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2018年10月20日 (土)

時代の先を読む先見性

投資銀行で働くというと、ニューヨークやサンフランシスコなどのガラス張りの超高層ビルで仕事をするといったイメージでした。

しかしアメリカ(というか世界!)の経済の主役は、アップルやグーグル(正式名称;アルファベット)、フェイスブックなどのシリコンバレーの会社に移っていきます。

            Google

         (Googleplexes: Wikimedia Commons CC-BY-SA-4.0)

    M_cap

1990年代の終り、多くの投資銀行はテクノロジーグループ(アップルなどテクノロジー業界をカバーするグループ)の本部をシリコンバレーに移します。

私が投資銀行で働いていたときも、テクノロジーグループの本部はシリコンバレー。

何か会議があると、すぐにシリコンバレーのオフィスに呼び出されました。

さて、ニューヨークやサンフランシスコからシリコンバレーに本部を移して、何が起きたのでしょうか。

顧客に近くなって、より顧客に寄り添った提案が出来るようになりました。

それだけでなく、働く人たちの生活も一変しました。

「これまでは、超高層ビルにガラス張りのオフィスで息苦しかった」

「外気を吸いたくても吸えず、外の風を感じることも出来なかった」

それがシリコンバレーでは、顧客のオフィスはすべてが低層階の建物。

投資銀行もそれに倣いました。

ニューヨークやサンフランシスコの超高層ビルから引っ越してきた投資銀行の仲間たちは、新しいオフィス環境にみんな「ご満悦」。

なにせ、働きながら、外の木々が揺れ動くのを感じ、鳥のさえずりも聞こえるようになったのです。

     Apple

          (Apple Park: Wikimedia Commons CC-BY-SA-4.0)

アップルやグーグルなどはイノベーションを起そうと熾烈な競争を繰り広げています。

人材の引き抜きも活発で、グーグルXの創業メンバーの『Yoky Matsuoka』さんは、アップルのヘルス・ケア部門長としてヘッドハントされますが、すぐにグーグル傘下のNESTのCTOに再度(ヘッドハントされ)呼び戻されるといった状況。

優秀な人材を惹きつけるには、新しいアイデアを出せる環境が必須で、それは無味乾燥な超高層ビルではありません。

グーグルが2015年にシリコンバレーに完成させたGoogleplexは4階建て。

Apple Park(2017年完成)も4階建てです。

アマゾンの「The Spheres」に至っては、内部が3700平方メートルの温室になっており、世界の50以上の国々から集められた4万本(!)もの木が植えられているほか、川が流れ、滝もあります。

新しい革新的なアイデアは超高層ビルのガラス張りのオフィスからは出てきません(とシリコンバレーの人たちやアマゾンのべゾスなどは信じています)。

熾烈な競争を繰り広げるからこそ、世界のテクノロジー企業はオフィス環境にも工夫も凝らしているのです。

ところで、日本はどうでしょう。

羊羹の「とらや」(虎屋)は1964年に竣工した「虎屋赤坂本店」を建て替えるに際し、「既存の高層ビルを取り壊し、その跡に低層ビルを建てる」という決断を下しました。

羊羹一筋で400年以上もやってきた虎屋は、伝統を大切にしつつも、常に時代の先を読み、革新的であり続けた会社です。

だからこそ羊羹だけでやってこれた。

社長が熟考した先に行きついた結論は、持っている容積率もすべて放り出し、木をふんだんに使った低層の建物を赤坂の一等地に建てるということでした。

これからの日本。

オフィスビルや建物ひとつを取ってみても、人々にとって望ましいのは何か、革新性を呼び起こし、競争力を高めることに繋がるのはどういったものなのか―。

こうした視点が重要になってきます。

400年以上続いた虎屋とシリコンバレーには、意外な接点があると感じたのは私だけでしょうか。

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