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2020年8月23日 (日)

テンバガー

本日の日経ヴェリタスはテンバガーの特集。

テンバガーとは株価が10倍になる(なった)株のこと。

記事ではクレジットカード会社のVISAが10年で時価総額が10倍を超えたと紹介されていました。

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記事の内容とは離れてしまいますが、10年前と比べて10倍になった株というのは、意外とたくさんあります。

まずはテスラ。

この株は10倍どころか、10年間で100倍以上になりました(19.1ドル→2049.98ドル;107倍)。

ネットフリックス:10年間で27倍

アマゾン:10年間で26倍

アップル:10年間で16倍

フェイスブック:8年間で14倍(上場したのは8年前)

マイクロソフト:10年間で11倍

* * *

しかしほんとうのポイントはこれから先をどう読むかです。

過去ではありません。

つまり「この株はじゅうぶんに高くなった、高くなり過ぎた」と過去を振り返らないこと。

3年前、アマゾンの株価は980ドルでした。

この時点(2017年8月)で、10年前の2007年8月に比べて、アマゾンの株価は12倍になっていました。

「12倍か・・。もう十分高くなった」ーそう思って売ってしまった人は、売ってしまった後で、(その後の3年間で)更に3.4倍になったのですから、後悔していると思います。

過去を振り返って、じゅうぶん高くなったかどうかを気にするのではなくて、あくまでもこれから先の10年間がどうなるかを考えるべき。

10年後、もしかするとアマゾンのドローンが荷物を運んでくれるようになっているかもしれません。

10年後、テスラの自動運転車はレベル2~3から、もっと高レベルになり完全自動運転に近づいているかもしれません。

そういった将来に思いを馳せ、将来時点での企業価値を予想し、それを現在の企業価値と比較してみる。

こうした作業がテンバガーを掴むうえでの第1歩となります。

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2020年8月19日 (水)

アートにエールを!東京プロジェクト

私と同時期にスタンフォード大学大学院に留学した岡部さん。

彼はたしかエンジニアリングの大学院で、私は経営学(ビジネススクール)でした。

昨日のことですが、岡部さんからメールが来ました。

いわく、

『娘が東京都主催の「アートに エールを! 東京プロジェクト」に参加しました。

娘の新曲『Lapisterra』を演奏しています』。

* * *

岡部さんの娘さんは著名なヴァイオリニスト岡部磨知さん(『こちら』)。

新曲『Lapisterra』の演奏は、『こちら』でお聞き頂けます。

動画には磨知さんのほか、チェリスト岡部恵理さん、バイオリニスト岡部憲さん、ゲーム、映像クリエイター岡部祐果さんも登場しますが、4人全員が岡部さんのお子さんたち(そのほかにピアニスト、アレンジャーのkeikoさん、ギタリスト、作編曲家の村木数典さんも登場します)。

コロナ禍で沈み気味な空気を吹き飛ばすような、楽しい演奏です。

なお「アートにエールを!東京プロジェクト」は、東京都による芸術文化活動支援事業。

新型コロナの影響で、アーティストたちの活動も自粛を余儀なくされたり、活動の機会が減ったりしています。

こういった状況に鑑み、東京都では5月から7月にかけて「アートにエールを!東京プロジェクト」を実施していました。

プロジェクトに参加したアーティストたちの動画は、「アートにエールを!東京プロジェクト」のサイト(『こちら』)でご覧になることが出来ます。

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2020年8月16日 (日)

バッテリー・デイ

イーロン・マスクが最初にバッテリー・デイについて言及したのは、昨年7月。

“Yes, I think for Battery Day, we’re going to do a comprehensive review of cell chemistry, module and pack, architecture, and manufacturing plan that has a clear roadmap to a terawatt-hour per year.” 

マスクはこう述べて、バッテリー・デイは「2020年の2月か3月になる」とコメント。

その後、それが何回か延期されて、現在の見通しは9月22日開催の予定となっています。

はたして何が飛び出すのか。

実は株式市場ではバッテリー・デイを前にして、テスラ株の評価を巡って様々な動きが・・。

たとえばモルガンスタンレー。

6月12日にテスラ株の PT(price target; 目標株価)を680ドルから650ドルに引き下げ。

投資判断も「Equal-weight」(中立)から「Underweight」(アンダーウェイト)に引き下げました。

アンダーウェイトとは、「ポートフォリオ上で、この株の比率を落とせ」との意味で、つまり「売り」を推奨。

ちなみにこの時のテスラ株は970ドル近辺を行ったり来たりしていました。

それから1か月後。

7月10日にモルスタはテスラ株のPTを 650ドルから740ドルに引き上げ。

更に7月29日には、テスラ株の PTを740ドルから1050ドルへと再度引き上げました。

しかし2度にわたる PT 引き上げにもかかわらず、投資判断は「Underweight」(アンダーウェイト)を継続(ちなみに7月29日の段階でテスラ株は1500ドル近辺を行ったり来たりしていました)。

