民衆の勝利
伝統にあぐらをかいていては、やがては衰退する。
求められるのは常に革新を呼び起こし前進すること。
コカ・コーラの経営首脳はこう考えて結論を下したのかもしれない。
(以下、キーオ著 The Ten Commandments for Business Failure より)
* * *
当時、アメリカでペプシの販売数量が増えていた。
なぜか。
広告費や物流の問題でないのはたしかだ。
問題は何か別の部分にあるはずだ。
もしかすると100年近い伝統のある商品そのものに問題があるのではないか。
すぐに20万人(!)を対象に味覚テストが実施された。
製品名を示さずに、2種類の飲料を飲んで比較してもらう。
1つは現状のコカ・コーラ。
もう1つは甘みを濃くしたもの。
テストの結果は明らかだった。
甘みを濃くした方が評価が高かった。
当時のゴイズエタ会長も私(キーオ社長)も、原液の配合を一新する根拠は十分にあると考えるに至った。
コンサルタントと専門家の意見もこの考えを後押しした。
もちろん、それだけでは足りない。
さらに大量のテスト、そしてさらに大量の専門家。
フォーカス・グループ(マーケティングリサーチの一手法)、試験販売、ランダム・サンプル調査・・。
どの調査でも甘みを濃くした方が、いつも勝者になった。
そうして鳴り物入りで発売されたニュー・コーク。
1985年のことだ。
(From Wikimedia Commons)
街には楽団をくりだし、空にはアドバルーンを浮かべ、その他、あらゆる広告手段を総動員して、ニュー・コークの発売を後押しした。
メディアも積極的に取り上げ、世界的な大ニュースとなった。
その結果・・・
発売直後から、コカ・コーラのアトランタ本社には抗議の電話が殺到するようになり、その数が増え続けて、回線が一杯になった。
数週間の間に、40万を超える電話と手紙が殺到し、すべてがニュー・コークに反対するものだった。
ここで動揺してはいけない、方針を堅持すべきだと、専門家は助言した。
しかし、85歳のおばあさんが老人施設から電話をかけてきた。
たまたま会社のコール・センターを訪問していた私(キーオ社長)が電話を受けた。
「お若い方、わたしが若かったときの記念の品をもてあそんでいるのです。
コークが私にとってどんな意味を持っているのか、お分かりですか」
はっきり分かった。
問題は味覚ではないし、マーケティングですらない。
あれだけの専門家、あれだけのデータはすべて、誤解のもとだったのだ。
これは人びとの心の奥底の問題だ。
* * *
間違ったら、すぐにそれを認め、それを正す。
それがリーダーにとって必要なことだ。
ABCテレビでは人気番組が放送されている最中に、これを中断して、アンカーのピーター・ジェニングスが登場。
「コカ・コーラがもとの成分に戻る」
と報じた。
以下、再び、上記著作から。
『大企業が決定を下し、民衆が抗議し、大企業が間違いを認め、民衆が勝利したのだ。
消費者は競ってコカ・コーラを買い、売上は急増した。
われわれの間違いを許してくれただけでなく、ますます好きになってくれたのである』
* * *
ドナルド・キーオ著『ビジネスで失敗する人の10の法則』。
面白かったです。
なぜこんな面白い本にもっと早く気がつかなかったのだろう・・。
| 固定リンク



コメント