NTTなど、10社のうち6社は10年前と同じ名前が並びます。

加えて、トップのトヨタ自動車の時価総額は、どちらの年も22~23兆円で横ばい。

一方、米国の時価総額ランキングは、ここ10年間で激変。

2006年はエクソンモービルやGE、シティグループなど、製造業やエネルギー、金融が上位でしたが、

2016年はアップル、グーグル、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブックと、上位5社すべてがインターネット企業で、うち2社は設立後20年もたっていません。

しかも、第1位のアップルはこの10年間で株価が8倍になり、現在の時価総額は約102兆円。

これはトヨタ自動車の4.4倍に相当します。

米国では経済を牽引する企業が次々と台頭し、世界全体に大きなインパクトを与えました。

いまや世界中の人々がiPhoneを持ち、グーグルで検索し、アマゾンで買い物をしています。

こうした変化の潮流は、今後10年間でガラリと変わることはありません。

ゲームチェンジャーとなるような要因がないからです。

米国では今後も新しい企業が出現し、経済を成長させ、世界で変化を創出するでしょう。

それに対し、日本は残念ながら経済はあまり成長せず、世界で変化を創出することも米国に比べれば見劣りしてしまう。

過去を踏まえると、残念ながらそう予測するしかありません。

とインタビューではややネガティブなことを正直に言いましたが、それがほぼそのまま記事になっています。

しかし変化の芽がないわけではありません。

10年前と違って今では日本の多くの若い優秀な人材が起業し、価値の創出にチャレンジしています。

Preferred Networks、メルカリなど世界的に注目される企業も増えてきました。

残念ながらシリコンバレーに比べれば、裾野の広さなどの点でまだまだ見劣りしますが、変化の萌芽は確実に存在するように思います。

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2017年12月 8日 (金)

同級生交歓

本日発売の『文藝春秋』(新年特別号;2018年1月号)。

この雑誌の「同級生交歓」ページに高校時代のクラスメートと共に写真が載りました。

写真のいちばん左が私です。

Gakuin_4

早稲田大学高等学院は入学してから卒業までクラスがずっと同じで変わらないシステム。

私が入学したときのクラスはD組で、上記の写真はD組のメンバーです。

余談ですが、私は高校3年の1学期を終えてから1年間AFS留学したものですから、帰国後は1年下のクラスに編入(このときはF組)。

つまり入学はD組、卒業は1年下のF組と、2つの学年、クラスにまたがっていて、同窓会も両方に出席しています。

「今度はF組のメンバーと一緒に同級生交歓ページに出てください」

と文藝春秋の編集者の方に言って頂きましたが、まぁ、たぶんリップサービス。

ところで今月の『文藝春秋』は創刊95周年記念号。

     95_2

菊池寛が34歳のとき、1923年(大正12年)1月に私費で創刊した雑誌が『文藝春秋』ですから、来月でちょうど95周年になるというわけです。

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2017年12月 4日 (月)

ベーシックインカム

ベーシックインカムとは、すべての個人に、無条件で毎月一定のお金を直接配るという政策。

アイデア自体は古く、1516年に英国のトマス・モアが『ユートピア』で貧困対策として記したのが始まりだとされています(朝日新聞『Globe』17年12月)。

ヒラリー・クリントンも著書『What happened』で “you can provide every American with a modest basic income”(239頁)と記し、この政策を公約として検討していた旨を明らかにしています(『こちら』も参照)。

昨年6月5日、スイスはベーシックインカム導入の国民投票を実施。ただし反対約8割で否決(『こちら』)。

今年1月にはフィンランドがベーシックインカム導入の社会実験を始めています。

フィンランドの失業者は現在約18万人。

このうち2000人が抽出されて、月7万4000円のベーシックインカムを2年間もらいます。

月7万4000円とはどういう金額でしょう。

日本で20歳から60歳までの40年間の全期間、保険料を全額きちんと収めた人がもらえる老齢基礎年金が月6万4942円(『こちら』)。

これよりも1万円ほど多い金額です(注:日本のサラリーマンは老齢基礎年金のほかに老齢厚生年金ももらえます)。

フィンランドのベーシックインカム受給者の1人、ユハ・ヤルビネンさん(39)によると、

これまで失業手当の受給に際しては、職業紹介所で担当者に職探しの活動ぶりをチェックされ、「奴隷のようだ」と感じていたと言います(『こちら』)。

ベーシックインカムでもらえる金額は、失業手当より約1万3000円少なくなってしまったのですが、失業手当と違ってベーシックインカムには何の条件もありません。

職を探す必要もないし、仮に働いて収入を得ても減額されずにもらい続けることができます。

ユハ・ヤルビネンさんは、実験が続く2年間の間にこれまで内職でやってきた太鼓づくりをビジネスに育て、さらには映像制作を始めたいと言います(『こちら』)。

さて、仮に日本でベーシックインカムを導入すると、どういうことになるのでしょう。

7万4000円×12か月×1億2600万人(日本の人口)=112兆円

財源的にこれは無理だと諦める水準なのかどうか。

ひとことで言うと、かなり難しい水準です。

下図のように日本の社会保障給付費は118兆円。

(下図の出所は財務省『こちら』

Photo_2

これだけ見ると、

現状の社会保障給付費118兆円≒ベーシックインカム導入コスト112兆円

と思われるかもしれません。

しかし社会保障給付費の原資は56%(66.3兆円)が保険料で、国庫負担や地方負担は約38%。

しかも118兆円の給付費のうち38兆円が医療費なので簡単には行きません。

「ベーシックインカムを導入するから医療費はそれでまかなえ」といっても、国民的合意は得られないからです。

それでもベーシックインカムに対する関心は世界的な高まりを見せていて、カナダのオンタリオ州でも今春、4000人が参加する社会実験の実施を発表(『こちら』)。

小規模のものを含めれば、すでに世界10余りの国や地域で実証実験が始まっていると言います(『こちら』)。

ポイントはベーシックインカムが失業者に働く気を起こさせるかどうか。

フィンランドの制度設計にかかわったマルクス・カネルヴァさん(38)によると

「月7万4000円は1カ月の生活費としては足りないが、安定した収入にはなる。そこでさらに収入を増やすために働いたり、起業などに挑戦したりするかを(実証実験で)確かめる」

とのこと(『こちら』)。

それにしてもあまりに複雑化している日本の社会保障制度。

年金ひとつをとってみても、

  • 老齢基礎年金
  • 老齢厚生年金
  • 定額部分
  • 報酬比例部分
  • 加給年金
  • 振替加算
  • 中高齢寡婦加算
  • 経過的寡婦加算・・・

いったい何人の人が制度の全貌をきちんと理解しているのでしょう。

【注】今回(今年9月)発覚した年金未払い事件は振替加算が未払いだったものです(『こちら』)が、支給する方(日本年金機構)も受給する方(国民)も制度をきちんと理解していないからこそ、こうした問題が出てくるのではないでしょうか。

話はそれてしまいましたが、ベーシックインカムの利点のひとつが、制度が単純明快で、これに係る事務コストもあまりかからないこと。

日本年金機構だけでも正規職員・准職員数 13,009人 有期雇用契約職員数 7,202人の合計2万人を抱えている(『こちら』)ことを考えると、ベーシックインカムの単純さは魅力的です。

フィンランドやカナダの実証実験の結果がどういったことになるのか。

気になるところです。

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