ペイ・エクイティ
ペイ・エクイティ(Pay Equity)とは日本語でいう「同一労働同一賃金」のこと。
ケリー・エリス(Kelly Ellis)さんはグーグルで働くソフトウェア・エンジニアでした。
2017年9月、彼女は他の2人の従業員とともに、同じ仕事をしている男性社員に比べて、給与が少ないとして、グーグルを訴えました( Ellis v. Google LLC, No. CGC-17-561299;『こちら』)。
当初3人の女性によって起こされたこの訴訟には4人目の女性も加わり、グーグルとの間で5年近くにわたって法廷闘争を繰り広げてきました。
そして先月、ついにグーグルは原告と和解(『こちら』及び『こちら』)。
和解内容はグーグルが総額118百万ドル(約160億円)の和解金を 15,500人の女性従業員(元社員を含む)に支払うというもの。
実はグーグルだけでなくオラクルやマイクロソフトでもこの種の訴訟が起こされてきています(『こちら』)。
同じ仕事をしているにもかかわらず、男女間、もしくは人種によって差がついているとすると、結局は会社にとって高くつきます。
ということで、例えば半導体大手 エヌビディア(NVIDIA)では、「2015年以降、第三者機関(Economists, Inc.)を使って給与が公平に支払われているかをチェックしている」(同社CSRレポート 38頁、『こちら』)とのこと。
その結果、エヌビディア(NVIDIA)では、男女別の平均給与比を開示していて、
男性の平均給与100とすると、女性は:
100 (2019年度)
99.7(20年度)
98.2(21年度)
となっています(注:エヌビディアが買収した会社の女性の平均給与が男性比で低かった為、最近年の数値は若干悪化)。
さて、
こうしたことを日本企業の経営者と話すと、
『部長の数はまだ男性の方が圧倒的に多く、男女別の平均給与の開示などとても許容できない』
『実際に調べてみると、100対80、もしかすると100対70といった数字になってしまうかもしれない』
『しかし同じ労働であれば男女で差をつけることはしていない』
といったようなコメントが出てきます。
ただエヌビディア(NVIDIA)が開示しているのは、会社全体としての男女別平均給与です。
そもそも部長や執行役員に昇格するのが男性の方が圧倒的に多いというのであれば、
もう一つの基準である『Promotion Equity(昇進に係る公平性)』
が守られてきたかどうかが問われることになってしまいます。
日本で男女雇用機会均等法が施行(1986年)されてからすでに36年が経ちます。
当時24歳で入社した人は現在60歳になっています。
にもかかわらず、部長や課長に昇進している女性が男性に比べて少ないとしたら、昇進に関する公平性を疑われそうです。
そもそも女性の総合職採用が男性の1割だったから、女性の部長・課長が少ないという会社は、採用に関する公平性が問われそうです。
現在では、欧米を中心に、給与と昇進に関する公平性(Pay & Promotion Equity)が守られることが世界標準になりつつあります。
この波に逆らうことは難しく、いずれ日本でも男女別の平均給与の開示などが求められるようになると思います。
もちろんグーグルが先月和解したことからも明らかなように、米国企業でもこの原則が全て守られているかというと、実態は違うのかもしれません。
ただ男女別平均給与の開示を初めとして、幾つかの側面で日本企業が遅れを取ってしまっているのも否めません。
19日に放映された日経ヴェリタストークは『人材開発』がトッピクスでしたが、上記のようなペイ・エクイティの動向などについても触れました。
『こちら』で動画をご覧いただけます。
なお日本のジェンダー・ギャップ指数は146カ国中116位。
日本より下の国は、というと、アフガニスタンなど僅かな国しかありません。
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