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2021年6月19日 (土)

雇用の促進を妨げるもの

日本銀行の目的は日本銀行法第一条に記されています。

『第一条 日本銀行は、我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うことを目的とする。
2 日本銀行は、前項に規定するもののほか、銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資することを目的とする』

ここで『雇用』について言及がないのは、日本では社会のシステムとして終身雇用が前提となっていたので、敢えて雇用を中央銀行の目的の一つに加える必要がなかった為なのかもしれません。

これに対して米国のFRBの場合、Federal Reserve Act で雇用の促進が目的のひとつに謳われています。

Section 2A. Monetary policy objectives

The Board of Governors of the Federal Reserve System and the Federal Open Market Committee shall maintain long run growth of the monetary and credit aggregates commensurate with the economy's long run potential to increase production, so as to promote effectively the goals of maximum employment, stable prices, and moderate long-term interest rates.

ということで、FRBは、一方で(1)インフレの懸念に目配せしながら、他方で(2)雇用の回復も図らなければならないという、難しいオペレーションを強いられます。

6月10日発表の5月の米CPIコア指数は前年同月比3.8%増でした(CPIは5.0%増)。FRBが目標としていた「2%よりやや上のインフレ」を、かなり上回る物価上昇でした。

これは中古車市場の過熱など一時的要因によるものだとの指摘もありますが、背景に人手不足があると解説するエコノミストも・・。

はたして(1)人手不足と指摘されるほど雇用は順調に改善しているのか、それとも(2)労働市場にはまだまだ「緩み」があって「インフレ期待を高めるような物価上昇が続くとは考えられない」(パウエル議長、6月15日、日経;ただし16日の会見では微妙に変化)のでしょうか。

ひとつ言えるのは、米政府による失業給付上乗せ金の存在が「雇用統計に影響を及ぼしている」ーその結果、雇用の実態が分かりにくくなっているということです。

もう少し説明を加えましょう。

今年3月、バイデン政権下で実施されたAmerican Rescue Plan Act of 2021によれば、9月6日まで、通常の一般的な失業給付金(モデルケースで週400ドル)に加えて週300ドルが失業者に上乗せ給付されます(The American Rescue Plan extended unemployment benefits until September 6 with a weekly supplemental benefit of $300 on top of the regular $400 benefit;『こちら』)。

つまり合計すると週700ドル、1ヶ月に換算すると3000ドル(33万円)を上回る金額が貰えることになるので、『職を積極的に探す気にならない』という人が増加してきています。

こうした状況をおかしいと指摘する人たちも共和党員を中心に増えてきていて、すでに連邦政府は「州レベルで上乗せ金給付を停止してもらって構わない、連邦政府としては介入しない」とコメント(『こちら』)。

結果、6月19日(本日)までに12州が上乗せ金給付を打ち切る予定となっています(9月6日まで続けるのは24州の見通し)。

それにしても上乗せ金を合わせると月33万円の失業給付金(一般的なモデルケースの場合)。

年収換算だと400万円近くにもなり、これだけもらえるならば、『当面働くのはよそう』とする人が出てくるのもなんとなく分かる気がします。

こうした人たちの存在が雇用の数字に影響を及ぼし、失業者が減らないにも係わらず、企業サイドでは人手不足が生じ、結果、インフレ傾向になりつつあるーFRBはこういった難しい状況下での金融政策のかじ取りを強いられています。

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