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2018年10月30日 (火)

Halloween

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          (Photo by Hidetoshi Iwasaki)

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2018年10月29日 (月)

テクノロジーが人間の仕事を奪う

先週月曜日に続き、現代ビジネス(現代ISメディア)インタビュー記事の第2回目です(『こちら』)。

『テクノロジーが人間の仕事を奪う』といった話。

この種の話については、2013年にオックスフォード大学オズボーン准教授が論文を発表して以来、日本でもよく取り上げられるようになりました。

『見たよ』といった感想の方も多いかもしれません。

しかしあれからすでに5年が経っています。

実は、この間、機械はどんどんと人間の職場を奪ってきました(この辺はオズボーン准教授の予想通りなんですが・・)。

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(Smartgate Eligibility Screen at Sydney Airport;From Wikimedia Commons; CC BY-SA 4.0)

例えば、先日のブログにも書きましたが、出入国管理官の業務もかなりの程度、機械に置き換わってきています。

『こちら』のビデオのように、人間ではなく機械の目が、「出入国者がパスポートの写真と同一人物かどうか」を判断するようになっています。

また、『こちら』には、IBM のワトソンがどういったところで使われているか、その一例が載っています。

いまではデリバティブ取引の報告書の突き合わせ業務など、従来は銀行員がやっていた業務なども、機械がやるようになっています(『こちら』)。

それでは、我々人間はどうするか。

機械と闘っても勝てそうにもありません。

まずは状況認識から始めることが第一歩。

インタビュー記事は『こちら』でご覧になれます。

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2018年10月27日 (土)

綱町三井倶楽部

昨日は綱町三井倶楽部で昼食をする機会がありました。

1913年(大正2年)に建築された綱町三井倶楽部は、関東大震災や東京大空襲でも被害を受けることなく、当時の姿のまま生き延びています。

近くに大使館が多かったことから米軍も空襲を控えたのではないかと言われているようです。

羅生門の鬼退治で有名な平安時代の武将、渡辺綱は、この地にある當光寺で生まれたとも伝わっています。

このため、この付近(現在の港区三田)は、江戸時代には綱町と呼ばれていたそうです。

以下は綱町三井倶楽部の写真です。

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       (綱町三井倶楽部本館)

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       (本館内ステンドグラス)

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      (本館内チャペル)

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        (和風の意匠)

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       (ワインセラー)

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         (庭園)

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         (庭園)

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2018年10月23日 (火)

同調圧力

昨日の現代ビジネスの記事が「Yahoo!ニュース」にも載りました。

「Yahoo!ニュース」には、これを読んだ読者のコメント欄があります。

40件ほどのコメントを読むと、日本社会の同調圧力に窒息しそうになっている人の発言が目を引きました。

同調圧力の強い社会は、もしも本人が同調している仲間の一人であれば、心地よくさえあります。

日本の銀行にいたときの私もまさにその一人。

周りの人たちはみんな自分と同じような人間でした。

似たような教育を受け、似たような価値観を持ち・・・。

それが、ひとたび外資系に移ると、上司はイギリス人で、部下にはイケメンで女性好きのギリシャ系アルゼンチン人がいたり、といった具合で、みんな様々。

もっとも・・

現在では多様性の国と言われるアメリカですが、

ひと昔前は違いました。

地域によっては、かなり同調圧力が強い社会だったのです。

私が高校時代に留学した(昔の)ニューポートビーチには、白人しかおらず、ほとんどがWASP(白人でアングロサクソン、プロテスタント)。

当時の話ですが、社会科を教えるS先生はユダヤ人らしく、父母たちは自分たちの息子・娘が「ユダヤ人に教わるのは許せない」とばかり、校長や市に対して抗議。

とうとうS先生が同性愛者であるとの証言を住民から引き出し、その証言をもとに警察に通報。

警察がS先生を逮捕し、そのことが地域の新聞の第一面にデカデカと載るといった有り様。

アメリカ社会の恐ろしい一面を見た気がしました。

今だったら考えられないことです。

ですが、1970年代初めのアメリカ(オレンジ郡)は、そんな状況だったのです。

違う考え方や異なった人種、いろいろな性的嗜好の人たちに対して寛容的になるには、違うということを認め、理解することから始めなければなりません。

相手の立場になって考える。

これが第一歩です。

いつか自分自身や自分の子どもたちも、同調の輪からはじき出されてしまうかもしれません。

時間がかかろうとも、多様性に対して寛容である社会に向けての努力が必要です。

For, in the final analysis, our most basic common link is that we all inhabit this small planet. We all breathe the same air. We all cherish our children's future. And we are all mortal.