そもそもPTを2回続けて引き上げておきながら、投資判断については「Underweight」(アンダーウェイト)を継続するというのも、やや理解に苦しむところ。

そして、7月最後のPT引き上げから、たった2週間後のことです。

8月13日。

今度は、モルスタはテスラ株のPTを 1050ドルから1360ドルへと3度目の引き上げ(2ヶ月間にPTを4回も動かすのは異例です)。

併せて、投資判断も「Underweight」(アンダーウェイト)から「Equal-weight」(中立)に引き上げました。

それだけではありません。

この日、モルスタは、サムスンSDIなど韓国のEV Battery Producers の投資判断を軒並み「Underweight」(アンダーウェイト)に引き下げ。

サムスンSDIに至っては「Overweight」から一気に「Underweight」への引き下げ(つまり「Equal-weight」を飛び越しての2段階引き下げ)。

こうなってくるとモルスタは、

「バッテリー・デイで大きな動きがある。それは投資資金(投資家のお金)が韓国勢からテスラへと大きくシフトすることを意味する」

と考えているのではないかと思えてきます。

それにしてもテスラ株。

去年の今ごろは215ドルでした。

それが1年間で1650ドルへ。

7.7倍になったことになります。

時価総額も33兆円に・・(トヨタは23兆円)。

ここまで高くなると手を出しにくいという人も多いと思いますが、

はたしてバッテリー・デイでいったい何が飛び出すのでしょうか。

* * *

ところで、話はがらりと変わりますが、

一昨日ご紹介した日経電子版への寄稿記事。

日経ヴェリタス紙に連載しているシリーズの5回目にあたるものです。

本日発売の同紙第48頁でご覧頂けます。

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上の写真は、従来同様、出版権などの権利関係に配慮し、敢えて読めないように縮小して掲載しています。

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2020年8月14日 (金)

高齢者(65歳以上)世帯の平均所得額 ~ 日本と米国では2倍以上の差がついてしまった

新型コロナの影響で中止になってしまったのですが、

今年はAFS留学生の同期会がウィーンで行われる予定でした。

1971年から72年にかけて米国カリフォルニア州オレンジ郡に留学していた同期約15名。

主な出身国を挙げると、ドイツ、オーストリア、ベルギー、スペイン、スコットランド、グアテマラ、エクアドル、ブラジル、アルゼンチン、レバノン、イラン、ヨルダン、オーストラリア、タイ、そして日本(私)といった具合。

このうち、レバノン、エクアドル、イラン出身の留学生は、今では米国に住んでいます。

今回は会うことは出来ませんでしたが、SNSが発達した昨今です。

私のスマホには毎日彼らの生活ぶりが送られてきていて、ときに情報過多と感じてしまうほど。

働いている人は私を含めて2名だけで、あとは皆、定年後の生活をエンジョイしているようです。

* * * *

米国国勢調査局のデータ(2018年)によると、米国で世帯主が65歳以上の世帯の平均所得額は、1ドル=106円で換算して、月59万円、年収にして約713万円になります(『こちら』)。

たしかに、これだけの収入があれば、比較的楽な、そして活動的な生活が送れそうです。

ただし残念ながら、日本の状況は少し違います。

日本の高齢者(65歳以上)世帯の平均所得額は月28万円、年収約335万円(2018年厚労省「国民生活基礎調査」)。

老後の収入という観点からすると、日本は米国の半分以下でしかありません。

* * * *

なぜ、こんなに差がついてしまったのでしょうか。

そういった問題意識を持ちながら、今回の記事を書きました。

『米国の制度に学ぶ老後設計の知恵』

本日の日経新聞電子版です(『こちら』)。

よろしかったらご覧になってください(注:電子版のメンバーでなくとも、登録すれば無料でご覧になれます)。

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 『米国の制度に学ぶ老後設計の知恵』『こちら』

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2020年8月 1日 (土)

アップル株4分割

アップル株の4分割。

8月31日に実施されます。

それまでアップル株を1株持っていた人は、分割後4株を持つことになります。

一方、株価の方も4分の1になることが予想されることから、経済的効果は変わりません。

では、なぜ株式分割をするのでしょうか。

会社側の説明は、「もっと広い範囲の投資家層に株式を持ってもらえるようにするため」( to make the stock more accessible to a broader base of investors )というものです(『こちら』)。

