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2018年6月30日 (土)

ベルギー戦

高校時代にAFS留学した時、ベルギーと英国からの留学生も同じ学校にいました。

後列左から3番目が英国、4番目がベルギーからの留学生。

Afs_3

 (当時のニクソン大統領から「私邸で昼食を食べよう」と招かれたときの写真)

これは当時の写真で、現在(1年前)は下の写真。

一番右が英国、その隣がベルギー(漢字で書くと白国)。

Reunion_3_2

当時の留学生たちは現在でもWhatsApp(LINEのようなトークアプリ)で、毎日のように会話を続けているのですが、最近の話題はワールドカップ。

英国・ベルギー戦の前は、「今回はあなたたちが勝って!」とばかり、お互いが勝利を譲り合っていましたが、それは相手を思いやっている訳でもなんでもなくて、英国・ベルギー戦で負けておいた方が、ベスト4進出の際にブラジルと戦わなくてすむからです。

何たる侮辱!

ベスト4進出を見据えての議論とは・・。

「えーっと、あなたたち!」

「その前にベスト8に行くために日本を倒さなければならないんですけど・・・。」

英国・ベルギー戦を終えて早速、ベルギーの留学生から連絡が来ました。

「次は日本戦ね。宜しく!」

白々しいです。

WhatsAppでの英・白の会話はグループ化されているので、しっかりと私の目にも触れていましたから・・・。

ベルギーの留学生にどう返事しようか迷いましたが、

「ベルギーは英国戦ではベストなメンバー9名を休養させて試合に出しませんでしたよね。それほどまでに日本との試合を考えて頂けて光栄です!」

と、早くもWhatsAppの上では、日・白のワールドカップ前哨戦がスタート。

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2018年6月25日 (月)

アセット・アロケーションとリバランス (その5)

セネガル戦、手に汗握る展開で、見ごたえがありました。

先週はイタリアに行っていたのですが、見ず知らずの人から

「日本は凄いね。コロンビアを破るとは!」

と声をかけられたりしました。

そう言えば、イタリアは今回60年ぶりの予選敗退。

ロシアに行けませんでした。

にもかかわらず、テレビのチャンネルをひねれば、すぐ出てくるのがワールドカップの中継。

「さすがサッカー大国イタリア」といった感じでした。

* * *

さて前回記事の続きです。

株式と債券との間でアセット・アロケーションを図る(あくまでも米国での話です。本シリーズの「その2」をご覧ください)・・・・。

このことの重要性について、これまで書いてきました。

これは主として株が下がれば債券は上がることが多く、両方持つことによって、株下落時の傷を小さくすることが出来るからです。

このように一方の金融資産が下落すれば、他方が上がるとき、両者は「負の相関」にあると言っています。

さて、株式と債券とを併せ持つことで、下落時の傷を小さく出来ることは分かりました(その代わり上昇時には上昇の程度が弱まる)。

それでは株式の中でのアセット・アロケーション(先進国株と新興国株など)を図るべきなのかどうか・・。

つまり「米国株と他の先進国株」、あるいは「米国株と新興国株」といった具合に併せ持つべきなのかどうか。

この問題にアプローチする前に、先ほどの「相関」の意味をもう少し深掘りする必要が出てきます。

両者(この場合は2つの金融資産)がどの程度の相関の関係にあるかを現すものとして、「相関係数」という概念があります。

相関係数(correlation coefficient)とは、ビジネススクールでファイナンスや投資の授業を取ると、最初に出てくる概念です。

具体的には、「共分散(covariance)の値を、各変数の標準偏差の積で割ったもの」が「相関係数」なのですが、こう説明されても「チンプンカンプン」かもしれません。

とくに統計学を学んだことがない人には分かりにくい説明となってしまっています。

実は、ウィキペディアの共分散の説明箇所(『こちら』)に、相関係数についても説明があり、例をあげて比較的分かりやすく説明されていますので、関心のある方はそちらをご覧になってください。