『究極のところ、われわれを結びつけるもっとも根本的な絆は、小さな地球の上でともに生きている、という事実です。

われわれはみな同じ空気を吸い、子どもたちの将来を同じように大切に思います。

われわれはみな命に限りのある人間です』

      Jfk

1963年6月10日、Washington, D.C.にあるアメリカン大学の卒業式でのジョン・F・ケネディ大統領の演説です。

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2018年10月22日 (月)

社内にアイディアが育まれるプロセスというのは、意外にぐちゃぐちゃなもので、頭に電球がともる瞬間などありません

これはアマゾンの創業者、ジェフ・ベゾスの言葉。

アマゾンにしろ、グーグル、アップルにしろ、IT業界の巨人たちは熾烈な競争を演じています。

雌雄を決するポイントはイノベーションを起こせるかどうか。

そのために経営者たちはあれこれと試行錯誤しながら、必死で格闘しています。

日本企業の経営者たちも、「イノベーション」とか「創造的破壊」といった言葉を好みますが、

では、そのためにいったい何をしているのか

というと、意外と実行が伴わないこともあるようです。

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* * *

・・・そんなことをお話ししていたら、インタビュー記事になりました。

現代ビジネス(現代ISメディア)です。

よろしかったらご覧になってみてください。

『こちら』です。

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2018年10月21日 (日)

世界に16億人いるイスラム教徒

ハスナさんの漫画:『笑える 腹立つ イスラム夫と共存中』

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宗教に興味のないゴク普通の日本人女性漫画家のハスナさん。

ふとしたことからモロッコに行くことになりました。

モロッコと言えば、映画の舞台となったカサブランカと、青い町シャウエンが有名。

下の写真はシャウエンの街角です。  

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   (Wikimedia Commons; CC BY-SA 4.0)

さて、日本人漫画家ハスナさんにシャウエン行きのバスを案内してくれたのが、現地の青年ハサン。

眉毛と前歯に特徴ある顔立ちで、

右と左の眉毛が繋がっていて、前歯には隙間がありました。

この辺の観察眼は漫画家ならではのもの。

そして、このときの案内が切っ掛けとなって、日本人漫画家ハスナさんは、モロッコの青年ハサンと結婚することに・・・。

当然のことながらハサンはイスラム教徒です。

イスラム教徒の結婚相手は制限されていて、ムスリマ(イスラム教徒の女性)は、ムスリム(イスラム教徒の男性)としか結婚できないとされています。

でもなぜか、ムスリム(男性)にはもう少し選択肢があり、ムスリマ(イスラム教徒の女性)か、キリスト教徒か、ユダヤ教徒であれば良いとされています。

ということで、ハスナさんは、3つの宗教のどれかに改宗しなければムスリムのハサンとは結婚できません。

3つのうち、どの宗教を選ぶか。

彼女は結婚相手のハサンと同じイスラム教徒に改宗する道を選びます。

そんなこんなでハスナさんとハサンは結婚し、2人は日本に住むこと5年。

神を信じる夫、ハサンとの生活は、驚きと怒りと笑いの連続でした・・・。

一説には、世界で16億人の信徒があるとされているイスラム教。

下の地図を見れば分かるように、世界の幅広い地域で信じられている宗教です。

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(By HaireDunya - World Muslim Population Pew Forum.png in 2009, Creative Commons.Wikimedia.org/(CC BY-SA 3.0))

