« 2022年6月 | トップページ | 2022年8月 »

2022年7月30日 (土)

アップル1社で、日本の半分

東証に上場する会社は、プライム、スタンダード、グロースの各市場すべてを合わせて、全部で3,774社あります(『こちら』)。

これら3,774社全てを合わせた時価総額は、734兆7000億円(『こちら』)。

一方で、アップルの時価総額は、2兆6390億ドル(『こちら』)。

現在の為替レート133.2円でかけると、351兆5000億円になります。

つまりアップル1社で、日本全体の48%。

アップル1社で日本の半分になってしまうとは・・!!

ちなみに、アップル、マイクロソフト、グーグルの3社を合わせると、東証上場の全3,774社を抜いて、832兆6000億円になってしまいます。

| | コメント (0)

2022年7月24日 (日)

ペイ・エクイティ

ペイ・エクイティ(Pay Equity)とは日本語でいう「同一労働同一賃金」のこと。

ケリー・エリス(Kelly Ellis)さんはグーグルで働くソフトウェア・エンジニアでした。

2017年9月、彼女は他の2人の従業員とともに、同じ仕事をしている男性社員に比べて、給与が少ないとして、グーグルを訴えました( Ellis v. Google LLC, No. CGC-17-561299;『こちら』)。

当初3人の女性によって起こされたこの訴訟には4人目の女性も加わり、グーグルとの間で5年近くにわたって法廷闘争を繰り広げてきました。

そして先月、ついにグーグルは原告と和解(『こちら』及び『こちら』)。

和解内容はグーグルが総額118百万ドル(約160億円)の和解金を 15,500人の女性従業員(元社員を含む)に支払うというもの。

実はグーグルだけでなくオラクルやマイクロソフトでもこの種の訴訟が起こされてきています(『こちら』)。

同じ仕事をしているにもかかわらず、男女間、もしくは人種によって差がついているとすると、結局は会社にとって高くつきます。

ということで、例えば半導体大手 エヌビディア(NVIDIA)では、「2015年以降、第三者機関(Economists, Inc.)を使って給与が公平に支払われているかをチェックしている」(同社CSRレポート 38頁、『こちら』)とのこと。

その結果、エヌビディア(NVIDIA)では、男女別の平均給与比を開示していて、

男性の平均給与100とすると、女性は:

100 (2019年度)

99.7(20年度)

98.2(21年度)

となっています(注:エヌビディアが買収した会社の女性の平均給与が男性比で低かった為、最近年の数値は若干悪化)。

さて、

こうしたことを日本企業の経営者と話すと、

『部長の数はまだ男性の方が圧倒的に多く、男女別の平均給与の開示などとても許容できない』

『実際に調べてみると、100対80、もしかすると100対70といった数字になってしまうかもしれない』

『しかし同じ労働であれば男女で差をつけることはしていない』

といったようなコメントが出てきます。

ただエヌビディア(NVIDIA)が開示しているのは、会社全体としての男女別平均給与です。

そもそも部長や執行役員に昇格するのが男性の方が圧倒的に多いというのであれば、

もう一つの基準である『Promotion Equity(昇進に係る公平性)』

が守られてきたかどうかが問われることになってしまいます。

日本で男女雇用機会均等法が施行(1986年)されてからすでに36年が経ちます。

当時24歳で入社した人は現在60歳になっています。

にもかかわらず、部長や課長に昇進している女性が男性に比べて少ないとしたら、昇進に関する公平性を疑われそうです。

そもそも女性の総合職採用が男性の1割だったから、女性の部長・課長が少ないという会社は、採用に関する公平性が問われそうです。

現在では、欧米を中心に、給与と昇進に関する公平性(Pay & Promotion Equity)が守られることが世界標準になりつつあります。

この波に逆らうことは難しく、いずれ日本でも男女別の平均給与の開示などが求められるようになると思います。

もちろんグーグルが先月和解したことからも明らかなように、米国企業でもこの原則が全て守られているかというと、実態は違うのかもしれません。

ただ男女別平均給与の開示を初めとして、幾つかの側面で日本企業が遅れを取ってしまっているのも否めません。

19日に放映された日経ヴェリタストークは『人材開発』がトッピクスでしたが、上記のようなペイ・エクイティの動向などについても触れました。

『こちら』で動画をご覧いただけます。

  Veritas_20220724190901

なお日本のジェンダー・ギャップ指数は146カ国中116位。

日本より下の国は、というと、アフガニスタンなど僅かな国しかありません。

| | コメント (0)

