半導体不足による自動車減産
本来、景気を牽引することが期待されていた自動車産業。
にもかかわらず、ここにきて各社が減産発表を余儀なくされています。
たとえばトヨタだけを例にとっても:
【1月10日】米南部テキサス州の工場で1車種の生産を減らす方針。世界的な半導体不足を受けた措置(『こちら』)。
【2月19日】福島県沖地震に伴う部品の調達不足。8工場の稼働停止延長。減産3万台(『こちら』)。
【3月17日】米ケンタッキー、ウエストバージニア両州とメキシコの計4工場で減産。「石油化学製品の不足」と「最近の悪天候」が原因(『こちら』)。
とくに車載半導体の不足は自動車各社共通の悩みのようで、例えば本日発行の日経ヴェリタス紙はこう報じています。
『「半導体不足がなければ昨年度を上回る営業利益を報告できた」。2月9日、ホンダの倉石副社長は決算会見で悔しさをにじませた。』
そのほか、半導体不足に起因する減産、操業停止など、主なニュースだけを拾ってみても次のような状況(『こちら』)。
フォルクスワーゲン:北米やヨーロッパでの生産を調整
ホンダ:鈴鹿および米、カナダ、中国の工場で減産。英の工場、操業一時停止。
日産:神奈川の工場で減産
SUBARU:群馬の3工場で操業一時停止
フォード:オハイオ州及びケンタッキー州の工場を減産、もしくは操業一時停止(『こちら』)
GM:北米4工場で減産(『こちら』)
(日経ヴェリタス最新号によると1台1000個以上の半導体を搭載する高級車も。
なお写真は電気自動車なので搭載される半導体は更に一段と多い模様)
* * *
さて、そんな中です。
昨年10月に旭化成の延岡(宮崎県)の半導体工場で火災が発生(『こちら』)。
延岡の操業の目途は今になっても立っていないのだとか・・(『こちら』)。
そして3月19日、今度はルネサスの那珂工場で火災が発生(『こちら』)。
そもそも何故、車載用半導体が世界的な供給不足に直面するようになったのでしょうか。
諸説ありますが、昨年9月にトランプ政権は中国のSMICへの制裁を本格化させました(『こちら』)。
これを受け、SMICへ生産を委託していた半導体メーカー各社(欧米勢)は、委託先を台湾のTSMCとUMCの2社、そして米国のグローバルファウンドリーズなどに変えます。
そしてこの結果、これら台湾、米国勢などのファウンドリー(半導体製造受託会社)の操業が能力的に余裕のないものとなってしまった、といった事情があるようです(週間エコノミスト3月23日号)。
世界の半導体メーカーの主流は、自らは工場を持たずに(ファブレス)、生産をファウンドリー(製造受託会社)に委託するというものでした。
しかし生産の委託先が一部の大手ファウンドリーのみに集中することで、今回のような世界的な供給不足の問題が出現しやすくなってしまったということなのでしょう。
ちなみにTSMCは世界のファウンドリーで過半の56%のシェアを握ると言われています(『こちら』)。
株価は19年末に比べて(約1年3ヶ月で)8割上昇。
時価総額は59兆円で、トヨタ(28兆円)の2倍。
時価総額の世界ランキングで11位を占めるに至っています。
自動車会社の視点で見ると、「下請け(半導体メーカー)の下請け(ファウンドリー)」と思っていた先が、いつの間にか超巨大化していたということなのでしょうか。
ところで、日本のルネサスは、世界的にファブレスが主流になる中で、ファブライト(工場軽量化)路線でやってきました。
那珂工場の迅速なる復旧を願ってやみません。
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