« 2019年6月 | トップページ | 2019年8月 »

2019年7月31日 (水)

ヒットを連発するディズニー

今年12月公開予定の「STAR WARS: THE RISE OF SKYWALKER」(スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け)。

『こちら』でティーザー(予告編動画)をご覧いただけます。

* * *

それにしてもディズニーの勢いが止まりません。

最近ヒットした映画、それから今後ヒットが予想される映画を並べてみると:

・アベンジャーズ/エンドゲーム(2019年公開、興行収入28億ドル、3000億円を記録し、世界歴代1位)

・アラジン (2019年公開、興行収入10億ドル、1080億円)

・ライオンキング(2019年7月19日公開、日本は8月9日公開予定)

・スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け(2019年12月20日、日米同時公開予定)

といった具合にいずれもディズニー。

    Dis

株価もグラフのように史上最高値となりました(昨日)。

* * *

現在のウォルト・ディズニー社を率いるのはボブ・アイガーCEO。

彼はもともとディズニーが1996年に買収したABC(American Broadcasting Company)でCOO(chief operating officer)を務めていた人。

買収された会社の人でも、能力があれば、買収した会社のトップになれるのが米国流。

2005年にアイガーはディズニーのCEOに就任。

先日のブログでも書きましたが、その翌年(2006年)にはアイガー率いるディズニーはピクサーを買収。

ディズニーが買収したピクサーには『トイ・ストーリー』を作ったジョン・ラセター(監督/ストーリー原案/モデリング & アニメーションシステム開発)がいました。

買収後、ラセターはピクサーのみならず親会社ディズニーのアニメーション・スタジオ『チーフ・クリエイティブ・オフィサー』に就任。

『アナと雪の女王』など数多くのディズニー作品の製作を指揮していきます。  

買収会社であれ、被買収会社であれ、買収が終了すれば、一つの会社。

それまでの所属に関係なく優秀な人材が遺憾なく能力を発揮していくことが、会社の成長には重要です。

* * *

もっともラセターの方は、2017年に社内でのセクハラが発覚、翌年にはディズニーを退社することを余儀なくされます。

現在ではスカイダンス傘下のスカイダンス・アニメーションに移っています。

| | コメント (0)

2019年7月29日 (月)

To infinity.... and Beyond(無限の彼方へ さあ行くぞ!)

『To infinity.... and Beyond(無限の彼方へ さあ行くぞ!)』

これは映画『トイ・ストーリー』に出てくるセリフ。

これを製作したのは映画会社『ピクサー』ですが、その会社のCFO(最高財務責任者)が書いた本が

『To Pixar and Beyond』(日本語訳『ピクサー』)。

おそらくは『トイ・ストーリー』に出てくる有名なセリフを文字って付けた題名なんだと思います。

   Pixer

さて、これはひじょうに読みやすい本(文章も製本も)です。

内容も面白くて、あっという間に読めてしまいます。

ピクサーはもともとはジョージ・ルーカスが持っていた『ルーカスフィルム』の一部門。

1983年、ルーカスは離婚の為に現金を必要とするようになり、ピクサーを売却することを決断(『こちら』)。

当初はディズニーに売却話を持って行きますが、このときのディズニー会長カッツェンバーグはこの話を拒絶。

1986年になってこれを買ったのは、前年にアップルを追い出されたスティーブ・ジョブズでした。

しかしジョブズはピクサーを買ったものの、経営には関心なし。

そもそもジョブズはピクサーをソフトではなくハードの会社だと思って買った節がうかがえる・・。

当時ピクサーの経営を担っていたのはエド・キャットムル(共同創業者の一人)で、彼が毎月ジョブズのところに赴き、不足資金分の個人小切手をジョブズに切ってもらうようなことをしていました。

1994年の段階になってもジョブズはピクサーを手放すことを考えていて、ホールマーク・カード社、ポール・アレン氏、ラリー・エリソン氏などに売却しようとしますが、いずれも上手くいかず(『こちら』)。

そして、その年の11月にこの本の著者ローレンス・レビーに電話します。

『ピクサーのCFOになって、ピクサーを上場させてほしい』

こうジョブズが頼むところから、本書はスタートします(ほんの少し前まで売却しようとしていたのに無理だと知ると一転、わずかなチャンスの上場に賭けるようになったという訳です)。

