« 2022年11月 | トップページ | 2023年1月 »

2022年12月31日 (土)

2022年を振り返って

私たちの公的年金(厚生年金、国民年金)は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)によって運用されています。

具体的に何で運用しているのかというと、(1)国内債券、(2)外国債券、(3)国内株式、(4)外国株式。

これらへの運用割合は(おおよその割合ですが)各々4分の1ずつです。

バランスを取ることによって、たとえば株がダメでも債券に期待(逆に債券がダメなときは株に期待)し、長期に亘って安定した運用益を確保したいという考え方が根底にあります。

もっとも国によって考え方は違い、たとえば米国連邦政府の場合は株式や外国債券での運用を認めていません。

つまり米国のソーシャル・セキュリティ「Social Security (Old-Age, Survivors, and Disability Insurance) Program」のもとでは、全てが米国債で運用されています。

さて11月4日にGPIFは今年度の第2四半期(7月~9月期)の運用成績(1兆7220億円の赤字)を発表。

ポイントは国内外の債券と株式、つまり上記4つのカテゴリーで何れも赤字だったことです。

具体的には、

(1)国内債券 ▲3982億円
(2)外国債券 ▲7644億円
(3)国内株式 ▲3679億円
(4)外国株式 ▲1916億円

でした。

(注)それでもGPIFが2001年度に市場運用開始した以降の収益率は年率3.47%で、累積収益は99兆9567億円に及びます。 

2022年は斯様に運用する人にとっては難しい年でした。

11月末にFinancial Timesは、1871年以降、2022年(11月末)までの米国株と米国債券での運用成績をチャートにしてまとめました。

結果は下図の通り。

Ft_20221231104001

株(グラフの水平軸)だけでみると、1931年、37年(何れも大恐慌)、2008年(リーマンショック)など、今年より悪い年はありました。

しかし株と債券の両方(グラフの横軸と縦軸)で見ると、今年の米国は1871年以後で最悪の年でした。

151年に及ぶ歴史の中で、最悪とされる年を乗り切ったーこれは自信に繋がるのか、安堵に繋がるのか、分かりませんが・・・

来年が今年よりも良くなるという保証はどこにもありません。

| | コメント (0)

2022年12月17日 (土)

FTXとアラメダとバイナンスの話

いま米国で騒がれているFTX関連の話を4つに分けてご紹介します。

* * *

【その1】ハイフンで繋がれた名前(Hyphenated Names)

Hyphenated Names とは「ハイフンで繋がれた名前」の意味。

例えば、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ(Catherine Zeta-Jones)とか オリビア・ニュートン=ジョン(Olivia Newton-John)とか・・。

その昔、私が JP Morgan に勤めていた時の上司(イギリス人)も Hyphenated Names で、米国人たちに良く揶揄われていました。

ハイフンで繋がれた名前は、イギリスでは Double-Barrelled Names とも言うそうです。

さて、最近倒産した暗号資産取引所FTXの 創業者、サム・バンクマンフリード(Sam Bankman-Fried、30歳)も Hyphenated Name。

Sam_bankmanfried_2022

  (Picture of Sam Bankman-Fried; from Wikipedia)

通常はこんな長い名前ではなく、3つの頭文字を取って、たんにSBFと呼ばれているのですが・・。

彼の父親は Joseph Bankman でスタンフォード大学ロースクール教授。

母親の Barbara Fried もスタンフォード大学ロースクール教授。

父親も母親も高名な学者の家庭に生まれ、恐らくは両親への尊敬から、両親の名字をハイフンで繋げて、Bankman-Fried を名字(family name)にしたのでしょう。

せっかくのHyphenated Name だった筈なのですが、バハマで逮捕されました。

詐欺やマネーロンダリング(資金洗浄)など8つの罪で起訴され、

8つの訴因全てで有罪判決を受けた場合、最長115年の禁錮刑に直面する可能性があると言います。

【その2】イーロン・マスクとSBF

ツイッター買収に際し、イーロン・マスクが資金集めをしていた時、彼はSBFから「資金を出してもいいよ」といったアプローチを受けます。

2人は30分間ほど話したとのことですが、イーロン・マスクの直観が働きました。

彼の言葉ですが、

『俺の頭の中で赤信号が点滅したんだ(I know my bullshit meter was redlining)』)

