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2022年3月27日 (日)

もう一度思い出すこと

経済評論家の三原淳雄さん(1937年 - 2011年)が生前よく話していたのが、

「僕は小学生の時に満州でソ連兵に銃口を突き付けられた」

というもの(『こちら』)。 

年配の方で三原さんと似たような経験を持つ方もいるかもしれません。

当事者にとっては一生忘れ去ることが出来ない戦慄で恐怖の出来事も、

部外者がニュースで見ただけでは、時と共に印象が薄くなってしまいます。

今回のロシアによるウクライナ侵略でそうした幾つかの出来事をもう一度思い出しました。

【1】2014年、ウクライナ東部でマレーシア航空の旅客機がミサイルによって撃墜され、乗っていた298人全員が死亡

オランダ人193人、マレーシア人43人、オーストラリア人27人ら合計298人が犠牲になりました。

この件では、国際合同捜査チーム(JIT)が結成されました。

彼らは、ロシアのプーチン大統領の最側近が、ウクライナの反政府勢力と定期的に連絡をとっていたことを掴み、2019年、下記3名を含む4人の容疑者を殺人罪で起訴(『こちら』)。

(1)イゴーリ・ギルキン容疑者――ロシア連邦保安局(FSB)の元大佐。ウクライナの反政府勢力が支配していた東部ドネツクで、防衛相の役割を担っていた。

(2)セルゲイ・ドゥビンスキー――ロシア参謀本部情報総局(GRU)の職員。ロシアと定期的に連絡を取っていたギルキン容疑者の代理役だった。

(3)オレグ・プラトフ――GRU特別部隊の元兵士。ドネツクで諜報部門のナンバー2だった。

昨年12月にはオランダの裁判所で公判が開かれ、検察側は4人の終身刑を求刑しました。

ただしロシア政府は被告らを引き渡さず、4人は公判を欠席(『こちら』)。

この件に関して米国のトランプ前大統領は、当時ロシアが関与したことに対して、疑問を投げかけました。

トランプは、米国とヨーロッパの当局者が「ロシアが共謀している」と公に結論付けた後でも、「プーチンが本件につき否定するのを受け入れた」とされています。

(Trump sowed doubt about Russia's involvement. He embraced Putin's denials, even after US and European officials publicly concluded that Russia was complicit)『こちら』

【2】2つのウクライナ疑惑

トランプ前大統領と言えば、米国史上3人目の弾劾訴追された大統領であることが思い起こされます。

ちなみに弾劾訴追された3人とは、第17代大統領のアンドリュー・ジョンソン(1808年 - 75年)、第42代ビル・クリントン、第45代ドナルド・トランプの3人です。

ウォーターゲートのニクソン(第37代)は下院司法委員会の弾劾勧告が可決された段階で大統領を辞任。

下院本会議での弾劾決議は出ておらず上院での弾劾裁判も開かれていません(従って3人の中に入りません)。

またトランプ前大統領は2019年と21年、2度も弾劾訴追された歴史上唯一の大統領です。

ウクライナに関連するのは19年の弾劾訴追の方。

  Nhk 

  (上図はNHKのサイト(『こちら』)より)

19年7月、トランプ大統領(当時)とウクライナのゼレンスキー大統領とが電話会談をした際に、

トランプはウクライナへの軍事支援と引き換えに、大統領選挙に向けた野党・民主党の有力候補のバイデン前副大統領とウクライナとの関係をめぐる調査を要求し、圧力をかけたとされています。 

トランプのこの行動は「米国の安全保障や大統領に就任する際の宣誓に反している」として弾劾訴追されました。

しかし共和党が多数を占めていた上院での弾劾裁判で無罪を勝ち取っています。

ウクライナ疑惑についてはバイデン現大統領も無縁ではありません。

バイデン氏の次男ハンター・バイデン氏が19年4月までの5年間ウクライナのエネルギー最大手ブリスマ社の取締役を務め、非常勤ながら月5万ドル(約500万円)の報酬を受けていたというもの(『こちら』)。

なお、ウクライナ疑惑とは別ですが、プーチンが米大統領選で『ドナルド・トランプ前大統領を有利にするための工作を承認した可能性が高い』(米国家情報長官室(ODNI)の報告書)といった報道(昨年3月17日)も思い起こされます(『こちら』)。

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2022年3月16日 (水)

GARP

一昨日は日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』に出演しました。

番組の最後の方でGARPが出てきます。

実はこの時、残り時間がほとんどありませんでした。

カメラの後ろで番組スタッフの方が『あと1分』の紙を掲げていました。

番組でお話しできなかった部分をこのブログで補足説明させて頂きます。

  Nikkei-veritas_20220316221701

GARPとは、Growth At Reasonable Price の略。

バークシャーが1972年に See's Candies を買収した時。

買収価額はPBRの3倍だったと言われています。

バリュー投資的な考えからすれば割高だったのかもしれないのですが、バフェットは次の言葉を残しています。  

It's far better to buy a wonderful company at a fair price than a fair company at a wonderful price.

