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2018年6月16日 (土)

アセット・アロケーションとリバランス (その4)

前回記事の訂正というか、新しいデータに基づくアップデートが、一つあります。

9日の記事でアップルのROEを37%と書きましたが、これは昨年12月までのデータをベースとするもの。

今年3月末までのデータ(先月1日に発表)を入れて再計算すると、アップルのROEは41%になります(同じようにコカ・コーラのROEも最近時データを入れると少し変わってきます)。

それにしてもアップルのROE。

なんと41% とは!

ちなみに日本の主な企業で見てみると・・・

経団連会長を輩出している日立のROEは12%(『こちら』)。

日本最大の時価総額を持つトヨタのROEは11%(『こちら』。)

(注:どういうわけかトヨタは18年3月末ベースのROEの数字を載せていなくて、これは1年前の数字)。

改めてアップルの決算書(『こちら』)を覘いてみましょう。

売上高総利益率が38%。

売上高純利益率が23%。

単純計算すれば、10万円のiPhone のうち、なんと 2万3000円がアップルの儲け(税金などを払った後のベース)ということになります。

さらにアップルのバランスシートに目をやります。

アップルが持つ現金の額はなんと約5.0兆円。

このほかに短期の市場性のある有価証券を4.7兆円も持っています。

現在アップルの時価総額は102.7兆円。

ドルベースで『1兆ドルに、あと一歩』のところまでやってきました。

* * *

さてアップルの話はこのくらいにして、話をアセット・アロケーションとリバランスに戻します。

『長期的には株式のほうが債券よりもずっとリターンが高く、リスクも低い』(ジェレミー・シーゲル教授及びバートン・マルキール教授)。

だとすると、株式にだけ投資していればよくて債券には手を出す必要などなさそうですが、両教授の著作を読むと、これがどうやらそんなことはないらしい・・。

少なくとも両教授とも「投資家はアセット・アロケーションをはかれ」との意見です。

とくにマルキール教授の方は、この辺、明快です。

Asset_allocation

上図はマルキール教授の『ウォール街のランダム・ウォーカー』(私の持っている原書第8版の翻訳本)の409頁の図。

マルキール教授は、このように個人投資家の年齢に応じて、株と債券のアセット・アロケーションを図れと主張しています。

シーゲル教授の方はどうでしょう。

教授の論拠は1802年から2012年までの210年間の実証研究です。

次の図(『株式投資』の原書『Stocks for the Long Run』(第5版)102頁)を見てください。

Asset_allocation_2_3

シーゲル教授のこの図が言わんとしていることは、30年持つのであれば株を100%持つと年率平均7%近くのリターンを期待できる。

債券を100%持つ場合(30年間保有)は年率平均3%強のリターン。

しかし株を68%、債券を32%とする割合が、リスク(リターンが下方に振れる確率)をいちばん小さくすることができる。

といっても、「株68%、債券32%」のときのリターンは5.6%程度。

株100%に比べて、リターンがずいぶんと犠牲になりますが、図を見て分かるようにリスクの削減効果はさほど高くはありません。

Asset_allocation_3_3   

そこで教授の『株式投資』(原書第4版の翻訳本)では、リスクをある程度許容できるのであれば、「30年保有する場合、株式100%でもいい」とまで言っているのですが・・・(なお上図で100%を超えるケースは信用取引などで借金をして株式の比率を100%以上にせよ、との意味です)。

ちなみに、この最後の図は、後に出版された原書第5版では削除されてしまっています。

このようにシーゲル教授は債券と株とのアセット・アロケーションについて、やや歯切れが悪い・・・(少なくとも私にはそう思える)。

以上が両教授の見解ですが、一般に米国では、

「リターンが下方に振れる確率を少しでも抑え込むとの観点に立てば、株式だけでなく債券を交えてポートフォリオを組むことが有用である」

と考えられています。

それに20年、30年という長期にわたって金融資産を保有するつもりでいても、長い人生、何が起こるか分かりません。

途中でポートフォリオを取り崩さざるをえなくなることもあり得るわけで、「結果的に」保有期間が5年で終わってしまう可能性もあるわけです。

ですから、「アセット・アロケーションとリバランス」(その1)で述べたように、

株式の割合は「120マイナス年齢」(例:35歳の人は85%)くらいを株式の割合にして残りを債券にする

というのが、一般的に妥当だと考えられている資産配分法なのです。

さてまた長くなってしまいました。

まだ書いていないことを上げておくと、

1)株式の中でのアセット・アロケーション(先進国株と新興国株など)

2)平均回帰性とリバランス

3)平均回帰性と効率的市場仮説、経済物理学、ベキ分布

このようにいろいろと書きたいことがあるのですが、またの機会にさせて下さい。

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