面倒くさい方は、結論だけを頭に入れておきましょう。

  • 相関係数は必ず「-1.0 から +1.0」の間(-1.0と+1.0を含む)に収まる
  • 相関係数が「-1.0」のときは「完全な負の相関」にある。こうした関係にある2つの金融商品を持てば、ポートフォリオの標準偏差(リスク)はゼロになる(下記の表における(b)。
  • 相関係数が「+1.0」のときは「完全な正の相関」にある。こうした関係にある2つの金融商品を持つ場合、ポートフォリオの標準偏差(リスク)は(個別の金融資産に比して)いっさい減少しない(下記の表における(a)。
  • 相関係数がゼロの場合は無相関(2つの金融商品は独立していて関係がない)

Covariance

上記の表も面倒くさい方は下図をご覧ください。

Correlation_2

いちばん左が相関係数「+1.0」の「完全な正の相関」。

真ん中が相関係数「-1.0」の「完全な負の相関」。

いちばん右が相関係数がゼロの無相関です。

株式と債券とは通常は「負の相関」の関係にあることが多いので、両者を併せ持つことで、リスク(価格の振れ幅の度合、標準偏差で示される)を減らすことが出来ます。

Correlation_stocks_etc

上図は1970年から2012年までの米国株価(S&P500)と他の金融資産との毎月の相関係数をグラフ化したものです。

ジェレミー・シーゲル教授の『株式投資』の原書『Stocks for the Long Run』(第5版)49頁の図です。

これを見ると分かるように、2001年以降は株と債券(10年国債)との間には負の相関が見られます(2012年の相関係数は-0.29)。

しかしS&P500とEAFE(米国・カナダを除く先進21ヶ国の株価指数。EAFEはEurope, Australia, Far Eastの略)の間は、+0.91の正の相関。

S&P500とEm Mkt(新興国株価指数)の間は、+0.85の正の相関。

つまり米国株と他の先進国株、あるいは新興国株を併せ持つことでは、債券を併せ持つときに比して、リスクの低減はあまり見込めません。

一方でリターンはどうかというと、

過去10年間の実績では

米国株 年率平均リターン 8.43%(『こちら』

EAFE 年率平均リターン 2.10%(『こちら』

Em Mkt 年率平均リターン 1.62%(『こちら』

過去5年間の実績では

米国株 年率平均リターン 12.26%(『こちら』

EAFE 年率平均リターン 5.93%(『こちら』

Em Mkt 年率平均リターン 4.52%(『こちら』

つまり米国株と他の先進国株、あるいは新興国株を併せ持つことで、リターンはかなり薄まってしまうのですが、これに対してリスクの低減はあまり見込めないのです。

よって【A】 「米国株以外に投資対象を広げることには否定的な見方」 も多いのが現状です。

ただしこれはあくまでも過去の実績に基づく議論。

これからは中国、インドが台頭してくるとの議論もあり(たとえば『こちら』)、米国株だけに固執するのではなく

【B】  「世界の株式市場といった考え方を取り入れろ」との意見も同じように多く見られます。

【A】か【B】 、どちらを取るか、結局はあなた次第といったことなのかもしれません。

ちなみにシーゲル教授(上記の本の206頁)も、マルキール教授(『ウォール街のランダム・ウォーカー』原書第8版の翻訳本409頁)も、後者【B】の見解(世界の株式市場に投資せよ)です。

ただ両教授が実際に実務をどこまで分かってこう書いているのか、疑問がないわけではありません。

たとえば「新興国株へ分散投資するには『MSCI Em Mkt (『こちら』)』に投資せよ」ということなのでしょうが、中国など新興国は資本規制を設けることが少なくなくありません。

こうしたこともあって、MSCI社は2014年から中国本土に上場されている中国株(人民元建てのA株)の組み入れを検討してきましたが、3年連続でこれを見送ってきました。

