見逃した方に
今度の日曜日(3/5)まで、NHKプラスで見ることが出来ます。
ロシア工作員により少なくとも13回もの暗殺の企てがあり、それらを乗り切り、72時間を戦い抜いたゼレンスキー大統領。
秀逸のドキュメント。
NHKスペシャル「ウクライナ大統領府 軍事侵攻・緊迫の72時間」(→『こちら』)。
今度の日曜日(3/5)まで、NHKプラスで見ることが出来ます。
ロシア工作員により少なくとも13回もの暗殺の企てがあり、それらを乗り切り、72時間を戦い抜いたゼレンスキー大統領。
秀逸のドキュメント。
NHKスペシャル「ウクライナ大統領府 軍事侵攻・緊迫の72時間」(→『こちら』)。
2021年1月に90歳で亡くなった作家、半藤一利さん。
妻でエッセイストの末利子さんによると、亡くなる日の明け方ごろ、半藤さんは末利子さんに話しかけ、「墨子を読みなさい。2500年前の中国の思想家だけど、あの時代に戦争をしてはいけない、と言っている」と話したといいます。
私にとって墨子は30年ほど前にビッグコミックで連載されていた漫画『墨攻』程度の知識しかなく、当然のことながら『墨攻』の主人公『革離』は墨子の教えの「忠実な実践者」ではありましたが、墨子ではありません。
漫画『墨攻』の原作は酒見賢一が書いた小説で、後にアンディ・ラウ主演で映画化もされています。
さて話を墨子に戻しましょう。
墨子を書いた本はいろいろあるのでしょうが、半藤さんの書いた本があれば、それを読もうと思って探したところ、ありました!
半藤一利著『墨子よみがえる』。
以下、半藤さんの本から墨子についての記述で印象になったところを少し。
「天下の大害とは、『墨子』によれば、大国が小国を攻めること、大氏族が小氏族を凌辱すること、強者が弱者を食いものにすること、富者が貧民に横暴をはたらくこと、などなどである。それらが起こるのは、まず秩序を重んじて、人びとにそれぞれ長幼・貧富・貴賤などランクづけして個別に扱う「別愛」の立場であるからこそである。それは根本的に間違っている」(本書44頁)
「墨子は、わが意見に反対の者たちよ、歴史に学べ、ということをいっている。そして(中略)政治を正しく行った過去の例をいくつも具体的にあげる。大旱魃のとき、一身を犠牲にして降雨を祈り雨を降らせた殷の湯王、万民のために公明正大な政治を行った周の文王や武王などなど」(本書45頁)
墨子は非戦の思想家として知られていますが、魯迅(1881年ー1936年)が、非戦を説く墨子を題材にして小説を書いています。
以下、半藤さんの文章で、この小説のさわりの部分を紹介してみます。
* * *
「大国である楚の王に宮仕えをしている技術者の公輸盤なる男が、雲梯という攻城の兵器をつくり、それを使って小国である宋を侵略しようとしている」
「墨子は熱をこめてこの不敵な技術者を説得しようとする。(中略)公輸盤は、しかし、もう王の命令がでているから、俺には何ともならぬと答える。墨子はねばって、それなら王に会わせろ、という」
墨子は公輸盤とともに楚王に面会。
墨子は「公輸盤のほうに向き直って、それならばその雲梯とやらを使って私のつくる城を見事に侵略してみるか、と挑戦する。つまり模擬戦争」の提案である。
「公輸盤は、機をみて攻めること九度に及んだが、墨子は九度ともこれを防いだ」
「『俺の負けだ』と公輸盤はいった。『しかし(中略)俺には最後の一手がある』」
* * *
公輸盤は、最後の一手については、これを言わずにいましたが、
墨子は、それは自分をこの場で殺してしまうことだろうと見破ってしまいます。
そして楚王に対して、
すでに秘策を授けた弟子300人を宋に派遣してあるので、自分が殺されても弟子達が必ず宋を守ると答えて、
楚王を説得。
楚王は宋を攻めることを断念したとのことです。
* * *
これは魯迅が墨子について書いた小説を半藤さんが記したもので、やや分かりにくかったかもしれません。
しかし墨子がただ単に非戦を唱えていただけでなく、(1)具体的に行動を起こして、かつ(2)出来るだけロジカルに戦争が割に合わないことを為政者たちに説得していたことが伝わるエピソードだと思います。
なお、本書は墨子について書かれた本ですが、半藤さんはしばしば脱線します。
私には、この脱線があることで、却って気軽に読め、肩ひじ張らずに、頁をスムーズに進むことが出来ました。
それに語られている雑談もどれも勉強になりました。
その一つとして出てくるのが、半藤さんが最近読んだというジャン・バコン教授著『戦争症候群』の紹介。
半藤さんによれば、この本には戦争に関する強烈なシミュレーション結果が出てくると言います。
『コンピューターを駆使しての綿密に計算・予測された数字として:
2000年~2050年にかけて起こる戦争の数:120
この間の核戦争の数:1回
この1回の核戦争による死者:36億人
上記を含むこの50年間の戦争による死者45億5000万人(世界人口の40.5%)』
バゴン教授のシミュレーションはなんとしても外れて欲しいと願うばかりですが、
現在の為政者たち(とくにかつて墨子が生きた中国の為政者たち)には墨子をもっと知ってもらいたいと思いました。
なおこの本の巻末にはアフガニスタンで長年にわたって活躍された故中村哲氏と半藤さんとの対話が収められています。
そう言えば本書第7話で半藤さんは中村さんのことを「現代日本の墨子」とたとえていましたが、「なるほどな」と思いました。
オープンAIのチャットGPTばかりが注目を集めていますが、同社が提供するDALL-E も凄い!
