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2022年5月27日 (金)

些細なエピソードが面白い

ソニーの平井さん(前CEO)が書いた『ソニー再生』

1年ほど前の本なのですが、些細なエピソードが面白く読めます。

   Sony

彼が社長になった後で、海外に出張した時の話なのですが、以下、本書173~4頁より。

ホテルの部屋に入るとソニーのテレビが置いてあった。

でも何かがおかしい。

テレビの裏側を見るとホコリがまったくない。

室内の他のものと比べて配線が明らかに新しいことも気になった。

「もしかして・・・」

ホテルを手配してくれた現地のスタッフに聞くと案の定だった。

東京から本社の役員が来るときは部屋のテレビをソニー製に取り換えているのだという。

「なんでそんなことをするかなぁ・・・」

とため息をつきながらテレビを眺めたのを覚えている。

これはなにも現地のスタッフが悪いわけではない。

今まではそれが当然だったのだろう。

だから、いちいちこちらの意図を説明して改善してもらった。』

ソニーの株価は2000年3月には16,950円をつけました(分割調整後)。

それが2012年11月には772円にまで下落。

▲95%もの下落です。

その後、右肩上がりになって、今年の1月には15,725円にまで回復。

約10年で20倍になりました。

現在11,425円ですが、この水準でも当時の15倍になります。

平井さんは如何にしてソニーを再生させたのか・・。

その秘密が本書に書かれています。

成功した経営者の本は往々にして日経新聞「私の履歴書」のように自画自賛ものが多いのですが、

不思議とそういったものを感じさせない本でした。

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2022年5月 6日 (金)

「平和の配当」と「グローバリゼーション」の終焉

2月24日、ロシアがウクライナへ侵攻。

これ以降、世界は大きく変わってしまいました。

今から33年前のことですが、

1989年にベルリンの壁が壊されました。

そしてその2年後の1991年にソ連が崩壊。

この後、世界は軍事用だった予算や人員を民生用に振り向けました。

今は亡きジョージ・H・W・ブッシュ元大統領(父親の方です)が当時盛んに強調していた「平和の配当」。

これを享受することが出来るようになったのです。

米国の国防費は1980年代半ばには対GDP比で毎年6%を超えていました。

それをだんだんと低下させることが出来るようになったのです。

そして2017年にはとうとう3.3%台になりました。

これと同時に、経済の「グローバル化」も進展。

先進国で企画・開発された製品が、人件費の安い国や地域で製造されるようになりました。

そして完成した製品は、今度は世界各地の消費者を相手に売られるようになりました。

「平和の配当」と「グローバリゼーション」。

この2つのフォローの風を受け、米国の株式市場は概ね好調に推移していきました。

この間、リーマンショックなどがありましたが、1991年から2022年2月23日までの31年間で、S&P500種株価指数は11.6倍になりました。

年率平均にして8.2%を超える伸長率です。

しかしながら残念なことに、今年の2月24日以降、状況は一変してしまいました。

もはや「平和の配当」は望むべくもありません。

また「グローバリゼーション」という言葉も今や「非グローバリゼーション(deglobalization)」という言葉に置き換わってしまいました。

こういった中で、我々個人投資家の投資戦略は如何にあるべきか・・。

日経新聞(電子版)と日経ヴェリタス紙への今回の寄稿記事は以上のような観点から書きました。

『こちら』で日経新聞(電子版)の記事はご覧いただけます。

日経ヴェリタス紙の方は、今度の日曜日(5月8日)号に載ります。 

 なお記事の中に出てくるキプロスですが、以下に幾つかの写真を載せておきます。

1_20220504214101

(キプロスのガバナーズ・ビーチ。英国のガバナーがここで泳ぐのを好んだことから、こう呼ばれるようになった)

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(キプロスの銀行。2013年にキプロスでは預金封鎖が行われた)

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(キプロスは日本の四国の約半分の大きさ。レンタカーであちらこちらに回ることが出来る)

 

S

(日経の記事に書いたS氏と)

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2022年5月 2日 (月)

インフレ耐性の強い消費関連銘柄

本日のNHKニュース7。

大手パンメーカーの「フジパン」と「敷島製パン」が、輸入小麦の価格高騰などを受け、食パンなどの一部の製品をことし7月から値上げすること決定したとのこと。

Nhk_20220502224901

 (注:画像はNHKのサイト『こちら』より)

パンの値上げは、いずれも、ことしに入って2回目(『こちら』)。

このように最近、様々なモノの値段が上がるようになってきました。

一方、企業の方から見ると、値段を上げるというのは一大事です。

輸入原料や物流費などのコストが上がってきたからといって、安易に製品価格に転嫁すると、場合によっては消費者に逃げられてしまうことも懸念されます。

* * *

本日の日経ヴェリタストークでは、現在の難しい状況を念頭に置きながら『インフレ耐性の強い消費関連銘柄』を次のように3分類して議論しました。

(1)明確な値上げをしなくても、コストを吸収し増益を続けられる『成長力』を有する企業(例:ワークマン)

ご存知の方も多いと思いますが、ワークマンの日本国内での店舗数は今やユニクロを上回ります。

キャンプ場でバーベキューを楽しんだり、焚火を囲んだりするとき、ワークマンの服は焚火の火の粉が飛んできても焦げにくい。

あるいは撥水性や防水性に優れているので、雨に降られてもビショビショにならない。

こんな理由で、ワークマンはアウトドア志向の人に受けてきました。

(2)「そこでしか手に入らないモノやサービス」を提供し、ファンとなる消費者をつなぎ留められる企業(例:マクドナルド)

マクドナルドは、3月にハンバーガーなど全体の2割にあたる商品の価格を10~20円引き上げました。

にもかかわらず、3月の月次売上高は13.5%増を維持しています。

ところで、マクドナルドと言うと、2014年12月期と15年12月期に2年連続で赤字に転落したことが思い出されます。

しかしその後、カサノバ社長(当時)のリーダーシップの下、見事に復活していきます。

株価も当時に比べると現在では2倍強になりました。

いったい全体、どうやって復活させたのでしょうか。

この復活劇については、すでに各方面で報じられていますが、その一つが「マクドナルド復活の仕事人たち」と題する特集記事。

日経新聞が2018年12月に5回にわたって連載したものです(第1回は『こちら』)。

この連載を読むと、これといった大きな種明かしは存在せず、『企業はやはり人なんだな』と実感できます。

(3)海外に活路を見いだすパターン(例:スノ―ピーク)

金属加工の町、燕三条の職人技術による高品質を武器に発展してきたスノーピーク。

実は、日本の『地方の地場産業』には高い技術力を持っているところが多く、海外の消費者にも広く知られているところが結構あります。

燕三条のスノーピークは一つの例ですが、ほかにもメガネのフレームで有名な、福井県鯖江市。

2008年の米国大統領選挙で副大統領候補となったサラ・ペイリンが鯖江の眼鏡をしていたこともあって、その名を一躍世界に広めました。

今治のタオルも有名で、海外の富裕層が東京に来た時、デパートで今治のタオルを買い求めていくことがあります。

ところで、鯖江の眼鏡にしても、今治のタオルにしても、海外に住む人がサイトから簡単に購入できるように、Shopifyなどを使ってECサイト化してみては如何でしょう。

『こちら』をご覧になると、今やだれでも海外の顧客相手にECサイトを作れることが分かります。

なお本日のテレビ番組、日経ヴェリタストークですが、『こちら』で録画をご覧いただけます。

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