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2022年3月12日 (土)

株主への手紙

米国企業のCEOがウェブサイトなどで発表している『株主への手紙』。

読み応えがあるものが多く、中には毎年の株主への手紙を集め、本にして出版されるものもあるほど。

たとえば昨年末に出版された『Invent & Wander──ジェフ・ベゾス Collected Writings』

この本の中心は、毎年発表されてきたジェフ・べゾスの株主への手紙を集めたもの。

『バフェットからの手紙』も基本はバフェットが毎年書いているバークシャーの株主への手紙。 

また、本にはなっていませんが、グーグルのラリー・ペイジの文章を読むのも私は好きです。

たとえば:

We did a lot of things that seemed crazy at the time. Many of those crazy things now have over a billion users, like Google Maps, YouTube, Chrome, and Android.

(我々はクレイジーだと思われたことをたくさんしてきた。そうしたたくさんのクレイジーだと思われたことが、今や10億人を超えるユーザーを持つようになっている。グーグル・マップや、ユーチューブ、クローム、アンドロイドなどだ)。

We’ve long believed that over time companies tend to get comfortable doing the same thing, just making incremental changes. 

(企業は長くやっていくうちに同じことをやったり、少しの改善・変化だけで満足してしまうようになる傾向にある)。

【注】以上の原文は『こちら』に掲載されているもの(後段の文章は、この後、「テクノロジーの業界にある会社は少しの改善・変化だけではジリ貧になる」といった内容に続いていきます)。

* * *

さて、ロシアによるウクライナへの侵略が続き、米国のインフレが7.9%となるなか、株式市場はいったいどうなるかと心配されている方も多いでしょう。

そういった方には、2012年にバフェットが綴った『株主への手紙』が参考になるかもしれません。 

実はこの一部を私は過去の著作で抄訳したことがありますので、以下に掲載させて頂きます。

* * *

『危機に際して安全なのは現金か。だとすると円なのか、ドルか。あるいはゴールド(金)を考えるべきかー。

稀代の投資家、ウォーレン・バフェットは、2012年2月、バークシャー・ハサウェイ社の株主に宛てた年次レターの中で、この点について検討した。

バフェットによれば、いろいろな種類の資産価格は変動するが、その資産のリスクが高いかどうかは、資産が有している「購買する力」で判断されるべきだ。

たとえ価格があまり変動しなくても、資産のリスクが高いといったことがあり得るのだ。

こう述べた上で、バフェットは資産を3つのグループに分類した。

以下、バフェットのレターを要約してみよう。

【第1のグループ】「現預金、債券などの貨幣価値に立脚した資産」

これらは通常安全と考えられているが、実はもっとも危険だ。

というのは貨幣の価値は政府や中央銀行が決めるもので、インフレによってこれらの資産の購買力は減ってしまう。

安定した通貨に対する人々の願いが強い米国でさえ、ドルの価値はびっくりするほど下落してきた。

私がバークシャーの経営に就いた1965年と比較してみると、現在ではドルは86%も下落し、当時1ドルで買えたものがいまでは7ドルも払わないと買えない。

債券はどうか。

同じ期間、つまり1965年以降、今日(2012年)まで47年間、米国債、それも1年物の短期国債で毎年期限が来るとロールオーバーする(次の1年物に乗り換える)という方法で運用していったとしたら、どういった結果になっただろうか。

平均で年率5.7%の金利がついた計算になるが、利息に対して税金を払わなければならなかったことを考慮すると、この運用方法でもこの間のインフレに勝てない。

47年間の間に購買する力はまったく増えないのだ(もちろん短期の米国債は流動性、換金性の面で優れているのだが・・)。

【第2のグループ】「それ自体は何かを生み出すものではないが、誰か別の人が購買してくれるだろうとの思いで、多くの人が購入している資産」

17世紀にはチューリップの球根であったし、現在ではゴールド(金)だ。

金は産業用や装飾用に使われるが、それだけの用途では、とてもではないけれど毎年生産される金の量を吸収することができない。

ほとんどの場合、人々は金を違った目的で所有する。

つまり誰か別の人が(できればもっと高い)値をつけて購入してくれるだろうという希望だ。

人類がこれまで生産してきた金の総量(地上在庫)は17万トン。1辺68フィートの立方体にしかならず、野球場の内野部分にすっぽりと収まってしまう。

この金すべてを現在の金価格1オンス1750ドル(訳者注:2013年12月末現在1200ドル;2022年3月11日現在1999ドル)で計算すれば、9.6兆ドルになる。

この金額はどういう金額だろう。

全米の農耕地(4億エーカーあって毎年2000億ドルの農作物を産出している)を購入して、なおかつエクソン・モービル社(毎年400億ドルを稼ぎ出している)を16社買った上に、さらに1兆ドルのお釣りがくる金額だ。

これから100年経っても全米の農耕地は価値ある農作物を産出し続けるだろうし、エクソン・モービルは稼ぎを上げ続けるだろう。

一方、金の方はというと、何も生み出さない。

あなたは金を優しくなでることができるが、金は何も答えないだろう。

【第3のグループ】「価値を生み出すことができる資産」

会社(会社が発行する株式を持つことで会社の所有者になれる)、農地、不動産である。

これから100年後、通貨が金本位性に変わろうと、貝殻をベースにしようと、サメの歯を使おうと、あるいは今日のように紙に印刷をしたものを使おうと、人々が必要とするものは、究極のところ、農産物であったり、工業製品であったり、住居スペースだ。

これらのものを生み出すことができるものが、これから先も価値を維持し続ける。

2008年のリーマンショック直後、多くの人々は「現金こそもっとも貴重で王様だ(Cash is King)」と言った。

今となって分かることだが、このときにやるべきことは現金を手にするのではなくて、その現金を使って株や土地を買うことだったのだ。

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