JTCの問題は、JTCの中にいると、自分たちがJTCであることに気がつかないこと(その1)
(その4まで続くシリーズの1回目です)
今週の日経ヴェリタス紙ではJTCが取り上げられている。
何よりも、この問題を取り上げた新聞社や編集の方に敬意を表したい。
というのは、広告主や取材先、法人購読契約者のことを考えると
「ひょっとしたら怒らせてしまうかも」
との思いが関係者の頭をよぎったとしても不思議ではないからだ。
JTCとは、Japanese Traditional Companies (日本の伝統的な企業)の略なのだが、
ネットの世界では、古い体質を引きずる企業の意味でつかわれる。
世界株式時価総額トップ50で、日本企業は1989年版に32社がランクインした。
しかし2023年版ではトヨタ自動車も圏外に去りゼロになった(ヴェリタス紙4頁)。
日本が元気をなくしているのは、JTCが蔓延っているからと診断する人も多い。
【1】多くの企業は人事制度を改革してJTC脱皮を目指す
JTCも黙って手をこまねいている訳ではない。
人事制度を改革するという企業も多く出てきている。
実は人事制度の改革は「待ったなし」の状況にある。
今のままだと、苦労して採用した若い優秀な人材が辞めていってしまう。
従業員1000人以上の大企業の場合、
入社後3年以内に辞める人の割合は、10年前は20.5%(2009年卒)。
それが今では25.3%(2019年卒)にまで上がってきている。
優秀な人が辞めてGAFAなどの外資に行ってしまうと、GAFAとの差がますます開いてしまう。
一例をあげよう。
昨年11月、NTTのサービスイノベーション総合研究所で働くネットワークセキュリティの若手技術者が外資に移った。
彼女は「サイバーセキュリティに関する総務大臣奨励賞」の受賞経験もある研究者だった。
こうした人材の流出を防ぐには、これまでの年功序列システムを変えなくてはならない。
斯様な問題意識が背後にあるのだろう。
NTTは新しい人事制度を立ち上げた。
すでに報じられている新人事制度のもとでは、
理論上は20代で課長級への抜擢が可能になるという。
しかし、である。
ここで私は疑問に思ってしまうのだ。
しかしそれでほんとうに十分なのだろうか。
アポロ計画(1961年~72年)を推進したNASA(米航空宇宙局)のエンジニアたちは当時ほとんどが20代、30代だった。
日本の大企業が
「理論上は20代で課長級への抜擢が可能になります」と胸を張る。
敢えて「理論上」と言うことは、実際にはそういったケースはゼロかもしれない。
こうした状況に違和感を感じてしまうのは私だけなのだろうか。
米国の投資銀行では若くても、どんどん上に行く。
昔の話で恐縮だが、39歳で投資銀行のナンバー2になった米国人が来日するというので、日本の取引先社長とアポを取ったことがある。
すると後で、企画担当の専務から電話があった。
「39歳がうちの社長と会うというのは、ちょっとどうかと思います」
しかし米国ではJFKは43歳で大統領になっている。
若くして上に行くというのは、それだけ優秀ということなのだ。
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