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2019年3月30日 (土)

投資本

『これはさすがに違うだろう』

日本でよく読まれているマネー評論家の書いた投資本を読んでいて、思わずこうつぶやいてしまいました。

いわく

『投資できるお金が相当額あれば、一気に投資してしまう方が、機会損失が小さいし、手数料も少なくてすむ』

もし読者がこの通り実践したら・・

いったいどういうことになるのでしょう。

たとえば2000万円の退職金の2割、400万円を運用に回すとして、

一気に投資してしまうと、相場が下落した場合、思わぬ痛手を被ってしまいそうです。

いっぽう、米国の教科書(たとえばウィリアム・シャープ教授の「Investment」)では、

時間分散について頁を割いて、かなり突っ込んだ議論を展開しています。

日本で人気の一部の投資本と、米国で教えられているファイナンスや投資の授業とでは、

このように相当のギャップがあります。

だとしたら、スタンフォードのビジネススクールで教えてくれるような「金融や投資の話」を

高校生にもわかるような平易な文章で書いて本にしたら、読者の皆さんに役立ててもらえるのではないか。

こう考えて書き始めたのが、『人生100年時代の正しい資産づくり』です。

(以下、本書から一部抜粋)

『株式はリスクがあって危ないものー

日本人にはそう考える人が少なくありません。

「投資=投機」と誤解し、

「株式投資=素人が手を出してはいけない危険なマネーゲーム」

と考える人が多いのです。

その反面、FXやビットコインのような

投機的マネーゲームを好む人たちも日本には数多く存在します。

要は両極端なのです。

適度にリスクを取って、コツコツと時間をかけて、老後のために投資で資産を形成していくー

そういった姿勢に乏しいのです。

本来お金が必要になるのは、働いて稼ぐことができなくなる「老後」であって、

多くの人はそのために投資を考えるべきです。

しかしそういった目的を理解しないまま、

ただやみくもに株に手を出している人が多いのが日本の実情です』

* * *

本日から本屋さんで発売開始になっています。

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2019年3月23日 (土)

2.416%

昨日の米国市場。

世界経済の伸びの鈍化が懸念され、ダウは460ドル(1.8%)安。

ナスダック総合指数の下落はさらに酷くて2.5%の下落。

大きく動いたのは株式市場だけではありません。

10年債利回りはついに一時2.416%となり(1年2カ月ぶりの低水準)、3カ月物の利回りを下回りました。

つまり長短の金利が逆転してしまったのです(逆イールドカーブの出現)。

為替は当然円高に振れ、109円台に。

下図はここ1年間の10年債利回り推移です(クリックすると鮮明な画像が出てきます)。

2416_1

ところで話は変わりますが、現在アマゾンで予約受付中です(『こちら』)。


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2019年3月16日 (土)

韓国語版『文系が20年後も生き残るためにいますべきこと』

自分の書いた本が外国語に翻訳され出版されると嬉しいものです。

巷では「海賊版が出された」という話をよく耳にしますが、勿論そういったものではありません。

出版社同士の正式契約に基づき、時間をかけて翻訳・出版された本。

ということで、拙著最新作『文系が20年後も生き残るためにいますべきこと』の韓国語版が出来て、韓国の出版社から送られてきました。

   Img_3045_002

早速韓国のサイトを調べてみました。

発売されたばかりのようなのですが、すでに韓国のサイトでもいくつか取り上げられていました(『こちら』『こちら』)。

ハングルは読めないので、グーグル翻訳の助けを借りています。

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2019年3月 8日 (金)