ようやく2018年6月から組み入れを開始、しかし今もその比率を1%未満に抑えて慎重に対応しています。

現状『MSCI Em Mkt  (『こちら』)』への組み入れ比率が最も高い株式は、テンセント(5.5%)、次はアリババ(4.3%)ですが、テンセントは香港、アリババはニューヨーク上場です。

このように上場する市場が必ずしも国対応でないケースが散見されるようになってきたのと同時に、ますますボーダレス化する企業活動(たとえばP&G社の売上げの55%は米国、カナダ以外の地域)の現状を鑑みると、「米国株と他の先進国株、新興国株を時価総額比で分散させる」という教科書的原則だけでいいのかどうか・・・。

先行する現実に理論の方が追いつかなくなっているような気もします(もっとも私が勉強不足で最新の理論なり論文を目にしていないだけなのかもしれませんが・・・)。

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2018年6月16日 (土)

アセット・アロケーションとリバランス (その4)

前回記事の訂正というか、新しいデータに基づくアップデートが、一つあります。

9日の記事でアップルのROEを37%と書きましたが、これは昨年12月までのデータをベースとするもの。

今年3月末までのデータ(先月1日に発表)を入れて再計算すると、アップルのROEは41%になります(同じようにコカ・コーラのROEも最近時データを入れると少し変わってきます)。

それにしてもアップルのROE。

なんと41% とは!

ちなみに日本の主な企業で見てみると・・・

経団連会長を輩出している日立のROEは12%(『こちら』)。

日本最大の時価総額を持つトヨタのROEは11%(『こちら』。)

(注:どういうわけかトヨタは18年3月末ベースのROEの数字を載せていなくて、これは1年前の数字)。

改めてアップルの決算書(『こちら』)を覘いてみましょう。

売上高総利益率が38%。

売上高純利益率が23%。

単純計算すれば、10万円のiPhone のうち、なんと 2万3000円がアップルの儲け(税金などを払った後のベース)ということになります。

さらにアップルのバランスシートに目をやります。

アップルが持つ現金の額はなんと約5.0兆円。

このほかに短期の市場性のある有価証券を4.7兆円も持っています。

現在アップルの時価総額は102.7兆円。

ドルベースで『1兆ドルに、あと一歩』のところまでやってきました。

* * *

さてアップルの話はこのくらいにして、話をアセット・アロケーションとリバランスに戻します。

『長期的には株式のほうが債券よりもずっとリターンが高く、リスクも低い』(ジェレミー・シーゲル教授及びバートン・マルキール教授)。

だとすると、株式にだけ投資していればよくて債券には手を出す必要などなさそうですが、両教授の著作を読むと、これがどうやらそんなことはないらしい・・。

少なくとも両教授とも「投資家はアセット・アロケーションをはかれ」との意見です。

とくにマルキール教授の方は、この辺、明快です。

Asset_allocation

上図はマルキール教授の『ウォール街のランダム・ウォーカー』(私の持っている原書第8版の翻訳本)の409頁の図。

マルキール教授は、このように個人投資家の年齢に応じて、株と債券のアセット・アロケーションを図れと主張しています。

シーゲル教授の方はどうでしょう。

教授の論拠は1802年から2012年までの210年間の実証研究です。

次の図(『株式投資』の原書『Stocks for the Long Run』(第5版)102頁)を見てください。

Asset_allocation_2_3

シーゲル教授のこの図が言わんとしていることは、30年持つのであれば株を100%持つと年率平均7%近くのリターンを期待できる。

債券を100%持つ場合(30年間保有)は年率平均3%強のリターン。

しかし株を68%、債券を32%とする割合が、リスク(リターンが下方に振れる確率)をいちばん小さくすることができる。

といっても、「株68%、債券32%」のときのリターンは5.6%程度。

株100%に比べて、リターンがずいぶんと犠牲になりますが、図を見て分かるようにリスクの削減効果はさほど高くはありません。

Asset_allocation_3_3   

そこで教授の『株式投資』(原書第4版の翻訳本)では、リスクをある程度許容できるのであれば、「30年保有する場合、株式100%でもいい」とまで言っているのですが・・・(なお上図で100%を超えるケースは信用取引などで借金をして株式の比率を100%以上にせよ、との意味です)。

