サタデーナイトスペシャル
サタデーナイトスペシャルとは、主に1960年代に米国やカナダなどで使われた低品質で安価なハンドガン(小型拳銃)の俗称。
金融関係者の間では、1979年10月6日(土曜日)の夜にポール・ボルカ―(Paul Volcker)FRB議長(当時)が開いた記者会見を指します(『こちら』)。
ここでボルカ―議長は新しい政策を発表。
米国の金利が跳ね上がりました。
なお米国ではこの出来事はサタデーナイトスペシャルと言われるよりも、Saturday Night Massacre(土曜の夜の大虐殺)と言われる方が一般的(『こちら』)。
いずれにせよ、為替、金利、国債、株などをトレードしていた金融関係者にとっては、ショッキングな出来事であった為、「ハンドガン」とか「大虐殺」といった俗称にからめて呼ばれるようになったのです。
話はそれますが、ポール・ボルカ―議長は2メートルを超える長身で有名でした。
当時、私が勤めていた興銀の海外関連担当常務であった黒澤洋さん(後に頭取)も背が高く、2人は個人的にも親交を深めていました。
日本の銀行の地位が今よりも高かった(89年の興銀の時価総額は世界2位、金融機関の中では世界1位)からこそ、日本の民間銀行の常務がFRB議長と親交を深めることが出来たのだと思います。
さてそんな昔話は置いておいて、現在のFRB。
先物市場のCMEが金利先物から読み取れる政策金利の予測値を公表しています。
FED Watch と呼ばれるものです(『こちら』)。
これによると市場は66%の確率で、9月のFOMCミーティングで金利が引き下げられると予想していることが分かります。
3日の記者会見ではパウエル議長に対して「こうした市場の予測をどう思うか」と質問が飛びました。
議長は当然先物市場の動向も熟知していて、 それでも
「理事会(コミティー)は、インフレはそんなに簡単には収まらないと見ている」
と回答(『こちら』で記者会見の動画を見れます)。
このようにFRBは、市場予測とは違って、金利を維持し続けると明言しています。
FRBのタカ派的対応の結果、はたして米国の景気は後退し、ハードランディングの恐れが出てくるのでしょうか。
これに対して、市場の一部では、ハードランディングのリスクはあるにせよ、
「FRBは手綱を緩めるべきでない」との意見が出てきています(例えばドラッケンミラー氏、『こちら』)。
* * *
1970年から83年頃までの10数年間、米国のインフレはなかなか収まらず、株価も低迷。
『株式の死』と呼ばれました。
インフレを退治すべき時に退治しておかないと、これから先『株式の死』の時代が再来するリスクさえあります。
だとしたら、多少の痛みはこの際、覚悟すべきかもしれません。
ところで、もしこれからハードランディングするならば、人によって違いますが、現金の比率を高めておくことを考えても良いかもしれません。
チャールズ・エリスは著書『敗者のゲーム』の中で、
『「稲妻が輝く瞬間」のような上げ相場のときに市場に居合わせなければならない』
と力説しました(『こちら』)。
この段階で現金の比率を高めてしまうと、エリスが言う「稲妻が輝く瞬間」を逃してしまうかもしれません。
そのリスクは確かにある、ということで、
FOMO(Fear of Missing Out;取り残される恐怖)に襲われる人も多いかもしれません。
ただ、私自身は、FOMOをコントロールして、現預金(米国在住であればMMFやアップルでの預金)の比率を高めておくことを検討しても良いとの考えに傾きつつあります。
吉と出るか、凶と出るか、分かりませんが・・。
本日出演した日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』では、『利下げ観測 マネーの行方』とのタイトルでこの辺のところを議論しました。
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