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2023年1月31日 (火)

中古が新鮮 物価高で「旬」

昨日出演した日経CNBCテレビの「日経ヴェリタストーク」。

『こちら』で動画をご覧いただけます。

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2023年1月30日 (月)

リユース市場 個人投資家としてどう向き合うか

リユースが脚光を浴びている。2022年の中古車を除く中古品市場は前年比11%増の3兆円と見込まれる(中古車を入れると6兆円超)。

【1】現在の情勢をどう捉えるか

中古車を除いたリユース市場は3兆円。
しかし家庭に眠る不用品は44兆円である(『こちら』)。
つまり市場のポテンシャルは大きい。

業界大手のトレジャー・ファクトリーの野坂社長が『』を著していて、その中で、次のようなエピソードを紹介している。

■ 創業して3年目(つまり今から25年くらい前)、お客さんが購入した家具を間違って隣の家に届けてしまった。

すぐに間違えに気づいて、きちんと届け直した。

しかしお客さんから後で電話がかかってきて、烈火のごとく怒られた。

中古品を買ってしまったことが隣人に知られてしまって恥ずかしいとのことだった。

■ 当時、お店のロゴマークをレジ袋に印刷していたのだが、ロゴマークの無い袋に入れて欲しいと言われた。

* * *

つまり20年以上前は中古品を買うことに対して、このような偏見もあった。

それが今ではそうした見方は後退し、むしろ『リユース品は、SDGsとか、エコだ』、『賢い消費者で格好いい』といった見方が増えてきている。

消費者の意識の変化がこの業界にとって追い風となっている。

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(画像は日経ヴェリタスのツイッター画像(『こちら』)から)

【2】リユース品市場の特徴

リユース品市場の特徴は『誰か売る人がいて、初めて成り立つ市場である』ということ。

つまり最近リユース家電を買う人が多いが、これは裏返せば『まだ使えるのに新品に買い替える人が多い』といった状況が背後にある(「新しい冷蔵庫の方が消費電力が少ないので買い替えてしまおう」といった理由)。

要は新品が売れること、そして新品に買い替える人が多いことが、リユース市場拡大の要因となる。

社会が富裕層と経済的に苦しい層に2極化してきていると言われるが、こうした社会構造の変化もリユース市場の拡大に繋がるのかもしれない。

なお上記要因とは別に、最近の風潮としてミニマリスト(最低限の物しか持たない)の台頭やコンマリ(近藤麻理恵さん)現象もあるが、これらも眠っている不用品を処理したいとの考えに繋がっている。

【3】リユース市場とデータ管理

 リユースビジネスは基本的にはデータ管理のビジネスでもある。

どういうことか。

新品だと、たとえばスマホのこのモデル(例:iPhone 14 Pro Max)といった形で特定されると、基本的に全て同じである。

ところが、リユース市場のiPhone 12 は1点ずつ、商品によって使われ方も違うし、中には傷がついているものもある。

つまり1点、1点、すべて違うのであり、1点もので単品管理していくことが必要になる。

この辺のデータ管理がきちんと出来ていて、適切な仕入れ値と販売価格が設定されると、商品の回転率が上がっていく。

昔の質屋は店主個人の勘に頼っていた。

現在の大手リユースチェーンは店舗も多いので、データによる管理、標準化が重要となる。

【4】買取価格比較サイト

新品の家電やパソコン、スマホを買う場合、あらかじめ価格コムを見る人も多い。

同じようにリユース品をお店に売る場合、買取価格比較サイト(ウリドキ、おいくら、ヒカカクなど)をチェックする人も多くなっている。

中古のゲームとかスマホは比較されやすい。一方で、中古の着物などは比較されにくい。

リユースの商品は、「仕入れ」と「販売する」という両面で成り立つ。
「あそこは高く買ってくれる」と評判になると、逆に「あそこで売っているものは高いんじゃないか」と思われてしまうこともあり得る。

