米国の商業用不動産(リーマンショック以上の危機になるか?)
【1】リーマンショック以上の危機?
『米国の商業用不動産の問題が引き金となってリーマンショック以上の危機が到来する』
こう警鐘を鳴らすのは、モルガンスタンレーのLisa Shalett氏(Managing Director and Chief Investment Officer of Wealth Management)。
4月4日付にてFortune誌のAlena Botros氏が記事にして話題になりました。
Lisa Shalett氏はもともと今後の見通しについて悲観的で、CNBCのインタビュー(2月)でも『S&P500はあと15~20%下落する可能性が大』と発言したりしていました(『こちら』)。
(注:リーマンショック以上の危機であれば、あと15~20%の下落では、とても収まらないのですが・・)。
【2】リファイナンスできるか
Lisa Shalett氏が問題としているのは、商業不動産は今後2年間で1.4兆ドルのローンが期限を迎える。
これをきちんとリファイナンス(借り換え)出来るだろうかという問題です。
商業用不動産のリファイナンスが問題だと考える人は多く、金融情報のニュースレターである The Kobeissi Letter は先月27日に下記をツイート(『こちら』)。
『米国の商業用不動産に関しては:
(1)今後5年で2.5兆ドルの商業用不動産ローンが満期を迎える、
(2)これは歴史上最大、
(3)しかもリファイナンスに際しての金利は2倍以上になり、
(4)商業用不動産の空室率は現状30~40%』
The Kobeissi Letter によると、これらの商業用不動産ローンの70%は小さな銀行が供与しているとのことです(『こちら』)。
つまり
『商業用不動産ローンのデフォルト(債務不履行)』
↓
『中小銀行のデフォルト』
に繋がりかねず、
これは2008年リーマンショック時の
『信用力の低い個人の住宅ローンのデフォルト』
↓
『ローン債権の証券化商品を保有していた金融機関のデフォルト』
といった構図を想起してしまいます。
The Kobeissi Letter のツイートに対してすぐに反応したのがイーロン・マスク氏。
『This is by far the most serious looming issue. これは 迫り来る大問題。どんな問題よりも重大な問題だ』
とツイート(『こちら』)。
一連のやり取りはFortune誌が記事にしました(『こちら』)。
【3】ブラックストーンのREIT解約制限
ほころびは各方面で出てきています。
昨年12月1日、米大手投資会社ブラックストーンは傘下の資産規模690億ドルの不動産投資信託(REIT)「ブラックストーン・リアル・エステート・インカム・トラスト(BREIT)」について解約制限措置を講じました。
11月の解約請求総額が、予め解約上限額として設定されていた(A)月間で純資産価値の2%と、(B)四半期で純資産価値の5%の、どちらをも上回るほどに膨らんだためとのこと(『こちら』)。
この動きはその後も続き、4月4日の報道によると、投資家からの解約請求額が3月にも増加。
5カ月連続で換金を制限する事態になったとのこと(『こちら』)。
ブラックストーンによると、3月は、市場のボラティリティーが著しく高く、金融ストレスが広がった為、BREITには45億ドルの解約請求があり、約6億6600万ドルを換金。
これは請求額の約15%に相当するとのことでした。
つまり投資家としては解約請求しても85%は換金できなかったことになります。
そう言えば、リーマンショックの前年の2007年8月9日、仏大手銀のBNPパリバが同行傘下のミューチュアル・ファンドの解約を凍結したことが思い出されます。
これはサブプライム問題の発端として多くの投資家の記憶に残るものです。
【4】商業用不動産の下落
ここにきて米国商業不動産(ビジネスや商業などの中心地区におけるオフィス、郊外のオフィス、その他全般「RCA CPPI ALL Property」)の価格が前年比で下落に転じるようになってきています。
減損処理の金額もリーマンショックに匹敵するレベルになってきました。
下記は本日の日経に掲載されたグラフです。
いったいどこの銀行がどれだけの商業用不動産のローンを抱えるのか。
米国ではそんな記事も散見されるようになってきました。
下図はそのうちの一つです。
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