ウクライナを横断するパイプライン
2021年、欧州諸国(EU)が使う天然ガスの45%がロシアから来たものでした(『こちら』および『こちら』)。
ドイツに至っては55%のガスがロシア産(『こちら』)。
これらのガスはパイプラインでロシアからEU諸国に運ばれていて、
主なルートは:
(1)バルト海を経由してドイツへ(ノルドストリーム1は稼働中、2は完成したものの認証作業停止)
(2)ベラルーシを経由してEUへ
(3)ウクライナを経由してEUへ
といったものになっています(下図参照。なお下図の出所は『こちら』)。
このうちウクライナを経由するものが、ロシアからEUに運ばれる天然ガス全体の3分の1(『こちら』)。
なお、話は少し脱線しますが、ウクライナ自身の天然ガスの産出と消費を見ると、以前は天然ガス輸出国でしたが、1975年をピークに生産量が減少、現在では輸入国になっています(『こちら』)。具体的にはロシアがEUに輸出したものを再輸入して自国生産では足りない分の天然ガスを調達しています(『こちら』)。
さて話をパイプラインに戻しましょう。
ロシアからウクライナを通ってパイプラインでEUに運ばれる天然ガス。
これは、タダでEUに運ばれるのではなく、通行料(transit fees)がロシアからウクライナに支払われています(以前、私が日本の商業銀行に勤務していた時、パイプラインのファイナンスをしたことがあり、その時のことを思い出しました)。
ロシアはウクライナ経由の輸送量を昨年から絞って他ルートにシフトさせてきていますが、昨年以前の段階ではウクライナ経由の輸送量は年間約800億m³。
ウクライナに支払われた通行料は年間30億ドル、ウクライナ政府の歳入の7%程度を賄っていました(『こちら』および『こちら』)。
さて、これは今、いったいどうなっているのでしょうか。
調べてみると、ロシアによるウクライナ侵略開始後の3月下旬の段階で、ロシアはウクライナに対して契約通り通行料を支払ってきているとのこと。
それもルーブルではなく、ユーロやドルのハードカレンシーで支払いがなされているとのことです(『こちら』)。
『ロシア軍はこれまでのところウクライナ国内を横断するパイプラインを損傷させるようなことはしておらず、ロシアはガスの輸送量を減らすようなこともしていない・・』
ウクライナ最大の国営石油ガス公社(NJSC Naftogaz Ukrainy)のCEOはこう語ります(『こちら』)。
もっとも、そう語るCEO自身は、ロシアからの砲撃が続く中、bunker(掩体壕)に身を隠しながら、ブルームバーグ記者とのインタビューに応じていたのだとか・・。
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