To infinity.... and Beyond(無限の彼方へ さあ行くぞ!)
『To infinity.... and Beyond(無限の彼方へ さあ行くぞ!)』
これは映画『トイ・ストーリー』に出てくるセリフ。
これを製作したのは映画会社『ピクサー』ですが、その会社のCFO(最高財務責任者)が書いた本が
『To Pixar and Beyond』(日本語訳『ピクサー』)。
おそらくは『トイ・ストーリー』に出てくる有名なセリフを文字って付けた題名なんだと思います。
さて、これはひじょうに読みやすい本(文章も製本も)です。
内容も面白くて、あっという間に読めてしまいます。
ピクサーはもともとはジョージ・ルーカスが持っていた『ルーカスフィルム』の一部門。
1983年、ルーカスは離婚の為に現金を必要とするようになり、ピクサーを売却することを決断(『こちら』)。
当初はディズニーに売却話を持って行きますが、このときのディズニー会長カッツェンバーグはこの話を拒絶。
1986年になってこれを買ったのは、前年にアップルを追い出されたスティーブ・ジョブズでした。
しかしジョブズはピクサーを買ったものの、経営には関心なし。
そもそもジョブズはピクサーをソフトではなくハードの会社だと思って買った節がうかがえる・・。
当時ピクサーの経営を担っていたのはエド・キャットムル(共同創業者の一人)で、彼が毎月ジョブズのところに赴き、不足資金分の個人小切手をジョブズに切ってもらうようなことをしていました。
1994年の段階になってもジョブズはピクサーを手放すことを考えていて、ホールマーク・カード社、ポール・アレン氏、ラリー・エリソン氏などに売却しようとしますが、いずれも上手くいかず(『こちら』)。
そして、その年の11月にこの本の著者ローレンス・レビーに電話します。
『ピクサーのCFOになって、ピクサーを上場させてほしい』
こうジョブズが頼むところから、本書はスタートします(ほんの少し前まで売却しようとしていたのに無理だと知ると一転、わずかなチャンスの上場に賭けるようになったという訳です)。
そもそもアニメーションの世界は簡単ではありません。
ウォルト・ディズニーでさえ1937年公開の『白雪姫』の製作費用は、彼の自宅を抵当にして金を借りたり、危ない銀行融資に頼ったりして捻出したと言います(本書93頁)。
そういった世界に関してはまったくの門外漢の筆者。
彼は、無謀にもジョブズの要請を受け入れ、未知の世界に飛び込んで行ってしまいます。
そして結果は、というと・・。
なんと、たった1年でIPO(株式公開、上場)を果たします。
さらに2006年には(上場会社となっていたピクサーを)ディズニーに売却。
著者によれば、いつ大失敗になってもおかしくないピクサーの命運は「ごく細い糸にぶら下がっていた」(本書204頁)。
そんなごくごく細い糸を大切に手繰り寄せながら、成功を勝ち取っていく様には、読んでいて手に汗握るような臨場感が味わえます。
なお本書はIPOとは何か、株式公開を引き受ける投資銀行業務はどういったものかを知るには絶好の読み物。
CFOの仕事とはどういったものかについても知ることが出来ます。
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