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2022年10月29日 (土)

ストックオプションとRSU

最近では日本企業も取締役や幹部社員にストックオプションを付与するケースが多くなりました。

ここで言うオプションとは、株式を特定価格で買う権利。

例えば500円で買うオプションを付与され、株価が1200円の時にオプションを行使した上で、市場で株を売却すれば700円の利益を得られます。

ストックオプションを付与される人の立場からすると、オプションがout of the moneyになると意味がなくなるという点が懸念されます。

どういうことでしょうか。

例えば500円で買うオプションを付与されたとしても、株価が低迷を続け、ずっとout of the money (500円未満)であり続けるとオプションを貰った意味がなくなるということです。

もちろん株価が将来的に500円を超える(in the money)ようになることもあり得る訳で、その時にオプションを行使出来れば経済的利益を得ることが出来ます。

さて、ストックオプション制度を導入すると、オプションを貰った人は自社の株価を意識するようになります。

そして業績を上げ、株価を高めようと頑張る(でないと、オプションがout of the moneyになってしまう)ことが期待されます。

よって経営陣としてはオプション制度を導入することに関し、既存株主からの賛同を得やすいといった点が挙げられます。

オプションに似た制度に、RSUがあります。

Restricted Stock Units の略で、譲渡制限付株式のことです。

これは一定期間経過後に(特定の条件が満たされれば)初めて正式な株式になる(Vestされる)というもの。

たとえば『1000株のRSUが与えられ(Grantされる)、5年間会社に勤務すれば正式な株式となる(Vestされる)』といった形で使われます。

ストックオプションやRSUは昔から外資系投資銀行ではよく使われていました。

幹部社員が他社に引き抜かれるとオプションやRSUの権利を剥奪する仕組みにして、

優秀な社員が引き抜かれるのを防ぐことに使われていました。

そればかりでなく(全く逆の使い方なのですが)、幹部社員に会社都合で退職してもらう際に、オプションの権利をすぐに行使可能にしたり、RSUをすぐにvestさせたりして、辞めてもらいやすくする、つまりある種のsweetener(甘味料)として使われたりしました。

投資銀行で良く使われてきたオプションやRSUの制度ですが、2000年頃からでしょうか、外資のIT大手などでも広く使われるようになりました。

そして今では日本企業でもオプションのみならずRSUを使うところが出てきています。

さて前置きはこの位にして、オプションやRSUにからむ失敗談を昨日の日経新聞(電子版)に寄稿しました。明日発売の日経ヴェリタス紙にも掲載されます。

題して『株はあなたの思い入れを知らない』。『こちら』です。

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2022年10月26日 (水)

ヘイル・メアリー

ヘイル・メアリー(Hail Mary)とは、ラテン語のアヴェ・マリア(Ave Maria)にあたる言葉。

アメリカンフットボールの世界では、試合終盤(ほとんど終わり間際)に、劣勢のチームが一発逆転を狙って投げる神頼みのロングパスのことです。

多くは失敗に終わります。

たった5分の動画なのですが、NFLがまとめた『Top 10 Hail Mary Plays of All Time!』(『こちら』)。

Nfl

最初に現れるのは第10位で、「ボルチモア・レイブンズ」対「デンバー・ブロンコス」(2013年1月)の一場面。

動画は成功したもののみを集めたものですが、奇跡的なシーンの数々から現場の興奮が伝わってきます。

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2022年10月 8日 (土)

雇用統計と株価

昨日の米国市場。

雇用統計の数字が若干良かっただけで、マーケットは大きく下落しました。

いったい何が起きたのでしょうか。

まずは発表された数字を見てみましょう。

失業率は3.5%と、0.2ポイント改善。

非農業部門の就業者数は前月から26万3000人増加(事前予想はBloomberg報道による市場予想の中央値が25.5万人増加、Dow Jones社による予想が27.5万人)。

いずれにせよ「これらの数字の発表が切っ掛けとなって、株価が下落(米ダウは前日比630.15ドル安)した」というのが一般的な解説ですが、

それではいったい失業率が8月と同じ3.7%だったとしたら、あるいは雇用統計の数字がマーケットの予想中央値の25.5万人、ピッタリ、だったとしたら、株価はこれほどまでには下落しなかったのでしょうか。

タラレバの質問に答えるのは難しいのですが、恐らくは「やはり株価は下落した」といった結果になったのではないでしょうか。

「市場のことは市場に聞け」という格言があります。

現在、市場参加者の多くが「株価は年末にかけて、もっと下落する」と読んでいるような気がします。

だとしたら、どういった数字が出てもマーケットはそれなりに解釈をつけて、株価は下落してしまっていたのではないか・・。

そんな気がしてくるのです。

改めて今回の株価下落に関する市場の「思考回路」を解説すると、

 

(思考回路A)

  雇用は引き続き強い

     ↓

  賃金増は物価高の要因

 

(思考回路B)

  雇用は引き続き強い

     ↓

  FRBが利上げをしても景気は腰折れしないだろう

以上、A、Bいずれもが次回FOMC(11月1日、2日)での0.75%利上げを確定的にした、

だから株価が大幅下落した、というのが一般的解釈。

* * *

ここで米国の非農業部門の就業者数の推移をグラフにしてみます。

From-nyt

                              (From New York Times)