2022年7月18日 (月)

労働生産性と人的資本投資

多くの人が生活が厳しいと感じるのは、物価が上がっていくのにもかかわらず、給与がそれほど上がらないからです。

ではなぜ給与は上がらないのか。

一つの理由は日本の労働生産性が低いからです。

厚生労働省(2018年(平成30年)版『労働経済の分析』75頁)によると、『我が国の労働生産性の水準は、G7の中で最も低い水準となっている』(こちら)。 

Photo_20220718142702

Photo_20220718142701

では、なぜ労働生産性が低いのか。

一つの理由は、企業が人的資本投資をきちんと行っていないからです。

同じく、厚生労働省(2018年(平成30年)版『労働経済の分析』89頁)によると、我が国の GDP に占める企業の能力開発費の割合は、米国 の20分の1以下であることが分かります。

Photo_20220718143701

(図はクリックすると大きくなります)。

人に対して積極的に投資を行うことが生産性の向上に繋がり、賃金の上昇へと結びついていきます。

* * *

話は少し(と言うか、かなり)それますが・・

人への投資の一つの方向性として、デジタル分野における教育投資があります。

しかし例えば、多くの企業からは、いまだに『パスワード付きZIPファイル添付メール(通称PPAP)』が送られてきます。

かえって、より一層有害になる可能性もある『パスワード付きZIPファイル添付メール(通称PPAP)』。

これを送る方も受け取る方も、余分な時間を強いられます。

以前、このブログ(『こちら』)で書いたので繰り返しませんが、以下、(『パスワード付きZIPファイル添付メール(通称PPAP)』をさっさと廃止するという英断をくだした)日立製作所のホームページ(『こちら』)より。

『日立グループは・・すべてのメール送受信において、パスワード付きZIPファイル(通称PPAP)の利用を廃止させていただくことを、お知らせいたします。

パスワード付きZIPファイルが添付されたメールは日立グループにて送受信されず・・配送を抑止した旨がメールで通知されることとなります。

(中略)昨今はパスワード付きZIPファイルを添付することでセキュリティチェックを回避する、Emotet や IcedID、QakBot(Qbot)などのマルウェアが広まっています。

こうした背景のもと、日立グループだけでなくお客さまや取引先さまのセキュリティを確保するために、日立グループ全体でPPAPを廃止することを決定しました』

* * *

労働生産性向上の第一歩は、無駄なこと、あるいは、有害になり得るかもしれないことを排除することにあるような気がします。

| | コメント (0)

2022年7月16日 (土)

現預金を貯め込む企業

決算で史上最高益を上げたにもかかわらず、配当は据え置き、自己株式の購入をする訳でもない・・。

それだけではなく、

積極的な設備投資の計画もなく、従業員の給与が大きく上がる訳でもない・・。

こういった企業が結構あります。

その結果、何が起こるのでしょうか。

企業が持つ現預金が積み上がっていきます。

もう少し具体的な数字で見てみましょう。

TOPIX500で見た日本企業の持つ現預金は米国企業(S&P500)や欧州企業(STOXX600)のそれを大きく上回ります。

下記の2つのチャートがそれを物語っています。

1_20220716165501

2_20220716165701

なお、これらのチャートは経済産業省の『こちら』の資料(60頁、61頁)が出所となっています。

日本企業が欧米の企業に比べて現預金を多く抱えるということは、それだけ下駄を履いた経営をしているということです。

たとえ経営陣が間違った判断を下して、その結果、将来、企業業績が低下しても多額の現預金があれば安泰です。

しかし、残念ながら企業が持つ現預金からはリターンは生まれません。

株主が期待するのは、余った金は投資に回して事業を拡大して収益を生み出すのに使うか、

あるいは

投資先が見当たらなければ、配当金なり自社株買いの形で株主に戻してもらうことです。

米国の株主は経営者に対して「必要以上に現預金を抱え込むな」と声高に要求します。

聞き入られない場合には自らが会社を買収し経営陣を交替させようとする株主も現れてきます。

日本ではこうした市場による自浄作用が働きにくく、企業が持つ余分な現預金が寝たまま放置されてしまう傾向にあります。

その結果、上記のチャートのような状況が出現してしまうのです。

日本が欧米のように成長できないことの一因となっています。

詳しくは『こちら』の日経新聞記事、もしくは明日発売の日経ヴェリタス記事をご覧ください。

| | コメント (0)

