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2020年12月30日 (水)

ゴリオ爺さん

日経ヴェリタス紙に5週間に1回の割合で寄稿しています。

毎回、記事を編集者に送る度に「さて次は何を書こうか」と悩み始めます。

今回(1月3日掲載分)は6年前に流行ったピケティの『21世紀の資本』を取り上げました。

切っ掛けとなったのは1本の映画です。

ピケティが監督した映画『21世紀の資本』

今年5月公開の映画なのですがコロナ禍で映画館に行く気になれず、11月にアマゾン・プライムでレンタル。

映画にはさほど感銘を受けませんでしたが、もう一度きちんと本を読んでみようと思い、分厚い(608頁!)本の頁をめくり始めたところ、これがたいへんに面白い。

6年前にサラッとこの本を読んだだけの人には、是非もう一度手に取られることをお勧めします。

話は脱線しますが、今回記事を書く上では翻訳本だけでは納得がいかず英語版も読みました。

たとえば翻訳本ではランティエのことを「不労所得生活者」と訳しています。

しかしこれはちょっとしっくりときません。

評論家の川本三郎は、澁澤龍彦の文学を論じ、

『澁澤が筆一本のもの書きだったのは彼が「ランティエ」だったからである』、『澁澤の文学には「余裕」がある』と評しました。

いわく、

『澁澤龍彦はこの「ランティエ」ではなかったかといいたいのである。(中略)「ランティエ」とは、磯田光一にならって「精神の貴族主義」ということも可能だろう』(雑誌『鳩よ!』1992年 4月号)。

川本三郎はランティエのことを「高等遊民」と意訳していますが、「不労所得生活者」という言葉からはそうした意味合いが感じ取れません。

ところで、話が再び変わって恐縮なのですが、

ピケティの『21世紀の資本』にはバルザックの『ゴリオ爺さん』の話も何度も出てきます。

調べてみると、『ゴリオ爺さん』は『世界の十大小説』(サマセット・モーム)にも選ばれた小説。

これを機会に『ゴリオ爺さん』も読んでみましたが、これまた面白い!

ピケティは、(私の勝手な解釈ですが)気を付けていないといずれ『ゴリオ爺さん』の時代に戻るということを言いたかったのかもしれません。 

『ゴリオ爺さん』の舞台は1819年のパリ。

ユーゴーの『レ・ミゼラブル』とほぼ同じ時期です。

この時代のフランスですが、ルイ18世・シャルル10世の復古王政時代を経て、七月革命後のルイ・フィリップ王の七月王政時代へと続いていくのですが・・。

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