ちなみに、この最後の図は、後に出版された原書第5版では削除されてしまっています。

このようにシーゲル教授は債券と株とのアセット・アロケーションについて、やや歯切れが悪い・・・(少なくとも私にはそう思える)。

以上が両教授の見解ですが、一般に米国では、

「リターンが下方に振れる確率を少しでも抑え込むとの観点に立てば、株式だけでなく債券を交えてポートフォリオを組むことが有用である」

と考えられています。

それに20年、30年という長期にわたって金融資産を保有するつもりでいても、長い人生、何が起こるか分かりません。

途中でポートフォリオを取り崩さざるをえなくなることもあり得るわけで、「結果的に」保有期間が5年で終わってしまう可能性もあるわけです。

ですから、「アセット・アロケーションとリバランス」(その1)で述べたように、

株式の割合は「120マイナス年齢」(例:35歳の人は85%)くらいを株式の割合にして残りを債券にする

というのが、一般的に妥当だと考えられている資産配分法なのです。

さてまた長くなってしまいました。

まだ書いていないことを上げておくと、

1)株式の中でのアセット・アロケーション(先進国株と新興国株など)

2)平均回帰性とリバランス

3)平均回帰性と効率的市場仮説、経済物理学、ベキ分布

このようにいろいろと書きたいことがあるのですが、またの機会にさせて下さい。

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2018年6月 9日 (土)

アセット・アロケーションとリバランス (その3)

ジェレミー・シーゲル教授の言う『長期的には株式のほうが債券よりもずっとリターンが高く、リスクも低い』とはどういうことなのでしょう。

詳しくは教授が著した『株式投資』ご覧になって頂きたいのですが、下図をご覧ください。

1_3

これは iPhoneで撮影したものを載せているので、やや見にくいかもしれません(クリックすると拡大します)。

教授の『株式投資』の原書『Stocks for the Long Run』(第5版)95頁の図です。

ちなみに原書の第5版は2013年に書かれたもので、リーマンショック後のデータを含みます。

一方、翻訳本の方は第4版の翻訳。リーマンショック前の2007年に書かれたものです。

さて上図は1802年以降2012年までの(なんと!)210年間の期間を対象に、保有期間(1年、2年、5年、10年、20年、30年)ごとに、株式、長期債、短期国債の実質リターン(インフレ調整後)の最高値と最低値を示したものです。

保有期間1年に限ってみると、いちばん良い年には株式は66.6%のリターンをもたらしました。

しかし悪い年には▲38.6%ものマイナスになりました。

ここで株式のリターンとは、

Dividends plus capital gains or losses on a broad-based capitalization-weighted index of U.S. stocks

のことです。つまり配当とキャピタルゲイン(もしくはロス)です。

このように、1年しか持たないのであれば、株式は高いリターンをもたらすこともあるけれども、逆にうんと損をしてしまうこともあります。

しかし20年間持つとすると、どうでしょう。

様相がガラリと変わってきます。

1802年から2012年までの210年間。

この210年間の『どの20年間を取っても』、株式投資はマイナスになることはありませんでした。

たとえ最悪の20年間を選んだとしても、少なくとも実質ベースで年率1.0%のリターンを確保し得たのです。

それに比べて長期債、短期国債の実質リターン(インフレ調整後)は選んだ時期によっては、期間20年間でマイナス3%あるいはそれを下回ることもあったのです。

『長期期間持てば株式のほうが債券よりもずっとリターンが高く、リスクも低い』というシーゲル教授の主張はこうした実証研究から導き出された結論だったのです。

実は似たような主張はバートン・マルキール教授の『ウォール街のランダム・ウォーカー』の中にも見られます。

私の持っているのは原書第8版の翻訳本なので少し古いのですが、下図はその396頁に出てくる図です。

Photo

対象となっている期間(1950〜2002年)やポートフォリオ(この場合S&P500)などの諸点でシーゲル教授のデータと異なるのですが、言っていることは同じです。

以下、引用です。

『典型的な株式ポートフォリオのリターンは、ある年には52%を超えたかと思えば、別の年には26%以上ものマイナスになっていたりする。

ある1年間をとってみて、確実に満足のいくリターンを稼げる保証はどこにもない』(395頁)

