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2023年8月25日 (金)

エヌビディア、なぜ急成長できたのか

エヌビディアの決算が良くて騒がれていたが、

そもそも何故、今年に入って株価が143ドル→471ドルと、3.3倍にもなったのか。

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なぜこの会社はAI時代を牽引すると言われるのか。

GPUとはどういう仕組みのものなのか。

知っていそうで、実は知らない(?)エヌビディアについてまとめてみた。

日経新聞(電子版)『こちら』です。

27日の日経ヴェリタス紙にも(紙の)記事となって掲載されます。

 

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2023年8月24日 (木)

中国の不動産について

【1】中国不動産市場の状況

中国の不動産市場は2020年以降、ずっと悪い。

中国政府が不動産バブルの問題に対処しようとして、不動産融資に関する規制を強化したからだ(同年8月に三道紅線(3つのレッドライン)政策を導入)。

この結果、21年に恒大集団のデフォルト問題が発生した(注: 同年12月に恒大はドル建て債をdefaultさせた)。

この時の債務再編交渉がまだ決着せず、今回の米国破産法15条申請へと繋がっている。

問題は恒大集団だけでなく最大手のカントリー・ガーデン(碧桂園)など、他の不動産会社もリスクを抱えていることで、今後の見通しは暗い。

【2】手付金に手を付けて他の新規案件に流用

日本では新築マンションを買う時に、通常1割の手付金を払って9割の残金はマンションが完成して引き渡される際に払う。

しかもこの1割の手付金は不動産信用保証会社が保証してくれるケースが多く安心。

中国では、この手付金の割合が多い場合は80%(北京で2つめのマンションを買う時)。

地方都市でも2~4割のところがある。

それも日本のように手付金の保全機関がない。

本来、手付金はその物件の完成の為の建築資金に使われるべきなのに、

それが次の別の都市での新規P/Jの為に使われたりする。

ある意味、次から次へと自転車操業となってきたところもあるようだ。

結果、未完成の物件が各地に出回るようになった。

【3】バブル崩壊時の日本に似ているのか? 