2022年7月10日 (日)

みずほの20年

日経の金融部長、河浪さんが書いた『みずほ、迷走の20年』を読みました。

  Mizuho  

私自身、興銀を離れてから24年が経っており、みずほの設立(02年4月)も、3行経営統合合意の発表(99年8月)も知りません。(退職したのは、それより前の98年11月)。

そういった意味で、完全な部外者である私が、一読者として、本書を読んだだけなのですが、印象に残った箇所を一つ、二つ。

著者による80年代の記述で、

『日本経済に必要だったのは、世界をリードする次世代産業を自らつくっていく「先端国家型の経済システム」だった。それには新ビジネスの成功と失敗を効率よく切り分ける市場機能が必要になる。銀行の判断に頼る間接金融ではなく、よりビジネスの自然淘汰を可能にする直接金融が適切だ』(本書212-13頁)。

これは賛否両論ある記述だとは思いますが、たしかに市場機能をもう少し上手く利用できていれば、失われた20年とか30年は防ぎ得たような気もします。

バブル期、日本企業は大量にワラント債やCBを発行。

ほとんどゼロ金利で調達した資金を財テクでの運用に回しました。

しかし、そこには「資本コスト」や「希薄化」の視点が欠落していました。

  Ibj_20220709235401

本来、銀行はそうした企業行動に対して助言できる立場にあった訳ですが、

企業価値を極大化するための助言がきちんと出来ていたのかどうか。

そもそも銀行自らが、「銀行自身にとっての企業価値極大化とは何か」を把握しきれていなかったのではないか。

以下、再び本書からの引用。

『85年のプラザ合意以降、・・銀行は間接金融のシステムを温存したまま、これまでの産業金融から不動産金融へと突き進む』(213頁)。

* * * *

ところで書棚を整理していたら興銀を辞めた時の辞令が出てきました。

  Photo_20220709235401

発令日が11月29日となっているのは、(はっきりとは覚えていませんが、たしか)

「健康保険か厚生年金か雇用保険か、何らかの理由で、月末日を異動先の企業の入社日とした方が良い」。

そんな説明を当時の興銀人事部から受けた気がします。

辞めていく人に対して、そんな気配りをしてくれる組織でした。

今から24年前。

当時、私は45歳でした。

| | コメント (0)

2022年7月 5日 (火)

供給不足から一転、需要減へ

「クルマを買おうとしたら、納車がかなり先と言われたので諦めた」。

これまで、こういった話をよく耳にしてきました。

半導体不足の影響か、とも思っていましたが、そんな中、マイクロンが決算を発表(米国の30日)。

すでにニュースで大きく取り上げられたので、読まれた方も多いと思いますが、

マイクロンいわく『著しい需要減衰に襲われ、即座にこれまでの供給成長軌道を減退させる行動に移している』とのこと。

以下、彼らのプレスリリースから(『こちら』の8頁)。

『第3四半期の終わり(岩崎注:マイクロンの場合、6月2日)近くになって、当社は near-term の半導体需要の著しい減退に見舞われた。

エンドユーザーである消費者市場(パソコン、スマホなど)が弱いことによるものだ。

Near the end of fiscal Q3, we saw a significant reduction in near-term industry bit demand, primarily
attributable to end demand weakness in consumer markets, including PC and smartphone.』

『市場環境が変化したので、当社はこれまでの供給成長軌道を減らすべく直ちに行動に移している。

Given the change in market conditions, we are taking immediate action to reduce our supply growth trajectory.』

これを受け30日夕方の時間外取引から1日にかけて、SOX(フィラデルフィア半導体株指数)は大幅安。

マイクロンと言えば、値動きの激しいDRAMなどのメモリー系半導体のマーケットで生き延びてきた会社。

現在DRAM市場では、1位のサムスン、2位のSKハイニックスに次ぎ、世界第3位につけています(『こちら』)。

生き馬の目を抜く半導体業界。

環境変化に素早く適応できるところのみが生き残れると言われています。

マーケット全体としてもインフレだけでなく景気後退リスクを強く意識するようになりました。

 

| | コメント (0)

« 2022年6月 | トップページ | 2022年8月 »