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2019年11月18日 (月)

2019年度上半期決算と今後の見通し

先週で日本企業の決算発表がほぼ終了しました。

11月7日(木)から14日(木)にかけての6営業日の間に、

上半期決算を発表した会社は、1,825社にものぼります。

これで、東京海上など今週以降発表する数社を除き、

ほとんどすべての3月末決算の会社が、上半期決算を発表し終えたことになります。

結果は・・?

ひとことで言うと、

厳しい決算が相次ぎました。

日経新聞の集計によると、上場企業の2019年度上半期連結純利益は、

前年同期比▲14%の減益。

製造業で見ると減益幅は▲31%にもなります。

各社が掲げる下期(10月~3月)の見通しはどうでしょうか。

日経の集計では、前年同期比+3%増と微増の見通し。

結果、2019年度通期の業績修正を発表した企業のうち、

製造業では4社に3社が下方修正でした。

しかし・・・。

こうした状況にもかかわらず、なぜか株価は好調です。

   N225

日経平均株価はここ3か月間で2万円台から2万3千円台へと、

3千円ほど値を上げてきました(上図)。

なぜでしょうか。

いくつか要因があるのですが、3か月前の時点では、

日本株全体が過小評価されていた点があげられます。

3か月前、つまり8月の時点では、日経平均の予想PERは11.5倍前後。

このときのマーケットを思い起こしてみると、

米中貿易摩擦の影響がどう出るか、

消費税の影響はどうか、といった具合に

不安要素が大きく、市場は極端に神経質になっていました。

そしてその後3か月間をかけて、予想PERが本来の水準と考えられている14倍に上がってきたことで、

「株価は3千円ほど値を上げてきた」

と見ることも出来ます。

もう一つの要因は、好調な米国の株価。

   Dow30

11月に入って、ダウ平均株価は史上最高値を繰り返し、

とうとう2万8千ドル台に突入しました(上図)。

こちらの方は予想PERが18.6倍(『こちら』)ですので、

さすがに「過熱気味である」と指摘する市場関係者が多くなってきています。

ダウに牽引される形で、日経平均にも買いが入り、

とくに日経平均の方はこれまでPERが低かったこともあって、

ある意味、安心して買い進められてきたのです。

結果、ここ3か月間で見ると、日経平均はダウ平均以上の値上がりを示現してきています(下図で青線が日経平均、赤紫がダウ)。

   Dow30-vs-nikkei225

実際、このところの東証における投資主体別売買動向を見ても、

ダウに牽引される形で(つまり海外勢によって)日経平均が値を上げてきたことがはっきりと窺えます(下表)。

   Photo_20191117233701

すなわち10月11日で終わる1週間から始まって、5週連続で、

個人投資家は売り越してきています(5週累計のネット売り越し額は1.3兆円)。

これをどの投資主体が買ったのかというと、

海外投資家です。

この同じ5週間で、海外投資家は5週連続で買い越し(5週累計のネット買い越し額は1.5兆円)。

つまり、10月中旬から11月中旬にかけては、海外勢が買いを入れることで、日経平均は値を上げてきたことが分かります。

今後の見通しはどうでしょうか。

日経平均の予想PERは14倍になってきたので、3か月前のような割安感はもはやなくなりました。

しかしダウが予想PER18.6倍と高値にあることを考えれば、ダウとの比較感から、もう少し上値を追えるのかもしれません。

いずれにせよ日経平均は今後もダウ平均株価にある程度連動する可能性が高いのですが、

問題はそのダウが今後どうなっていくか、です。

さすがにここまで高くなってくると高値警戒感も台頭してきています。

しかし各社の最近時四半期決算を一つひとつ追っていくと、マーケットがアグレッシブになるのもある程度納得がいきます。

ダウ平均に採用されている30社の個別決算ですが、IBM、キャタピラー、ボーイング、3Mなどの決算は悪かったものの、

アップル、マイクロソフト、P&G、ファイザー、インテル、ホームデポ、JPモルガンなどは好調。

総じて市場予想を上回る結果を上げたところが少なくありませんでした。

市場予想を上回る収益を上げることで株価が高くなる・・。

米国での高株価を演出しているのは、そんな実際の数字に裏打ちされた形での

「主要米国企業(ダウ構成銘柄)の高収益体質」であると見てとることも出来ます。

もちろんこれから先のことは、米中の貿易交渉の行方がどうなるかによって、大きく変わってきてしまうでしょう。

米中の貿易交渉がなぜそんなに重要なのか?

日本の方にはもうひとつピンとこないのかもしれません。

しかし例えば次のYouTubeの動画をご覧になってみてください(『こちら』)。

『もしも中国製のものがなければ、あなたの生活はどういったものになるのだろう』

米国の若者が作った、こんなタイトルの3分少々の短い動画なのですが、

『これ』を見ると、ナイキ(Nike)など米国企業の「中国製品」が、米国の消費者に如何に浸透しているかがよく分かります。

何もかもが「メイド・イン・チャイナ」だらけ。

そんな中で、高い関税を掛けたらどうなるのか・・。

こうした状況を是正したいがゆえに始めた米中貿易交渉でしたが、それはすなわち自らを苦しめることにも繋がってしまう。

米国のフラストレーションが伝わってきます。

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