にもかかわらず、我々日本人には馴染みの薄いイスラム教・・・。

イスラム教を知る上で、いちばん手っ取り早いのは、イスラム教徒と家族になって、一緒に暮らすことなのでしょう。

本書の謳い文句には、『実話エピソードに笑いながらイスラム教徒が少しわかってくる』とありますが、まさに言い得て妙。

漫画を通じて肩凝らずに異文化を知ることが出来ます。

私はひじょうに興味深く読み、たくさんのことを知りました。

お勧めです。

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2018年10月20日 (土)

時代の先を読む先見性

投資銀行で働くというと、ニューヨークやサンフランシスコなどのガラス張りの超高層ビルで仕事をするといったイメージでした。

しかしアメリカ(というか世界!)の経済の主役は、アップルやグーグル(正式名称;アルファベット)、フェイスブックなどのシリコンバレーの会社に移っていきます。

            Google

         (Googleplexes: Wikimedia Commons CC-BY-SA-4.0)

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1990年代の終り、多くの投資銀行はテクノロジーグループ(アップルなどテクノロジー業界をカバーするグループ)の本部をシリコンバレーに移します。

私が投資銀行で働いていたときも、テクノロジーグループの本部はシリコンバレー。

何か会議があると、すぐにシリコンバレーのオフィスに呼び出されました。

さて、ニューヨークやサンフランシスコからシリコンバレーに本部を移して、何が起きたのでしょうか。

顧客に近くなって、より顧客に寄り添った提案が出来るようになりました。

それだけでなく、働く人たちの生活も一変しました。

「これまでは、超高層ビルにガラス張りのオフィスで息苦しかった」

「外気を吸いたくても吸えず、外の風を感じることも出来なかった」

それがシリコンバレーでは、顧客のオフィスはすべてが低層階の建物。

投資銀行もそれに倣いました。

ニューヨークやサンフランシスコの超高層ビルから引っ越してきた投資銀行の仲間たちは、新しいオフィス環境にみんな「ご満悦」。

なにせ、働きながら、外の木々が揺れ動くのを感じ、鳥のさえずりも聞こえるようになったのです。

     Apple

          (Apple Park: Wikimedia Commons CC-BY-SA-4.0)

アップルやグーグルなどはイノベーションを起そうと熾烈な競争を繰り広げています。

人材の引き抜きも活発で、グーグルXの創業メンバーの『Yoky Matsuoka』さんは、アップルのヘルス・ケア部門長としてヘッドハントされますが、すぐにグーグル傘下のNESTのCTOに再度(ヘッドハントされ)呼び戻されるといった状況。

優秀な人材を惹きつけるには、新しいアイデアを出せる環境が必須で、それは無味乾燥な超高層ビルではありません。

グーグルが2015年にシリコンバレーに完成させたGoogleplexは4階建て。

Apple Park(2017年完成)も4階建てです。

アマゾンの「The Spheres」に至っては、内部が3700平方メートルの温室になっており、世界の50以上の国々から集められた4万本(!)もの木が植えられているほか、川が流れ、滝もあります。

新しい革新的なアイデアは超高層ビルのガラス張りのオフィスからは出てきません(とシリコンバレーの人たちやアマゾンのべゾスなどは信じています)。

熾烈な競争を繰り広げるからこそ、世界のテクノロジー企業はオフィス環境にも工夫も凝らしているのです。

ところで、日本はどうでしょう。

羊羹の「とらや」(虎屋)は1964年に竣工した「虎屋赤坂本店」を建て替えるに際し、「既存の高層ビルを取り壊し、その跡に低層ビルを建てる」という決断を下しました。

羊羹一筋で400年以上もやってきた虎屋は、伝統を大切にしつつも、常に時代の先を読み、革新的であり続けた会社です。

だからこそ羊羹だけでやってこれた。

社長が熟考した先に行きついた結論は、持っている容積率もすべて放り出し、木をふんだんに使った低層の建物を赤坂の一等地に建てるということでした。

これからの日本。

オフィスビルや建物ひとつを取ってみても、人々にとって望ましいのは何か、革新性を呼び起こし、競争力を高めることに繋がるのはどういったものなのか―。

こうした視点が重要になってきます。

400年以上続いた虎屋とシリコンバレーには、意外な接点があると感じたのは私だけでしょうか。

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2018年10月18日 (木)

