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2021年5月30日 (日)

株式分割とダウ平均株価指数

米半導体大手のエヌビディア(NVIDIA)が株式分割を行います(『こちら』)。

これにより分割前は1株しか持っていなかった株主は、分割後4株を持つことになります。

一方で、株価は分割により4分の1になりますから、分割自体には経済的に大きな意味合いがあるわけではありません。

ただNVIDIAの株価は1株650ドル前後しますので、分割して株価が4分の1になれば個人投資家にとって買いやすくなります。

と、ここまでは一般的な解説。

  Nvidia1

         (写真はNVIDIAのウェブサイトより)

しかし、ここでよく考えてみましょう。

現在ダウ平均株価には半導体銘柄としてはインテルが採用されています。

しかし昨年7月、インテルの時価総額はNVIDIAに抜かれてしまいました。

現在は:

インテル   $ 231 Billion

NVIDIA    $ 405 Billion

と昨年7月に逆転された後で、更に大きく差をつけられています。

さて、ここでもう少し考えを進めてみましょう。

ダウ平均株価指数は米国のエリート銘柄30社から構成されています。

そしてどの企業の株価をダウ平均株価指数に採用するか、これを決めるのはS&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズ社という会社です。

昨年8月にエクソンモービルが指数から落とされ、代わりにセールスフォースが指数に採用されたように、

S&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズ社は構成銘柄を常に見直しています。

要は、米国を代表するエリート銘柄30社に値するかの見直しです(詳しくは『こちら』)。

そう考えていくと、いずれかの時点で、

「インテルを落としてNVIDIAを入れる」

ということが行われたとしてもおかしくはありません。

実は、その場合のネックはNVIDIAの高株価でした。

ダウ平均株価指数は、基本的には各銘柄の株価を足して銘柄数で割った単純平均で算出されるため、

1社だけ株価が飛び抜けて高いと不都合が生じるからです。

たとえば世界最大の時価総額を誇るアップル。

かつてアップルはなかなかダウ平均に採用されずにいましたが、それは株価が高いことがネックと考えられていました。

このためアップルは2014年6月に7分割を実施。

株価を7分の1に下げたのです。

そしてその後、これに応えるかのように、

S&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズ社はアップルをダウ平均株価に採用しました(2015年3月)。

今回のNVIDIAによる株式分割も、

これと同じようなメッセージをS&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズ社に送っている

と考えられるのかどうか。

いずれにせよ、これを決めるのはS&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズ社なのですが、

ダウ平均株価指数に採用されるということは、株価にとってプラスに作用することで間違いありません。

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2021年5月27日 (木)

人口急減の時代

今週号の日経ヴェリタス紙。

「2021年の出生数が80万人を下回るかもしれない」という話から始まります。

と言っても、80万人を下回ることの意味は分かりづらいかもしれません。

一言で言うと、少子化のペースが従来考えられていたよりも「約10年速まる」ということです。

(注:従来の国の見通しでは、80万人割れは2030年)。

なぜ、こんなことになってしまったのでしょうか。

「新型コロナ感染拡大で結婚・妊娠を手控える人が増えたため」と言われています。

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     (画像は日経ヴェリタス紙のツイッターより)

ちなみに昨年1年間の出生数は87万2,683人(過去最低)、死亡数は138万4,544人(厚生労働省発表、2021年2月22日)。

なお昨日厚労省が発表した昨年1年間の妊娠届は前年比4.8%減の87万件。

この妊娠届の数字からも「2021年の出生数が80万人を割る可能性が高まった」と理解されているようです。

このような形で急激に人口が減っていくと、いったいどうなるのでしょうか。

詳しくはヴェリタスの記事に譲りますが、

「少子化のペースが従来考えられていたよりも約10年速まるかもしれない」

ということは、頭の片隅にきちんとインプットしておいた方が良さそうです。

そう言えば、今日、取引先のA社社長から電話がありました。

米国から帰国して現在自宅待機中とのことだったのですが、空港で帰国者の検疫、誘導にあたっていた多くの人が、

「ベトナム出身とか、アクセントのある日本語を話す人たちだった」

とのこと。

少子化を補う形で、こういった情景が今後広がっていくのかもしれません。

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2021年5月22日 (土)

MINAMATA(その2)