米モルガン・スタンレーは

Debt(債務)、

Demographics(人口動態=少子高齢化)、

Deflation(デフレ)の「3D問題」で

現代の中国と1990年の日本には多くの類似点があると指摘する。

はたして、現代の中国は日本のバブル崩壊のような軌跡をたどるのだろうか。

この点、中国の関係者は「日本のバブルの崩壊について徹底的に研究した。だから日本のようにはならない」と言う。

しかしマンション購入者から多い時は80%もの手付金を取って、それを他の不動産開発プロジェクトに充ててしまうなど、ある意味、日本のバブル以上のことが行われている。

少子高齢化も、一人っ子政策がやっと無くなったのは、今から7年前。

それまで(2016年まで)40年近くもの間、一人っ子政策が続けられてきたツケが回ってきている。

更に驚くことに中国では、現在でも子どもはMax.3人までしか認められていない。

将来、日本以上に深刻な影響をもたらす可能性もある。

ただ日本と違って、中国では、貧富の差が大きく、かつまた、競争が厳しい。

若い人は猛烈に働くなり勉強せざるをえない。

清華大学や北京大学は世界のランキングでも日本勢よりはるかに上位にランクされている。

飴とムチが徹底されていて、なま温い日本とは違う面もある。

【4】一部の日本企業による中国市場からの撤退や生産の国内回帰の動き

 平成の時代には、日本企業は安い労働力を求めて中国に進出。

しかし最近は中国の賃金もかなり上がってきた。

また円安の影響もあって日本の賃金もドルベースで見ると安くなって、

対中国との関係でも、ある程度の競争力を持つようになってきた(中国のどの地域と比較するかで、違ってくるが)。

だから生産拠点の国内回帰は、(業種によるが)企業によってはメイクセンスするようになってきた。

また経済安全保障の観点とか、先月実施された先端半導体の製造装置の輸出禁止規制など、

米国が中国への規制を強める中で、日本にも同調を求めていくといった動きも無視できない。

【5】日本企業はどのようなスタンスで中国と向き合うべきか

好むと好まざるとにかかわらず、世界は分断化の傾向を強めている。

つまり「民主主義国家(米、欧、日) vs. 権威主義国家(ロシア、中国など)」の分断化だ。

ただ日本にとって中国は地理的にも近いし、

何よりも、現状、中国は日本の最大の貿易相手国である。

輸出も輸入も相手国としては、断トツに中国が1位なのだ。

・輸出:中国が1位で22%、2位の米国は18%、
・輸入:中国が1位で24%、2位の米国は11%

つまり日本としては米国の顔を立てつつも、果実はしっかり取りに行くといった「したたかさ」が求められる。

ある意味、政治と経済は別。

ただ一方で、日本企業としては、中国に偏り過ぎると危険もあるので、リスク分散などの管理はきちんとしておきたい。

【6】日本の個人投資家としては中国株投資をどう考えたらよいか

指数でみると、上海総合指数は21年初めに比べて、2年半で▲8%の下落、

IT銘柄が多い香港ハンセン指数は21年初めに比べて▲32%下落してきている。

今後の長期見通しも油断できない。

習近平政権が掲げる共同富裕(21年8月から大々的に宣言)は格差是正を重んじる余り、出る杭は打つ的な側面を持つようになった。

アリババのアントは20年11月に上場延期。

ほぼ3年間で、アリババの株価は▲72%も下落(20年10月319ドル→88ドル)。

テンセントは▲45%下落した。

とくにIT、学習塾、ゲーム、不動産の業界に規制強化の網がかかり、狙いうちされている。

もちろん米国型の資本主義も1%の富裕層が国全体の富の3割以上を握る(『こちら』)といった問題を抱えている。

しかし中国では共同富裕の結果として、起業家精神や経営者のアニマル・スピリットが失われ、共産党の顔色を伺うようになった。

かつての中国には「金持ちになりたい」という人たちが多く、熱気が感じられた。

もちろん今でもそうした熱気は感じられるのだが、最近では「寝そべり族」と称する人たちも増えて社会問題化している。

日本の個人投資家が中国株に投資する場合、そういった投資環境の変化を把握しておく必要がある。

* * *

なお21日(月)に出演した日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』では、こういった中国の不動産問題について議論しました。

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2023年8月11日 (金)

論文数

文部科学省『科学技術・学術政策研究所』は、8月8日、『科学技術指標2023』を公表しました。

これは日本の科学技術や学術研究の活動を把握する資料として有用なものです。

報告書は本文だけでも200頁以上にわたる大部なものですが、

この中でも特に『論文数ランキング』がマスコミ各社によって報じられました。

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   (出所:上図は東京新聞のサイトより)

これによると注目論文数のランキングで、日本はイランにも抜かれ世界13位になってしまったことが分かります。

新聞やテレビでの報道では一般の読者、視聴者にも分かりやすくするため、『注目論文数』と記していますが、

これはいったいどういうことなのでしょうか。

上記報告書を読むと、ここで言っている『注目論文数』とは、Top10%補正論文数のことであると分かります。

Top10%補正論文数とは、論文の被引用数が各年各分野(22分野)の上位10%に入る論文を抽出後、実数で論文数の1/10となるように補正を加えた論文数を指します(上記の『科学技術指標2023』<報告書全文、132頁>)。

上記報告書には、Top10%補正論文数のランキング推移だけでなく、Top1%補正論文数推移も記されています。

(Top1%補正論文数とは、論文の被引用数が各年各分野の上位1%に入る論文を抽出後、実数で論文数の1/100となるように補正を加えた論文数のこと)。

Top10%だけでなくTop1%も示した表が、上記『科学技術指標2023』の統計集、189頁に記載されています(下図;クリックすると大きくなって読めるようになります)。

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Top10%でなく、Top1%で見ると、日本はまだイランに勝っています(だからといって、特にどうと言うことはないのですが)。

そもそも表の一番左(1999年―2001年)では、日本はTop10%、Top1%、何れにおいても世界4位でした。

ちなみに下図は人口100万人当たりの学士号取得者(『科学技術指標2023』118頁>。

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各国を比較すると、英国(6,520 人)、韓国(6,363 人)が、学士号取得者が多く、米国(6,229 人)が続きます。

日本はドイツ、フランス、中国などよりも上位。 

それが修士になると、日本は急に低くなります(下図;同119頁)。

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つまり大学院に行く人が他国に比べて少ないのです。

博士号取得者についても同様のことが言えます(下図;同120頁)。

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なお日本の企業及び大学部門の研究開発費は18.1兆円で、米国、中国に次いで、世界3位となっています(上記『科学技術指標2023』1~2頁)。

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2023年8月 1日 (火)

100年前

日本株も米国株も堅調な相場が続いています。

良いニュースには率直に反応し、悪いニュースには一旦は下落を示すも、それをすぐに乗り越えていく。

相場の中心にいる現在のトレーダーたちはリーマンショックを経験していない人も多く、怖いもの知らずで相場に立ち向かっていると言います。

そしてそれが結果的に上手くいっている・・。

ポイントは、いつまで続くかです。

ところで今の状況を「100年前のようだ」という話もよく耳にします。

100年前。

1918年3月から始まったスペイン風邪は第1波(1918年3月~)、第2波(1918年8月~)、第3波(1919年1月~)と続き、その後、収束に向かっていきました(日本は少し遅れて、1920年1月から第3波に見舞われました)。

米国では、スペイン風邪が終わった後、好景気が続くようになります。

『Roaring twenties(狂乱の20年代)』と言われた時代の到来です。

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上図(クリックすると大きくなります)は、1910年から1932年のダウ平均株価。

赤の矢印で示した「始」と「終」はスペイン風邪の時期(米国)。

スペイン風邪前の10年間はほとんど大きな動きを見せなかったダウ平均株価ですが、

1921年頃から猛烈な勢いで上がり始めます(緑の矢印)。

ただ、その先に待っていたのは、ご存知の通り、1929年の大恐慌。

株価が元の水準(1929年9月3日、381.2ドル)に戻るのに25年もかかってしまいました(1954年11月23日、382.7ドル)。

もちろん大凡100年前に起きたことが、現在の状況に少しだけ似ているからといって、これから先、どうなるかを示唆するものではありません。

当時と現在とでは違っていることがたくさんありますし、実際のところ、この先のことはよく分かりません。

ただ株だけでなく、港区など東京の中央部の不動産なども異常に上がっています。

下記は先週末の新聞折り込み広告。

広さが37㎡で価格は1億円超えなのだとか(もちろん売れていないからこそ折り込み広告を出しているでしょうが)。

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フロー(個人などの収入など)に比してストック(株や不動産)の価格が高くなり過ぎているのでは・・?

こうした傾向がこの先も続いていくとは、とても思えないのですが、さて・・。

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