そもそもアニメーションの世界は簡単ではありません。

ウォルト・ディズニーでさえ1937年公開の『白雪姫』の製作費用は、彼の自宅を抵当にして金を借りたり、危ない銀行融資に頼ったりして捻出したと言います(本書93頁)。

そういった世界に関してはまったくの門外漢の筆者。

彼は、無謀にもジョブズの要請を受け入れ、未知の世界に飛び込んで行ってしまいます。

そして結果は、というと・・。

なんと、たった1年でIPO(株式公開、上場)を果たします。

さらに2006年には(上場会社となっていたピクサーを)ディズニーに売却。

著者によれば、いつ大失敗になってもおかしくないピクサーの命運は「ごく細い糸にぶら下がっていた」(本書204頁)。

そんなごくごく細い糸を大切に手繰り寄せながら、成功を勝ち取っていく様には、読んでいて手に汗握るような臨場感が味わえます。

なお本書はIPOとは何か、株式公開を引き受ける投資銀行業務はどういったものかを知るには絶好の読み物。

CFOの仕事とはどういったものかについても知ることが出来ます。

| | コメント (0)

2019年7月17日 (水)

リート市況は11年ぶりの高値

昨晩は、日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』に出演しました。

トピックスはリート(不動産投資信託)。

先日、東証リート(REIT)指数は、ついに2000の大台に乗せました。

これは11年7か月ぶりの高値。

Veritas

いまなぜリートなのでしょうか。

ひとつには、リートの分配金平均利回りは3.8%と、日本株の配当利回り(2%)に比して高いことがあげられます。

しかし投資家の多くは「不動産市況が良くなるから」といった積極的な理由よりも、むしろ「消去法的な理由」でリートに資金を投じているようです。

というのも、低金利の時代に積極的には債券を手掛けにくい・・。

一方、株式市場に対しては、次の3つの理由で慎重になってしまいます。

1)トランプ来日時に、大統領は「参議院選挙が終われば、日米通商交渉で進展がある」とツイート。

投資家としては8月の通商交渉の結果が気になる(とくに為替レート)。

2)10月の消費増税が景気に与える影響

3)米国 vs. イランの情勢

債券も株式市場も、どちらも積極的にはなりにくいということで、マネーは一部リート市場に流れている・・。

そう見ることが出来るのではないでしょうか。

ただリート市場、東証には全部で63本が上場されていますが、全部合わせても時価総額は15兆円。

トヨタ1社の時価総額よりも小さいのです。

個人投資家としては、リートの特性を分かったうえで投資しないと火傷をしてしまうことにもなりかねません。

昨晩のテレビは『こちら』でご覧になれます。

13分間の動画です。

| | コメント (0)

2019年7月15日 (月)

癌の話

先日、興銀時代の後輩に4~5年ぶりに会いました。

いわく

「岩崎さん、痩せましたね。どこかお身体でも悪くされましたか」

「癌になりました」

こう私が答えると、後輩はちょっとびっくりした顔をしていました。

* *

実は私が癌の告知を受けた時の様子は、2年前に出した『文系が20年後も生き残るためにいますべきこと』という本の「あとがき」に書きました。

少し長くなりますが、以下、抜粋します。

* * * *

「岩崎さん、診察室1番にお入りください」

都内の大学病院の泌尿器科。

1時間半ほど待たされてようやく名前が呼ばれた。

その日は、その前の月に受けた前立腺の生体検査の結果を聞くことになっていた。

すぐに診察室1番に入る。

A教授は「どうぞおかけください」というと、マウスをクリックさせパソコンの画面を開いた。

ほぼ同じタイミングで看護師がやってきてA教授に何か相談ごとを始めた。

時間にしてわずか30秒くらい。

A教授と看護師とが2人で何やら話をしている。

蚊帳の外におかれた私は黙って座っていた。

ただA教授のパソコン画面は私の方に向けられていた。

これからその画面を使って、生体検査の結果を説明するつもりだったのだろう。

気になってパソコン画面に目をやると、1~12までの数字が並んでおり、そのうち4つの数字のところに+のマークが付されていた。

ちょっとびっくりした。

「まさか」と思ったが、生体検査の結果は陽性だったのに違いない。

そう悟った。

以前、私はもしも自分が癌の告知を受けるとしたらどんな情景なのだろうかと考えたことがある。

医者が私に深刻な顔をして「癌です」と告げる、映画に出てくるような、そんなシーンを考えていたのだが、実際には医者から何も言われることもないまま、パソコン画面を自分で見て、先に結果を知ってしまった・・・。