(素晴らしい会社を適正な価格で買う方が、並の会社を素晴らしく安く買うよりもずっと良い)。

GARPはこの考え方で投資を行うもの。

金利上昇時にはハイテク株は将来キャッシュフローを現在価値に割り戻す際の割引率上昇の影響を強く受けるため(注:そもそも将来キャッシュフローが株式価値に占める割合が大きい)、株価が受ける下方圧力は通常株式に比べて大きくなります。

一方、同じGrowth株でもバフェットの言う a wonderful company はハイテク株とは少し違います。

彼が好きなのは、ブランド価値がしっかりあって、将来キャッシュフローがぶれにくいものです。

だからハイテク株に比べて、金利上昇に対する抵抗力が比較的強いと考えられています。

1972年、バフェットが See's Candies を買収した時、私はちょうど米国にいました(AFSで留学していた高校生でした)。

See's Candies のショップは私のいたカリフォルニア州 Newport Beach にはすでにありましたが、米国全体で見ると、それほど多くはありませんでした。

それが今では全米に200店舗ほどあり、米国外(香港やシンガポールなど)にも進出。

製品がしっかりしていて、ブランドに価値があれば、こういった横への展開(地域拡大)による成長が可能になるのです。

バフェットが最初にコカ・コーラに着目した時(1988年)、

『これを世界の人が飲み始めたら、この会社の企業価値は凄いことになる』。

こうバフェットは考えたと言われていますが、こうした考えに基づく投資手法はすでに See's Candies で実践済みだった訳です。

もっとも問題はこの種の美味しい話はそんなには多くはないこと。

素晴らしい会社が適正な価格でウロウロしていることは余りなく、たいていは高くなってしまっています。

なお一昨日出演したテレビ番組の方は『こちら』でご覧になれます。

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2022年3月13日 (日)

2014年のロシアによるクリミア侵攻後に行われたウォーレン・バフェットへのインタビュー

2014年のロシアによるクリミア侵攻後に行われたウォーレン・バフェットへのインタビュー(2014年3月14日)。

『こちら』でご覧になれます。

(上記インタビューでのバフェットの発言要旨)

・危機と言うのは必ず何年かに一度やってくる。

・バークシャーの株価(つまりバフェットの個人資産)が半分になったことが、これまでに4回もあった。

・しかしアメリカの経済は基本、健全なので長い目で見れば株価は上がってくる。

・ダウ平均株価はいずれは10万ドルになる(注:2022年3月現在は3万2000ドル)。

・私は年なのでそれを見ることは出来ないが(50代の)あなたたちは見ることが出来るだろう。

* * *

今回のロシアによる侵攻はウクライナ全土に対するもので2014年の危機とは次元が違います。

バフェットがいま何を語るのか、聞いてみたい気もします。

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2022年3月12日 (土)

株主への手紙

米国企業のCEOがウェブサイトなどで発表している『株主への手紙』。

読み応えがあるものが多く、中には毎年の株主への手紙を集め、本にして出版されるものもあるほど。

たとえば昨年末に出版された『Invent & Wander──ジェフ・ベゾス Collected Writings』

この本の中心は、毎年発表されてきたジェフ・べゾスの株主への手紙を集めたもの。

『バフェットからの手紙』も基本はバフェットが毎年書いているバークシャーの株主への手紙。 

また、本にはなっていませんが、グーグルのラリー・ペイジの文章を読むのも私は好きです。

たとえば:

We did a lot of things that seemed crazy at the time. Many of those crazy things now have over a billion users, like Google Maps, YouTube, Chrome, and Android.

(我々はクレイジーだと思われたことをたくさんしてきた。そうしたたくさんのクレイジーだと思われたことが、今や10億人を超えるユーザーを持つようになっている。グーグル・マップや、ユーチューブ、クローム、アンドロイドなどだ)。

We’ve long believed that over time companies tend to get comfortable doing the same thing, just making incremental changes. 