『この男(SBF)はでたらめだ!(This dude is bullshit)』

この辺の話は『こちら』の記事に詳しく書かれていますので、ご興味のある方はどうぞ。

いずれにせよ、イーロンはSBFの話に乗らなくて正解でした。

もし仮に乗っていたら、ツイッター買収の話はグチャグチャになっていたでしょうし、テスラやスペースXにも何らかの悪影響が及んだ可能性すらあります。

なおイーロンはこの時の模様をツイッターのスペースで発言しています。

その時の会話は一部が録音・録画され(45秒)、『こちら』でご覧いただけます。

【その3】アラメダ

アラメダ(Alameda Research)は、SBFが、2017年に設立した暗号資産のトレーディング会社。

FTXの姉妹会社と言われています。

11月11日、FTXが破産申請(chapter 11)した際に、アラメダも含む形で破産申請されました。

この会社のCEOだったのは、キャロライン・エリソン(Caroline Ellison、28歳)。

Photo_20221217125201

   (Caroline Ellison; from Newyork Post article)

キャロライン・エリソンの両親も高名な学者。

父親のグレン・エリソンはMITの教授(経済学)。母親のサラ・フィッシャー・エリソンもMITで経済学を教えています。

言ってみれば、SBFと似たような家庭環境の出身。

SBFとキャロラインは付き合うようになりますが、彼女はポリアモリー(複数恋愛)をexplore(探索)したと述べているらしく、詳しいことはよく分かりません。

欧米のマスコミでは彼女のことを SBF の ex(元彼女)と表現しています。

「そんなことはどうでもいいじゃないか」と言われそうですが、FTXは顧客資産を流用してアラメダに100億ドルを超える(1.3兆円)を融資していたと疑われる(『こちら』)など、両社の関係を抜きにFTX疑惑を語ることは出来ません。

SBFは逮捕されましたが、キャロリンはまだ逮捕されていません。

彼女はSEC出身のステファニー・アヴァキアンを顧問弁護士に雇い、ニューヨーク・ポスト紙の報道では何らかの司法取引を模索しているとの噂もあるとのこと(『こちら』)。

FTX破綻の発端はアラメダと見る(『こちら』)ことも出来、元カノのこの動きをSBFは複雑な気持ちで見ているのかもしれません(単なる憶測ですが・・)。

【その4】バイナンス

現在、マーケットが心配しているのは、これら一連の動きがバイナンスに飛び火するかどうか。

バイナンスは下表の通り世界最大の暗号資産取引所(『こちら』)。

Photo_20221217124701

 (From CoinMarketCap Ranks)

中国系カナダ人チャンポン・ジャオ(Changpeng Zhao)によって創設されました。サム・バンクマンフリードがSBFと呼ばれるように、チャンポン・ジャオはCZと呼ばれています。米国人はそもそも中国名(もちろん日本名やフランス名も)が苦手ですから。

Changpeng_zhao_in_2022

(CZ is speaking at Vietnam NFT Summit 2022;From Wikipedia;  Wikimedia Commons)

バイナンスを巡る最近の一連の動きについてはGenevieve Roch-Decter氏の一連のツイート(『こちら』)が参考になります。

| | コメント (0)

2022年12月13日 (火)

霧中で光る実力株は

昨日は日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』に出演しました。

トピックスは『霧中で光る実力株は』。

下の画像は、日経ヴェリタスによるツイッター投稿画像(公開されオープンになっている)ですが、

巻頭特集記事は、成長、投資、還元の3つの指標で、企業の力を測ろうというもの。

Photo_20221212202301

今回番組でコメントする上で、役に立ったのが興銀時代の経験。

入行時、私は外国為替部の配属で船会社と付き合いがあったのですが、海運サイクル(シッピング・サイクル)について勉強させてもらいました。

『船会社は、海運市況が良い時は新しい造船を発注する傾向にある。

しかし船は発注から竣工まで2年はかかる。

すぐには供給が増えないので供給不足は長引きやすい。

ところがやがてはブームの時に発注した船舶の竣工が相次ぐようになる。

すると、今度は供給過多になってしまう傾向にある』。

さまざまな資源貨物を輸送する「ばら積み船」の中で最も大きな船型をケープサイズと言っています。

 大きすぎてスエズ運河やパナマ運河を通航できず、喜望峰(the Cape of Good Hope)やホーン岬を周らなければなりません。

こういったことから、Capesize と名付けられています。

2016年前半。ケープサイズのバルカー市況は歴史的な低水準にまで落ち込んだことで知られています。

番組では(紙面でも)日産化学についての話も出ました。

これもたまたまなのですが、興銀時代に5年間、化学会社を担当する営業第3部の課長をしていました。

私は3班の課長をしていたのですが、日産化学は隣の2班が担当。

直接の付き合いはなかったのですが・・。

日産化学は当初、石灰石を原料として肥料をつくっていました。

しかし1960年代を通じて肥料などの製造は石油化学に原料転換されつつありました。

これを受けて、日産化学は1965年、石油化学に進出。

しかし大手がいっせいに石油化学に注力していく中、はたして日産化学としてやっていけるのかが議論となったのだと思います。

1988年、時の社長、中井武夫氏(興銀出身)は石油化学からの撤退を決断。

塩ビは東ソーに、高級アルコール事業は協和発酵に、ポリエチは丸善石油化学に、それぞれ事業譲渡します。

つまり、いちばんの主力事業を切り捨て、後がない状態になって、農薬・医薬品・液晶材料などの高機能化学品に活路を見出していくことにしたのです。

番組では、このほかに株主還元についても議論しました。

会社はそもそも投資家のもの。

であれば、株主還元とはいったいどういう意味なのでしょうか。

英語で外国人投資家に説明しようとすると、たとえば returning capital to shareholders といった具合に苦労して説明するようになります。