買い取り価格と販売価格の『微妙なサジ加減』がノウハウとなっている。

【5】リユースマーケットを投資家としてどう評価するか

上述したように中古車を除くリユース市場は3兆円市場。

一方で家庭に眠る不用品は44兆円と言われているので、基本的にこの業界はまだ伸びる。

しかし投資家として見た場合、業界構造を頭に入れておくことが重要だ。

3兆円のリユース市場のうち43% は個人間取引(『こちら』)。

ここではメルカリなどのプラットフォーマーが力を持つ。

次にECサイト(アマゾン、楽天など大手)が18%を占める。

リアル店舗が占めるのは全体の37%。

このリアル店舗のところは、新規企業が比較的参入しやすく、競争が厳しい。

たとえば大黒屋は過去4年連続で赤字、今期も赤字になる可能性が高い。

ブックオフも5~6年前は(2016~18年まで)3期連続で赤字だった。

投資家としてリアル店舗の会社を見る場合は、企業分析をしっかりとやる必要がある。

『売上が伸びている』、『店舗網をどんどん展開している』からといって、必ずしも安心できない。

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2023年1月17日 (火)

2022年を理解するうえで役立つ4つのグラフ

2022年はどういう年であったか。

これを理解することは、今年1年がどんな年になるかを考える上での手がかりになります。

以下、昨年1年間を理解するうえで役立つ4つのグラフを掲載します。

【FRBの利上げは歴史上もっとも厳しいものだった】

Frb_20230117222901

 

【その結果、株価は歴史上7番目の下落】

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【株60、債券40の割合で運用していたら、歴史上最悪のパフォーマンスだった】

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【債券に投資する人にとっては史上最悪だった】

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2023年1月10日 (火)

『新・日本構造改革論 デービッド・アトキンソン自伝』

2021年5月に書かれたアトキンソンさんの『新・日本構造改革論 デービッド・アトキンソン自伝』

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内容は95%までがアトキンソンさんの自伝です。

しかしその行間には、日本への愛情と、どうして30数年の間にこうまで日本の国際的地位が衰退してしまったのかについての考察と言うか、著者なりの問題意識がにじみ出ています。

つまり95%の部分は、表立っては日本の構造改革論は述べられてはいません。

しかし私にはこの部分こそが(間接的にであれ)本質的な病巣に迫っているような気がしました。

本質的な病巣。

それは教育の問題と、その結果生まれた、日本社会のみで通用する、エリートと目される一部日本人のアロガンス(arrogance;傲慢さ)にあるのではないか、と私は読み取りました。

アロガント(arrogant)な人は学ぼうという意識に欠けます。

さて・・。

本書の最初の5分の1はオックスフォード大学での経験の話です。

Times Higher Educationによるランキング(World University Rankings 2023)では:

1位:オックスフォード

2位:ハーバード

3位:スタンフォードとケンブリッジ(同順位)