『しかし、もし25年間株式を持ち続けられるなら、話は全然違ってくる。

どの25年間をとるかによって多少の違いはあるかもしれないが、その差は大きくない。

上のグラフの対象期間中に25年間株式を持ち続けたとすると、年平均10.5%のリターンが得られた。

もし1950年以降、株式投資にとって最悪だった25年間をとったとしても、年平均リターンはそれより約3%低かっただけである』(396頁)

ここでひとつ注意点があります。

だったら株式で運用しようと即断してはいけません。

シーゲル教授もマルキール教授もアメリカの株式市場について言っているのであり、残念ながら日本は違います。

1989年12月29日に38,915円だった日経平均株価は、20年後に10,546円、25年後には17,450円だったのですから、いくら長期間持っても米国のようにプラスのリターンになることはなかったのです。

アメリカの210年間の全ての期間で言えたことが、なぜ日本には当てはまらないのでしょうか。

これはひとつには日本の資本主義がまだ発展途上にあるからです。

1980年代後半から90年初め、日本がバブルだった頃には、日本企業の経営者の多くは株主から預かったお金、つまり株主資本を「借金と違って返す必要のない無コスト資金」と勘違いしました。

結果、多額の転換社債、ワラント債が発行され、巨額増資も行われました。

資本は無コストどころか、借金の場合の金利よりも高いコスト(資本コスト)を負っているにもかかわらずこうした間違いをおかしてしまったのです。

「これではダメだ。企業は国際標準に近い利益を上げて株主に報いよう」とばかり、伊藤レポートが発表されたのが2014年8月。

これは今からほんの4年ほど前のことです。

伊藤邦雄一橋大学大学院商学研究科教授の名を冠したこのレポートでは「資本勘定(自己資本)に対して少なくとも8%の利益をあげるべき」との呼びかけが企業に対してなされました。

ちなみにこの比率は自己資本利益率(ROE)と呼ばれるものですが、アップルのROEは37%。

「少なくとも8%」と言っている日本の比ではありません。

コカ・コーラの過去13年間のROEは20%~42%のレベル。中央値は 27%です。

日本の資本主義がまだ発展途上にあることは他にもいろいろな点に現れているのですが、ここではもう一つだけ挙げてみましょう。

株主優待です。

アメリカの企業は若干の例外を除き株主優待を行いません。

たとえばダウ平均株価採用銘柄の30社で株主優待を行っているところは一つもありません。

これに対して日本では上場企業の36%もが株主優待を行っています。

企業は株主のものであるという意識が徹底しているアメリカの資本主義においては、株主優待とは、株主が自分の資産を取り崩して自分に支払う行為です。

つまり会社から財産が流出したら、それは株主の負担になるということです。  

ですから基本的には「行って来い」の関係で、株主優待を行おうと行うまいと、経済効果は等しい(タコが自分の足を食うような関係)のですが、

配当金(現金)と違って優待の内容から得られる便益は大部分の株主にとっては現金以下の価値しかありません。

また株主優待を行なうことの事務コスト(郵送料、労働コスト)も馬鹿にならず、その分だけ株主にとっての企業価値は毀損されます(つまり理論的には優待実施後には「優待の経済価値+アルファ」分だけ株価が下がります)。

このように企業にとっても投資家にとっても、株主優待はマイナスの意味しか持たないのですが、

日本では企業は株主のものであるという意識が乏しく、経営者も株主から与えられた資金を使って「利益をあげる」=「価値を創造する」という意識に乏しいことから、いびつな慣行がまかり通ってしまっています。

