バフェットによる日本の商社株投資から分かること
バークシャー・ハザウェイのアニュアルレポート(『こちら』)を見ると、彼らは下記3社などの日本の商社株を有していることが分かります(アニュアルレポート7頁)。
三菱商事 2,102百万ドル(簿価ベース)
伊藤忠商事 2,099 百万ドル(簿価ベース)
三井物産 1,621百万ドル(簿価ベース)
一方で、円建て債を発行して円ベースの負債(残高 6,797百万ドル)も抱えています(アニュアルレポートK-99頁)。
バークシャーは上記以外にも日本の商社株を保有していると考えられますが、保有株として個別開示されるのはバークシャー全体の保有株のうち上位15社のみ。ちなみに最も多く持っているのはアップルの株式で31,089百万ドル。日本の上記商社勢は15社の中で、保有残高ベースで7~9番目に位置します。
いずれにせよバークシャーとしては円建ての資産(上記3社などの日本株)に見合う円建ての負債を敢えて抱えて、円ドルの為替のポジションをスクウェア(為替変動に中立的)に近いものにしていると思われます。
このように海外の投資家は、日本株の株価変動リスクが円ドルの為替リスクと混同されてしまうのを嫌います。
実例で見てましょう。
昨年末に日経平均を買った場合、28,791.71円(昨年末)が27,821.43円(3月末)となりましたので、▲3.4%のマイナスのリターンとなりました。
しかし例えば米国の投資家にとってみれば、バークシャーのような円建て負債を敢えて作らない場合には、
為替が115.02円(昨年末)から122.39円(3月末)に円安に進んでいますので(注:為替はTTM公示レート)、
ドルベースのリターンは、250.32ドル(=28,791.71円÷115.02円)から227.32ドル(=27,821.43円÷122.39円)へと、▲9.2%も下落してしまったことを意味します。
ちなみにこの間、ダウ平均株価は、36,338.30(昨年末)から34,678.35ドル(3月末)へと、▲4.6%の下落で済んでいます。
日本政府は海外にまで出かけて行って「Buy my Abenomics!」と外国人投資家に日本株への投資を呼び掛けてきました(『こちら』)。
しかし外国人投資家の立場からすると、たとえ日本株が値を上げても為替でやられてしまっては元の木阿弥。
つまり世界の投資家を呼び込むためには円安にならないことが重要なのです。
このことに四半世紀以上前に気がついたのは、1995年に米国財務長官に就任したロバート・ルービンでした。
彼はクリントン大統領(当時)に対して、こう助言したと言われています。
「大統領としていろいろとやりたいことがあるのでしょうが、歴史に名を残したいのなら、ドル高政策を進めることです」。
それまで米国では、安いドルが輸出を促進し、企業の競争力を高めると考えられていました。
しかし財務長官に就任する前の四半世紀をウォール街のゴールドマン・サックスで過ごしたルービンは、ドル高にすることで世界の資金を米国に集めることができると考えたのです。
輸出入といった「もの」の動きよりも、「お金」の動きに着目し、世界中から集まる資金をテコとして、米国の企業が積極果敢に投資を行い、経済を成長させていく・・。
ルービンはこうしたダイナミックな資本主義のモデルが成功すると信じていたのです。
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この続きは日経新聞電子版でご覧ください(『こちら』)。
日曜日(4月3日)発売の日経ヴェリタス紙にも掲載されます。
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