39位:東大

と、オックスフォードは大学として世界第1位に評価されています。

オックスフォード1校だけでこれまで56名のノーベル賞受賞者を輩出。

そんなオックスフォードの凄さが本書を読むと伝わってきます。

1987年に大学を出たアトキンソンさんはアンダーセンに就職。

その後、投資銀行に転じ、90年~92年にソロモン、92年~2007年にゴールドマンで株式アナリストを務め、この間にトップアナリストとしての評価を確立しました。

本書の半分以上を占めるのがこのアナリスト時代の経験の話。

アトキンソンさんがアナリストとして分析し信じるところを書いたところ、それが評価される側の銀行経営者の逆鱗に触れます。

その結果、社内的にも難しい立場に追い詰められてしまいます。

同じ投資銀行でもアトキンソンさんと私とでは、勤務した会社や担当した職務も異なります。

それでも、実は私もアトキンソンさんと似たような経験をしました。

外資に移ってまもなく。

元勤務していた日本のA銀行のB常務から『来て欲しい』と連絡を受けました。

それまでB常務と私は、接点はなく、お互い顔を知っている程度。

A銀行の場合、頭取や常務への来客は役員来客用応接室へ通されます。

一方、行内の部長や課長が常務に呼ばれる時は、常務の部屋に行って、そこで打ち合わせをします。

さて私がA銀行を訪れると、秘書に案内されたのは、来客用応接室ではなく常務の部屋。

『会社を去った後でも(来客ではなく)仲間として認めてくれるのか』

そんな印象を持ったのを覚えています。

ところがそれから後が大変。

会って、開口一番、

『君のところのアナリストは何なんだ。

銀行に関するこんなレポートを書きやがって。

デリバティブだろうと何だろうと、君のところとはこれから一切取引をしないからな。

出入り禁止だ。

帰ったらそう伝えておけ』

と凄い剣幕。

当時、私はManaging Director でしたが、投資銀行部の所属で、しかも担当はTMT(Telecom, Media & Technology)。

A銀行をはじめ金融機関はFIG(Financial Group)の担当であり、そもそも銀行アナリストは投資銀行部とは全く別の独立した部署(株式調査部)が所管。

レポートの内容が気に入らないなら、書いたアナリストを呼んで、「この分析や数字は違う」と議論すれば良いのだろうに、と不思議に思ったのを覚えています。

本書を読むとアトキンソンさんはもっと大変な経験をしたことが分かります。

1985年、まだ学生だったアトキンソンさんが初めて日本を訪れた時、まだ日本人はそれほどアロガント(arrogant)ではなかったと思います。

しかし一部のエリートと称される日本人はいつの間にかアロガント(arrogant)になってしまった。

バブルによって経済が世界2位になってしまったことが影響したのでしょうか。

なお以上はすべて私の個人的な感想に過ぎず、本書にはそもそもアロガント(arrogant)といった単語さえ全く出てきません。

ただ日本のことを長く知る私の周りの米国人は『かつて日本人はpolite だったが、いつの間にか arrogant な人が増えてきた』とよく口にします。

私は、日本の衰退はこの辺に原因があるような気がしています。

なお本書は次のような人にお勧め。

1)教育に興味ある人、とくに

2)オックスフォード流の教育に興味ある人

3)コンサルタントに興味ある人(アトキンソンさんはソロモンに移る前、アンダーセンに勤務)

4)投資銀行に興味ある人(パートナーになる過程など社内ポリティックスがかなり赤裸々に描かれています)

5)株式アナリストに興味ある人

6)日本の1人当たりの生産性が世界27位、先進国中最下位であることの意味に関心ある人

7)バブル期後の日本の銀行の不良債権問題に関心ある人

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2023年1月 6日 (金)

ウサギとカメの投資術

「ウサギは自分を過信しすぎて勝負を急ぐあまり途中で没落していく。一方、カメは遅いようでもちゃんとゴールに入っている」

こう説いたのは是川銀蔵(1897年~1992年)。

「最後の相場師」との異名を持ち、1982年の高額所得番付1位となった人です。

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(是川銀蔵の銅像;公益財団法人是川奨学財団のホームページより)

是川は兵庫県赤穂の漁師の家に7人兄弟の末っ子として生まれます。

上の兄たちは全員尋常小学校までしか行かせてもらえませんでしたが、彼は高等小学校まで通わせてもらえました。

そして小学校を卒業した後、小さな貿易商、「好本商会」の丁稚となります。

好本商会はイギリスから毛織物を輸入し、日本の手芸品を輸出するという会社でしたが、1914年に倒産。

是川が16歳の時でした。

丁稚で稼いだ20円を旅費にして、16歳の是川は神戸から中国・大連に渡り、現地の洋服生地問屋の「井上商店」の世話になります。

しかし数ヶ月で大連を飛び出し、日本軍の後を追って山東半島へ。

17歳の時に青島で貿易商社「小山洋行」を設立。

しかし軍の高官に対して饗応を行った容疑で逮捕されてしまいます。

未成年の為、無罪釈放とはなりますが、店や預金、その他一切の財産を番頭に譲り、いったん帰国。

是川18歳の時でした。

半年後、再び中国に渡り、商売に励みましたが、非鉄金属相場の下落などに見舞われ、一文無しとなって19歳で帰国。

このように是川は10代のときから波乱万丈の人生を歩みます。

高等小学校しか出ていなかった是川が経済学を学ぼうと思い立ったのは、31歳の時。

妻と子ども4人を抱え、家賃や米代も払えない貧窮生活の中で、3年間、毎日のように京都・嵐山から大阪の図書館へ通い続けました。

新京阪鉄道の社長に頼み込んで雑役夫用の無料乗車券を入手。それでも往復5キロは毎日歩く羽目に。

図書館では、経済学のみならず政治の本も読み漁り、世界各国の数十年にわたる経済統計を調べ、物価、景気、株価の変動や消費動向を徹底的に分析しました。

そしてひと通り勉強した後で、株式投資の世界に身を投じようと決意したのです。是川が34歳の時です。

しかし41歳の時に株式投資の世界から身を引いてしまいます。

実は是川が投資の世界で有名になったのは80歳を過ぎてからなのです。

そんな是川が教える投資の心構えを日経新聞『投資力を磨こう』のコラムに書きました。

電子版は『こちら』です。

紙の方は、8日(日曜日)発売の日経ヴェリタス紙に掲載されます。

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2023年1月 1日 (日)

明けましておめでとうございます

Fuji2023

               (23年元旦の朝)

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