昨年9月から今年9月までの13か月間の推移です。

昨年9月はもっと大きな就業者数増加があったことが見て取れます。

因みにですが・・

昨年9月、10月の段階ではFRBはインフレはtransitory(一時的なもの)と称し、

漸く11月も終わり近くになり、初めて、この言葉はretireさせる(もう使わない)と発言。

Testifying before the Senate Banking Committee in late November, Powell reflected on the use of the word “transitory” and said it was “probably a good time to retire that word and try to explain more clearly what we mean.”(『こちら』)。

過ぎたことを今さら書いても致し方ないのですが、

FRBが重い腰を上げて、漸く利上げに踏み切ったのは昨年12月のFOMCではなく今年、それも今年1月のFOMCではなくて、今年3月になってからです。

(昨年は新型コロナの影響による雇用減の回復期であったり、また今年2月24日にはロシアによるウクライナへの侵略開始があったりと、いろんな事情があり、FRBを責める気には到底なれないのですが・・)

いずれにせよ、就業者数が増加すること、それ自体は経済にとって望ましいことです。

しかしここ最近はそれが経済の過熱感を示していた・・。

ただ労働市場にあった過熱感は今やようやく衰退しつつあり、だんだんと良いところに落ち着いてきた・・。

少なくとも上記グラフからはそう読み取れます。

しかし市場は現在の状況から「11月のFOMCで0.75%利上げの確度を高めた」と解するようになったということでしょうか。

最後に米国のCPI(消費者物価指数)推移を貼っておきます。

ポイントは10月13日(米国時間)。

ここで発表される9月のCPIはどういった数字になるのでしょうか。

市場予想は今のところ8.1~8.2%です(先月発表となった8月分は8.3%)。

Inflationrate

 

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2022年10月 1日 (土)

ワッツアップの会話

1971年7月~72年7月の1年間にカリフォルニア南部の高校に留学したAFS生たち。

数年前ですが彼らはワッツアップ(WhatsApp)のグループ・チャット(LINEのグループトークのようなもの)を開始。

私も参加しました。

2日ほど前ですが、私が

『みんなCovid-19のワクチンはどうしているの?

私は3回目を打った時に38度の熱が出たこともあって4回目をどうするか迷っている』

と投稿すると、さっそくみんなから回答が寄せられました。

なお全員私と同じ年代で67~69歳です。

■ベルギーのAさん(Aさんの職業はお医者さんです)

『明日、4回目の接種を受けます。

これまでの3回はアストラゼネカとファイザー。

副反応はありませんでした。

しかしこれまでにCovid-19に2度、感染しています。

1回目はワクチンを受ける前で、結構たいへんでした。

2回目はワクチン後でオミクロン株。

この時はこれといった症状は出ませんでした。

人それぞれで症状も違い、ワクチンの副反応も違うようです』

■オーストリアのBさん(この人もお医者さんになりました)

『3回、ファイザーのワクチンを打ちました。

一度、デルタ株に感染。それほど大した症状は出ませんでした。

これから2週間後にファイザーの4回目のワクチンを受けます(BA4/5)。

というのも、11月にインドネシアに旅行で行くから。

去年メキシコに旅行した時に感染し、ホテルに缶詰めになって大変でした。

あなたの場合、38度の熱ならそれほど大したことはない。

ワクチンを打つことの利点の方が、打って副反応になる潜在的マイナスよりもはるかに大きいと思います』

■グアテマラのCさん

『アストラゼネカを3回、ファイザーを1回。

副反応は1度もありませんでした』

■ヨルダンのDさん

『ファイザーを3回。

2回目と3回目の時に骨が痛かった(12時間くらい続いた)。

4回目を打つ気はありません』

■エクアドル出身、米国在住のEさん

『3回、ファイザーを打った。

3回目の後、体調が良くない。

4回目は打たないつもり』

■英国のFさん

『3回ファイザーを打った。

2週間後に4回目とインフルエンザワクチンを同時に打つ予定。

7月に感染したけど、その時の症状の方がワクチンの副反応より酷かった。

ワクチンをしていなければ、もっと酷かったに違いない』

■イラン出身、米国在住のGさん

『3回ファイザーを打った。

4回目はまだ』

■スペインのHさん

『3回目のワクチンの時に頭痛と風邪のような症状。

4回目についてはよく分からない』

■アルゼンチンのIさん

『最初はスプートニク。

次はファイザー。

3回目と4回目はモデルナ。

副反応は全くなし』

■オーストラリアのJさん

『最初の2回はアストラゼネカ。

次にファイザー、

4回目、モデルナ。

副反応については全くなし』

* * *

こう並べてみると、ほんとうに人それぞれ。

10人中、コロナの感染経験者が3人。1人は2度も感染。

日本に比べてワクチンの種類がいろいろでアストラゼネカ、スプートニクなども。

何となく日本人の方が副反応に苦しむ人が(少なくとも私の周りには)多いように思えます。

ただしこれだけの例では何とも言えないので、上記の例から何らかの結論を導くのは控えた方が良さそう・・。

アルゼンチンの状況とかヨルダンではどうしているかなど、日本ではほとんど報道されていません。

そういった意味で、ワッツアップのグループ・チャットは新鮮でした。

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