ジョニー・デップ製作主演の映画『MINAMATA』は、写真集『水俣 MINAMATA』が原案となっています。

これは写真家ユージン・スミス氏とアイリーン・美緒子・スミスさんとの共著。

1971年9月、ユージン・スミス氏とアイリーン・美緒子・スミスさんは、寝台特急「なは」で水俣駅に降り立ちます。

2人は10日前に婚姻したばかり。

スミス氏52歳、アイリーンさん21歳でした。

その後、夫妻は水俣で3年間暮らします。

今回の映画に関連し、アイリーンさんが西日本新聞(『こちら』)や朝日新聞(『こちら』)とのインタビューに応じています。

「裁判が続いている現在の水俣病にも光が当たれば良いし、

『被写体と読者に対して限りなく正直で公正であることがジャーナリストの責任だ』

と繰り返した彼の精神が世界中に伝わればうれしい」

アイリーンさんはこう語っています(『こちら』)。

映画のオフィシャル・トレーラーとは別に、ベルリン国際映画祭の new clip official も3点公開中。

いずれも1分少々の短い動画です(『1』『2』『3』)。

* * * * * * * * * * *

昨日のブログで、水俣病、チッソについて過去に書いたブログのリンクを記載しましたが、幾つか拾いもれがありました。

『宝子』(2007年1月28日)

『新聞協会賞』(2006年9月7日)

また昨日の記事の最後に記した英文は、

下記(2008年1月23日、朝日新聞)の翻訳です。

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     (クリックすると大きくなって読めます)

2007年5月4日『熊本日日新聞』↓

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西日本新聞社編『水俣病50年』 ↓

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最後の画像で『米国なら恐らく、とうの昔にチッソを破たんさせている』と書かれていますが、

そんなに簡単なわけでもありません。

以下、熊本日日新聞社編『水俣から、未来へ』の一節(同著173頁)。

 「チッソ県債」を編み出す作業に携わった八木橋惇夫氏の発言を紹介する記事です。

「ああいうことをしでかした企業には、最後まで十字架を背負っていってもらうというのが私の考えだった」。

(中略)

1977年から2年間、環境庁の保険企画課長を務め、被害者からすれば本末転倒ともいえる「チッソ県債」を編み出す作業に携わった八木橋惇夫氏(69)は当時の思いをこう語った。

(中略)

「あそこで支援しなければ、チッソはむしろ喜んだかもしれない。

倒産して、新しい会社になってしまえば関係なくなるわけだから」。』

水俣病に関しては刑事罰も問われました。

1976年5月、熊本地方検察庁はチッソの吉岡喜一元社長と西田栄一元工場長を業務上過失致死傷罪で起訴。

1979年3月、熊本地方裁判所は両人に対し禁固2年、執行猶予3年の有罪判決。

その後、福岡高裁は控訴棄却、1988年2月、最高裁判所は上告を棄却し有罪判決が確定しました(判決全文は『こちら』)。

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2021年5月21日 (金)

MINAMATA

『営業3部に行ってチッソを担当してくれ。水俣病の問題でたいへんなことになっている』

興銀時代、そう上司に言われて営業3部に着任したのが1992年。

当時私は38歳でした。

実は、水俣病、チッソの問題については、何回かブログで書いてきましたので、ここでは繰り返しません。

ご関心ある方は、このブログ記事末尾のリンク先(緑の文字)をご覧ください。

今回は、MINAMATAの名を世界に知らしめた写真家ユージン・スミスが映画化されることを知り、是非ともお知らせしたいと思いました。

映画『MINAMATA』。

ジョニー・デップ製作主演。

今年の秋、公開です。

予告編は『こちら』でどうぞ。

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Tomoko Uemura in Her Bath by W. Eugene Smith 

From Wikipedia 

https://en.wikipedia.org/wiki/W._Eugene_Smith

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 金融機関から見た水俣病(その1)(2006年2月25日)

 金融機関から見た水俣病(その2)(2006年3月28日)

 金融機関から見た水俣病(その3)(2006年4月13日)

 金融機関から見た水俣病(その4)(2006年4月14日)

 『水俣から、未来へ』(2008年10月26日)

 Chisso accountable to public (2008年2月3日)

【注】(2008年1月23日 朝日新聞『私の視点』の英語版) 