フェルメールの名作『真珠の耳飾りの少女』をベースにAIが画像を生成。
こんな絵に仕上がったとのことです。
詳しくは『こちら』のインタビュー動画をどうぞ。
インタビューに答えるのはオープンAIのCTO(最高技術責任者)ミラ・ムラッティさん。
新しい日銀総裁候補が公知になる前の2月8日(水)に放送されたBS-TBS「報道1930」。
『こちら』の動画で、19分14秒~1時間4分5秒にかけて、2012年~13年当時の大規模緩和の舞台裏について伝えています。
* * *
【1】当時の状況(この部分は動画にはなく、私が追記しました)
2012年11月14日、党首討論(野田首相 vs. 安倍総裁)
野田首相は、「衆院を解散し、総選挙を実施する」旨を表明。
前日(11/13)の日経平均は8,661円、為替1ドル=79.64円(TTM)
経済の先行きに不安感が漂い、大企業は新卒者の採用に消極的となっていた。
選挙(12/16投票日)では、安倍総裁率いる自民党が「物価上昇目標を2%に設定し、大胆な金融緩和を求める」と訴え圧勝。
政権交代(民主→自民)。
12/18 白川日銀総裁が自民党総裁室を訪問。安倍総裁と面談。
* * *
【2】以下、上記動画からの関係者発言(一部のみ抜粋)
(1)西村清彦氏(当時の日銀副総裁)
『(政治からの)プレッシャーがあまりに強いために、私も
場合によっては、抗議の辞任というようなことも考えなければいけないような状態になるかもしれないんだと思っていた』
『政治に、いわば、もみくちゃにされて(日銀の)独立性が崩れるように見えるような状況になったとするならば、
政治がいわば強要するような形で、金融政策の根幹に当たる部分に手を突っ込んでくるということっていうのは、私は耐えられなかったということです』
(2)木内登英氏(当時の日銀政策委員会審議委員(2012~2017))
『日本銀行は国民の為に金融政策を決めている。
一方で、政治の世界の人たちと違って、選挙で選ばれていない』
『にもかかわらず金融政策を決めるという権限を与えられている』
『民意をどう吸い上げていくかというのは常に悩んでいた』
『(当時)日銀法改正をちらつかされた。
どこを改正するかというと、例えば、総裁の解任権などは有力なので、そうすると(日銀の)独立性はもっと下がってしまう』
(3)加藤出氏(東短リサーチ チーフエコノミスト)
『当時の空気は、たいへん、閉塞感が日本経済に強かった。
そこを「打開するには思い切った金融政策」という安倍さんたちが掲げたところに世論が惹きつけられていった』
『当時の閉塞感は、いま10年経って改めてクリアに見えてきたが、金融緩和策で解決できるものではなくて、もっと構造的な問題』
(4)再び木内氏の発言から
『2%の物価上昇はこの時の経済状況からすると、あまりにも高すぎる。
ここに金融政策を結びつけると、いわゆる「終わりのない金融緩和」になってしまって、
それはバブルをつくるかもしれないし、いろんな歪みをもたらしてしまう。
そこらへんが、私が物価目標に反対した理由』
『この10年間、日本銀行はいろんなことをやってきたが、実は金利はそんなに下がっていない。
短期金利で言うと、+0.1%だったものが、いま-0.1%だし、
10年の金利で言うと、0.8%だったものが、いま0.5%くらい』
『日本銀行が異例の金融緩和をやっている間は、国債を発行しても金利は上がらない、
いまが財政出動のチャンスだという議論がこの10年間ずっとあったように思う。
結果的に政府債務が増えた』
『政府債務は将来の人の需要を奪ってくるから、どんどん先行きの成長の期待が下がってくると、
企業もあまり投資をしなくなる。
そうすると生産性も落ちてくる』
『政府債務が増えることで、むしろ成長する力を落してしまった』
『(日銀が保有するETFは37兆円(22年9月末)だが)ETFを持っていると株価が下がった時に日本銀行の債務が悪化する。
日経平均1万9000円くらいが損益分岐点で、それから3割くらい下がると多分(日銀は)債務超過』
『日本銀行としてはETFを外に出したいが、売ると株価が下がってしまう。
株価に影響を与えないで売れるギリギリのペースが年間3000億円と日銀は言ったことがある。
いま37兆円あるということは、このペースで売ると、120年位かかってしまって、
それでは問題が解決しないので、別のことを考えなくてはならない』
昨年1年間でアップルの株価は▲27%、アマゾンは▲50%下落しました。
米国株全体(S&P500)でも▲20%も下落しています。
それでも私は米国株が「イチ押し」と考えています。
その考えの根底には次の2つのグラフがあります。
ちなみにグラフ2の方はデービッド・アトキンソンさんがツイッターで上げていたグラフにヒントを得ました。
GDPと政府債務残高を1つのグラフに入れ込むというのはアトキンソンさんの発想だと思います。
* * *
私が、「それでも米国株がイチ押し」と考える理由については、日経新聞電子版の『こちら』の記事で詳しく論じています。
同じ内容の記事が12日(日曜日)発売の日経ヴェリタス紙にも掲載されます。