安すぎるニッポン
日経新聞の記者が書いた『安いニッポン』。
この本の内容は帯に凝縮されていると言えよう。
いわく「年収1400万円は低所得」。
日本は過去20年、いや今となっては30年かもしれないが、ずっとデフレだった。
一方で、海外はそれなりにインフレだったから、いつの間にか差がついてしまった。
本の裏表紙。
こちらの帯にはもっと多くの情報が並ぶ。
これによると日本人の平均年収はアメリカの59%。
約半分しかない。
本書では日経新聞の記者が何人かで協力して取材にあたっているので、海外の状況が丹念に調べ上げられている。
そこに浮かび上がる実態は、題名の『安いニッポン』どころか、もっと悲惨。
『安すぎるニッポン』であり『買いたたかれるニッポン』だ。
ところで、この種の著作には2つの大きな反論が生じがち。
反論のひとつ目。
『それって為替レートの問題じゃないのか』。
為替の要因もたしかにあるのだろうが、主たる要因と言えるのかどうか。
たぶん違う。
詳しくは、本書の40~44頁で説明されている。
もう一つの反論。
『安いことは生活しやすいことだし、何か問題でもあるのか』。
これに対する反論も本書の随所で語られているが、
本書227-229頁に改めてまとめて記載されている。
それではいったい解決策はあるのか。
本書には労働市場の硬直化の是正など幾つかのヒントが掲げられている。
河野さん(BNPパリバ)はこうコメントする(本書248-249頁)。
『安いニッポンから脱するためには、国は課税の方法を考える必要がある。
アベノミクスでは消費税増税と法人税減税を行ったが、付加価値は資本所得と労働所得の合計であることを考えると、その組み合わせは労働所得への課税強化を意味し、労働に不利な税制改革を続けてしまったと言うことである』
ところで本書ではあまり触れられていないが、『安いニッポン』は実は『超安い日本の地方』でもある。
それは例えば日本の地方都市に行って食事をしてみれば分かるだろう。
本書には港区の住民の平均所得は年約1217万円と出てくる(82頁)が、
これは地方で暮らす人にとっては信じられない数字に違いない。
この日本の地方の問題をどうするか。
都心に住む人がもっと気軽に、そして安く、地方に行ければ地方は活性化する。
地方で消費するからだ。
米国だと高速道路は基本無料だし、クルマに乗って他州に遊びに行くことも多い(ガソリン代も安い)。
ところが日本ではそうはいかない。
安いニッポンでも都会に住む人が地方に行くには意外とコストがかかるのだ。
何よりも高速代が高い。
繰り返すが、地方は東京などよりも、もっと難しい状況に置かれている。
これはGoTOトラベルといった一時的処方箋では解決しない。
高い移動料金といった根本的問題にメスを入れる必要があるように思う。
戦国時代、織田信長は、通行税(関銭)を取る関所を廃止し、人やモノの流れを活発化させたのである。
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