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設立後6年の会社

2004年8月にグーグルが上場した時、公募価格は1株当たり85ドル(分割前)でした。

そしていきなり時価総額230億ドル(2.5兆円)の会社が誕生しました(『こちら』)。

設立後6年の会社がこれだけの時価総額をつけるとは、当時としては画期的でした。

当然マーケットでは「そもそも公募価格が高すぎる」といった評価も一部でなされ、IPO後1ヶ月くらいは公募価格や初値を挟む展開が続きました。

あの頃はまだヤフーで検索する人もそれなりにいましたし、いったい検索ビジネスがどれくらいの収益を産み出すのか、懐疑的な人もいました。

しかしその後のグーグルの快進撃は歴史が示す通り。

株価は現在47倍になっています。

本日の日経電子版の記事ではこの点に焦点をあてました。

『こちら』です(無料の会員登録をすれば月刊10本まで日経電子版の記事が無料でご覧になれます)。

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2021年5月18日 (火)

渇望消費 たまるマグマ

昨日放映された日経ヴェリタストーク(渇望消費 たまるマグマ)は、『こちら』で動画をご覧になれます。

15分間です。

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2021年5月17日 (月)

ホログラムボタン入力

本日は日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』に出演しました。

従来は夜の放送だったのですが、5月から放映開始時刻が午後1時15分に変わっています。

午後1時を過ぎたところでスタジオに入ると、日経平均は前日比で400円以上も下げていました(ちょうどこの時刻が今日のボトムでした)。

さて今回のトピックは、『渇望消費、たまるマグマ』。

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     (画像は『日経ヴェリタスのツイッター』より)

緊急事態宣言が9都道府県で発出されている中、消費者の行動様式の変化をさぐるといった内容でした。

キーワードの一つに『都心から郊外へ』というのがあります。

たしかに家電量販店やドラッグストアなどでは、郊外店中心のところが業績良好・・。

では「都心が廃れていってしまうのか」というと、そうでもありません。

来年8月にオープンする「東京ミッドタウン八重洲」

「東京ミッドタウン」としては3つ目になりますが、

45階建てビルの39階~45階は『BVLGARI(ブルガリ)のホテル』

現在世界で6つのBVLGARIホテルがありますが、東京は10番目のオープンになる予定です。

ちょっと泊まってみたいですね。

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東京ミッドタウン八重洲の特徴は「完全タッチレスオフィス」になっていること。

AI(人工知能)が顔認証してタッチレスというのは、今では珍しくもなんともありませんが、

ポイントは、通常勤務以外のフロアへ行く場合。

ミッドタウン八重洲では、この場合もエレベーターホールのホログラムボタンを入力すれば、タッチレスで目的のフロアに行けます。

ホログラム入力と言えば、回転ずしの「くら寿司」でも「一部店舗で非接触型サービスを導入」

また大日本印刷は、 既存の機器に後付けで設置できる「DNP非接触ホロタッチパネル」を開発。

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   (画像は3点とも大日本印刷のサイトより)

銀行のATMなど非接触でホログラム入力できる日がすぐ近くまで来ています。 

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2021年5月12日 (水)

カリフォルニアからテキサスへ

テキサス州の人と話すと、ときに「テキサスはアメリカ合衆国よりも大きい」と訳の分からない発言に出会います。

たしかに面積はアラスカに次ぐ広大さを誇り、日本の1.8倍もあります。

テキサス州を一つの国に例えれば、GDP1.9兆ドルを有する世界第9位の経済大国です。

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 (テキサスの州旗)

一方、テキサスとよく対比されるカリフォルニア州。

面積はテキサスに次ぎ全米3位。

GDPはテキサスよりも大きく、3.2兆ドルを超え、国に例えれば世界第5位(米、中、日、独に次ぐ)。

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(カリフォルニアの州旗)

この両州は良い意味でライバル関係にあると言われています。

しかし、最近のビジネス界のトレンドは、カリフォルニア州からテキサス州へという流れ。

2017年、トヨタは北米本社をカリフォルニア州(LA近郊)からテキサスに移しました。

この流れはその後も続いていて、昨年末以降でもカリフォルニア州からテキサス州へと移転する企業や経営者が続々と出現。

具体的には:

2020年12月、HP(『こちら』

2020年12月、イーロン・マスク(ただしテスラはカリフォルニアに留まる見込み;『こちら』

2020年12月、オラクル(『こちら』;ただしラリー・エリソンはハワイに移住、現地からZoomで仕事)

2021年1月、チャールズ・シュワブ(『こちら』

といった具合。

* * * * *

5月2日付の朝日新聞 Globe 15頁はこの辺の流れをまとめていて、下記の表を掲載。

Calif-vs-texas  

私自身は南カリフォルニア(Newport Beach)に1年、北カリフォルニア(Palo Alto)に2年住んだこともあり、カリフォルニアの方に親近感がありますが、住宅コストや税金のことを考えると、なるほどテキサスへの流れも理解できます。