さて、この本では「文系が生き残るにはどうしたらいいか」を書いてきた。

生き残ることの基本は物理的に生きること、つまり死なないことだ。

いまや高齢者を中心に、日本人の2人に1人が癌になる時代。

読者が仮に20代や30代であっても油断できない。

そうなったときにどうするか。

医者の指示に従うのか。

しかし、その医者はどうやって選ぶのか。

前立腺癌を例にとると、現在の日本には約8,000人の泌尿器科医がおり、2,800ヶ所の病院に泌尿器科が設置されている。

このうち私が主たる治療法として選んだ小線源療法を実施できる施設はたった116ヶ所しかない(2013年現在)。

30年以上も前から米国で行われている確立した術式にもかかわらず、だ。

自分から積極的に情報を集めて医者を選んでいかないと、本来ならば根治できる癌も、根治できないで終わってしまう可能性だってある。

しかし、自分から積極的に情報を集める、これは言うは簡単だが、何をどう集め、どう判断するかは、そう簡単ではない。

ちまたにはアガリクスなど民間療法で癌が治ったという人のケースを紹介する本もあるし、あるいはパワーストーンを入手したら癌が治ったという人さえいる。

ここで重要なのは確率であり、科学的、論理的思考法であって、これは本書で一貫して主張してきたことだ。

癌の治療法を例にとると、数千、あるいは数万人に1人くらいの割合で治る方法には頼れない。

如何にして癌の根治確率を高めるかという基準で治療法を選択すべきなのである。

学術論文をきちんと読めば1,000人くらいの患者の症例を、治療法による根治率の違いとともに紹介している。

必要なのは、こうした科学的アプローチであり、たまたま幸運だった10人の具体例を知ることではない。

入手したデータや情報を統計学的視点から理解したり確率論的にアプローチすることをしないと、間違った判断をしてしまう。

そしてこの場合の間違った判断は即、命を失うことにつながってしまう。

本書の中でも幾度か言及してきたように、我々は往々にして、

①統計を誤用したり、

②少ない例で全体を説明しようとしたりして、

結果的に、

③間違った議論、根拠に乏しい結論を下してしまうことがある。

こうした誤りは、クリティカル・シンキング(批判的思考)の訓練を積むことによって避けることができるようになる。

文系であれ理系であれ、学問というものは本来、人がより良く生きるためにあるものだ。

仕事をする上でも、生活の上でも、人は生きていく限り、毎日のようにさまざまな問題にぶつかる。

それをひとつひとつ解決していかなくてはならない。

何が正しいかを自分の頭で考え、正しいと思われる選択肢を選んでいかなければならない。

* * * *

いま読み返してみると、なんだか癌の告知を受けた自分が、自分に言い聞かせるがごとく書いた文章のように思えてきます。

前立腺癌の話に戻りますが、前立腺癌が出来ると、身体の中にPSAと呼ばれる特殊なたんぱく質がたくさん出現するようになります。

PSAとはProstate-specific antigen(プロステート・スペシフィック・アンチジェン、「前立腺特異抗原」)のことで、前立腺の細胞で生みだされ分泌されるたんぱく質の一種。

癌などで前立腺の細胞が壊れてくると、身体中に大量に放出されるようになります。

このため血液検査で、血液中のPSA値を測定し、これが高ければ、前立腺肥大症、前立腺炎、そして前立腺癌を疑うようになります。

私の場合、毎年人間ドックで測っていたPSAの数値が少し上昇し始めたのが、56歳の時。

2009年です。

PSA数値はその後も上昇を続けていき、その7年後、2016年にとうとう基準値を超え、精密検査が必要になってしまいました(人によって違いますが、一般に前立腺癌はこのようにゆっくりと進行することで知られています)。

いま思うと2009年というのはリーマンショックの翌年。

もしかするとその影響があったのかもしれません。

リーマンショックは精神的にもかなりのストレスになりましたから。

ところで、65歳以下の現役世代の男性が癌になる確率は15%(『こちら』)。

ならないに越したことはありませんが、なってしまう確率もそれなりに(15%)あるのです。

| | コメント (0)

2019年7月 7日 (日)

今そこにある危機(clear and present danger)