このほかにも日本の株式市場は「ちょっとおかしいぞ」というところがあるのですが、話がそれていってしまうので、ここではこの辺にしておきます。

いずれにせよ、こうしたことから日本の株式投資家は(アメリカの株式市場に投資してきた投資家に比べて)、きちんとしたリターンをあげることができなかったといえます。

このため『長期期間持てば株式のほうが債券よりもずっとリターンが高く、リスクも低い』の法則は(残念ながら)日本には当てはまらない法則となってしまっています。

さて以上を踏まえて、もういちど 『金融資産は株と債券で持て。その比率は「100(もしくは110、120)マイナス年齢」で株式を持て』 といったアセット・アロケーションのルールを考えてみることにしましょう(長くなったので次回にします)。

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2018年6月 2日 (土)

アセット・アロケーションとリバランス (その2)

アメリカでは 『金融資産は株と債券で持て。その比率は「100マイナス年齢」で株式を持て』 と言われてきました。

それがなぜ最近は 「110マイナス年齢」 あるいは 「120マイナス年齢」 といったように株式の比率が多めに変わってきたのでしょうか。

その理由は 『こちら』 の記事にありますように、

(1)平均寿命が延びてきたこと(20年前に比しアメリカ人の平均寿命は3年も延びている)

(2)低金利化で従来の「100マイナス年齢」で株式を持つようにすると、債券部分がじゅうぶんなリターンを生まず、結果的に資金ショートになる(老後しばらくしてから資金が足りなくなる)恐れが出てきた

という2点にあるようです。

実際のところ、1980年代初頭の10年物国債(10 year Treasury Notes) の利回り(yield)は15%を超えていました(下図;出所は『こちら』)。もちろん当時はインフレ率も高かったのですが・・。

10_yr_3

政策金利を取ってみても、『1965年から2000年の政策金利は平均7%超あった』(イエレン前FRB議長)ものの、最近では『これから先、3%程度で打ち止めにする』案が出てきている(5月29日、日経)と言います。

いずれにせよ「債券という比較的安全な資産に資金を置いておくことの報酬」(=金利)が少なくなってきた(『こちら』)ことから、アセット・アロケーションの配分比に関する考え方が変わってきたという事情があるようです。

アメリカでさえこうした状況になっていることを考えると、「ゼロ~マイナス金利」の国(下図参照)に住む我々日本人はどのようにアセット・アロケーションを考えたらよいのでしょうか。

10_yr_jgb

2000万円の金融資産を持つ人がアセット・アロケーションを考え、2割を日本国債に置くとして、10年物の日本国債の金利は現状0.04%(『こちら』)。

たとえ手数料を勘案しなくとも、

2000万円×2割×0.04%=1,600円

20年置いても1,600円×20年=3万2000円。

こう考えると債券部分のリターンはあまり意味がありません。

メガバンクに定期預金で置くと、金利は0.01%(三菱UFJ)

ネット銀行では取引開始に際してはキャンペーン金利が適用になることがありますが、それも1年まで。

通常はたとえば期間5年で年0.03%がやっと。

いずれにせよ債券や預金から金利をもらうこと自体、あまり意味のない世界に入っていってしまいます。

もちろんそういった環境下であっても、(アセット・アロケーションといった考え方を取るかどうかは別にしても)、

金融資産のうち価格変動に曝される 株式は『一定割合に抑えておく』(他は定期預金だろうと普通預金だろうと、そんなに大差ない)という考え方自体は重要でしょう。

ところで日本の特殊事情はさておき、『長期的には株式のほうが債券よりもずっとリターンが高く、リスクも低い』と主張する(とされている)シーゲル教授はアセット・アロケーションについてどう考えているのでしょうか。

次回は教授が著した名著『株式投資』の視点からアセット・アロケーションについて考えてみましょう。

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