雇用統計と株価
昨日の米国市場。
雇用統計の数字が若干良かっただけで、マーケットは大きく下落しました。
いったい何が起きたのでしょうか。
まずは発表された数字を見てみましょう。
失業率は3.5%と、0.2ポイント改善。
非農業部門の就業者数は前月から26万3000人増加(事前予想はBloomberg報道による市場予想の中央値が25.5万人増加、Dow Jones社による予想が27.5万人)。
いずれにせよ「これらの数字の発表が切っ掛けとなって、株価が下落(米ダウは前日比630.15ドル安)した」というのが一般的な解説ですが、
それではいったい失業率が8月と同じ3.7%だったとしたら、あるいは雇用統計の数字がマーケットの予想中央値の25.5万人、ピッタリ、だったとしたら、株価はこれほどまでには下落しなかったのでしょうか。
タラレバの質問に答えるのは難しいのですが、恐らくは「やはり株価は下落した」といった結果になったのではないでしょうか。
「市場のことは市場に聞け」という格言があります。
現在、市場参加者の多くが「株価は年末にかけて、もっと下落する」と読んでいるような気がします。
だとしたら、どういった数字が出てもマーケットはそれなりに解釈をつけて、株価は下落してしまっていたのではないか・・。
そんな気がしてくるのです。
改めて今回の株価下落に関する市場の「思考回路」を解説すると、
(思考回路A)
雇用は引き続き強い
↓
賃金増は物価高の要因
(思考回路B)
雇用は引き続き強い
↓
FRBが利上げをしても景気は腰折れしないだろう
以上、A、Bいずれもが次回FOMC(11月1日、2日)での0.75%利上げを確定的にした、
だから株価が大幅下落した、というのが一般的解釈。
* * *
ここで米国の非農業部門の就業者数の推移をグラフにしてみます。
(From New York Times)
昨年9月から今年9月までの13か月間の推移です。
昨年9月はもっと大きな就業者数増加があったことが見て取れます。
因みにですが・・
昨年9月、10月の段階ではFRBはインフレはtransitory(一時的なもの)と称し、
漸く11月も終わり近くになり、初めて、この言葉はretireさせる(もう使わない)と発言。
Testifying before the Senate Banking Committee in late November, Powell reflected on the use of the word “transitory” and said it was “probably a good time to retire that word and try to explain more clearly what we mean.”(『こちら』)。
過ぎたことを今さら書いても致し方ないのですが、
FRBが重い腰を上げて、漸く利上げに踏み切ったのは昨年12月のFOMCではなく今年、それも今年1月のFOMCではなくて、今年3月になってからです。
(昨年は新型コロナの影響による雇用減の回復期であったり、また今年2月24日にはロシアによるウクライナへの侵略開始があったりと、いろんな事情があり、FRBを責める気には到底なれないのですが・・)
いずれにせよ、就業者数が増加すること、それ自体は経済にとって望ましいことです。
しかしここ最近はそれが経済の過熱感を示していた・・。
ただ労働市場にあった過熱感は今やようやく衰退しつつあり、だんだんと良いところに落ち着いてきた・・。
少なくとも上記グラフからはそう読み取れます。
しかし市場は現在の状況から「11月のFOMCで0.75%利上げの確度を高めた」と解するようになったということでしょうか。
最後に米国のCPI(消費者物価指数)推移を貼っておきます。
ポイントは10月13日(米国時間)。
ここで発表される9月のCPIはどういった数字になるのでしょうか。
市場予想は今のところ8.1~8.2%です(先月発表となった8月分は8.3%)。
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