台風24号の傷跡

先日、高尾山に登る機会があったのですが、まだ台風24号の傷跡が・・。

以下、稲荷山コースの写真です。

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『こちら』で事前にチェックできます。

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2018年10月15日 (月)

シアーズ猫事件

シアーズといえば米国シカゴに本社を置く小売大手。

1893年(明治26年)の設立。

つまり日清戦争の前年です。

歴史ある会社なのですが、革新性にも富み、世界の民間企業の中で、最初に円建て外債(サムライ債)を発行したのもシアーズ。

これは1979年のことです。

私が興銀のシカゴ駐在員をやっていた時も、シアーズは重要な取引先でした。

当時私はまだ20代。

シアーズのAT(Assistant Treasurer)とは、一緒にリグリーフィールドにカブス戦を見に行ったりしました。

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        (シアーズタワー;出所:Wikimedia Commons)

このときマスコミを賑わせていたのはシアーズ猫事件。

アメリカでは、飼っている猫が雨に濡れると,洗濯の乾燥機(ドライヤー)に入れてやる人が結構多くいました。

いつもは飼い猫を乾燥機に入れていたAさんは、どういうわけか、

『乾燥機じゃなくて、電子レンジでもいいんじゃないか』

と考えて、濡れた猫を電子レンジに入れて、チン。

恐ろしいことです。

猫は電子レンジの中で爆発したようになってしまい、亡くなってしまった・・・。

そこで彼女は電子レンジの製造販売元のシアーズを訴えました(その電子レンジは、今でいうところのシアーズのプライベートブランドでした)。

「責任はシアーズにある」

「猫を入れるなとは使用説明書に書いていない」

結果、シアーズは訴訟に負け、多額の賠償金を払うことに。

それだけでなく、以降の使用説明書には「猫を入れるな」と書かされるようになったと言います。

シアーズのATからこの話を聞いて、私は「アメリカという国は恐ろしい国だ」と思いました。

弁護士がたくさんいて、何でも訴訟にしてしまうからです。

さて、そんな思い出のあるシアーズ。

そのシアーズが経営破綻して、本日(15日)、連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請しました。

怖いのは訴訟だけではない。

アマゾン恐るべしです。

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2018年10月11日 (木)

大統領のイライラ

ダウは800ドル以上(3%)も下げ、NVIDIA、ネットフリックス、アマゾンなどのテック株も総崩れ。

アマゾンはAfter Hours で1737ドルに。

ピーク時(2050ドル)に比して、15%安。

中間選挙を控え、大統領のイライラ感が伝わってきます。

『こちら』 のWSJ記事。

   Wsj

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2018年10月10日 (水)

ヘイリー米国連大使が辞任

ヘイリー米国連大使(46歳)による突然の辞任発表。

「年末までに辞任する」とのことです。

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       (From Wikimedia Commons)

インド系米国人で、国連大使になる前はサウスカロライナ州知事。

全米50州のうちでも最年少の州知事として注目されていた人です。

メディアでは早くも次の大統領選に立候補するのではないかと噂されていますが、本人は一応、否定(『こちら』)。

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2018年10月 8日 (月)

NHKスペシャル マネー・ワールド~資本主義の未来~(2)仕事がなくなる!?

昨晩放送された『NHKスペシャル マネー・ワールド~資本主義の未来~(2)仕事がなくなる!?』。

ご覧になった方も多かったと思いますが、孫正義さんが出演していたこともあって、面白かったです。

新井紀子さん(国立情報学研究所社会共有知研究センター長・教授)が、鋭い突っ込みを(2度ほど)入れて、孫さんがタジタジとする一幕も。

再放送は10月11日(木) 午前2時34分とのこと(『こちら』)なので、興味ある方は、録画予約をしておいても良いかもしれません。

それにしてもたとえば『変なホテル』

ホテルのフロント業務、クローク業務、ポーター業務などをロボットにやらせることで注目を浴びたホテルですが、いつの間にか全国で9ヵ所にも展開しているんですね。

海外を行き来するときのパスポートコントロールもかなりの程度、自動化されてきています。

日本の例は『こちら』

EUなどでも自動化が急速に普及してきています(『こちら』のビデオではEUのパスポートが対象とありますが、日本のパスポートでも利用できるケースが多くなっています)。