たとえばGAFAのなかで、配当を支払っているのはアップルだけ。

グーグルにしてもアマゾンにしても配当は払ったことがなく、自社株購入もごく最近になってから。

にもかかわらず、株主はこれを評価し高い時価総額を付けています。

ただ日本の場合は企業が必要以上に現金を抱える傾向にあります。

然るべき投資先が見当たらないのであれば、いったんは資本を株主に返す(配当金もしくは自己株式購入の形で)、そして資本をスリム化するというのは評価されるべき施策だと思います。

なお配当金については、企業が税金(法人税)を払った後の原資から、株主に配当金を払う。その際、株主は再び税金を払うーといった二重課税の問題があります。

これについては時間の関係で触れることが出来ませんでした。

番組は『こちら』でご覧になれます。

Photo_20221213132001

| | コメント (0)

2022年12月11日 (日)

子どもの数とペットの数

5年後、あるいは10年後の日本。

少子高齢化はいったいどうなるのでしょうか。

高齢化については、今や65歳以上が全人口の29.1%を占めます(総務省統計局『こちら』)。

そして、この割合は2030年には31.2%、65年には38.4%になる見込み(内閣府『こちら』)。

つまり高齢化率はこれから先、ぐんぐんと上昇していきます。

一方の少子化の方はどうでしょう。

そもそも結婚する人の数が減ってきています。

2021年の婚姻件数は 50 万 1116 組。

これは前年 52 万 5507 組より 2 万 4391 組減少(総務省『令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況』14頁) 。

子どもの数も着実に減ってきていて、

2022年4月1日現在における子どもの数(15歳未満人口)は、1465万人(総務省統計局『こちら』)。

前年よりも25万人も減ってしまいました。

この数は1982年から41年連続で減少してきています。

* * *

ところで、テレビのクイズ番組ではありませんが、子供の数とペットの数、多いのはどちらでしょうか。

一般社団法人ペットフード協会によると、日本における犬の飼育頭数は711万頭(『こちら』)。

24989604_s

  (注:フリー画像より)

猫は895万頭(同じく『こちら』)。

合わせて約1600万頭なので、すでにペット(犬と猫)の方が子供の人数よりも多くなっています。

この傾向は都心部ではもっと顕著で、港区立の小学校に通う子供の数は10,332人(『こちら』)。

一方で港区の犬の登録数は、11,494頭(『こちら』)。

犬だけで小学生の人数を上回ります。

いったいこれから先、日本はどうなってしまうんでしょうか。

取りあえず、投資家目線で考えると、老人用紙おむつとペット関連商品を扱う会社は伸びそう・・。

そう言えば、そのどちらも扱うのがユニ・チャーム。

調べてみると、5年前に比して株価はすでに72%も上がっていました(この間、日経平均は22%高)。

| | コメント (0)

2022年12月 2日 (金)

健康長寿もたらす? 株式投資の効用

新型コロナで自宅にいることが増え、足腰が弱くなったという高齢者が増えてきています。

2016年の厚生労働省調査によれば、健康寿命は男性72.1歳、女性74.8歳。

そうなんです。意外に短いのです。

日本人の健康寿命は世界でもトップレベルにあると言われていますが、それでも、

10年前後の不健康で自立が脅かされている期間(= 平均寿命と健康寿命との差)があるのです。

健康寿命を阻害する主な要因としては、認知症、脳血管障害、高齢による衰弱(フレイル)などがあり、

これらを予防していくことが健康長寿につながります。

では具体的にどうすれば健康長寿を実現できるのでしょうか。

ドイツ、フライブルク市では環境問題に取り組んだところ、健康長寿という思わぬ効用が生まれたそうです。

これはいったいどういうことでしょうか。

『人生100年こわくない』のテーマの下で、日経ヴェリタス紙と日経新聞電子版に記事を定期寄稿してきましたが、

今回は健康寿命について取り上げました。

35歳の読者の方も無縁ではありません。

中年層(35~64歳)も高齢予備軍であり、日本では、その中年層も歩くことが少なくなってきて問題視されています。

詳しくは『こちら』の記事をご覧ください。 

| | コメント (0)

« 2022年11月 | トップページ | 2023年1月 »