読んで気分が楽になった本
吉野源三郎さんの『君たちはどう生きるか』。
最近『コミック版』が出て、かなり売れているといったニュースを耳にしていました。
実際に書店で平積みになっているのを見て、「そう言えば小学生の頃か、中学生だったか、この本を読んだな」と思いながら、ページをめくってみると、コペル君だとかおじさんだとか、懐かしい言葉が目に入り、昔の記憶が蘇ってきました。
昔読んで強く印象に残ったけれども、そのくせ内容についてはかなり忘れてしまっている―そういった本は結構あるものです。
『君たちはどう生きるか』も私にとってそんな1冊で、おじさんがコペル君に生きていく上でのヒントになるようなことをいろいろと教える本、といった程度の記憶しか残っていませんでした。
だからコミック本は新鮮な気持ちでもう一度読むことが出来ました。
正しく生きること、勇気を持って正しいと思う道をいくことは結構難しい。しかしそういった道を歩もうと努める人の人生は素晴らしい―この本はこういった点を教えてくれているように思います。
言ってみれば、どんなに貧しい境遇に生まれようとも、誰もが幸せになれる。
社会的地位だとか、貧富だとか、そんなことは人間の価値にはまったく関係ない。
そんな当たり前のことに読者は気づかされるのです。
しかし・・
私を含めて、かつてこの本を読んだ多くの少年少女たちは、高校や大学を出て社会人として巣立っていきました。
社会人になって競争社会に放り出されると、その「当たり前」のことを、ともすると忘れてしまう・・。
会社の中では誰もが上の地位を目指していますから、社会的地位とか経済的な豊かさといった別の価値が重要なのではないか、そんな錯覚をしてしまうのです。
毎日の仕事に追われてしまい、夜空を見上げて星が輝くのに気がつくこともなくなり、道端の小さな植物の葉に赤いテントウムシが息づいているのも見逃してしまいます。
そしてかつてはとても重要に思えたことを忘れかけてしまっていることに気がつかされます。
人間にとってほんとうに重要なのは何か。
自分は正しい道を勇気をもって歩んでいるか。
相手を思いやれる心をもっているか。
少年の頃、コペル君を通じて、私は、「どんなに貧しい境遇に生まれようとも、誰もが幸せになれる」、「社会的地位だとか、貧富だとか、そんなことは人間の価値にはまったく関係ない」ことを学びました。そしてそのことでずいぶんと心が楽になったことを思い出しました。
心がけ次第で誰もが(わたしも!)価値ある人生を送れると気がついたからです。
いま半世紀を経て再びコペル君に接し、そのことを思い出しました。
そしてコミック版だけでなく文庫版ももう一度読んでみようとネットで注文しました。
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