もう一度思い出すこと
経済評論家の三原淳雄さん(1937年 - 2011年)が生前よく話していたのが、
「僕は小学生の時に満州でソ連兵に銃口を突き付けられた」
というもの(『こちら』)。
年配の方で三原さんと似たような経験を持つ方もいるかもしれません。
当事者にとっては一生忘れ去ることが出来ない戦慄で恐怖の出来事も、
部外者がニュースで見ただけでは、時と共に印象が薄くなってしまいます。
今回のロシアによるウクライナ侵略でそうした幾つかの出来事をもう一度思い出しました。
【1】2014年、ウクライナ東部でマレーシア航空の旅客機がミサイルによって撃墜され、乗っていた298人全員が死亡
オランダ人193人、マレーシア人43人、オーストラリア人27人ら合計298人が犠牲になりました。
この件では、国際合同捜査チーム(JIT)が結成されました。
彼らは、ロシアのプーチン大統領の最側近が、ウクライナの反政府勢力と定期的に連絡をとっていたことを掴み、2019年、下記3名を含む4人の容疑者を殺人罪で起訴(『こちら』)。
(1)イゴーリ・ギルキン容疑者――ロシア連邦保安局(FSB)の元大佐。ウクライナの反政府勢力が支配していた東部ドネツクで、防衛相の役割を担っていた。
(2)セルゲイ・ドゥビンスキー――ロシア参謀本部情報総局(GRU)の職員。ロシアと定期的に連絡を取っていたギルキン容疑者の代理役だった。
(3)オレグ・プラトフ――GRU特別部隊の元兵士。ドネツクで諜報部門のナンバー2だった。
昨年12月にはオランダの裁判所で公判が開かれ、検察側は4人の終身刑を求刑しました。
ただしロシア政府は被告らを引き渡さず、4人は公判を欠席(『こちら』)。
この件に関して米国のトランプ前大統領は、当時ロシアが関与したことに対して、疑問を投げかけました。
トランプは、米国とヨーロッパの当局者が「ロシアが共謀している」と公に結論付けた後でも、「プーチンが本件につき否定するのを受け入れた」とされています。
(Trump sowed doubt about Russia's involvement. He embraced Putin's denials, even after US and European officials publicly concluded that Russia was complicit)『こちら』。
【2】2つのウクライナ疑惑
トランプ前大統領と言えば、米国史上3人目の弾劾訴追された大統領であることが思い起こされます。
ちなみに弾劾訴追された3人とは、第17代大統領のアンドリュー・ジョンソン(1808年 - 75年)、第42代ビル・クリントン、第45代ドナルド・トランプの3人です。
ウォーターゲートのニクソン(第37代)は下院司法委員会の弾劾勧告が可決された段階で大統領を辞任。
下院本会議での弾劾決議は出ておらず上院での弾劾裁判も開かれていません(従って3人の中に入りません)。
またトランプ前大統領は2019年と21年、2度も弾劾訴追された歴史上唯一の大統領です。
ウクライナに関連するのは19年の弾劾訴追の方。
(上図はNHKのサイト(『こちら』)より)
19年7月、トランプ大統領(当時)とウクライナのゼレンスキー大統領とが電話会談をした際に、
トランプはウクライナへの軍事支援と引き換えに、大統領選挙に向けた野党・民主党の有力候補のバイデン前副大統領とウクライナとの関係をめぐる調査を要求し、圧力をかけたとされています。
トランプのこの行動は「米国の安全保障や大統領に就任する際の宣誓に反している」として弾劾訴追されました。
しかし共和党が多数を占めていた上院での弾劾裁判で無罪を勝ち取っています。
ウクライナ疑惑についてはバイデン現大統領も無縁ではありません。
バイデン氏の次男ハンター・バイデン氏が19年4月までの5年間ウクライナのエネルギー最大手ブリスマ社の取締役を務め、非常勤ながら月5万ドル(約500万円)の報酬を受けていたというもの(『こちら』)。
なお、ウクライナ疑惑とは別ですが、プーチンが米大統領選で『ドナルド・トランプ前大統領を有利にするための工作を承認した可能性が高い』(米国家情報長官室(ODNI)の報告書)といった報道(昨年3月17日)も思い起こされます(『こちら』)。
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