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2018年4月 8日 (日)

ドルコスト平均法(3)

ドルコスト平均法には、それが有利な場合と不利な場合とがあります。

株価がどう推移していくかによって有利か不利かが決まるのですが、いくつかのケースを想定して、実際に数値を入れてみることで、どういった場合に有利なのか、そしてどういった場合が不利なのかが、分かるようになります。

たとえば、下記のような3つのケースを想定します(グラフ1)。

Dollar_averaging_2

ケースA 1期目 株価 100、2期目 50、3期目 100

ケースB 1期目 株価 100、2期目 150、3期目 100

ケースC 1期目 株価 100、2期目 100、3期目 100

図で言うと、谷になっている形状(青)がケースA

山の形状(緑)がケースB

平ら(茶)がケースC

です。

各々の場合に(1)最初に一気に投資する方法と、(2)半分ずつ2期に分けて投資する方法とを考えてみます。

(2)の方法がドルコスト平均法です。

総投資額を2,000とした場合、

(1)では、1期目に2,000を投資。

(2)では、1期目と2期目に、1,000ずつを投資。

両者の投資法で3期目がそれぞれいくらになっているかを比較します。

ケースAでは、

(1)1期目に一気に投資する方法では、3期目の資産は2,000

当初資産と同じ金額です。

(2)1期目と2期目に分けて投資、すなわちドルコスト平均法を取ると、3期目は、

[(2,000÷2÷100)+(2,000÷2÷50)]×100=3,000

つまりケースAのような場合には、ドルコスト平均法の方が有利な結果をもたらします。

次にケースBを見てみましょう。

ケースBでは、

(1)1期目に一気に投資する方法では、3期目の資産は、やはり当初と同じ2,000

株価は投資した時点と3期目には同じ水準に戻っているので、このときの資産は、当初資産と同じ金額になります。

(2)1期目と2期目に1,000ずつ分けて投資すると、3期目は、1,667

ケースBのように株価が上がった後に元に戻る場合には、ドルコスト平均法では株価が高くなった時点で株を買ってしまう部分が生じることから、最初に一気に投資する方法に比べて不利な結果をもたらします。

ケースCの場合は、株価が一定に推移しますので、

(1)1期目に一気に投資する方法だろうと、

(2)1期目と2期目に分けて投資する方法を取ろうと、3期目の資産は、当初資産と同じ。

ケースCの場合は、ドルコスト平均法は有利でも不利でもありません。

2_2

株価が第2図の(A)、(B)、(C)のように推移するケースはどうでしょうか。

総投資額を2,000として、

(1)の投資方法では、1期目に全額2,000を投資。

(2)の投資方法では、1期目と2期目に、1,000ずつを投資。

この想定のもとで、株価が(A)、(B)、(C)のように推移すると、

(A)のケース

一気に投資する場合は、4期目は3,500

ドルコスト平均法では、4期目は4,083

(B)のケース

一気に投資する場合は、4期目は3,500

ドルコスト平均法では、4期目は2,917

(C)のケース

一気に投資する場合は、4期目は3,500

ドルコスト平均法では、4期目は3,150

谷になるケース(A)ではドルコスト平均法が有利、山になるケース(B)ではドルコスト平均法が不利という点では、グラフ1も2も同じです。

ただ株価が直線的に上昇するケースではドルコスト平均法は不利な結果をもたらします。

たとえ一部にせよ(上記の例では半分を)、株価が当初に比して上がったところで、購入することになるからです。

* * *

以上を踏まえて、前回のブログで取り上げたヴァンガード社による1926年から2015年までの期間の1,069事例の調査結果を検討してみましょう。

『1,069例を調査した結果、全体の3分の2の割合で、最初に一気に投資してしまう方が、ドルコスト平均法よりも、有利な投資結果をもたらした』

との調査結果です。

これは、よく考えてみると当然とも言えます。

というのも、グラフ2の(C)のケースで見たように、相場が右肩上がりの時にはドルコスト平均法は不利な投資方法になってしまうからです。

ドルコスト平均法のように、少しずつ分けて投資してしまうと、(株価が右肩上がりの場合)、遅れて投資した分は、(最初に一気に投資した場合に比べて)、より高い値段で買うことになってしまうからです。

そしてアメリカの株式市場は基本的には、これまで右肩上がりで推移してきました。

ですからヴァンガード社による調査結果のようになってしまうのです。

* * *

さてここから先は「それでは実際にはどうするか」の問題になってきます。

ヴァンガード社による調査結果に重きを置き、一気に投資してしまうか。

それとも大恐慌やリーマンショックのような谷間が来るときには傷口を広げないことで知られる「ドルコスト平均法」を採用するのか・・。

『そもそも大恐慌やリーマンショックのようなケースはもはや考慮する必要はないのではないか』-そう思う人もいるかもしれません。

そういった人もいることも踏まえて、今年に入ってからの日本株の相場環境で考えてみましょう。

たとえばあなたが65歳になって今年の1月に退職したとします。

そして退職金2,000万円をもらい、これを株式投資に回すとします。

【最初に一気に投資する方法】

1月末に日経平均株価で株(指数)を購入(1月末 23,098円)

現在の資産は

2,000万円÷23,098円=865.9口

865.9口×21,567円=1,867万円

【1月末と3月末に2回に分けて投資する方法】

1月末:1,000万円÷23,098円=432.9口

3月末:1,000万円÷21,454円=466.1口

現在の資産は

899.0口×21,567円=1,939万円

「1,867万円」対「1,939万円」。

その差は72万円です(ドルコスト平均法の方が72万円ほど傷口が浅い)。

こうしたことを踏まえると、私としては、アップサイドをすべて取れなくても、ダウンサイドを小さくするとの観点から、ドルコスト平均法を考えてみるべきだと思うのですが、如何でしょうか。

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