これまでは人間の目で「この人はパスポートの写真の人と同一人物かどうか」を判断していました。

それがディープラーニング(深層学習)による画像認識度の向上で、機械の方が人間よりも効率的、そしてより正確に判断出来るようになってきました。

結果として、たとえば出入国管理官の業務のかなりの部分が機械に置き換わってしまうようになってきています。

ロボットが人間以上の目を持つことが当たり前になってきた昨今。

グーグル(ジェフ・ディーン博士)とスタンフォード大学(アンドリュー・ング准教授)が共同で、大量のデータをコンピューターに解析させ、猫を認識させたのが、2012年6月(『こちら』)。

今からたった6年前のことです。

それが、あっという間に、コンピューターは人間の目を追い越してしまいました。

はたして我々の仕事の多くはこれから先、機械に代替されてしまうのでしょうか。

NHKの番組は比較的軽いタッチで編集されていましたが、投げかけている問題はひじょうに重いように感じました。

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写真は新井紀子さんの番組の中での説明。世界富豪トップ8人の持つ資産は、貧困層36億人分と同じとのこと(『こちら』の記事も参照)。

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2018年10月 3日 (水)

経営することの面白さ

久しぶりに面白い本を読みました。

『破天荒フェニックス』

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読み終わっての感想は、

「この本はテレビドラマ化されるのではないか」。

たとえば堺雅人さんに主人公を演じさせれば、半沢直樹以上のヒットも夢ではないような気がします。

著者の言によれば、この本は「起こった事実をもとにしながらも、一つのフィクション、パラレルワールドの物語として書き連ねた」とのこと。

要は、銀行名など差し障りある箇所を適当に変えたと理解しました。

とは言いつつも、本書に出てくる穂積銀行とは、なんとなくどこの銀行か、想像がつきます。

しかも、三井住友銀行に至っては、実名で登場するし・・。

まぁ、こう書くと、なんだか暴露本のように思われるかもしれませんが、そうではありません。

著者は経営者であって、小説家ではない。

しかし事実が小説よりも面白いので、事実をたんたんと書こうとした。

そうすると迷惑をかける人もいるかもしれないので、一部デフォルメ化した、ということなのでしょう。

結果、本書は、普通の小説とはまったく違ったものに仕上がっています。

単に事実を綴ったものなのですが、そこには圧倒的なリアリティがあり、このリアリティこそが読者を引きつけます。

それゆえ、この本はビジネス書を読むよりも数十倍もためになりそうです。

若い人には学校などでビジネスを学ぶよりもまずは本書を読んでみることをお勧めします。

読み終わって、きっとこう思うはずです。

会社を経営するって、すごく面白そうだ。

そうなのです。

会社を経営するということは、努力をすること、そして何かを成し遂げるということであり、達成感を味わえることなのです。

それも半端でない達成感を味わえます。

さて、この本の舞台は、経営破綻しかけた眼鏡の小売り「オンデーズ」。

これは、実際にある会社で、ウィキペディアによると、現在では、10ヶ国で200店舗以上を展開しているとのこと。

著者は、この本の主人公で、ふとしたことから、この会社をたった(!)3千万円で買うことになります。

30歳の青年社長です。

当時の「オンデーズ」は、日本全国に約60店舗を展開する眼鏡のチェーン店。

しかし赤字で倒産寸前でした。

この本は、著者がこの会社を再生していく過程を綴ったものなのですが、まさにハラハラ、ドキドキの連続。

冒険物語を読むような感じで、小気味よくストーリーが展開していきます。

繰り返しますが、当時の「オンデーズ」は、日本全国に約60店舗を展開する眼鏡のチェーン店。

それをたった3千万円で買収したということなのですが、実は、このとき会社が背負っていた銀行借入金が14億円。

会社を買収したのですから、彼は、この借金もいきなり抱え込むことになります。

つまり、会社の借入金に対して銀行は社長の個人保証を求めてきます。

当然と言えば当然なのですが・・・。

会社が借金を返せなくなれば、著者である30歳の青年社長が保証履行(会社に代って返済)せざるをえず、

しかしそれは絶対に不可能ですから、

彼は自己破産を強いられてしまいます。

しかも14億円の借金はすべて短期の銀行借入金。

このため、毎月の銀行に対する約定返済額は8千万円から1億円。

それなのに買収した会社は営業赤字で、それも、なんと・・・!