中期経営計画の呪縛

みずほFGが6,800億円の損失計上見通しを発表しました。

この結果、今年度決算見通しは、純利益が従来見通しの5,700億円から一転、9割減の800億円になる模様。

4か月前の会社説明会では、「中期経営計画の完遂」を謳っていました(『こちら』)。

それだけに、驚きの発表となりました。

そもそも改めて考えさせられてしまうのですが、「中期経営計画」(中計)とはいったい何なのでしょう。

現在では多くの日本企業(とくに上場企業)は、中計の策定に膨大なエネルギーを投入しています。

当初は中長期ビジョンを重視しようとの目的で始められた中計です。

しかし一部の企業においては、時間の経過とともに、これがマンネリ化するようになりました。

ビジョンの方は形骸化し、中計が逆に短期的視点に基づく経営の温床になってしまっているようなケースさえ見られます。

どういうことでしょうか。

多くの大企業においては、中計の策定は、本部と称される経営企画部などが大枠の方針を示し、これに基づいて各事業部が数字を積み上げていくといったプロセスを取ります。

こうしたプロセスはともすると本部の肥大化という名の「組織の官僚化」を招いてしまいます。

実際の経営は行政機関(役所)の運営のようにはいきません。

予測不能な事態の発生が不可避で、本来問われるべきは、こうした事態への対応力なのですが、多くの場合、中計ではそういった点は考慮されません。

また現在の中計は3年をスパンとする計画となっていることが多く、この場合、3年計画が細分化されて、各年毎の計画に落としこまれています。

結果、各事業部は毎年ごとの計画・目標の達成に躍起になるといった行動をとるようになります。

つまり中計といっても実際の運用上は1年計画になってしまっているのです。

余談ですが東芝では幾つかの事業部が毎年ごとの計画・目標の達成の為に不正会計を繰り返し、結果的に会社全体として不正会計の額を膨らませてしまいました。

みずほの場合はそんなことは無かったのでしょうが、もしも仮に中計の達成にこだわる余り、本来は各年毎に必要だったシステムの減損処理や店舗関係の統廃合関連費用の計上が遅れてしまい、一気に損失処理することを迫られてしまったのだとしたら、それこそ本末転倒ということになってしまいます。

(繰り返しますが、みずほの場合はそんなことは無かったのでしょう。坂井社長は、損失は構造改革を前倒しで実施するためのものと述べています)。

なお私はJ.P.モルガンなど、米国の投資銀行3社に勤めた経験がありますが、3社ともこのような中計は作成していませんでした。

日本でも京セラの稲盛氏のように中計に対して否定的な経営者も少なくありません。

それと、もう一つ。

かねてから私が思っていたことなのですが、中計は時として呪縛として働いてしまうことがあるようにも思えます。

アマゾンのジェフ・べゾスは、2016年に株主へ宛てた手紙の中でこのように述べています(『こちら』)。

「成功すれば100倍のリターンが得られる。しかし10%の確率でしか成功しないプロジェクトがあった場合、これをやるのが我々のやり方だ」

このような発想は中計に縛られた日本企業からはなかなか出てきません。

* * *

なお話が中計からは外れてしまいますが、ジェフ・べゾスのレターはなかなか面白いので、以下に関係する箇所を再現します。

彼によれば、

「アマゾンは失敗することに関しては世界で最も良い場所だ。

失敗と発明とは離れることのできない双子のようなものだ」

とのことです。

以下、原文でどうぞ。

One area where I think we are especially distinctive is failure.

I believe we are the best place in the world to fail (we have plenty of practice!), and failure and invention are inseparable twins.

To invent you have to experiment, and if you know in advance that it’s going to work, it’s not an experiment.

Most large organizations embrace the idea of invention, but are not willing to suffer the string of failed experiments necessary to get there.

Outsized returns often come from betting against conventional wisdom, and conventional wisdom is usually right.

Given a ten percent chance of a 100 times payoff, you should take that bet every time.

But you’re still going to be wrong nine times out of ten.

We all know that if you swing for the fences, you’re going to strike out a lot, but you’re also going to hit some home runs.

The difference between baseball and business, however, is that baseball has a truncated outcome distribution.

When you swing, no matter how well you connect with the ball, the most runs you can get is four.

In business, every once in a while, when you step up to the plate, you can score 1,000 runs.

This long-tailed distribution of returns is why it’s important to be bold.

Big winners pay for so many experiments.

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