日経新聞(本日付け)によると、上場企業17社が今年の6か月間で発表した早期退職者数は合計で8,200人にのぼるとのこと。

昨年1年間が「12社、4,126人」だったことを考えると、たった半年で昨年1年間の2倍になってしまったということです。

それだけではありません。

10月に消費税が上がり景気が一気に冷え込む恐れがあるとして、現時点で早期退職を検討している企業も少なくないようです。

こうした企業の動向は、当然のことながら上記の数字には含まれていません。

経団連会長が声高に「終身雇用見直し」について発言する(『こちら』)ような時代になっていますので、若い人の中には最初から「いまの職場には一生いないかもしれない」と考える人が少なくありません(『こちら』の調査によると 「現在の会社に定年まで勤続する意思があるのは3割強」)。

問題は30代後半から50代の人たち。

今の会社でずっと働き続けられると思って、一所懸命働いてきたのに、ある日突然早期退職を勧奨されても、簡単には次の職場が見つかりません。

東北地方に住む50代の男性は、80代の母親の遺体を自宅に放置したとして、ことし執行猶予のついた有罪判決を受けたと言います(NHK報道『こちら』)。

(以下、NHK記事からの抜粋)

「男性はもともと外資系企業のエンジニアとして働いていた。

年収は1000万円を超え、関東地方に購入したマンションでひとり暮らしをしていたという。

仕事は充実し、実家で暮らす母親には20年以上、仕送りを続けてきた。

男性の人生が暗転したのは、6年前。

突然、仕事を解雇された。

当初は蓄えも十分にあり、生活に困ることはなかった。

しかし、解雇から1年。

新たな仕事を探そうとしたところで、壁にぶち当たった。

すでに50歳を超え、自分の経験やスキルを生かすことができる仕事はなかなか見つからなかった。

中国など海外での求人はあったものの、1人で暮らす母親を置いていくことはできなかった。

いずれ、仕事は見つかると思っていた。

しかし、気がつけば、不採用の会社の数は数十社に上っていた。

見つからない仕事。

減り続ける蓄え。

焦りと不安が募るなかで、友人とも連絡を断つようになっていった。

いつしか就職も諦め、気力を失っていった。

お金を使わないよう、家にひきこもる時間が長くなった。

そして、去年、連絡が取れなくなった息子を心配し、訪ねてきた母親に促される形で、実家に戻ることを決めた。

だが、実家に戻ってからも状況は好転しなかった。

父親は病気で20年前に亡くなっていた。

収入は母親の年金だけが頼り。

生活を切り詰めたとしても楽ではなかった。

そんな生活が7か月ほど続いたある日、突然、その時はやってきた。

居間で横になっていた母親。

寝息も聞こえず、動かなくなっていた。病死だった」

ちょっとした不運が重なれば、誰にでも起こりうるような非情な現実が実はすぐ身近にあるのかもしれません。

この辺、たとえばアメリカのシリコンバレーではどうなんでしょう。

シリコンバレーで活躍してきた坂本明男さんは次のように語ります(ちなみに坂本さんは20年間にわたってシリコンバレーで次から 次へと会社を創業し、成長させて、大企業などに売却してきました(『こちら』)。

「シリコンバレーでも会社が突然破産するとか、会社を首になることも少なくありません。

でもみんな、つね日ごろから、それに備えています。

そしていざそうなると、必死に就職活動をする・・。

実際、多くの人がそういった経験をしていますが、みんなそれをたいしたリスクとは思っていません。

もう一つ、決定的に違うのは、シリコンバレーの人たちは、これから先、2年から5年間で成功が見えない会社は、自分の方からさっさと辞めていきます。

そして新しい会社を起こしたり、別な会社に入社したりする。

『自分がいま勤めている会社は成功できない』(持っているストックオプシ ョンの価値がなくなる)──こう判断し た場合には、新しい職場に移ることが当たり前なんです。

会社が従業員を切るのではなくて、従業員が会社を切るのです」。

高度成長の時代には終身雇用制度が、経営者にとっても従業員にとっても都合の良い仕組みでした。

そんな高度成長の時代が終了して数十年。

いつ何が起きても、どんな会社であっても働けるだけの能力を磨き、会社の外の世界との接点を豊富に持つように努める・・。

今そこにある危機に対処するには、そういった心構えが必要なのではないか。

日経新聞の記事を読んで、そんなことを思いました。

 

| | コメント (0)

« 2019年6月 | トップページ | 2019年8月 »