毎月2千万円近くの営業赤字額を出している。

要はそれだけキャッシュがどんどん流出している。

案の定、買収してわずか数週間後には1千万円以上もの資金が足りないという、いきなりの緊急事態が発生します。

ということで、物語は冒頭からジェットコースターのような展開を辿ります。

そもそもこの30歳の新任社長が「オンデーズ」と関わることになったのは、初代社長との出会いが発端。

このとき会社の経営権は、当時の実質親会社であったRBS社が送り込んだ2代目社長に移っていました。

著者は、初代社長から「会社の経営権を取り戻したいので手伝ってほしい」と依頼されたのだとか。

しかし詳しく内情を聞いていくうちに、初代社長の我儘な態度や傲慢な自己主張、従業員の気持ちを無視した振る舞いなどに愛想を尽かして、さっさっと方針変換。

自らが買収して再生に乗り出すようになっていきます。

こうして、たった3千万円で買収して新しく社長になった著者は、

年齢30歳。

黒いジャケットに破れたデニム。

スニーカーに茶髪のロン毛。

ここまで書くと滅茶苦茶なようですが、人は外見ではありません。

とにかくこの社長、若いのに、考え方はしっかりしていて、経営の勘どころも押さえている。

破天荒なようで、実は人を見る目がしっかりしている。

そして失敗してもすぐに気づき、修正するという、修正能力にも長けている。

そして、なによりも仕事熱心、勉強熱心。

社長就任後2ヶ月で、全国に点在する店舗をすべて回ろうと決意。

デスクワークの合間を縫っては、私物の軽自動車に乗り込み、カプセルホテルに泊まりながら、北に南にと、全国各地に繰り出していきます。

初代社長も2代目社長も、たった60店舗なのに、自分の会社の店舗を回ることさえしなかったのだとか。

経営者が変わることで、会社はこんなにも変身しうる。

この本には、そんな実例が随所に散りばめられています。

東日本大震災の時の仙台(正確には多賀城市?)のお婆ちゃんとの出会いにちょっと涙腺を刺激され、

商品部の高橋部長のひとことでタバコをきっぱりと止め・・・

といった具合に、

この物語は単なる企業再生の域を超えた人間のドラマに仕上がっています。

これ以上はネタバレになってしまうので、止めますね。

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2018年10月 2日 (火)

やることが早い

昨日(日本時間)のメジャーリーグ最終戦では9回裏の逆転の口火となる大活躍。

そして、その翌日の今日には、大谷選手は、トミージョン(Tommy John)手術を受けて成功(『こちら』)。

やることが早いです。

読書家でも知られる大谷選手の愛読書の一つは『チーズはどこへ消えた?』 だと言います。

2匹のネズミと2人の小人は毎日同じ場所でチーズを見つけて食べていました。

しかし見つけられるチーズの量は、だんだんと減っていき、

ある日、突然!

「消えた!」

ネズミたちはチーズが毎日だんだんと少なくなっていくのに気づいていて、

いずれはなくなるだろうと覚悟していました。

したがってチーズがなくなると、すぐに新しいチーズを探しに飛び出しました。

小人たちは古き良き時代が忘れられません。

いずれまたチーズが同じ場所に戻ってくるかもしれないと信じ、

毎日同じ場所に行き、チーズが来るのを待っていた、

という話なのですが・・。

もはや今までの腕に頼れないと悟ると、すぐに行動に移し、次へと動き出す。

大谷選手が非凡なのは、その身体能力だけではないような気がします。

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