AFSとHTM
3月にシリコンバレー銀行が破綻した際に米国の報道でよく目にしたのが、AFSとHTMの2つの言葉です。
英語の略語ですし、日本では耳慣れない言葉かもしれません。
AFSは「Available for Sale」の略で、HTMは「Held to Maturity」。
日本語に訳すと「売却予定(もしくは売却可能)」と「満期まで保有」。
シリコンバレー銀行は保有する長期債券をAFSとHTMに分けて資産計上していました。
AFSは時価評価ですが、HTMは購入時価格(簿価)での評価が認められます(その代わり満期まで保有することを求められます)。
シリコンバレー銀行の『有価証券報告書』(10K;22年12月末)によると、
12月末現在で、AFSが26,069百万ドル、HTMは91,321百万ドルでした(10Kの第95頁)。
「これだけの金額(91,321百万ドル)の債券が時価ではなく簿価評価されている・・・」
一方でFRBは22年3月以降、矢継ぎ早に金利を上げてきました。
シリコンバレー銀行の一部の預金者は疑心暗鬼になり、
簿価評価のHTMを時価にして、いったい幾らなのかを 計算し始めます。
同行の資本勘定は16,004百万ドルしかなかったものですから、
仮にHTMが18%減価しただけで、資本勘定が飛んでしまうことになります。
もちろん債券の満期まで銀行が存続し得れば、場合によっては問題なかったのかもしれませんが・・。
「しかし、これは、もしかすると・・」
こう思った預金者は預金を引き出し始めます。
3月8日、資金流出に襲われたシリコンバレー銀行は、やむなくAFSを21,000百万ドル売却したことを発表(『こちら』)。
このAFSですが、時価評価していたとはいえ、
いざ売却すると1,800百万ドルの損失がでました。
このことも併せて3月8日に開示。
銀行が破綻したのは、その2日後でした。
* * *
話は変わりますが、今年のバークシャーの株主総会で、
ウォーレン・バフェットは「Available for Sale」と「Held to Maturity」の2つの席札を用意して総会に臨みました。
それが何を意味するか。
上記の背景を知ると、良く理解できます。
下記がその時の写真です。
* * *
私ごとですが、7日に、バークシャーの総会(5/6)を報じるオンライン・イベント「NIKKEI LIVE」に出演しました。
この時にはAFSとHTMを語る時間がなかったので割愛しています。
ただ日本の銀行を分析する際にも、AFSとHTMの視点は大切だと思います(『こちら』及び『こちら』を参照)。
「NIKKEI LIVE」では約1時間にわたって、バークシャーの総会を紹介しました。
日経電子版を購読の方は『こちら』でご覧いただけます。
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