ところで、テキサス出身のアカデミー賞主演男優賞受賞俳優のマシュー・マコノヒー。

その彼がテキサス州知事への立候補するのではないかと報じられています。

『こちら』です。

私には、映画『評決のとき』や『インターステラー』などでの演技が記憶に残る俳優さんですが、

上記の動画はファンの方には必見かもしれません。

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2021年5月 5日 (水)

決算発表後のGAFAM

GAFAMの決算(1-3月期)はどこも良かったのですが、29日以降の株価の動きをプロットしてみると次のようになります。

Gafam

上図で、マゼンダ色がダウ平均株価推移でこの間+0.9%。

これを上回ったのは黄色のフェイスブック1社で+3.7%。

後は軒並み総崩れで、

青のグーグルは-2.2%、

紫のマイクロソフトは-2.5%、

緑のアマゾンは-4.2%、

茶色のアップルは-4.4%。

決算が良かったにもかかわらず株価が息切れしたのは、

(1)「アナリスト予想を上回る好決算」を市場は「事前に」予想し株価が「すでに」上がっていた(Amazonなど)

(2)市場はもっと大幅な驚き(blow out)を期待していた(これに応えたのはFacebookのみ)

(3)マーケット全体に高値恐怖症が出始めている

この(3)のところを敷衍すると:

(3-1)「経済が良くなる」と期待するアナリストは多いのですが、これは米国の状況であって、ワクチンで遅れを取る一部の国が世界全体の足を引っ張るのではないか・・。

(3-2)バイデンの経済政策は景気にプラスだが、この後に出てくる増税が景気の足を引っ張るのでは・・。

(3ー3)5月1日に開かれたバークシャー・ハザウェイの年次株主総会でウォーレン・バフェットが指摘したように、「人々が6か月前に予想した以上にインフレが進行している。そして人々はインフレを受容している」。つまりこれは、いずれは金利上昇に繋がるのではないか。

こういった諸点が重なって高値恐怖症が出て、株価はちょっとしたニュースに過剰反応するようになっています。

昨日の市場はイエレン財務長官の「金利を幾分上げざるをえなくなることもあり得るかもしれない」との発言に大きく反応。

実際のコメントは下記のように例によって注意深く綴られたものでしたが、GAFAMを中心に売りが殺到しました。

 "It may be that interest rates will have to rise somewhat to make sure that our economy doesn't overheat, even though the additional spending is relatively small relative to the size of the economy,"

 "It could cause some very modest increases in interest rates to get that reallocation, but these are investments our economy needs to be competitive and to be productive (and) I think that our economy will grow faster because of them."

市場の過剰反応を見て、イエレン長官は慌てて、すぐに下記(とくに青字部分)のように火消しに努めましたが、あまり効き目はありませんでした。

 Yellen told a Wall Street Journal CEO Council event that she does not anticipate that inflation would be a problem for the U.S. economy and that any price increases would be transitory because of supply chain shortages and the rebound in oil prices to pre-pandemic levels.

Asked directly about her remarks on rates, Yellen said she was neither predicting nor recommending a rate rise.

"If anybody appreciates the independence of the Fed, I think that person is me," Yellen said.

"I don't think there's going to be an inflationary problem. But if there is the Fed will be counted on to address them," she added.

(3-1)のワクチンのところも問題です。米国では、「ワクチンが余ってしまい18万回分のワクチンが廃棄されている」との報道も(『こちら』)。

 米国スタンフォード大学近辺でも、

『Stanford Medical Center will have a lot of Pfizer vaccines leftover today at 505 Broadway in Redwood City.  Come before 3:30pm!  They will take anyone!』

といった案内が回ってきたり、『カリフォルニアに住む全ての16歳以上はワクチンが受けられるので受けるように』(『こちら』)との案内がなされる状況。

実際にワクチンによって新規感染者は下図の通り激減しており、カリフォルニア州では、かつては1日の新規感染者が6万人を超えることもありましたが、今やその 3% の1,824人(『こちら』)。

California

『しかしこれは米国の状況で世界経済は連動していることを忘れてはいけない。米国の状況を見て、経済は急回復すると過信してはいけない。(昨日の)株式市場はそういったことを我々に認識させてくれる』

昨日の米国の経済番組ではコメンテーターがこうコメントしていましたが、米国民がそう認識するのであれば、もう少し積極的にワクチンが他国に回るようにして欲しいと思ってしまいました。

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