そうは言っても、分割前で1株425ドル(昨日の終値)。

米国株は1株から買えますので、4万5000円ほどで買えて、誰でもアップルの株主になれます。

グーグル(1,487ドル)やアマゾン(3,164ドル)に比べても現状の株価は安いのに、「なぜ?」と思われる方もいるかもしれません。

本当の理由は(私の推測ですが)、アップルがダウ平均株価の構成銘柄であるため。

ちなみにグーグルやアマゾンはダウ平均株価の構成銘柄ではありません。

なぜアップルがダウ平均銘柄だと株式分割が必要となるのか、もう少し詳しくご説明しましょう。

まずダウ平均株価の構成銘柄ですが、これは30銘柄しかありません。

主なところを挙げると、アメリカン・エキスプレス、ボーイング、P&G、コカ・コーラなど。

その中で、アップルの株価は最も高くなっています。

同じダウ平均株価の構成銘柄であっても、例えばファイザーの株価は38ドル(昨日の終値)。

これはいったい何を意味するのでしょうか。

たとえば、ファイザーの業績が良くなり、株価が10%上がっても、3.8ドル上昇するだけです。

ところがアップルの業績が良くなった結果、仮に株価が同じく10%上がったとすると、株価は42.5ドルも上がることになります。

そして、ここで問題となってくるのが、ダウ平均株価算出の為の計算式。

ダウ平均株価は、30銘柄の株価の合計値をある除数(divisor)で除した(割った)数式で計算されます。

すなわち:

ダウ平均株価=30銘柄の株価合計÷「除数」 

(注)この除数は現在のところ約 0.146となっている(『こちら』)。

つまりダウ平均株価を決定づけるのは、30銘柄の単純な合計値に他なりません(単純合計値を単に一定の除数で割るだけなので)。

その為、アップルのような高株価銘柄は、ダウ平均株価に与える影響度が、他銘柄に比べて大きくなってしまいます(同じ1%の上昇でもダウ平均へのインパクトが全然違ってくる)。

こうした、ある種の「不都合」を是正するためには、30社の株価を出来るだけ近づける(少なくとも、ある一定のレンジ内に収める)必要が出てきます。

そういった目的もあって今回アップルは株式分割を決定するに至ったものと考えられます。

ダウ平均株価指数の特殊性(=単純平均がベース)に起因すると言ってもいい株式分割。

実はこうした性格の株式分割は、これまでにも何度か行われてきています。

そもそもアップルがダウ平均株価の仲間入りする時にも、当時のアップルの高株価が問題とされました。

2014年6月初めの段階でアップルの株価は600ドルを超えていたのです。

当時、アップルはダウ平均銘柄ではありませんでしたが、600ドルを超えるような水準では、そもそもダウ平均入りは難しいと考えられていました。

そこで同年6月9日、アップルは7分割を実施。

株価は7分の1(90ドル台)になりました(それ以前のアップル株所有者は所有株数が7倍に増加しました)。

こうして株価をある一定のレンジに落としたうえで、翌年3月、アップルはダウ平均銘柄に採用されるに至ったのです。

それから僅か5年です。

アップルはダウ平均株価採用後も株価を上げ続け、またしてもダウ平均銘柄としては、株価が高くなり過ぎてしまいました。

そのために今回また株式分割が実施されることになった訳です。

ところで、先ほど出てきたダウ平均株価を算出するための除数。

これはいったい何でしょうか。

除数は、ダウ平均株価の銘柄入れ替えや株式分割などがあるたびに、指数としての連続性を保つための調整弁として使われます。

たとえば、銘柄入れ替えの場合は、入れ替える銘柄間の株価差によって指数(株価合計がベース)が上がったり下がったりするので、その変化率に合わせて除数を上げ下げして、指数の連続性を保つようにします。

また今回のアップルのように採用銘柄が株式分割を行う場合には、分割後の株価が下がるため、それに合わせて除数を変化させます。

つまり算式的には次のような関係になります。

Djia

ここでPは採用銘柄の株価、dは除数。Σは30銘柄の株価の合計値。

銘柄入れ替え前や株式分割前は old で示し、入れ替え後や分割後は new で示しています。

これだけでは除数がどう変化するのか分かりにくいという方は、『こちら』の記事をどうぞ。

少し前の記事ですが、この辺を丁寧に説明してくれています。

いずれにせよ2013年6月の時点でアップルの株価は400ドルでした。

それが7分割された後、現在また同じ400ドルになってきた訳です。

つまり7年間で株価は7倍になったことになります(アップル株所有者は7倍の株数を持つようになったため)。

こうした環境下で今月末に実施される4分割。

これから先の数年後にかけて、いったいどんなストーリーとなって展開していくのでしょうか。

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