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2022年9月 3日 (土)

民衆の勝利

伝統にあぐらをかいていては、やがては衰退する。

求められるのは常に革新を呼び起こし前進すること。

コカ・コーラの経営首脳はこう考えて結論を下したのかもしれない。

(以下、キーオ著 The Ten Commandments for Business Failure より)

* * *

当時、アメリカでペプシの販売数量が増えていた。

なぜか。

広告費や物流の問題でないのはたしかだ。

問題は何か別の部分にあるはずだ。

もしかすると100年近い伝統のある商品そのものに問題があるのではないか。

すぐに20万人(!)を対象に味覚テストが実施された。

製品名を示さずに、2種類の飲料を飲んで比較してもらう。

1つは現状のコカ・コーラ。

もう1つは甘みを濃くしたもの。

テストの結果は明らかだった。

甘みを濃くした方が評価が高かった。

当時のゴイズエタ会長も私(キーオ社長)も、原液の配合を一新する根拠は十分にあると考えるに至った。

コンサルタントと専門家の意見もこの考えを後押しした。

もちろん、それだけでは足りない。

さらに大量のテスト、そしてさらに大量の専門家。

フォーカス・グループ(マーケティングリサーチの一手法)、試験販売、ランダム・サンプル調査・・。

どの調査でも甘みを濃くした方が、いつも勝者になった。

そうして鳴り物入りで発売されたニュー・コーク。

1985年のことだ。

  New_coke_can

  (From Wikimedia Commons)

街には楽団をくりだし、空にはアドバルーンを浮かべ、その他、あらゆる広告手段を総動員して、ニュー・コークの発売を後押しした。

メディアも積極的に取り上げ、世界的な大ニュースとなった。

その結果・・・

発売直後から、コカ・コーラのアトランタ本社には抗議の電話が殺到するようになり、その数が増え続けて、回線が一杯になった。

数週間の間に、40万を超える電話と手紙が殺到し、すべてがニュー・コークに反対するものだった。

ここで動揺してはいけない、方針を堅持すべきだと、専門家は助言した。

しかし、85歳のおばあさんが老人施設から電話をかけてきた。

たまたま会社のコール・センターを訪問していた私(キーオ社長)が電話を受けた。

「お若い方、わたしが若かったときの記念の品をもてあそんでいるのです。

コークが私にとってどんな意味を持っているのか、お分かりですか」

はっきり分かった。

問題は味覚ではないし、マーケティングですらない。

あれだけの専門家、あれだけのデータはすべて、誤解のもとだったのだ。

これは人びとの心の奥底の問題だ。

* * *

間違ったら、すぐにそれを認め、それを正す。

それがリーダーにとって必要なことだ。

ABCテレビでは人気番組が放送されている最中に、これを中断して、アンカーのピーター・ジェニングスが登場。

「コカ・コーラがもとの成分に戻る」

と報じた。

以下、再び、上記著作から。

『大企業が決定を下し、民衆が抗議し、大企業が間違いを認め、民衆が勝利したのだ。

消費者は競ってコカ・コーラを買い、売上は急増した。

われわれの間違いを許してくれただけでなく、ますます好きになってくれたのである』

* * *

ドナルド・キーオ著『ビジネスで失敗する人の10の法則』

面白かったです。

なぜこんな面白い本にもっと早く気がつかなかったのだろう・・。

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