(企業は長くやっていくうちに同じことをやったり、少しの改善・変化だけで満足してしまうようになる傾向にある)。

【注】以上の原文は『こちら』に掲載されているもの(後段の文章は、この後、「テクノロジーの業界にある会社は少しの改善・変化だけではジリ貧になる」といった内容に続いていきます)。

* * *

さて、ロシアによるウクライナへの侵略が続き、米国のインフレが7.9%となるなか、株式市場はいったいどうなるかと心配されている方も多いでしょう。

そういった方には、2012年にバフェットが綴った『株主への手紙』が参考になるかもしれません。 

実はこの一部を私は過去の著作で抄訳したことがありますので、以下に掲載させて頂きます。

* * *

『危機に際して安全なのは現金か。だとすると円なのか、ドルか。あるいはゴールド(金)を考えるべきかー。

稀代の投資家、ウォーレン・バフェットは、2012年2月、バークシャー・ハサウェイ社の株主に宛てた年次レターの中で、この点について検討した。

バフェットによれば、いろいろな種類の資産価格は変動するが、その資産のリスクが高いかどうかは、資産が有している「購買する力」で判断されるべきだ。

たとえ価格があまり変動しなくても、資産のリスクが高いといったことがあり得るのだ。

こう述べた上で、バフェットは資産を3つのグループに分類した。

以下、バフェットのレターを要約してみよう。

【第1のグループ】「現預金、債券などの貨幣価値に立脚した資産」

これらは通常安全と考えられているが、実はもっとも危険だ。

というのは貨幣の価値は政府や中央銀行が決めるもので、インフレによってこれらの資産の購買力は減ってしまう。

安定した通貨に対する人々の願いが強い米国でさえ、ドルの価値はびっくりするほど下落してきた。

私がバークシャーの経営に就いた1965年と比較してみると、現在ではドルは86%も下落し、当時1ドルで買えたものがいまでは7ドルも払わないと買えない。

債券はどうか。

同じ期間、つまり1965年以降、今日(2012年)まで47年間、米国債、それも1年物の短期国債で毎年期限が来るとロールオーバーする(次の1年物に乗り換える)という方法で運用していったとしたら、どういった結果になっただろうか。

平均で年率5.7%の金利がついた計算になるが、利息に対して税金を払わなければならなかったことを考慮すると、この運用方法でもこの間のインフレに勝てない。

47年間の間に購買する力はまったく増えないのだ(もちろん短期の米国債は流動性、換金性の面で優れているのだが・・)。

【第2のグループ】「それ自体は何かを生み出すものではないが、誰か別の人が購買してくれるだろうとの思いで、多くの人が購入している資産」

17世紀にはチューリップの球根であったし、現在ではゴールド(金)だ。

金は産業用や装飾用に使われるが、それだけの用途では、とてもではないけれど毎年生産される金の量を吸収することができない。

ほとんどの場合、人々は金を違った目的で所有する。

つまり誰か別の人が(できればもっと高い)値をつけて購入してくれるだろうという希望だ。

人類がこれまで生産してきた金の総量(地上在庫)は17万トン。1辺68フィートの立方体にしかならず、野球場の内野部分にすっぽりと収まってしまう。

この金すべてを現在の金価格1オンス1750ドル(訳者注:2013年12月末現在1200ドル;2022年3月11日現在1999ドル)で計算すれば、9.6兆ドルになる。

この金額はどういう金額だろう。

全米の農耕地(4億エーカーあって毎年2000億ドルの農作物を産出している)を購入して、なおかつエクソン・モービル社(毎年400億ドルを稼ぎ出している)を16社買った上に、さらに1兆ドルのお釣りがくる金額だ。

これから100年経っても全米の農耕地は価値ある農作物を産出し続けるだろうし、エクソン・モービルは稼ぎを上げ続けるだろう。

一方、金の方はというと、何も生み出さない。

あなたは金を優しくなでることができるが、金は何も答えないだろう。

【第3のグループ】「価値を生み出すことができる資産」

会社(会社が発行する株式を持つことで会社の所有者になれる)、農地、不動産である。

これから100年後、通貨が金本位性に変わろうと、貝殻をベースにしようと、サメの歯を使おうと、あるいは今日のように紙に印刷をしたものを使おうと、人々が必要とするものは、究極のところ、農産物であったり、工業製品であったり、住居スペースだ。

これらのものを生み出すことができるものが、これから先も価値を維持し続ける。

2008年のリーマンショック直後、多くの人々は「現金こそもっとも貴重で王様だ(Cash is King)」と言った。

今となって分かることだが、このときにやるべきことは現金を手にするのではなくて、その現金を使って株や土地を買うことだったのだ。

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