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2023年1月30日 (月)

リユース市場 個人投資家としてどう向き合うか

リユースが脚光を浴びている。2022年の中古車を除く中古品市場は前年比11%増の3兆円と見込まれる(中古車を入れると6兆円超)。

【1】現在の情勢をどう捉えるか

中古車を除いたリユース市場は3兆円。
しかし家庭に眠る不用品は44兆円である(『こちら』)。
つまり市場のポテンシャルは大きい。

業界大手のトレジャー・ファクトリーの野坂社長が『』を著していて、その中で、次のようなエピソードを紹介している。

■ 創業して3年目(つまり今から25年くらい前)、お客さんが購入した家具を間違って隣の家に届けてしまった。

すぐに間違えに気づいて、きちんと届け直した。

しかしお客さんから後で電話がかかってきて、烈火のごとく怒られた。

中古品を買ってしまったことが隣人に知られてしまって恥ずかしいとのことだった。

■ 当時、お店のロゴマークをレジ袋に印刷していたのだが、ロゴマークの無い袋に入れて欲しいと言われた。

* * *

つまり20年以上前は中古品を買うことに対して、このような偏見もあった。

それが今ではそうした見方は後退し、むしろ『リユース品は、SDGsとか、エコだ』、『賢い消費者で格好いい』といった見方が増えてきている。

消費者の意識の変化がこの業界にとって追い風となっている。

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(画像は日経ヴェリタスのツイッター画像(『こちら』)から)

【2】リユース品市場の特徴

リユース品市場の特徴は『誰か売る人がいて、初めて成り立つ市場である』ということ。

つまり最近リユース家電を買う人が多いが、これは裏返せば『まだ使えるのに新品に買い替える人が多い』といった状況が背後にある(「新しい冷蔵庫の方が消費電力が少ないので買い替えてしまおう」といった理由)。

要は新品が売れること、そして新品に買い替える人が多いことが、リユース市場拡大の要因となる。

社会が富裕層と経済的に苦しい層に2極化してきていると言われるが、こうした社会構造の変化もリユース市場の拡大に繋がるのかもしれない。

なお上記要因とは別に、最近の風潮としてミニマリスト(最低限の物しか持たない)の台頭やコンマリ(近藤麻理恵さん)現象もあるが、これらも眠っている不用品を処理したいとの考えに繋がっている。

【3】リユース市場とデータ管理

 リユースビジネスは基本的にはデータ管理のビジネスでもある。

どういうことか。

新品だと、たとえばスマホのこのモデル(例:iPhone 14 Pro Max)といった形で特定されると、基本的に全て同じである。

ところが、リユース市場のiPhone 12 は1点ずつ、商品によって使われ方も違うし、中には傷がついているものもある。

つまり1点、1点、すべて違うのであり、1点もので単品管理していくことが必要になる。

この辺のデータ管理がきちんと出来ていて、適切な仕入れ値と販売価格が設定されると、商品の回転率が上がっていく。

昔の質屋は店主個人の勘に頼っていた。

現在の大手リユースチェーンは店舗も多いので、データによる管理、標準化が重要となる。

【4】買取価格比較サイト

新品の家電やパソコン、スマホを買う場合、あらかじめ価格コムを見る人も多い。

同じようにリユース品をお店に売る場合、買取価格比較サイト(ウリドキ、おいくら、ヒカカクなど)をチェックする人も多くなっている。

中古のゲームとかスマホは比較されやすい。一方で、中古の着物などは比較されにくい。

リユースの商品は、「仕入れ」と「販売する」という両面で成り立つ。
「あそこは高く買ってくれる」と評判になると、逆に「あそこで売っているものは高いんじゃないか」と思われてしまうこともあり得る。

買い取り価格と販売価格の『微妙なサジ加減』がノウハウとなっている。

【5】リユースマーケットを投資家としてどう評価するか

上述したように中古車を除くリユース市場は3兆円市場。

一方で家庭に眠る不用品は44兆円と言われているので、基本的にこの業界はまだ伸びる。

しかし投資家として見た場合、業界構造を頭に入れておくことが重要だ。

3兆円のリユース市場のうち43% は個人間取引(『こちら』)。

ここではメルカリなどのプラットフォーマーが力を持つ。

次にECサイト(アマゾン、楽天など大手)が18%を占める。

リアル店舗が占めるのは全体の37%。

このリアル店舗のところは、新規企業が比較的参入しやすく、競争が厳しい。

たとえば大黒屋は過去4年連続で赤字、今期も赤字になる可能性が高い。

ブックオフも5~6年前は(2016~18年まで)3期連続で赤字だった。

投資家としてリアル店舗の会社を見る場合は、企業分析をしっかりとやる必要がある。

『売上が伸びている』、『店舗網をどんどん展開している』からといって、必ずしも安心できない。

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